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桜祭

●春、うらら
「桜の咲く公園で、お祭りがあるみたいなんです」
 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう言って、印刷された用紙を差し出した。
 幾人かには見覚えのある地図や名前が、紙の上に記されている。
「昨年もお誘いさせて頂いたんですが、ちょうどこれから桜が満開になるみたいで」
 たくさんの桜の木が植えられたある公園で、一週間ほど桜祭りと呼ばれる花見のお祭りが開かれるのだそうだ。

「いろいろ出店というか屋台みたいなのとかもたくさん出て、すごく賑やかなんです」
 やきそば、たこやき、お好み焼き、わたがし、型抜き、射的、チョコバナナ、りんご飴。
「おでんとかラーメンとか、そういう系の屋台もあるみたいですね」
 もちろん桜の咲き乱れる公園内もステキですよと微笑んで、少女は説明を続けてゆく。
 橋が架かっていてボートにも乗れる池やせせらぎの聞こえる小川もある広い公園は、昼間は普通に花見ができる他、夜にはライトアップされて幻想的な光景が広がるそうだ。
「夜はちょっと寒いかもしれませんけど、昼とは違う風景を楽しめると思います」
 また、この時期だけは場所は決められているがカセットコンロ等で鍋をしたりとかもOKらしい。

「いろいろありましたし……ちょっと息を抜く、というのも良いのではと思いまして」
 にぎやかに、あるいは穏やかに。楽しく。
「良かったら、みなさんもいかがですか?」
 マルガレーテはそう言って、プリントを手渡しながら微笑んだ。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:メロス  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年04月11日(木)00:27
●このシナリオはイベントシナリオになります。
イベントシナリオについては本部利用マニュアルなどを御参照下さい。

オープニングを読んで頂きありがとうございます。
メロスと申します。
今回は桜を見ながら楽しく飲食したり、はしゃいだり、のんびり過ごしたりしませんかというお誘いになります。
場所や雰囲気が気になる方は、宜しければ自分のシナリオ『さくら日和』を御参照下さい(タイトル異なりますが、同じお祭りです)


●桜祭り会場
池や小川なども作られた広い公園内に沢山の桜が植えられており、屋台なども沢山出ています。
照明が用意されており夜になると桜がライトアップされます。
火の取り扱い等も許可されているようで鍋等、可能です。

●備考
・多数の方が参加された場合、内容を絞ったプレイングをかける事をお勧めします。
・特定の誰かと絡みたい場合は『時村沙織 (nBNE000500)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。
・グループでの参加の場合(絡みたい場合)は参加者全員【グループ名】というタグをプレイングに用意するようにして下さい。
(タグで括っている場合は個別のフルネームをIDつきで書く必要はありません)
・NPCに話しかける場合、ID等は必要ありません。

マルガレーテは桜を見たりしながら会場をうろついてます。
他、ヤミィやシロ、アークの他のリベリスタたちや三高平市に住んでいるアーク協力者の一般の人とかもちょこちょこ参加してます。
御希望の方はそういった参加者と絡む描写をさせて頂きます。
(シロはR・ストマックをセットしているらしいです)
特に何事もなければ、賑わっているという背景描写以外では登場しません。


それでは、興味を持って頂けましたら。
どうぞ宜しくお願いします。

参加NPC
マルガレーテ・マクスウェル (nBNE000216)
 


■メイン参加者 52人■
インヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
マグメイガス
二階堂 杏子(BNE000447)
スターサジタリー
ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)
ホーリーメイガス
シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)
クロスイージス
ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)
スターサジタリー
リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)
クロスイージス
祭 義弘(BNE000763)
ソードミラージュ
上沢 翔太(BNE000943)
ナイトクリーク
五十嵐 真独楽(BNE000967)
インヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
スターサジタリー
桐月院・七海(BNE001250)
デュランダル
七篠 小夜子(BNE001512)
クロスイージス
ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
マグメイガス
シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)
覇界闘士
宮部乃宮 火車(BNE001845)
ナイトクリーク
黒部 幸成(BNE002032)
スターサジタリー
雑賀 木蓮(BNE002229)
スターサジタリー
ルヴィア・マグノリア・リーリフローラ(BNE002446)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
デュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
覇界闘士
李 腕鍛(BNE002775)
マグメイガス
ラヴィアン・リファール(BNE002787)
スターサジタリー
雑賀 龍治(BNE002797)
インヤンマスター
冷泉・咲夜(BNE003164)
ナイトクリーク
柊暮・日響(BNE003235)
クロスイージス
日野原 M 祥子(BNE003389)
ダークナイト
皐月丸 禍津(BNE003414)
ダークナイト
滝川 宗兵衛(BNE003506)
ダークナイト
フランシスカ・バーナード・ヘリックス(BNE003537)
ソードミラージュ
カルラ・シュトロゼック(BNE003655)
インヤンマスター
式乃谷・バッドコック・雅(BNE003754)
レイザータクト
伊呂波 壱和(BNE003773)
ダークナイト
紅先 由良(BNE003827)
レイザータクト
ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)
マグメイガス
シェリー・D・モーガン(BNE003862)
覇界闘士
アリア・オブ・バッテンベルグ(BNE003918)
ナイトクリーク
鳳 黎子(BNE003921)
ダークナイト
街多米 生佐目(BNE004013)
覇界闘士
喜多川・旭(BNE004015)
ダークナイト
新谷 優衣(BNE004274)
ナイトクリーク
浅葱 琥珀(BNE004276)
ナイトクリーク
衣通姫・霧音(BNE004298)
ナイトクリーク
纏向 瑞樹(BNE004308)
プロアデプト
久坂 一海(BNE004321)
ミステラン
ヘンリエッタ・マリア(BNE004330)
ミステラン
ルナ・グランツ(BNE004339)
ミステラン
エフェメラ・ノイン(BNE004345)
マグメイガス
フィリス・エウレア・ドラクリア(BNE004456)


