「ジョージ、お前は大事なダチだがな、譲れねえものもあるんだよ」 「こっちのセリフだぜサム、マリアだけは譲れねえな、譲れねえよ」 「やめて、二人とも私のために争わないで!」 男と男との女。ドラマのような三角関係。なぐり合う男たち、泣く女。このままほっとけよと、誰もが思わないでもない。当事者たちにとっては真剣だとしても。 しかし不幸にもそこに通りがかってしまった第三者の男がいた。そして男はその光景に一瞬絶句し、次いで叫び声を上げる。 「な、なんじゃこりゃあ!」 しかしその言葉は不幸を呼ぶ。いや、存在に気付かれるということそのものが問題だった。第三者の男を見つけたジョージとサムは殴り合いの手を止める。 「おいジョージ、……見慣れない野郎がいやがるぜ」 「ああ、あいつもきっとマリアを狙っているだな!」 ただただ、根も葉もない思い込みで、お前以外にはもっと譲れないな、と共闘したジョージとサム。一方的に男は叩き潰され、哀れ大地の染みに成り果てましたとさ。 「なにがなんだかわからないよ……」 そんな一言だけを残して。 ● 「まあ放っておいていいなら、仕事にはならないから」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)さんは今日も超COOLな少女です。淡々テキパキ集まったリベリスタ達に資料を配ります。 「今回の現場はもう春真っ盛りな今日この頃、頑固に雪を誇るとある山奥」 ああ、そんなところで痴情のもつれやっているリア充がなんかあれですかフィクサードとかですか、思い込みで一般人に被害とか馬鹿かとあほかとリベリスタ達も怒ったり呆れたり忙しい。 「そう、目標はその三人、いや、三匹?」 単位がおかしいですよイヴさん? なんですか人じゃなかったのですか、情念でもこもったE・フォースか何かですか、リベリスタ達もそれなら仕方ないかと比較的納得する。そんな未だ資料を読んでいないリベリスタ達に、とりあえず資料を読んでとイヴはせかす。 「正確に依頼内容を伝えるなら、たまたまボトムチャンネルに落ちてきた、二足歩行カバ型アザーバイド『魅惑のひぽぽたます』三匹を元の世界に叩き返してきて」 リベリスタ一同ずっこけた。カバかよ、二足歩行かよ、そりゃあ何が何だかだよと口々に突っ込んだ。しかし歴戦のイヴは華麗にスルーして解説を続ける。 「二匹の雄は殴り合っているけど、お互いちょっとずつしか傷つかない上に自己治癒能力まであるみたいで、放置しても勝手に倒れるということはない」 でもそれは互いに友を想って手加減しているのが原因、だからこそ問題があるとイヴは言う。 「あくまで友だからこそ。ゆえに彼ら以外の存在、特に男が近づくとそれを排除する時は全力で容赦がない。ついでにマリアもオス二匹を回復とかで援護する、ヒロイン面で」 実は結構武闘派のカバなのというイヴの一言に数名こけたが放置である。 「能力は攻撃と補助が別れてるのが特徴。オスは攻撃的で目からビームがでるのと口から毒ガスを吐く。メスは周囲の回復とレイザータクトに似た支援を行う光が鼻から出る」 メスのヒロイン力に疑問の残る所であるがその辺りは言及を許されない。無論腕力も相応にあるから物理攻撃にも気を付けるようにとイヴは真面目な顔で言う。どんなに外見や能力がアレな感じでも、アザーバイドだし、わりと怖い存在だというのを忘れないでと。 「そして何より恐ろしいのが三匹共通の能力。魅惑の名に恥じない魅了を付与する攻撃。周囲の目を引き付けそのつぶらな瞳で、たくましい肉体美で、ピンク色で、魅了する、だいたいアッパーユアハートの魅了版と思って差し支えない」 なんかすごいこと言った、カバなのに、魅了って言った。カバに魅了される可能性があることに否応なくリベリスタ達のメンタルが削れていく。それでもイヴはひるまず立ち向かってほしいと仕事内容を補足していく。 「遭遇時はなんか色々興奮してるから話をまともに聞いてもらえないだろうけど、本来温厚な種族だから。