● 静寂に包まれている夜の河川敷。 聞こえるのは静かに水が流れゆく音だけであった。 しかし、そこへ異変が起きた。 突然水面が揺れる。姿を現わしたのは巨大な黒い影。 「ゴォォォォォォォォォォォォ……!」 現れたものはその鎌首を擡げて辺りをねめ回す。目に入ったのは、遠くに存在する街の灯かり。 壊そう 影の頭の中に浮かんだのは極めて単純なイメージ。 潰し、喰らい、蹂躙する。極めて単純で原始的なものである。しかし、影は自分がそれを実行できるだけの力を持っていることを知っていた。 だから、影は――全身を氷のような角質に包んだ巨大な亀は――ゆっくりゆっくりと歩を進めるのだった。 ● 次第に暖かくなってきた4月のある日。リベリスタ達はアークのブリーフィングルームに集められる。部屋には先に見慣れない少女の姿があった。長く尖った耳を見るに、フュリエなのだろう。ペコリと頭を下げてくる。その後は、内気な性格なのか下を俯いて、黙ってしまった。 それから暫くして、人数が揃ったのを確認すると、『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)は説明を始めた。 「これで全員揃ったようだな、それじゃ説明するぜ。今回みんなにお願いしたいのは、Eビーストの討伐だ。それと+αのお願いもある」 守生が端末を操作すると、三高平郊外にある水辺の一角が表示される。ターゲットのエリューション・ビーストはここに現れるのだという。元々、三高平はナイトメア・ダウンの影響もあって、エリューション事件の発生率が高い土地だ。加えて、ここ最近の情勢を鑑みれば、致し方無いところであると言えよう。 「現れたのはフェイズ2、戦士級のエリューション・ビースト。川に棲んでいた亀がエリューション化したものだな。こいつが市内に入ってくる前にケリを付けてくれ。よろしく頼む」 エリューションの姿をスクリーンに表示させる守生。そこに映っているのは、大きさが3メートル近い亀だ。体に角を生やしており、ところどころ硬質化している。まるで、怪獣映画にでも出てきそうな雰囲気だ。 「見た目通りで回避はほとんどしないが、防御力は割と高めだ。攻撃力も高いし、部下もいる。だけど、硬質化していない箇所の防御力は低い。その辺の隙も上手く突いてくれ」 このエリューションは夜半、人気の無い河川敷に姿を見せるのだという。放置して市内に被害を出すわけにはいかない。 「じゃ、ここからは+αのお話だ。よろしく頼むぜ」 そこまで話してから、守生は部屋の中にいるフュリエの少女――『風に乗って』ゼフィ・ティエラス(nBNE000260)――を促した。すると、少女は顔を真っ赤にして立ち上がり、口早に自己紹介をした。 「は、はい……! ラルーカナから来た、ゼ、ゼフィです! よろしくお願いしま……す」 所々舌を噛みながらの自己紹介を終えると、ゼフィは再び俯いたまま椅子に座ってしまった。緊張のせいか言い間違いもあった。かなり内気な性格らしい。 その様子にため息をつくと、守生は説明を引き継ぐ。 「ま、そういうことだ。ラ・ル・カーナから来たフュリエの1人で、今回から戦闘に参加してもらうことになった。ただ、割と人見知りな性質だから気を付けてやってくれ」 お前が言うなという視線を受けながら説明する守生。 「それと、自分がどうやって戦っていけば良いのかもちょっと悩んでいるらしい。もし良ければ、アドバイスしてやって欲しい」 ミステランとしての能力だけだったら良かったのだろうが、ボトムチャンネルに存在するスキルの数を見て理解が追いついていないようだ。たしかにそれなら、経験のあるリベリスタの意見をもらいたいというのもごもっともな話だ。 「説明はこんな所だ」 少年が説明を終えると、三度少女は立ち上がると腕を大きく振り上げて叫ぶ。 フィアキィも派手に舞う。 「皆さん、よろしくお願いします! 無事に帰りましょう!」 そこまで言って、ゼフィはやっぱり顔を真っ赤にして座り込んでしまった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年04月22日(月)23:03 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● ザバーン 盛大な水飛沫と共に、その巨体が姿を現わす。