●花見日和
 お弁当は、男の人が多いから……簡単だけど量が用意できるものを。
 お握り、から揚げ、卵焼き、などなど。
 飲物の方は……
「サイダーにコーラ、あとはお茶があればいいよね」
 用意したものを確認しながら瑞樹は呟いた。
 お酒は何がいいか分からないから、成人組にお任せにする。
(色々とカタもついたし、羽休めにも丁度良いわね)
「思い切り楽しみましょう」
 雅は瑞樹が弁当を用意してくれると聞いて、取り皿やブルーシートといったその他の物を用意した。
「ま、地べたでもいいけどさ、気にする人もいるかもしんないし」
 一方で祥子は瑞樹の話を聞いてそれならばと、お酒のおつまみになるようなお弁当を用意してみた。
 1段目は、焼肉とツナマヨの細巻き。
 2段目は枝豆、だし巻き卵焼き、ローストビーフ、キュウリの漬物、スモークサーモン、チーズも数種。
 3段目は、デザートの桜餅。
 対してお弁当とか苦手な壱也は、たくさんのお菓子を買ってきてある。
「そして女子大好きななんとかドーナツ!」
(大きな戦いも終わったし、みんなでゆっくりお花見だー!)
「たくさん食べよ!」
 そう言って壱也は零れんばかりの笑顔で買ってきた品々を皆に見せた。
「三高平全体での戦いは皆お疲れさま」
 翔太の言葉に義弘も頷く。
 平穏無事にとは言えないし、物的被害も、人的被害も数えきれないくらいだ。
 それでも……
「今はこの時を楽しみたいと思う」
 優希も、静かに頷いてみせた。
(楽団との決戦では皆の世話になった)
 感謝をこめて酌をしたい。
(とは言え酒の飲める奴は少ないな)
「サイダーでも酌めばいいだろうか?」
 そう考え、優希は仲間たちの器に飲物を注ぎながら……振り返った。
 皆の団結力、熱い想いに感動した。
 翔太とツァインの、熱い友情に感謝している。
 祥子と祭と白ヴィンの力強い戦いに、後押しされた。
 黒ヴィンも斜堂も桐月院も街多米もウラジミールも……
(頼もしい戦い振りが流石であった)
 雅もフツも、よくモーゼスを倒して戻ってきてくれた。
(瑞樹も不慣れな戦場を良く立ち回ったものだ)
「お疲れ様であったな」
 飲物を注ぎ、視線を桜に向け……想いを重ねる。
(日常を取り戻すことができたぞ、大和)
「安心してくれているだろうか?」
「別の戦場にいましたが報告書格好良かったですよ」
 七海が仲間たちと語り合う。
「もう春だな」
 言いながらウラジミールは、皆の様子に気を配った。
(今回の戦いで『ありふれた日常』の者達の中には心に何かを負ったモノもおおい)
 思い返すこともあるだろうが、前に進めるようにそっと励ませれば、アドバイスを行えれば……
「余り気落ちしているのは似合わないだろう」
 そんな風に思うのだ。
 桜を見て散歩をして、ゆっくりとした時間を過ごす。
 それだけでも、色々と変わる事だろう。

「そんじゃマッキー、乾杯の音頭お願いしますっ
 ツァインは皆の器が満たされたのを確認すると、呼び掛けた。
「はーい! それじゃあ、いっぱい食べて、いっぱい飲んで! しっかり英気を養ってね!」
 促された瑞樹が、器を掲げて声を掛ける。
「かんぱ~い!」
「かんぱーい! 今日は楽しみましょう!」
「みんなお疲れ様、かんぱーい!」
 応えるように雅と壱也が声をかけ合い、合わせるようにして翔太が、皆が、乾杯と器を掲げた。
「……帰ってきたんだな」
 弁当に箸を伸ばし、桜を眺めながら……優希は呟く。
 乾杯が終われば、後は自由。
 労いや感謝を込めて、雅は皆にお酌にと回りはじめた。
 義弘はふたりが作った弁当に舌鼓を打ちながら、桜を肴にのんびりとビールを飲み、たまに日本酒を味わってゆく。
 酔わない程度にと意識して。
「未成年もいるし他のグループもいますからお酒はほどほどにですよね」
 七海も呟いてから、ここはビールよりもと器に日本酒を満たした。
「しかし桜が綺麗だ……」
(そして豪華な手作り弁当)
「これは良い」
 見事な肴が揃っている。
 祥子は甘めの缶入りのカクテルをもらって、義弘の隣で少しずつ味わう。
「まぁ祭さんも呑め呑めっ、花見してる祭さん、これがホントの桜祭っ! なんつて!」
「酔っぱらって周りに迷惑かける酒飲みには魔落の鉄槌という名の拳骨を落としたくなるよな?」
「酔ってないよ、ソフトドリンクだもの!」
 ツァインと義弘のそんな会話を耳にしながら、雅は折角だしと皆に声をかけた。
(仲いい人と一緒にいるのもいいけど、あんまり知らない人と喋るのも面白いしね)
「皆十分盛り上がってるようだなぁ」
 そう感じつつ、翔太は食べ物の方へ。
「お、これうめぇなぁ! お、こっちもいける!」
 食べながら壱也に食ってるかと声をかける。
 壱也は答えてから、優希のお皿に山盛りにしながら笑顔でハナウタ。
「ほむほむにはドーナツいっぱいあげようね~」
「っていうか、約一名ほどお酒飲んでんじゃないのってノリの人間がいるけど、大丈夫かツァイン」
「酔ってないよ、ソフトドリンクだもの!(2回目)」
「ソレ本当にソフトドリンクなのか?」
「つーくんソフトドリンクで酔ってる?」
 雅が問い、壱也も尋ねて。
「酔ってないよ、ソフトドリンクだもの!(3回目)」
 大丈夫だ、問題ない。
 大丈夫じゃない、問題だ。