頭を冷やしてもらえれば、帰ってもらえるはず」 彼らの通ってきたD・ホールも近くにあるから。そうイヴは淡々と、頑張ってほしいと送り出す。送り出されるリベリスタ一同はとてもとても微妙な顔をしていたが、大丈夫だ、問題ない。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年05月13日(月)22:57 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●魅惑のひぽぽたます 季節はとっくに冬をすぎてしまったのに、その山奥にはまだしっかりと雪が根を張っていた。辺りは一面に白い銀世界で覆われている。 そんなほとんど誰も登ってこない場所に、ピンクの生物が突如として現れた。 その名も「魅惑のひぽぽたます」。おもわず口を噛んでしまいそうなそのカバげた生物たちは、いまや一人の女? をめぐって熱いバトルを繰り広げている、らしい……。 「殴り合うのは勝手じゃがの。見境なく襲ってくる上に、友を慮って手加減する体たらく。そんなことで、欲しいモノが手に入ると思っているのか。もとい、彼女への示しになるというのか……マリアもハッキリと誰が良いが口にせぬし、全くもって喝な連中じゃ」 『破壊の魔女』シェリー・D・モーガン(BNE003862)が深いため息をついた。これからのことを考えると先が思いやれる。 「いずこの世界でも男女の仲というものは難しゅうございますね……嗚呼、されど――故に『救い』なのでございましょう。何にでも明瞭に答えが出てしまうという事は、未来が無いと同義かも。故に恋愛や感情は必要だと思うのです――とか難しい事はさておき♪ ふふふふ」 『紫苑』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)は、突然邪悪な笑みを浮かべた。ふだんのお淑やかキャラではすでにない。本当に今日は真面目に回復役を務める気があるのだろうか――誰もが疑いの目でシエルを見つめる。 「直立歩行するピンクのカバとかもう最高……! 是非に目に焼き付けておかねばなるまい。……いや、ちゃんと送り返すわよ? 本当よ?」 『ソリッドガール』アンナ・クロストン(BNE001816)が誰にも聞かれていないのに自分でツッコミを入れる。だが、すでに目がイッていた。妄想の中で彼女はすでにピンクの生物たちをもふもふさせている。 「興奮しているカバさん達になんとか落ち着いてもらわないとですね……そしてあわよくば、その魅惑のボディをぎゅーっとさせてもらいたいのですよ!」 『自爆娘』シィン・アーパーウィル(BNE004479)も同じことを考えていた。同じ奇妙なピンクの生物同士、何か気が合うところがあるのかもしれない。 「カバ!! 可愛いですぅ……ぽてぽて手足、ずんぐりむっくりボディ。特にメスカバ、可愛いのですぅ……そりゃ雄どもが群がる訳ですぅ!」 まるでおとぎ話から出てきたような格好の『白雪姫』ロッテ・バックハウス(BNE002454)が可愛らしくぶりぶりさせて言う。だが、それは彼女が本当に素でやっていることなのか? 彼女の本性は別なのではないかと皆は密かに思っていた。 「わざわざ余所の世界に来て痴話喧嘩すんな! なら俺がカバどもの愛とやらを試してやるぜ……」 『影の継承者』斜堂・影継(BNE000955)はそんな勇ましい発言とはよそに、少し不安になっていた。たのむよ、みんな、ちゃんと助けてよ……? と心の中で懇願した。だが、その影継の声はもちろん誰にも届いていない。 「一時的とはいえお互いが協力して共通の敵を倒す! そこから落ち着きを取り戻して共感を得ることも出来るはずだよ……友達なんだから。……ってことで、悪役よろしくねっ! 影継ぅ」 『三高平の悪戯姫』白雪 陽菜(BNE002652)がドヤ顔で、楽しそうに影継の肩をバシバシと叩いた。だが、余計に影継は不安に陥ってしまった。 