そのエリューションは周囲を見渡す。妙な気配を感じたからだ。だが、それもわずかな間のこと。勘違いだったかと再び歩み始める。 しかし、その前へ1つの影が立ち塞がる。 今度は断じて、見間違いなどではない。 「ニンジャである拙者としては、「タートル」というワードに妙な親しみがあるのだが、街を壊そうというのなら話は別。ここを通すわけにはいかぬでゴザル!」 紅いマフラーをたなびかせ、エリューションの前に立ち塞がるのは、『ニンジャウォーリアー』ジョニー・オートン(BNE003528)。ニンジャとして修行を積む、リベリスタの1人だ。 弧を描くように腕を回し、気を練るとその身は金剛の如き硬さを帯びる。 「聞くに、かなりの防御力を誇るというが、拙者の拳はそれを貫く! 相手にとって不足なし! いざ参る!」 そして、ジョニーは身を躍らせると、自身よりも強大なエリューションへと向かっていくのだった。 「ジョニーのヤツに面倒な役目押し付けている以上、さっさとやる事やって応援に駆けつけるっすよ」 『LowGear』フラウ・リード(BNE003909)が大地を蹴ると、その直後にはもう巨大なエリューションの近くを護るようにうろつくトカゲに肉薄していた。 「時よ凍れ、お前は何よりも美しいから……なんて、トカゲ相手に言う台詞じゃないっすね?」 さらに、一瞬目を放すと、フラウの姿はトカゲの後ろにある。まさしく、時すら刻みかねない速度に翻弄されるトカゲ。そして、現れた氷刃の霧によって、彼らの姿は凍り付いていく。 「亀かあ……もともと住んでたのか、捨てられたのか……」 わずかばかりエリューションの出所に想いを馳せて、『本屋』六・七(BNE003009)は唸ってしまう。 「何にせよ、街を守る為にもきっちり始末をつけておかないとね」 しかし、容赦するつもりも無い。この先にあるのは三高平。自分達の住む町であり、神秘に関わってしまった者達が、自分達の正体を憚る事無く生きていける、数少ない土地なのだ。 七の両手に握られるのは、毒と薬の名を冠する鋼鉄の爪。パッと見には分かりづらい大きさでしかないが、威力は十分。 足早にトカゲに接近すると、軽やかにステップを振るう。それは月下に煌めく殺戮の舞踏。 その舞が終わると、トカゲ達は派手に血飛沫を上げる。 「さぁさぁ、爬虫類と両生類は別物デスヨ? 何仲良くお供感覚で同行してるデス?」 七とタイミングを同じくして、『飛常識』歪崎・行方(BNE001422)もゴシックなドレス姿で勢いよく突っ込んでいく。奇しくもその両手には得物を握り、トカゲに戦いを挑んでいる。しかし、戦い方は異なっていた。 行方が持つのは肉切り包丁。 速さと鋭さで皮を斬るような生半可な攻撃は趣味じゃない。 速さと重さで骨ごと砕くのが信条である。 その破壊力を前にして、爬虫類に頭を垂れるような両生類如き、耐えられようはずもない。 トカゲの1匹はミンチよりもひどい死骸を晒す羽目になる。 「ムッ……これは……!?」 その時、亀と戦うジョニーにも変化が起きた。 見れば巨大エリューションと戦うジョニーの腹から盛大に血が流れている。直撃を受けたようだ。サングラスのために表情を窺い知ることは出来ないが、流れる血は尋常なものではない。 「大丈夫です、安心して下さい」 その怪我を見て、『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)は祈りを捧げる。祈りを捧げる先は上位世界の何処かにいる「神」と呼ばれるもの。願う奇跡は癒し。 並みの術者であれば、代償となる精神力だけで疲弊してしまうだろう大魔術。 しかし、カルナはその力すら制御して見せる。 すると、ジョニーの周りをにわかに光が包む。そして、光が収まると、傷は癒えていた。 「その攻撃力はやはり厄介ですね。今度こそ確実に止めさせてもらいます」 エリューションの攻撃力を見て、『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネット(BNE002439)はほんの一瞬、眉を顰める。