「フッさん、式乃谷! なんか芸無いのかっ、インヤンって色々出来そうだし!」
「あたし隠し芸とかやんないわよ! そーいう面白インヤンはフツに任せる!」
「えっ! なになに? 隠しゲイ大会? うっひゃあ! テンションあがりますうー!!」
「芸だな、任せろ! 1番、焦燥院フツ! 髪を生やします!」
「え? 違う?」
 雅と壱也の言葉が交わされる中、フツはこっそり集めておいた大量の桜の花びらを頭からかぶった。
 ノリを塗っておいた頭に次々と花びらが貼り付いて。
「どう、このピンク色の髪。ピンクはインヤン!」
(からの~)
「極縛陣で、桜の花びらが落ちるのを遅くしまーす!」
 言いつつ、スキル使うわけにいかないからと両手に持ったうちわで、舞う桜を下から一生懸命扇ぎ始める。
 当然無理なワケで、途中で力尽きるワケで……
「次は任せた!」
 力尽きたところで、注いでもらったジュースを飲んで一息。
「後は式乃谷とか、後に続く人が皆の心をアッパーユアハート(芸)してくれるはずなので、オレは飲んだり食べたりするヨ」
「何もないわよ!」
「今日は集まってくれてありがとう子猫ちゃんたち……」
 雅が叫んだところで、服と鬘を着て顔を色黒に……NOBUの物真似をしたツァインが登場した。
「とびっきりのSpring Song……お前に届けるから……」
 でも、歌う前に一つ言わせてくれ。
「……NOBUと影継って……似てね? Lets GO!」
 後は適当に鼻歌しながらエアギターという感じのツァインを見てる間に。
「へっへーん! しょーたんの食べてるものをいただきっ!」
「ちょっとまて、そのデザートは俺にもくれ!」
 壱也が翔太の取り皿の上のブツをさらってゆく。
「祥子さんのお弁当むしゃむしゃ、おいしい!!」
(おいしいもの食べてテンションあがってきたー!!)
「3番はしばいちや、うたいま~す!!!」
 いえーーいとマイクを取ってから。
「あ、からあげおいといてねー!!」

 ハンカチを取り出したウラジミールは、握った手にそれを押し込んでいく。
 広げれば、そこにあるのは一輪の華。
「何! あのウラジさんが芸……だとッ?」
「軍でも宴会芸の披露というものがあるからな」
 ツァインの驚きに、ウラジミールはいつものような調子で淡々と。
 祥子の方は、ちょっと酔っぱらってるせいか、何だかおかしそうに笑っていた。
 翔太は見学しながら、声をあげたり手を叩いたりして盛り上げる。
「七さんも呑んでるか~ッ!」
 元のテンションに戻ったツァインが、隠し芸を見学する七海に声を掛ければ。
「呼ばれた? いやそんなはずはない。あっお酒が入ってないじゃないですか、ささどうぞ」
 言いながら( ˘ω˘)スヤァ……しつつ七海はバトルレコードを使用。
「……あ、もう聞こえてないか~! ヒャッヒャッヒャッ!」
 そんな調子のツァインが記録される事だろう。
 お酒の人のお酌をした後はのんびりしていた祥子も、笑って、お腹もいっぱいになって。
 まぶたが重くなって……義弘に少し寄り掛かるようにして、桜を眺めた。
「また来年も、みんなで来れるといいな」
 義弘は頷きながら、空になった容器や使い終えた取皿などをまとめておく。
 誰かが言っていた。
「祭りの後はやる前よりも綺麗にしなきゃならないらしいしな」
 呟きつつ……寄り掛る祥子を見て、帰りは送り届けないと……と考える。
「しかしまぁ、今この場に居る皆が生きていて良かったよ」
 本当にな。
 翔太はしんみりと呟いてから、表情を戻した。
「さぁ、まだまだ花見は続く! 楽しくいこう」
 空いている仲間の器に飲物を注ぐ。
 ツァインを始めとしたMGKの皆に、遊びに来てくれるフツやウラジミールに。
 そして、雅や優希に。
 面と向かって、は恥ずかしいから。
 瑞樹はそっと、囁くように……礼を言った。
「ありがとね」
 祭りは、まだまだ……続きそうだ。


●ずっとずっと
「一人で食べるより美味しく感じるのはどうしてだろうな?」
 行き掛けにわたがしを買って、皆で食べあいながら……雷音は呟いた。
 友情というエッセンスがそこにあるから。
 そう思う。
 ヤミィがあーんと差し出した一口をほお張れば、わたがしは口の中で雪のようにとけてゆく。
 マルガレーテは、どうぶつか何かの形に整えようとしているらしかった。
「あたしピンクのいちご色の所が良いのです」
 なんとなくいちごの味がするのです。
「ほんとですよ? みんなもピンクな所を食べてみると良いですよ」
 そあらが笑顔でみなに勧める。
 どこかわたがしのような、ふわふわな雰囲気を漂わせながら。
「みんなで食べると美味しいのです」
 そう言って見上げて……桜きれいなのですと、そあらは呟いた。
 雷音も空を見上げてから、ももいろの桜の花びらをいちまいにまいと……自分たちの数だけ集め始める。
「小さいハートみたいな形なのです」
 そんな感想を、そあらが零した。
 薄いピンクは優しくて、暖かい気持ちと同じ色。
「お守りにすると優しい気持ちは忘れないのです」
「押し花にして栞にするのだ」
 雷音は説明した。
 皆で一緒にもっていると、この優しい春を思い出せる。
 そんな風に思えたのだ。
「……変だろうか?」
 辛く厳しい戦いの後だからこそ、笑顔で優しい思い出を作らないと折れてしまいそうだから。
 ヤミィが雷音を、きゅーっとだきしめる。
「また、一緒に桜をみにこよう。ボクは一番桜がすきなんだ」
「来年も皆で一緒にこの桜の下でわたがしを食べるのです」
 そあらが笑顔で約束した。
「再来年もその次の年もずっと!」