「ヘンリエッ……じゃなかった――マリアさんをまず説得しないといけないの」 『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)がつい思わず、口を滑らせそうになった。が、危ういところで踏みとどまる。陽菜が「ヘンリエッタ?」と問い返した。 「ななな、なんでもないの! ほら、ここ寒いからっ! くしゃみだよ。へクシュン、ヘクシュン」と旭はなんとか誤魔化した。さっきから本当に背後がさむい。 それぞれにいろいろな思惑を抱えてリベリスタたちは、ようやく目的地についた。すぐに陽菜が影継以外に翼の加護を付与する。 「それじゃ、あとはくれぐれも頼んだぞ……?」 影継がまだ不安そうにしながら、ピンクのカバたちの前に突入して行った。 ●悲劇のシャドウブレイダー 「ヒャッハァ! 俺の名はシャドウブレイダー! 影の狩猟者アザーバイドハンターよォ! フィンランドに空輸して愉快な谷の博物館に並べてやるぜ! 直立カバども!」 影継が言い争っているカバたちの前に現れた。あまりに突然の出来事に、それまでお互いを攻撃していたジョージとサムが動きを止めた。ヘルメットを被って変装したその異様な格好の男を前にカバたちも困惑を隠せない。 「おまえ、だれだ……? 新手のヘンタイか?」 ジョージが影継に向かって言った。ヘンタイにヘンタイ呼ばわれされてしまって、思わず影継は死にたくなった。それでも気を取り直して立ち向かう。 「そこのアザーバイドフェチな男を止めてください! マリアさんが危険です!」 そのとき、後ろから陽菜が現れた。ジョージとサムに向かって、マリアが襲われてしまうと注意を促す。 「このド変態野郎! カバレディに手を出そうとするなんて、とんでもない下衆!こいつあなた達が大好きな方を奪おうとしてるのです! 悪はこいつだー!」 ロッテがドスの利いただみ声を発して現れた。普段の可愛らしさはどこにも感じられない。やはりロッテのいつものあれは演技だったのかもしれないと皆は思った。 「助けてくださいー。自分もそこのアザーバイドフェチのHENTAIに狙われているんです。はやくしないとマリアさんが危ないです」 フィアキィを伴ったエルフ耳のシィンが横から現れた。彼女が見るからにこの世界の生き物ではないことがジョージとサムにもわかる。 「おまえ、あのスイカ胸ピンク野郎だけでなく、うちのマリアにも手を出そうってのか? かなり趣味が悪いぞ! だが、マリアを狙うのだけは容赦しねえ!」 ジョージとサムが影継に向かって近づいてくる。 「おっと、いいのかよ、カバども! テメェらの後ろにいる愛しい彼女の守りがお留守だぜ? そーれ暗黒暗黒ゥ!」 影継は暗黒でマリアの方にむかって攻撃をしかけた。ようやくジョージとサムも影継を敵と認識する。 「マリアに手をだすなんてようしゃしねえぞ、おらっ!」 ジョージが影継にむかってカバビームを放ってくる。影継はそれを日光浴のように全身で受け止めてその場に突っ伏した。 「ああ――もう可愛いなこいつら……えへへへへ」 岩陰に隠れていたアンナが思わずメガネを光らせた。あまりのカバたちの可愛さに笑みがこぼれてしまう。横に居たシエルも暗黒微笑で成り行きを見守る。 だれもまだ影継を助けにいこうとはしない。二人はすでにカバのただならぬ魅力に犯されてしまっていた。 「くっ……! やるじゃねえか、ジョージ。だがな、本当に強いのはすぐに怒って攻撃してくる奴じゃないぜ。ほら、サムを見ろ! マリアをカバって傷を負っているじゃないか! サムこそナイスカバーって言えるんじゃないのか?」 影継が傷ついた身体を引き起こす。寒いギャグを飛ばして、さらに辺りの気温を下げてしまった。だが、ジョージはその言葉に茫然とした。 「しまった、俺としたことが……! つい、怒りでマリアを守ることを忘れてしまっていた。これでは、カバー失格だ」 「どっちの愛が強いかは分かったみてぇだなァ? だが無駄なこと! アンタらはここで俺に狩られるのさ! ひゃっははははっ――ぐふううううっ!」 