●第二話 またまたピンチ! 謎の魔法少女現わる! 「キェーケケケェー! 大人しくするのだァー!」 「イヤータスケテー!」 とある都内歩行者天国。 黄色いモヒカンの男に、女児がつかまっていた。 これが『車が危ないから一緒に横断歩道渡ってあげるね』の光景だったらさぞかし微笑ましいもんだが、実際はそうじゃない。見たまんまである。 「貴様は俺たちの『幼女の脇の下に顔をうずめ続ける』という欲求のはけ口となるのダァー!」 「イヤー!」 見たまんまっていうかもう見た目以上の大変さだった。 しかも周囲には若干小柄なモヒカン男たちがピギーピギー言いながら取り囲み、世界一嫌なマイムマイムを形成しているではないか。 周囲の人たちもお巡りさんも『これはないわぁ』とばかりに遠巻きに見守るしかない始末。 女児の運命もここまでかと思われた、その時! 「お待ち下さい!」 欧米の戦争映画とかで流れることの多い軍歌的なミュージック(正式な名前を言っても多分に皆さんに通じない)と共に、近くの外付け階段から身を乗り出す少女がいた。 「何やつ!?」 「おわかりになりませんかご主人様ァ?」 ギラリを笑う少女。 モノクロカラーのゴシックメイドドレスに、ピンクとパープルに色づけされたM4アサルトカービンというアメリカ軍にも採用されるような銃を天へと掲げ、軽くバースト射撃(自動三連射のこと)して見せた。 「見て分かりませんか」 「……分かりません」 『きをつけ』の体勢でじっと上を見上げる男たち。 周囲の人たちも大体同じような反応である。 少女はカービンにオプションされたM203グレネードランチャーから特製閃光弾を発射。 「お還りなさいませご主人様ァ!」 ビガガーという衝撃に思わず目を覆った男たちへと一足で飛び込みつつ、フルオート射撃を浴びせてやった。 「ビギー!」 体に弾を受けた小柄な男が崩れ落ちる。 が、いくらなんでもそんなポンポン仕留められるほどヤワな連中ではない。 着地した時には既にぐるりと囲まれていた。 「ククク、飛んで火に入る夏の虫とはこのことよ……射撃武器なんだからずっと高いところから打ち続けていればよいものを」 「くっ、見た目重視で動いたからつい……!」 魔法少女、まさかのピンチ! 男たちはみょうに屈強な腕をぷるぷるさせ、今まさに飛びかからんとした……! ●乱入チャンス! 「最近の若いもんはさー、なんでもかんでもメイドさんはゴシックドレス着てるもんだと思ってるらしくってー、海外にあるメイドサービスを水商売か何かと勘違いしてる節すらあるんだよねー。まあサービス業の極端例がアレって考えるとあながち間違ってもいないのかなーって、思わないでもないんだけど? みたいな?」 ブリーフィングルームの机にでろーんと突っ伏したアイワ ナビ子(nBNE000228)が、そのまま仰向けになったりうつ伏せになったりとごろんごろんして遊んでいた。 なんか猫か何かが戯れてる仕草に似ていたが、ナビ子相手なので対応に困る。 地味に性別不明だし。地味に二十七歳だし。 「まあでもね、メイドカフェがふりふりふわふわの夢みたいなお仕事だと思ってたら大間違いだよ。男の子もやたら高額な品を貢いだりするし、セクハラまがいっていうか単純にセクシャルなことを要求する人もいるし、時勢によっちゃ行き帰りの間が危険だったりするしね。水商売みたいなもんでしょって、貢がれたパソコンを三台くらいキャリーで引きながら友達が言ってたよ。でも世の中で疲れた人を元気にして社会に送り返すっていう仕事でもあるから、それはそれで遣り甲斐っていうか、意欲も沸くんだって。でもああいう人たちって大抵ボディーガード兼彼氏が居たりするから、そういう目的でカフェいっちゃダメだよ?」 などと、どう考えても雑談でしかないことを言ってから。 「そんなメイドカフェの店員がフィクサードと戦ってるんですよ」 いきなり本題にハンドルをきった。 魔道メイド、フレンドリ・ファイア。 フリーのリベリスタで、都内のメイドカフェで働くお姉さんである。 使用武器はちょこちょこ代わるが、今回はグレランOPしたカービンとのこと。大抵の銃は妙にカワイくデコってあるのが特徴。最近のおきにはスワロでデコったミニガン。 そんな彼女もお仕事のかたわら都内で発生する軽犯罪とかそういうのを防ぐべく戦ったりするのだが、今回は他県からやってきたちょい大きめの組織(といっても15人くらい)が相手になってしまったからさあ大変。 