●傾杯の時
「お前さんから誘ってくれるなんざ、どーいう心境の変化かね?」
「たまにはこんな趣向もいいでしょう?」
 ルヴィアの言葉に杏子はそう答えた。
 屋台で購入した食べ物と持参した御重を広げ、日本酒の瓶を手にルヴィアへと微笑む。
「……んー、久しぶりに見る桜はやっぱいいもんだ!」
 ぐっと背伸びをしてから、ルヴィアは傍らの杏子へと視線を戻した。
「ま、オレは楽しけりゃそれで十分だがな」
 桜の季節といえば、やはりお花見。
(折角ですから、ルヴィアさんと一緒に花見酒と洒落込みましょう)
「日本独自のイベントですよね、お花見って」
「まー他の国じゃこーんなのんびり出来ねぇわ」
 杏子の言葉にルヴィアが頷く。
「あ、その御重はお姉様からの差し入れですわ」
「おぉ、マジでー。ねーさん料理美味いもんなー」
 嬉しそうにルヴィアがお重を開ける。
 ルヴィアにお酌をしつつ、杏子もゆっくりとお酒を楽しむ。
「んー騒がしいのも楽しいが、こういう趣向もまた一興」
「すぐに慌しくなりますからね、のんびり出来るのも今の内ですよ?」
 そう言ってから、ふと気になり。
 杏子は小首を傾げ、ルヴィアに尋ねた。
「それとも、ルヴィアさんは慌しいほうがお好きかしら?」
「それはそれで、楽しめるからまた良し」
 そんな答えが返り、杏子の器に酒が注がれる。
「ほれほれ飲んだ飲んだ! まだいけんだろー?」
 どうせバロックナイツだのエリューションだので騒がしくなんだろうさ。
 そんな言葉に、杏子は苦笑いして。
 食事を楽しみながら、ふたりは器を傾け合った。


●屋台の風景
「お祭りと聞いて即参上だぜ!」
(全部のお店の食べ物を1品ずつ食べてやる)
「おっちゃん、ワタアメ一つ。でっかいので!」
 ラヴィアンは手始めにと、ワタアメの屋台を訪れた。
 日本の食べ物はマジ美味いけど、お祭りの屋台はその中でも別格だ。
(わたあめ、ヤキソバ、リンゴ飴……どれもこれも素晴らしい食べ物だぜ)
 お祭りを開く理由になってくれた桜にゃ感謝。
「でも俺は見て楽しむよりも食べて楽しむ派だぜ!」
 今日の目標は、屋台の全制覇だ。

 購うのは普段見かけないものたち。
 いかやき、りんごあめ、ちょこばなな。
「……ふふ、どれも美味しい」
 昼、さくらたちの声に耳を傾けながら屋台を回っていたヘンリエッタは、一つの店で足を止めた。
(おや、ここは何の屋台だろう)
「……あめざいく……へぇ……器用なものだね」
 屋台のひとに声を掛け、気になることは聞いてみる。
(あのあめがあんな風に伸びたりもするんだ)
「あぁ、溶かすんだ。それなら熱いだろう」
 時を忘れ、少女は次々生まれる細工の鳥や動物を興味深く眺めてから。
「オレにもひとつお願い出来るかな」
 桜の枝か……難しければ、春の鳥を。
 記念に飾っておくんだと言えば、食べてやらねば可哀そうだと言いつつ店主は桜の枝を仕上げ、手渡した。
 ありがとう。
 礼を言い、ヘンリエッタは飴細工を受け取った。
「キミもさくらを、春をどうか楽しんで」


●想いのカタチ
「これがサクラ……!」
「おや、リリ殿はサクラを見たのは初めてでござるか?」
「実物を見たのは初めてです……圧倒されます」
 凄いですね、綺麗ですね! ね!
 子供のようにはしゃぐリリの姿を見て、腕鍛は何とも快い気持ちを味わった。
「綺麗でござるなぁ……」
(桜吹雪の中のはしゃぐリリ殿が……)
「……にはははははっ。いやぁ、我ながら臭い事いっちゃったでござるな」
 改めて後で言おうと決意する。
 ふたりはお花見をする為、一緒に公園を訪れていた。
「日本には、サクラを見ながら食べたり飲んだりする習慣があるのですよね」
「おっ手作り弁当でござるか?」
 頷いて、リリは作ってきたお弁当を広げてみせる。
 最近猛練習しているからあげに、おにぎりと卵焼き。
 お浸しとプチトマトで彩りも添えて。
「からあげ以外、特に卵焼きはまだまだですが……」
「いやいや、嬉しいでござるよ。どれもおいしそうでござるなぁ」
 笑顔で応えつつ……
(どうせならあーんってしてもらいたいでござるから……)
 ここはリリ殿が動くギリギリまで待って?
(……いやいや、恥ずかしがらずに潔く頼んで)
 この間、実際は短かったものの、腕鍛の様子にリリは小首を傾げ考えて込んで……
(……もしかして……あれを、すべきは今でしょうか?)
 思い至った瞬間、赤面しそうになったものの……勇気をふりしぼる。
「あ、あーん、して下さい……!」
 腕鍛は喜んで、あーんと口をあける。
「サクラが綺麗なのもありますが、貴方と一緒に食べるご飯はとても美味しいのです」
「料理にこれって形はないでござるよ。愛に形がないのが同じでござる」
「そうですよね、愛に形は無いものです」
 腕鍛が笑顔で言えば、リリも笑顔で頷いた。
「まだまだありますから、どんどん食べて下さいね」