余裕をかまして笑った時に、サムがいつの間にか近づいて、カバブレスを吐きつけた。あまりに臭いカバの息についに影継は突っ伏した。 「ジョージ、こいつの言うことに惑わされるな。こいつはマリアを狙う不届き野郎だ。ここらで奴を一発シメる必要があるんじゃねえか」 「そうだったな。危うく寒いギャグにうっかり騙されるところだった。それじゃはやいところやっちまうか――」 ●三匹では仲良く暮らせない 「ちょっと――ストップなの!」 ジョージとサムが影継にふたたび攻撃しようとしたところで、正義の味方を装った旭とシェリーが飛び出してきた。ようやく二人の登場に影継も安堵する。 「チッ、正義の味方どもが来やがったか! だがフュリエがいるのは好都合、アザーバイドは頂いてくぜ!」 「きゃあ――助けて!」 台詞棒読みのシィンを連れて影継はこれ幸いとその場を逃げ出そうとする。だが、その後ろからシェリーがシルバーバレッドをぶっ放した。続いて倒れたところを旭が今度は焔腕でなぶりつける。 「ぐはあああああああああっ!」 ついに影継はその場に動けなくなってしまった。急いで陽菜とシエルがやってきて動かなくなった影継を後ろへと引っ張っていく。 「なにかよくわかないけど、たすけてくれてありがとう」 マリアが他のリベリスタ達に向かってお礼を言う。そう言いながら傷ついたジョージとサムに鼻息を噴きつけて癒してしまう。あまりに珍妙な光景にリベリスタたちも思わず顔をしかめた。 「おい、ジョージ、邪魔者は片づいた。それじゃ決着をつけるか」 「望むところだ。俺の方がマリアにふさわしいということをみせつけてやる」 だが、ふたたびジョージとサムは喧嘩の続きに入ろうとしてしまう。このままでは影継の身を張った演技が台無しになってしまう。なんとかしなければならない。 シィンは二人を遮って言った。ボトムチャンネルには斜堂さんのようなアブナイのが居ること。自分達がこの世界の守護者的な役割の者であること。 カバさん達をこのまま放っておいたら、無関係な人間に死者が出て、世界を傷つけてしまいかねないこと。その場合強硬手段を採らなければならなくなり、それは避けたいということ。以上のことをたどたどしく伝えた。カバたちは難しそうに顔をしかめて考え込んでしまう。 「女性は包容力のある殿方が好きなものですよ?」 戻ってきたシエルが優しくジョージとサムに問いかける。ここでみじめに争ってはますますマリアに嫌われるだけだ。だから穏やかに話し合いで解決するべきだと訴える。だが、シエルはアンナと共に近くにいるカバの魅惑にうっとりしていた。いつまでも立ち去らないシエル達にカバの二人も薄気味悪さを感じてしまう。アンナはついにカバたちに握手を求めてしまった。カバもついうっかり手を出す。 「ああああああ気持ちいいいいいいっ」 カバと握手したアンナが快感で身悶えるように昇天しそうになった。 「そもそも殴り合いで決着つけてどーするつもり? 殴り合って勝ったほーが恋人さんだなんて、マリアさんは納得してるの? おんなのこの気持ちだいじなの。すきなひとなら尊重してあげなきゃだよう。殴りあうにしたってそんなヌルいのじゃ決着つかないよ。手伝ってあげよーか?」 旭もやさしくカバたちにむかって問いかける。だが、その笑顔と裏腹に腕に焔を纏っていた。その笑顔が逆に恐ろしかった。 ジョージとサムは沈黙してしまった。旭の本当は腹黒そうな心に怖気づいたというのもる。だが、それ以上にマリア自身はどう思っているのか。その本心が訊きたいと思った。 「2ひk……二人がマリアさんのこと好きで争っても、マリアさんはどっちが好きかもう決めてるかもしれないじゃない」 「一番大事なマリアの気持ちの確認。答えが出ているなら、それをハッキリ伝えるべきじゃ。二人のためにも、もし迷っているなら協力するぞ?」 黙り込んだままのマリアに向かって陽菜とシェリーも優しく問いかける。マリアは言いにくそうにさっきから身体をもじもじさせていた。 その光景はあまりにシュールだった。