ここはアークが助けに行ってやらんとなあってな話である。 敵となるのはフィクサード組織『ペンギンさんちーむ』。 モヒカンに肩パッドをつけた男たちで、蹴り技や殴り技、特に突進系の攻撃が得意な連中である。 「一応、冒頭のラスト部分に乱入する感じで行けると思うんで、そういうことなんで、よろしくお願いしますご主人サマッ☆」 最後だけカワイイ声色を使って、ナビ子はんなこと言ったのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 9人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年04月24日(水)23:18 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 9人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●取調室にて スチールデスクがひとつにパイプ椅子が二つ。明かりはデスク上のスタンドライトだけである。 「……」 パイプ椅子にロープで胴体と腕をまるごと固定された男が、俯き気味に沈黙していた。 「ちがうんです。今回はセクハラを自重したんです」 何かを語り始める紙袋。 っていうか袋に『結城ドラゴン竜一』って書いてあったので多分竜一だと思う。 それになぜかほぼ全裸だったから、竜一で間違いないと思う。 丁度、なんでか知らんけど名前も『合縁奇縁』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)になっていたし。 「メイドカフェの女の子に何かしようなんて、今回は思ってなかったんです。だってそでしょ、実際カフェに行ったって、多分オレ何も出来ないもん。普通に席に座って、普通に紅茶飲んで、普通にスカートの中に飛び込んで、普通にクンカクンカスーハースーハーしてお金払って帰るしかできないもん。みんなだってそうだろ? そうだよな!?」 「「…………」」 顔を見合わせる女性陣。 なんだかアンニュイでウェットな感じのフュリエっこが、キセルの先端をこんこんと灰皿で叩いて言った。 「事情は分かったよぉ。アークの有名人さんだから、そういうこともあるんだねぇ」 フュリエっこというか、『夜行灯篭』リリス・フィーロ(BNE004323)だったけど。 「え、じゃあ今回のことは……?」 再びキセルをくわえ、口の端から煙を漏らす。 「死刑ってことで」 「チクショオオオオオオオオオオ!」 ――事件は、およそ一時間ほど遡る。 「「ハイッハイッハイハイハイッ!!」」 「よーうーじょーを舐めるならー、こういう具合にしやしゃんせー!」 「はい(人として)アウト!」 「(法的に)セーフ!」 「よようじょヨッ!」 メイドカフェ店員兼リベリスタという妙にメンタルの高そうな女子ことフレンドリ・ファイアさんが、モヒカンとトゲ肩パットのフィクサード『ペンギンさんちーむ』に取り囲まれていた。 よく分からない踊りで周りをぐるぐる回っているのだが、これがどういうわけか隙が無く、全くと言っていいほど手が出せないのだ。 「くう、こんなご主人様たちにサービスを休止させられてしまうなんて、メイドカフェ店員一生の不覚……!」 カービン銃片手にハンカチを噛むフレンドリ。 と、そこへ! 「おいたがすぎますな、おぼっちゃま方!」 チャーラッチャーという処刑用BGMと共に、なんか高いところから数人の男たちが現われた。太陽が逆光になってシルエットしか見えんが、だいたい四人くらいいた。スマートなのと、やせ形なのと、小柄なのと、屈強なの、計四人である。 「誰だァ!」 劇画調で天を仰ぎ見るペンギンさんちーむ。 どういう都合か、光の加減で一人ずつ姿が露わになっていく。 「俺の名は、謎執事アルフレッド。もしくはアルフレッド竜一」 っていうか竜一だった。執事っぽい服を着て、なぜか紙袋を被った男である。 ちなみに執事のイメージも『メイドさん』と一緒で、あんなタキシードとフロッグコートが悪魔合体したようなファンタジー衣装を着たりしないんだそうで、乙女がうっかり執事サービスとかを利用したら膝から崩れ落ちることうけあいである。変なシャツ着た小太りなおっさんとかが来るよ。 「俺は執事義弘。そのメイドさんと女児には手を出させん」 なんか危ない鈍器を担いだ『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)が鍛えた腕を見せつけてきた。 