●シカとワンコとオオカミと
「こないだやっとチョビにお座りと待てを覚えさせたんだ」
 だから連れてきても落ち着いて花見が出来るはずだぜ!
 親指グッとしながら木蓮が断言した。
 足元では一頭のシベリアン・ハスキーが尻尾を揺らしながら2人を見上げている。
「花見には団子! って思ったんだけど、こないだ梅見行った時に食ったろ?」
 だから今日は、お弁当。
「もちろん龍治の分もな♪」
 そう言って龍治に弁当を手渡す。
「花の下で団子を食うのは何度行っても良いとは思うが、弁当作りに張り切っていたからな」
 そちらを楽しむとしよう。
 龍治は頷いて蓋を開けた。
 木蓮のは、おかかでモルが描かれた方。
 龍治のは、桜でんぶでハートと肉球が描かれた方。
「……しかし、ハートだのなんだのは、もう少し何とかならんか」
(嫌とまでは言わんが、こう、気恥ずかしい)
 こそばゆいけれど、嬉しく、何より暖かい。
 そうやって、ふたりと一頭の花見が始まる。
「それにしても見事な桜だなぁ」
「うむ、咲き誇っている桜を見るのも良いが、散りゆく桜というのもまた風情があって良いものだ」
 見上げる2人の周囲にも、静かに花びらが舞い降りて。
「……Σあっ!」
 一欠片が龍治の耳へひらりと入ってゆくのを木蓮は目撃した。
「あわあわわっ、落ち着くのだぜ、すぐ取るから!」
 耳がむずっとしたと龍治が感じた次の瞬間、すぽっと木蓮の指が入ってくる。
「や、やめんか!」
「お、おわー! 遊んでるんじゃないぞ」
 事情が分からず抵抗する龍治に慌てて言うものの、じゃれあっていると見たのかチョビも尻尾を揺らしながら飛びついてくる。
「チョビも落ち着けー!」
「ええい、お前も落ち着け!」
(……全く、飼い主とよく似た奴だ……)
 そう思いながら、ぎこちなく撫でれば。
 チョビは嬉しそうに尻尾を揺らし、武骨な手をぺろぺろとなめた。


●繋ぐキモチ
「綺麗だなー、桜は日本の春の醍醐味だね!」
 チャキチャキ歩いていたらフィリスがいなかった。
 琥珀は後ろを振り返り、迷子になってないかーと声を掛ける。
「……お前が何かに夢中になったら人様を放ったらかしにする薄情な男なのはよ~く分かった」
 責める様な口調で恨めしそうに言いながら、フィリスは琥珀に合流した。
 捨てられた猫のような目で睨んでる。
(これは不味い)
「ごめんごめん、一人取り残すとは紳士失格だなぁ~」
 琥珀は言いながら屋台に目を付けた。
「ふふ、冗談だ。お互いが楽しまねば、つまらないからな……とはいえ、次はもう置いていかないでくれよ」
 そこまで言って、少女は琥珀の視線を追いかける。
 一本ゲットした琥珀が、購入したものをフィリスに手渡す。
「リンゴ飴という奴か? そうか……謝罪の証として有難く受け取ってやるぞ」
 笑みを浮かべ、飴を受け取り……美味しいな、と一口。
(リンゴ飴を持つフィリスも、普段とギャップがあって可愛いなー)
 目の前の光景に、琥珀はにこにこの笑顔になった。
(社交パーティーとは真逆ともいえるこういう場は新鮮だろ)
「……ほ、ほら、何をしている。浅葱、ぼけっとするな、手を貸せ……」
 フィリスが頬を紅くて、顔を背けつつ手を差し出す。
「そうか、繋ぎたいのか」
「べ、別にお前と手を繋ぎたいんじゃないぞ。また置いていかれたら困るだろう?」
(本当に猫みたいだな、可愛い奴め)
 そんな気持ちを抱きながら。
 琥珀はぎゅっと手を握り、嬉しそうに笑顔を返した。
「ああ、そうだな。ちゃんと手を繋いでいれば、もう逸れることはないな!」


●日向のまどろみ
 ベビーカステラ、苺飴、ポップコーン……それと、
「お花見ならお団子を欠かしては片手落ちも良い所よね」
 ミュゼーヌが笑顔で旭に語った。
「私、みたらし団子が好きだわ」
「フルーツ飴の屋台に苺飴あるかな」
 旭も笑顔で語り、屋台を見回す。
 ふわふわ綿飴やカスタードの鯛焼き、チョコバナナ。
 お祭りならではのスイーツに目移り。
 全部食べたいけど、おなかと相談。
「ふふ、今日はいっぱい食べましょう」
「そだ。ね、ミュゼーヌさん」
 旭はミュゼーヌの言葉に頷いてから、考えた。
(はんぶんこすればいろいろ食べれるよねぇ)
「いっしょにたべよ? スイーツ制覇するの!」
 そうと決まれば、いっぱい買い込む。
「もちろんお団子も! わたしはお花見団子にしよー」
 屋台をいっぱい、いろいろ巡って。