二足歩行のピンクのカバたちの三角関係のもつれに真剣に説得を試みる。 いったい自分は何をやっているのか――シェリーは心の中で苦しんだ。 「3匹で仲良く暮らせばいいじゃないですかぁ。一妻多夫! 王子様は多い方がいいのです! 親友と大好きな方と過ごす……良いと思うけどな〜えっダメ?」 ロッテがそうマリアに尋ねた時だった。 「ごめんなさい――ジョージ、サム。実は私もう婚約者がいるの。来月にはもう結婚式でハネムーンに出かけるつもり。だから二人の気持ちには答えられないわ」 マリアのあまりの衝撃の事実に一同が驚いた。まさかの三角形ならぬカバの四角関係に誰もが声をだすことができなかった。 「相手は大企業の息子なの。おまけに裏の顔は今をときめくビジュアル系バンドのボーカルKABAOなのよ。どう驚いた? あなたたちとは住む世界が違うの。おまけに性格も優しくて顔もとってもイケカバなの! だから私は元の世界に帰らなくちゃいけない。いつまでもあなたたちの遊びに付き合ってられないわ。それじゃねえ、バイバイ!」 マリアはそれだけを言い残してD・ホールに向かって走っていく。取り残されたジョージとサムはしばらく沈黙していた。リベリスタたちもどうしてやっていいのかわからない。だれもそれ以上慰めることなんてできなかった。 誰もが途方に暮れている。 「マリアアアア、俺の貢いだ30万の指輪かえせえええええええ!」 突然、ジョージは吠えた。 「まりああああああ、おれのあげた結婚準備資金の60万どうしてくれるんだあああああああああっ! 給料の三カ月分をかえせえええ」 ジョージとサムは唸り声をあげた。その目には絶対に許さないという決意が込められていた。 「サム、ぜったいにあの女を逃がすな」 「わかった、ジョージ。必ず地獄の果てまで追っかけて奴を殺す!」 ジョージとサムはついに意気投合した。そしてマリアを追いかけてD・ホールの中へと風の如く消え去って行った。 「さよならですぅ! 向こうでも3匹仲良くですよぉ!」 ロッテだけが元気にいつまでも手を振っていた。 ●巧妙な演技 カバたちがD・ホールの先に帰ってから、アンナとシエルと旭が協力してブレイクゲートをした。ようやく長い任務が終わり一同はほっとする。 「私の為すべき事は唯一つ、皆様のお怪我、只管癒してみせましょう」 カバの戦闘によって傷ついた仲間をシエルがやさしく介抱する。だが、影継だけはなかなか起き上がらなかった。 「すまぬ、ちゃんと、手加減したはずなのじゃが――」 「ごめんねー。ヘンリエッ……じゃなくて、マリアさんたちを説得するためにはやっぱり本気でやらないといけなかったから。だってそうじゃないと、演技を見破られたかもしれなかったのー」 シェリーと旭はすまなさそうに寝ている影継に向かって言った。だが、言葉とは裏腹にその顔はちっとも反省をしていなかった。シェリーのシルバーバレッドはかなり強力であった。おまけに本当は腹黒い旭にもトドメを刺されてしまったのだ。当分の間は動けないかもしれない。 「ねえ、影継、死んじゃだめしんじゃだめだよおおおおお。あとでソフトクリームあげるからああああっ!」 陽菜が点眼して目をうるうるさせる。嘘泣きで影継を激しく揺さぶって、大げさに演技をした。その行為がさらに影継にダメージを与えてしまう。 「ぐああああはっ!」 なにはともあれ無事に任務を達成できてよかった。シィンは思った。だが、少し寂しい気持ちもあった。自分と同じピンクの変獣。また逢う時があれば、今度はお友達になってみたいと密かに心の中で思った。 「やーもう、こんなアザーバイドばっかならいいのにねえ。うふふふ」 アンナだけはただ一人、にやにやと妄想で顔を歪ませていた。そんなアンナに仲間のリベリスタたちは誰も近づくことはできなかった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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