「え、これ名乗らなきゃいけない流れなの? ボクもやらなきゃいけないんですか!? はるとです、よろしくおねがいします!」 乙女ゲー(ギャルゲーの対義語みたいなやつ)でヒロイン男性を複数用意すると必ず一人は混ざるって言う、いわゆるひとつのショタ枠である。 っていうか『バイト君』宮部 春人(BNE004241)である。 年端もいかない男子に興奮するやつなんていないだろうと思うかもしれんが、世の中には割とガチでごろごろいるのだ。あさことか。 最後、トドメとばかりに(ほんとトドメとばかりに)ベースボールタイプのキャップを被った『まごころ宅急便』安西 郷(BNE002360)が、上腕二頭筋を晒しながら高らかに叫んだ。 「俺たちは愛と正義の宅急便……!」 「郷ちんそれ違う」 「俺たちは執事喫茶……郷と愉快な仲間たちだ!」 「おいまて誰がリーダーを名乗れと言った」 「そりゃあ依頼歴二年に達しようというのに未だにセンスフラグを解除しようとしない俺こと安西郷だろ」 「この際センスフラグは関係ない。ここは妹萌えと彼女萌えをデュアルブートし続ける俺が」 「黙っていろ、お前たちには任せておけん」 「ねえみんな落ち着いてくださいって、ボクがリーダーってことでいいですから」 急にもめ始める執事らしき一同。 ペンギンさんちーむがまだ終わんないのかなあって女児を肩車して帰ろうとした、まさにその時! シャキーンと足下に名刺的なヤツが突き刺さった。 「そこまでよ!」 「誰だっ!?」 お約束なのか何なのか、逆方向へカッと顔をあげる一同。 そこにはメイド服を着た何者かが……っていうかぶっちゃけ『中二病になりたがる』ヴィオレット トリシェ(BNE004353)がいた。どっかの非常階段の、それも一番高いところに上り、手すりに足をかけてガッと身体を乗り出した状態である。周囲のおっさんたちがパンツ見えないかなって想いながら一生懸命目を細めたりした。 メイドっていうかヴィオレットは、かつてない程のアニメ声を発した。しいなくらいのアニメ声だった。 「無垢な乙女の脇をむりやり貪ろうとは紳士道の風上にも置けませんわ、ご主人サマッ!」 『恋のピンポイントスペシャリティ』みたいなポーズである。多分一部の方々は先日大阪でお目にかかったかと思う。たぶん。 「よこしまなハートを打ち砕く、異世界メイド……ヴィオレッタ! もえもえー、きゅん!」 かつてない腰ふりとかつてない回転とかつてない背景効果とかつてないアニメ系BGMとかつてないウィンクをみせるヴィオレット。どんだけかつてないんじゃい。 それを見たフレンドリは、なんかちょっとシリアスな顔をした。 「異世界メイド……これはキてるわね……」 一方で、ヴィオレットに引っ張られてリリスが嫌々ながら顔を出した。 「え……魔法少女? メイド? わかんないけどぉ……リリスだよぉ」 「もうっ、リリスさんってば☆ ちゃんと自己紹介できないと、再教育しちゃうぞ☆」 リリスの鼻をちょんとつつくヴィオレット。お前誰だよ。 とかなんとか。 勢いでわーっと登場しちゃったけれど、ぺんぎんさんちーむの方はどうしたらいいんだか分かんなくなったようで、『どうする?』『女児連れ帰ってプリキュアみせて帰らせる?』とかひそひそ話し始めたりしたのだが……。 「隙あり!」 それまで控えていたのかなんなのか。 四条・理央(BNE000319)がダイブ。女児を掴んでスカイハイした。 「女児くん、素直にいうことをきいてね!」 「フフ、大人はこれだから困る。たとえ女児相手であろうとも要求には対価が必要だとおもわんかね?」 「えい魔眼」 「はうあっ」 どこで覚えたのかしらんような口答えを(無駄にニヒルな顔で)したので魔眼で黙らせる里央。微妙に使い方間違ってるが、そんなの今はどうでもよかった。気にしてる場合じゃ無かった。 「女児が連れ去られたぞ!」 「クッ、俺たちの女児が!」 「大体最初から掴んでたのになぜ都合良く手放した!」 「だってそういう雰囲気だったじゃん!」 無意味な喧嘩をしつつ、女児を取り返せとばかりに追いかけるモヒカンたち。 そんなモヒカンの群衆をすすっと反対側から通り抜けるリコルがいた。もうリコルって言っちゃったけど、『レディースメイド』リコル・ツァーネ(BNE004260)である。 なんか、ミリィ系トムソン女子のメイドなんだそうで、他のメンバーに比べてやけに服を着こなしていた。