しかし、驚くには値しない。状況は概ね計算通りに進んでいる。相手は予定よりも賢しい動きを見せたが、大きく想定を逸脱はしていない。 「ゴォォォォォォォ! ……!?」 エリューションがその巨体を利用して、ジョニーを踏みつぶそうとした時、レイチェルはスッと糸を手繰るような仕草を見せる。すると、いつの間にやらエリューションの身体を気糸が拘束していた。彼女があらかじめ配置しておいた罠だ。先はトカゲの妨害を受けたが、今度はそうは行かない。 そして、そこでふっとわずかばかり表情を緩め、横にいるフュリエの少女に目をやる。 「ゼフィさん……緊張するな、と言っても無理でしょうけど。この場には私達が居ます。良くも悪くも、貴女が何かしたら、何かしなきゃ負ける、って事はありません」 「そ、そう、ですよね」 今回、ボトムでの初陣を経験することになったゼフィの肩には相変わらず力がこもっており、緊張が抜けていないのが丸分かりだ。実戦が始まったために、感情を上手く制御できていないというのもあるのだろう。 その姿に自分が初めて戦場に立った日のことを思い出すレイチェル。 「一度深呼吸して、ちょっとリラックスしていきましょう」 「皆強いから大丈夫! わたしも最初は怖かったけどね……落ち着いていけば大丈夫です」 『ゲーマー人生』アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)も笑顔でガッツポーズを取る。 しかし、その一方でも手元で踊る気糸の狙いは精確極まりない。 アーリィの方がゼフィよりも幼い訳だが、彼女とて「極東の空白地域」に押し寄せてきた様々な災厄と戦ってきたリベリスタの1人なのだ。戦闘のキャリアは勝っているのである。 「はい……分かりました……!」 レイチェルとアーリィのアドバイスで冷静さを取り戻したゼフィは弓に矢を番えると、トカゲ達に向かって撃ち出す。 矢の弾幕を前に怯むトカゲ達。 そして、その隙を『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)を見逃さない。 「市内に入られると厄介だからな。その前に食い止める!」 「龍牙」を構えて両腕をクロスさせると、疾風はトカゲ達の中を疾風は突き進んでいく。 目にも止まらぬ電光石火の早業で矢継ぎ早にトカゲを切り裂き、その神速の演武が終わった時、トカゲ達は纏めて爆発するのであった。 ● 時はわずかばかり遡る。 アークの用意した移動用車両の中で、リベリスタ達に簡単な講義を行っていた。 生徒であるところのゼフィはブリーフィングルームの時と同様に、ガチガチの姿勢だ。 そんな彼女の姿に笑いながら、フラウは手を叩く。 「ハイハイ、そんな緊張してたらコレからモタナイっすよ? 此処に居る連中は変なヤツが多いっすけど、悪い連中は居ないっすから」 「は、はい、すいません」 「まったく戦えないわけではないデスシ、異世界と違う個性多彩な面子との共同任務に慣れてもらうのをメインに考えるデスヨ」 行方はどことなく面倒くさげな雰囲気を漂わせている。依頼によるエリューション退治だけでも面倒なのに、教導と言う余計な任務まで請け負ってしまったからだ。今、彼女の頭の中では、ここで教導をきちんと行う手間と、そのことで後々省ける手間、どちらが重いのかが秤にかかっているのだろう。 「わたしも初めてのときは不安もあったよ、でも、皆がいるから大丈夫」 優しく元気づけるのは七。彼女は知っている。この世界から逸れてしまった箱舟には、同じ逸れ者を放っておけない者達が揃っているのだ。 「ゼフィさんにとっては異世界での戦いになるわけだし、余計に不安かも知れないけど……自分がこれからどう動きたいのとか、見つけられる切っ掛けになると良いんだけどな」 「そう……ですね」 そしてそんな中、疾風が講師となって短い「授業」が始まった。 「ミステランのスキルはバランスが良いからね。変にあちこちに手を伸ばす必要は無いと思うよ」 リベリスタの家系に生まれ長年戦う中で、疾風が培ってきた経験は少なくない。