 ベンチに腰掛け戦利品を広げ、ふたりはラムネで乾杯した。
 あーんと差し出し合いながら、言葉を交わし、桜を眺めて……のんびりとした、お花見が始まる。
「さくら、きれーだねぇ」
 お話しながらもぐもぐし、花も団子もたのしみながら。
 旭の言葉にミュゼーヌはあいづちを打った。
 満開の桜を眺めて、今年も春が訪れたんだな……と実感する。
 ぽかぽかした陽気でうとうとして……
「……ちょっとだけ眠っても良いわよね?」
 その言葉に、旭も頷いた。
「寄り添って寝ちゃってもいーかも」
(だってあったかいんだもん)
「ぽかぽかー」
 旭はミュゼーヌに寄り添うようにして、束の間、まどろみの世界へと旅立った。


●屋台無双
「アリアは日本にきてから楽しみにしていたことがいくつかあるのだ」
 そのうちの一つが桜!!
(去年は桜が終わってから来たので今年が初めての桜なのだ!!)
「竜一が連れて行ってくれると言うので、存分に楽しむのだ!!」
「お兄ちゃんとして俺にはアリアたんを可愛がる義務と権利があるんだ!」
 そんな訳で、アリアと竜一は一緒に屋台を回っていた。
 移動は常に肩車!
「桜を間近に見られるようにね!」
「わーい! 竜一が肩車してくれてるおかげで、アリアでも桜に届くのだ!!」
(こんな間近で見れるのはすごく嬉しい!! でも、折らないように気をつけなければっ)
「落ちないようにしっかりつかまっているんだ!」
「うむ、大丈夫だ! ちゃんと捕まっているぞ!」
「さあ、何を食べたい! たこ焼き? チョコバナナ? りんご飴とかかな?」
「りんご飴? なんなのだそれは!」
「俺は焼きトウモロコシ食うけど」
 言いつつ竜一が、もっしゃもっしゃと食べ始める。
「うめえ、あまじょっぺえ」
「全部、全部食べるのだ!! トウモロコシも食べる!」
「よしよし、アリアたんもたくさん食べて大きくなるんだぞ、はい、あーん!」
「うむ、あーん!」
 そうやってトウモロコシを食べて。
「もう、頬にチョコついてるゾ」
「うん? すまない、ありがとうなのだ」
「もっとワガママ言ってくれてもかまわないからねー!」
「じゃあ次はあの焼きそばと言うものが食べたいぞ!」
 ふたりはまだ、登り始めたばかりだ!
 屋台坂という、果てしない坂を!!


●想い出の彼方
「いやー見事ですねえ。ここ数年海外で過ごしていた私ですが、やっぱり桜を見ると春がきたって感じがしますよう」
 出店を回りながら黎子が嬉しそうに口にする。
(……そういや海外に居てたんだっけか)
「まぁ何処行っても 桜は春の代名詞ってか?」
 たずねつつ、火車は後に続いた。
(しっかし……歳不相応のヤンチャだなコイツ)
「フラフラと……何処行くんだ?」
 彼の問いに答えず、りんご飴をかじりつつ……彼女はやがて、小川へと到達した。
「なんとここは火を使ってもいいそうですよ。やりましたね!」
「やりましたね! ……ってもなぁ」
(別に焼くもんねぇしそういう催しじゃねぇしそして何よりも……)
「使っていいのは火であって……コンロとかそういうんだろ?」
「宮部乃宮さんの事ですから焚き火を……しないのですか!?」
(コイツ……っ!)
「人をなんだと思ってんだ!」
 そんなやり取りの後、黎子は小川に視線を向けた。
「地元では川沿いに桜並木とかあったりしましてねー、夜中に夜桜見に行ったりしたものです。中学二年生ごろに」
(中二っスか……そりゃ大層な患いで)
「今も大差ねぇじゃんよ」
 それには何も言わず、黎子は問いかけた。
「宮部乃宮さんは花見に何か思い出とかあります?」
「……オメェアークの資料漁ってからオレに会ってんなら、大体知ってんじゃねぇのか?」
「……それもそうですよね。つい」
 そんな彼女の反応に、少し……バツの悪さのようなものを感じて、火車は頭をかく。
「花見の思い出ねぇ……悪い思い出じゃねぇがココじゃどーもなぁ」
「ですが……良ければそういう話も宮部乃宮さんの口から聞きたいです」
 そう言われて、また少し考え込んで……火車は何となしに視線を向け呟いた。
「んじゃあ ちょいあっち行くかぁ」


●逆十字の許で
 禍津はずっと、そわそわしていた。
 顔には出さないが、騎士団の皆と花見ができることが嬉しいのである。
 ただ、素直になれない。
 それで隠している……と本人は思っている。
「まがちゃんのデレ期か。まがーーん」
 実際は、こうだが。
 ちなみに呟いたのは宗兵衛である。
「折角だから、ゆっくりするわ」
 そのまま彼は、そう続けた。
 メンバーの目印は、まがちゃん人形。
「皐月丸禍津の名の下に、我ら集わん」
「というかなぜ皆我の人形を持っているのだ!!!」
 生佐目の言葉に続くようにして禍津のツッコミが入るが、宗兵衛は既に場所選びに入っている。
「ここが会場か。綺麗に咲いてるじゃねえか。屋台も色々と出てるしな! 何処で桜見るよ?」
 桜がよく見えそうな場所を探し、どの辺が良いか相談し、決まったブルーシートを地面に敷いて。
「いわゆる『まがっちゃんを弄る会』……いえ、冗談です」
 フランシスカが呟くなか、宗兵衛は、ジュースや茶、酒類等の用意した品々をシートの上に広げていった。
「宴会になっていく時点で、桜もただの呑み口実だよな」
 言いながらカルラも弁当を広げていく。
 弁当作成を請け負った以上、それなりのものは用意しなければと考えた。
 リクエストはきんぴらごぼうと玉子焼きだったから、和風だよなと判断。
 細かな好みは聞いてなかったから、あとは好きに作ったという感じである。
 七味とごま油で、香ばしく辛めに仕上げたきんぴらごぼう。
 薄めの出汁でやや甘めに、ふわりとさせた玉子焼き。
 お弁当の定番、しっかり二度揚げでからりとした一口サイズの唐揚げ。
 食べやすくして野菜もしっかりと、と……各種野菜スティックのベーコン巻き。
 ご飯は食べやすく俵型の小さめなおにぎりにし、汁物もあったほうがいいだろうかと豚汁を用意した。
 あと、お茶も。
 とはいえ飲物の方は由良の方でも色々準備していた。
 飲めない人たちのために、ソフトドリンクが沢山。
「お酒が呑める人は居るのかしら」
 ビールと焼酎と日本酒も、並べられる。