ちょっと時代は古くなるが、海外転勤とかで『メイドつきペンション』みたいなのに滞在するとさりげなくついていたりするような、ほんとさりげないメイド服である。使用人と称した方が適切なくらいだった。 が、彼女の実力はマジだった。どのくらいマジかっていうと、何もせずに通り過ぎただけと思っていたモヒカンたちからモヒカン部分をカットしてしまうくらいのすごさだった。 「ナニイイイイイイ!? 俺のモヒカンが!?」 「これから俺たちを文中でなんと表現すればいいんだ!?」 「あのメイド、ひでぇことしやがる! モブキャラに名前なんてないんだぞ!」 ぱちんと鉄扇を叩き鳴らすリコル。 「普段ならば他人事でしたが、これもメイドのよしみ。さあ、まずは安全なところまでさがるのです、フレンドリ・ファイア様!」 「フフ、舐めて貰ってはこまります。メイドカフェ店員たるもの……お会計を済ませていないお客様を放って逃げるなど! あとここで逃げるともう描写を貰えない確信がある!」 「そんな確信をしなくとも……」 「ククク、ここで逃げておけば良かったと後悔することになるぞ……?」 にやりと笑うモヒカン……じゃなくて、こう、ハゲの集団。 「まずは貴様らを血祭りにあげたのち近くのガストに流れてドリンクバーだけで五時間過ごすプレッシャーに耐える刑にしてやる!」 「長いよっ!」 「ぶべらっ!?」 明後日の方向から、なんかハニワが飛んできた。側頭部にくらい、もんどりうって倒れるハゲ。 くるくるまわって戻ってきたハニワをキャッチして、『◆』×『★』ヘーベル・バックハウス(BNE004424)がびしっと……こう、びしっと、キメたかんじのポーズをとった。どんなポーズかは知らない。 「なんで女の子にいじわるするのっ。脇に顔をうずめたら、くすぐったいでしょ!」 「おのれ年齢二桁台の老婆めが! 帰ってウゴウゴルーガでも見ていろ!」 「ひぃっ! 十歳なのに老婆って言われた! こ、こわ……っ」 ぷるぷる震え始めるヘーベル。真のペドフィリア(この場合ロリコンとは言わない)は十歳を上回ったらもう興味が無くなったりするものなのだ。ド変態だね! 「え、と……ごめんなさい」 素直に頭を下げてみるヘーベル。 ハゲどもは『お話になりませんなあ』みたいな顔をして肩をすくめやがった。 「ハッ、第二次成長期に入った惰肉など目にも入れたくないわ。帰れ帰れぇい!」 「いやまて……俺はアリだと思う」 「正気か山田!?」 トゲ肩パッドにハゲの男こと山田(今名前が判明した)が、そっと手を上げた。 「よく考えろ。この神秘業界、小学生が『生きる意味』とか『効率』とか『世界の崩壊』とか言っている世の中だ。本当なら男子が『うんこ』だけでゲラゲラ笑っている筈の歳だというのに……そんな汚れ無き幼さを見捨て、大人にこびるような目をしたロリ画像に、俺たちは満足しようとしているんじゃないのか?」 「くっ……」 痛いところを突かれたみたいな顔をするハゲども。別に何もいいことは言っていない。 なのにハゲたちは『高校生の時点で既にロリコンだったウラベ君は今どうしているだろう』とか、なんか自分を省みるような顔をしていた。 そこへつけいる(つけいる)ヘーベル。 「おじさんたち、ダメなんだよ。女の子が嫌がってたよ。お願いして、いいよって言って貰ってからやろうね」 「わかった、わかったよ……」 夜明けのような顔をするハゲども。 そしてヘーベルの肩をがっしりと掴むと。 「今から脇を五時間ほどペロペロさせてくださぁぁぁぁぁぁぁぁい!」 「キャァーーーーーーーーーーー!」 ヘーベルは、予想の斜め上(もしくは下)の方向で男たちを食い止めたのだった。 一方その頃。 「あのね、ここは危ないから、もう離れてくれないかな」 「フフ、小娘はこれだから困る。人にお願いをするときは財布か股を開きなさいと教わらなかったのかねンッンー?」 「えい魔眼」 「はうあっ!」 結界はってるっつーのに離れようとしない野次馬根性のあるパンピー(一般ピープルの略)どもに、おまわりさんの力を使って(具体的にはお巡りさんを操って)帰していく理央。もしかして今更なのかもしれないが、女児かっさらうのに魔眼いらなかったんじゃなかろうか。なんかこう、女児がさっきから『おねえちゃん、わたし、わたし何をしたらいいの!? ねえ何をしたらいいの!? 命令してよ! 言いつけてよ!』とかヤンデレみたいな発狂ぶりを見せているし。