また、新たに発見された戦闘技術の分析は、戦士にとっては嗜みのようなものである。 ゼフィはそんな講義を真剣に聞き入っていた。 「後は……暗所の対策はしておいた方が良いかもね。夜間の戦闘は多いから」 「そう言えば、こちらでは月が1つしか無いんですね」 「まぁね。良ければこれ、使う? 三高平アクションクラブで取り扱ってるんだ」 疾風が取りだしたのは、特撮変身ヒーロー風のベルト。バックル部分がサーチライトになっていて、周囲を照らせるようになっている。それに倣って、アーリィも自分が持っている懐中電灯を差し出した。 「良ければコレも使ってね……? わたしは暗視あるから平気だよ」 「本当ですか? ありがとうございます」 素直に喜んで装備・試着してみるゼフィ。元々、現代離れした格好なので、意外と様にはなっている。 そんな姿を見て、カルナは嬉しそうに微笑む。どうやら、次第に緊張も解けてきたようだ。たしかに、自主的にボトムチャンネルにやって来たとは言え、慣れない多人数と一緒に行動するというのは、中々に緊張を強いる状況だ。 「それでは、ゼフィーさん。今日は一緒に頑張りましょうね」 「はい、よろしくお願いします」 カルナが微笑みを向けると、ゼフィも笑顔を返してくれた。 実戦が始まっても平静を保っていられるかはともかく、これなら安心できる。 「まずは自分のスタイルをどうするか、ですね。同じプロアデプトでもアーリィさんと私。結構違うでしょう?」 次に講師を引き継いだのはレイチェルだ。 そう、彼女の言う通り、リベリスタは同じジョブであっても10人いれば10通りの戦い方があるのだ。自分の生き方を決められるのは自分だけ。他人の戦い方を参考に出来ることはあっても、やはり自分で決断しなくてはいけないのだ。 それは完全世界から降り立ったゼフィにとっては、必ず通らなくてはいけない道なのだろう。 「皆それぞれ自分を持ってスタイルを掴んでるデス。戦いは教えてあげるデスカラ、スタイルは他人を頼らず自分で見つけるデスヨ。アハ」 「どう戦いたいか。今日の私達の動きを参考に、じっくり考えてみてくださいね」 どちらに歩け、とは言わない。 ただ、歩き方を教えるのが、リベリスタの選んだやり方だ。 いつの間にやら、ちゃっかり行方も混ざっていた。 「そう言えば、ジョニーさんからは何か?」 「拙者はヒュリエという種族や、ミシュランというジョブについてはよく分からぬ故、拙者から具体的なアドバイスはできぬ」 カルナの問いに、ジョニーは背を向けたまま答える。 ゼフィは少々残念そうだ。 「だが、1つだけ言えることがある」 そして、そんな彼女の反応を知ってか知らずか、ジョニーはゆっくりと口を開いた。 「己の力を信じよ」 ● 「ゴォォォォォォォォォォ!」 エリューションが怒りの咆哮を上げる。 既に全身を気糸が拘束し、自由は奪われている。この神秘の糸は細く見えるが、この上なく靭やかに出来ている。エリューションが如何に怪力を旨としようとも、引きちぎることなど出来はしない。 下僕であるトカゲを盾代わりに利用して凌ごうとするも限界がある。そもそも生き残っているものにも限りは有るのだ。 そして、わずかに自由を得て、氷の息による反撃を試みたわけだが…… 「私達は私達で初心を忘れずに頑張らないといけませんね」 「この程度、なんともないよ!」 カルナとアーリィ、それぞれに上位世界からの力を癒しに変える術式で怪我を回復していってしまう。 春を思わせる暖かな風と優しい音色、その前に冬の帳の如き吐息は駆逐されていってしまう。 「んじゃ、後輩も居るっすからカッコいいトコ魅せてさっさと終らせるっすよ!」 「ニンジャアーツに貫けぬもの無し!」 「亀は硬そうだが打つ手が無いわけじゃない!」 そして、万全に勝利を固めて、リベリスタ達は猛然とエリューションへと攻撃を仕掛ける。 刃が閃き、拳が叩きつけられる。 「やっぱり、今ひとつかな? 見るからに硬そうだもんね、亀さん……だったら、これはどうかな?」 七はちょっとだけ困った顔をした後に、ニンマリと笑う。悪戯を思いついた子供のような表情だ。その子供の手の中からカードが飛び出す。 