 そして、花見が始まった。
「きんぴらごぼう!」
 こう言うのがいいんですよ、こう言うのが。
 そんな事を言いながら、生佐目が箸を伸ばす。
「そのまぁ、そう、歯ごたえ、が」
「あ、これおいしいねー。そいえばさ、珍しいね。禍津が遊びにいこうなんてさ」
 同じようにお弁当をつつきながら、フランシスカが視線を向けた。
「ま、楽しめるんだったらそれはそれでオッケーだけどさ」
 言ってからすぐ、まあいいかという感じでそう続ける。
 そんな風景を眺めながら、由良は杯を傾けた。
「みんなで見る花の綺麗さ、みんなで食べる料理の美味しさ……」
(うーん、格別ですわ!)
「あ、お酒を呑もうとしてる人には御酌しようかしら」
「あ、アルコールは飲まぬ。アルコールは脳細胞を破壊するからな。な!? 我は決して酒が弱いわけではないぞ!!」
 由良の言葉に、禍津が慌ててそう断言する。
 ちなみに、めちゃくちゃ弱いらしい。
「なませるなぁ! むぐぅ! ごくっ」
 という状況が早速発生したにもかかわらず、フランシスカはのんびりとその光景や頭上の花々を眺めて……
「桜綺麗だよねー」
(……木の下に死体が埋まってるって本当かしら)
「あ、屋台もあるんだよねー。何か買ってこようか?」
 思った事は口にせずに、視界の片隅に映った出店のことで尋ねた時には時には、すでに宗兵衛がダッシュしていた。
 弁当は美味しかった。
 美味しかった、が。
「美味いが物足りん。折角だから屋台行って来るぜ! ヒャッハー!」
 あほ毛をびくんびくさせながら、自称大ふへん者が駆けてゆく。
 カルラの方はというと……既に寝ていた。
(ここまで用意すれば俺の仕事は十分だろう)
「後は桜眺めつつ休むくらいだ」
 そう言ってから、のんびり花見をしているようだったが……気付いたら、寝息を立てている。
 色々と大変だったのかもしれない。
「さて周囲が盛り上がってきたら」
(1名出店にダッシュ、1名熟睡)
 生佐目は、まがちゃんブロマイドを酔っ払っている人間に売りつけようとする。
 値段は四桁で。
 ちなみに酔っぱらってるのは禍津さんだけでした。
 能力で調べようとしたものの、前後不覚になるくらい泥酔しているという事しか分からない。
 そんな状態で、宗兵衛が戦利品を抱えて帰還した。
 イカ焼き、たこ焼き、フランクフルト等々、正に花より団子状態という言葉が相応しい。
「色々ばたばたしてるけどさ」
 そこからも、一行の雰囲気は変わらなかった。
 そんな光景を眺めながら、フランシスカがまた呟く。
「またこうしてみんなで遊びにこれるといいよね」
「綺麗な桜だな」
 時が過ぎて少し落ち着いた様子の禍津は……最後にポツリと、呟いた。
「その……」

 ……ら、来年も来れたらいいな。


●桜祭の風景
 桜の木、根元を踏まれない為の境がある筈ですが、大丈夫でしょうか?
 ゴミ箱は綺麗でしょうか?

 シエルは公園の様子を見回っていた。
 皆が桜祭を楽しく過ごせるようにと考えての事である。
 けが人などがいたらと心配したものの、幸いそういった者は出ていないようだった。
 余裕もできたので、シエルは合間に桜を、その中で幸せそうに過ごす人々の姿を眺めながら……目を細めた。
「ふふ……人とは不思議なものですね」
 皆の楽しそうな様子を見ていると、自分の心まで温かくなっていくような、そんな気持ちになる。
 だから見回りや係員の手伝いは楽しかった。
「来年も綺麗な桜が咲きます様に……」
 静かに祈り、少女は公園の風景に瞳を向ける。

 桜と空が映り、花弁が浮かぶ池の近くで一緒にお花見しませんか?
 そんなメールを、亘はフォーチュナの少女に送ってみた。
 返事を待ちながら出店で綿菓子やりんご飴とお菓子系を買い、了解の返信の後、その量を増やす。
「静かに過ごす時間も素敵ですが、こんなにも綺麗に咲き誇る満開の桜を楽しまない訳にはいかないでしょう」
(今日という日を想いっきり楽しみましょう)
 姿が見えたら満面の笑みで手を振りながら、マルガレーテを出迎えて。
「ふふ、やっぱりこういう雰囲気はいいですよね」
 美しい桜を見て心を満たし、甘い物を一杯食べる。
「こんな日常を過ごせるって……本当に幸せですよね」
 繰り返すように口にする亘に、マルガレーテは静かに相槌を打つ。