理央は理央でなんか面倒になってきて『帰れ』とか言ってみるし。 「ハッ、今アピールしないと今後一切描写が貰えない気がする!」 電波的なものを受け取りつつ、漫画の大写しにも耐えうるようなポーズをとるフレンドリ。 そんな彼女を放置して、義弘はハゲどもの群れへと突っ込んでいた。 「俺は狭気の盾。名前に恥じないだけのことはやるつもりだ」 「くっ、この期に及んでシリアスな空気を出しやがって! 序盤でハゲにされた俺たちの気持ちがわかるかってんだ!」 エイヤーとかいって飛びかかるハゲどもを、ばったばったと無双していく。 もうちょっとした義弘無双だった。 「くっ、ここまでとは……リーダー! どうしましょうリーダー!」 振り向くと、リーダーの元モヒカンは海老反りしていた。 正確に言うと、うつぶせ状態からリコルにキャメルクラッチされていた。尚、片手でキャクラしつつ空いた手でギガスマ(ギガントスマッシュ)するという、鬼畜のような有様である。 「あの髪型もペンギンのようで愛らしゅうございますが、もう少し鏡とご相談なさい」 「イヤァー、やめて、こわれちゃうー、そんなにしたら、ペンギンの脇腹こわれちゃうー!」 「リ、リーダー!」 「観念するんだな。ここからは俺たちリベリスタがいかに強いかを見せるためのプロモーションシーンにさせてもらう!」 片足をあげたままスススーっと接近してきた郷が『ソニキッソニキッ、ソニッキッ、ソニックキィィィック!』と弱弱強キックからの逆波動キックコマンドみたいな連撃を入れたい放題していた。 「それに今回俺は『フレンドリさんとよろしくやる』というプレイングを書いている。今回こそは期待が持てる!」 「おいそれ、いかがわしい意味にしか聞こえんぞ」 「身体目当てはご遠慮くださいご主人様!」 「ちがっ、や、違うんだフレンドリさん!」 「あと彼氏いるんで」 「あ彼氏いるんだ」 一気にクールダウンする郷。片足のままスススーっと後退し、そのまま帰る準備を始めた。 必至に引き留める春人。 「ちょっと待って、帰ろうとしないでください! 避難誘導手伝ってください! この人たち、なんか知らないけど全然帰る気を見せないんです!」 「へえ、ダンプとかで突っ込んだら逃げるんじゃない?」 「シャレにならないですからそれ!」 変なメイドと執事が肩パッドのハゲどもと乱闘しているぞと、なんかおっさんたちがぞろぞろやってきて、中には外国人観光客が『オー、メイドー』とか言って手を振ってくる始末である。 「くっ、これだからアニメで日本を知った外国人は……!」 「みんなーにげてー! 逃げてくださいー! っていうか結界はってるのになんでグイグイくるんですか!?」 「そりゃあ、嫌な気持ちよりもみたい気持ちが勝るからだろう」 そうこうしている間にも、リリスが『エル・バーストブレイクぅー』とかいってハゲどもにメテオの悲劇をもたらしているので、ハゲどもことぺんぎんさんちーむはもう壊滅寸前だったりもした。 「じゃあついでに、エル・フリーズぅー」 「いやあああ寒いいいいいい! クリスマス前になって独り身だと知ったときのイルミネーション通りくらいに寒いいいいいい!」 膝から崩れ落ちていくハゲども。 そんな彼らに、ヴィオレットは慈母のごとき笑みで囁きかけた。 「女児の脇にこだわるのは、他の脇を知らないからではないかしら。だから……そう、恥ずかしいけれど、私の脇で目を覚ましなさ」 「帰れババア」 ペッとつばを吐き捨てながら言うハゲ。 ヴィオレットは右手をチョキにして。 「暗黒目つぶし!」 「はぎゃあ!?」 もんどりうって転がるハゲども。 と、そこへ。 「フ……どうやら、敵は片づいたようだな」 泡吹いて気絶しているリーダーその他を横目に、竜一(全裸)は蝶ネクタイの位置を直した。 「これがあるからこそ、俺は執事でいられる……」 「ねえ、ちょっとキミ」 魔眼されたおまわりさんが竜一(全裸)の肩を叩いた。 無表情で振り返る竜一(全裸)。 そして、頭に被っていた紙袋をそっと外した。 「最低限、えっちな水着を装備していると言ったな。だが……腰に装備していると、いつから錯覚していた?」 そして竜一は今日一番のリンチにあった。 後に、この事件は『紙袋ストリーキング降下事件』として広く一般に伝わり、リベリスタとフィクサードの戦闘は全くと言っていいほど噂のベースに乗らなかったという。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|