現れたカードの群れは七の周りを派手に回り、エリューションへと飛び込んでいった。エリューションは痛苦に呻くが、カードは動きを止めない。死神の顔を見せて、運命を削り取っていく。 カードの嵐が晴れると、今度は月を背負って、行方が斬りかかる。 「のろまな亀はひっくり返って途方にでも暮れればいいデス! アハハハハ!」 たしかにこのエリューションは丈夫だ。真っ当に攻撃をした場合、ゼフィの攻撃ではどうにもならなかっただろう。しかし、行方は破壊の剣たるデュランダルだ。 ガキンと固いものがぶつかり合う音が戦場に響く。 しかし、勝ったのは行方が握る肉包丁だ。彼女にとって三高平は、自分が主役を務める都市伝説の舞台。それをこんな三下の怪物に譲ってやる言われはない。ましてや、壊すことにかけては、自分のほうが先輩である。 「ゴォォォォォォォォォォ!」 今度の叫びは、明らかに苦しみが混じっている。 タフなエリューションにも限界が近づいているのだ。そして、窮鼠猫を噛む勢いで暴れようとする。しかし、やはりレイチェルの仕掛ける罠からの脱出は叶わない。 その姿を見ながら、レイチェルは心の中で呟く。 (彼女に何を伝えられるか、何を感じ取ってもらえるか。先輩としての頑張りどころですね) 自分のスタイルを掴む苦労の後にやってくるのは、スタイルを貫く難しさだ。だが、それを後輩の前で見せる訳にはいかない。自分のスタイルを貫いている姿を見せなくてはいけない。 それは拳を振るうジョニーも同じだ。 先ほどから、戦闘が始まった時から、ジョニーは怯むことなく拳を叩きつけている。彼の言葉を借りるなら、「それしか出来ないから」ということになる。 ジョニー自身、「それしか出来ない」自分に苛立ちを感じるときもある。 それでも、自分が戦うことで仲間が最大限に力を発揮できると信じている。 「己の力を……信じよ……」 そんなジョニーの後ろ姿を見て、ゼフィが先ほどの彼の言葉を繰り返す。 1つ1つは小さな力でも、仲間とならば、大きな力への礎となるのだ。 そして、事実ジョニーの拳は着実にエリューションの生命力を奪っていた。 「一度倒れたなら、また立ち上がるまでよ!」 ジョニーの拳がエリューションの体を揺るがせる。 その時、フラウがエリューションの角質の隙間に刃を差し込む。 エリューションは死の間際に力を振り絞り、フラウだけでも道連れにと牙を伸ばす。 すると、エリューションの視界は真っ二つにずれていく。 「!?」 エリューションが自分の頭部が断ち切られていたことに気付くのは、命の炎が燃え尽きる数瞬前だった。 フラウはエリューションが動かなくなったことを確認すると、刃を鞘に収める。 「ノロマが。壊そうって思うなら壊される覚悟もしておく事っすね」 ● 戦いが終わった後で、ジョニーはエリューション達へと黙祷を捧げていた。 強制進化を遂げなければ、彼らが死ぬ必要はなかった。人間の科学がもたらしたものでないとは言え、街の平和のために命を奪った責任を取らなくてはいけない。 一方、フラウは既に戦闘のテンションから普段のテンションへと切り替えていた。こういう時の切り替えも早い。そして、ゼフィに問いかける。 「ゼフィは今回の戦いで何が必要だって感じた? 何をしたいって思った? 結局はソレの積み重ねなんだよ、うち等は」 その言葉に、ボトムへと降り立った異世界の少女はしばし逡巡する。 「まだ何が出来るかわかりません……だけど……」 しかし、その末に得たものを口にする。 「だけど、皆さんの支援がしたいです。皆さんが思う存分、戦えるように」 ゼフィの言葉を聞いて、フラウは朗らかな笑顔を作る。先のエリューションに見せたような、酷薄な笑みではない。友人に向ける、心からの笑顔だ。 「今回ソレが見つかったんなら上出来だ。宜しく頼むっすよ、戦友?」 フラウはばーんとゼフィの背中を叩くと、アークの本部へと歩き始めた。 信じられる、仲間と共に。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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