「ケーキの時はありがとぉ。一緒に屋台で遊ぼ!」
 ヤミィと遊びに来たよ♪
 真独楽が笑顔で誘えば、ヤミィも笑顔で応えた。
 射的に型抜きと屋台を巡り……
(……わ、可愛いアクセサリーのお店もあるぅ)
「この桜模様のふわふわシュシュ、何だか今日にぴったりだね」
「こうゆうお店のあるんですね~」
「髪じゃなくって手首にしても可愛いよぉ」
 お揃いで買って、ヤミィにプレゼント!
 少女は驚いた顔をしたものの、嬉しそうに手に付けたり、様子を見る。
 しばらく遊び回って、お腹もすいて。
 ふたりは小川のそばに座ってお菓子を食べながら、のんびりお花見をし始めた。
 手作りの桜風味のクッキーと、緑茶だけ魔法瓶に持参して。
 あとのご飯は公園の雰囲気も楽しみながら、屋台で調達。
(桜の花びらが流れてくのがとってもキレイ)
「外で食べる屋台ごはんって、どーしてこんなおいしく感じるんだろぉ」
「これも、魔法みたいな感じですよね?」
 真独楽の言葉にヤミィはそう言って、笑顔を見せた。


●桜之縁
「今年も桜がキレイじゃのぅ」
 桜を眺めながら、咲夜は呟いた。
(昼の桜も夜の桜も、どちらも愛らしいが……)
「わしとしては、夜の方が好きかのぅ」
 夜に、咲く。
 それは、彼女の名と同じだ。
「こんな日は桜を愛でながらいい酒を飲むと気分がいい」
 一海は言いながら、用意してきた酒類を確認した。
 ビールにカクテルから日本酒までそこそこに持てる程度に……
(食べ物は誰か持ってきてるだろう、うん)
 いい花見日和だし、誘われてふらふらと。
(どんなメンバーで集まるかはあんまりわかってないが)
「一緒に楽しめる相手なら良いな」
 そう思う。
(ここ何年かはずっと一人でしたからそんな余裕もありませんでしたし)
「皆でお花見なんて凄く久しぶりで楽しみです」
 優衣も桜を眺めながら。作ってきたお弁当を広げていった。
(誰かに食べてもらったこともないので上手く出来ているかはわかりませんけど)
 ちょうどその時、片手に大きなお弁当を持って桜に見とれるように散歩していた小夜子が近くを通りかかった。
(周りが賑やか過ぎて全力迷子です……)
「ど、どーしよー……」
 きょろきょろする彼女に気付いた優衣が呟く。
「あら? あの子あんな所で一人でウロウロしてますけど、迷子でしょうか?」
 呟きを耳にした咲夜は首を傾げると呼びかけた。
「む……? このような場所でふらふらして、どうしたのじゃ、お嬢さん?」
 呼びかけにそちらを向いた小夜子は、2人と目が合って。
「こんにちはー! どうも迷子です!」
 内容にそぐわない位に元気よく挨拶する。
 それを聞いた3人は、改めて呼びかけた。
「せっかくだから同じように桜に誘われてきた奴だ、一緒にこの桜でも見て楽しめばいい」
「もし一人で来ていたなら一緒にどうですか? 人数が多いほうが楽しいですし」
 一海と優衣の言葉に、咲夜が頷く。
「少しばかりじゃが、桜餅と茶を持ち込んでおるで」
 爺で申し訳ないが花見を付き合ってくれんかのぅ?
「ありがとうございます! ご一緒します!」
 皆の言葉に、小夜子はふたたび元気よく返事をした。
 そうやって、4人の花見が始まる。
(美しい桜、両手に愛らしい嬢達、美味い桜餅……)
「うむ、今年の花見も最高にすてきな思い出になったのぅ」
 うんうんと頷きながら咲夜が呟く。
「桜も素敵ですけど、こうやってたくさんの人が楽しそうにしているのも含めて凄く素敵な光景だと思います」
 にぎわう公園を眺めながら、優衣も呟いた。
 これからはこういった時間も大切にしていきたい。
「……ですからその……また、ご一緒してくれますか?」
 少し口籠ってから、思い切るようにして。
 優衣は皆へと提案した。


●夜桜の杯
「忍たる者、昼に騒ぐよりは夜に静かに忍んで花を愛でるべし!」
 ケイオス戦の戦勝祝いと慰労を兼ねて。
 幸成は弟子の日響と花見に訪れていた。
「昼に見る桜も綺麗ですけど、夜の桜も幹が闇に溶け込むようで風流ですねえ……!」
 日響は昼か夜かで迷いはしたものの、師匠のアドバイスで夜桜を見ようと決めたようである。
「お師匠さま、ケイオス戦お疲れさまでした! 次に備えて今日はお祝いしつつゆっくり休みましょね」
「追撃戦の依頼がちらほら入ったりと、まだまだ予断は許さぬが……」
 ここでしかと英気を養い、来るべき次の戦に備えねば。
「ともあれ皆の無事と、先に逝かれた英霊達の魂に……」
「はいっ……」
 幸成に合わせるように日響も静かに杯を掲げる。
 先頃成人を迎えた幸成の杯には清酒が満たされているが、日響の方はソフトドリンク。

 提供:新田酒店
(誕生日の贈り物に感謝で御座る! ステマ! 致した!)
(うちも成人したらお世話なりますよ、新田酒店っ!)

「お酒飲めるやなんてお師匠さまはオトナです……!」
「慣れぬペースで飲み進めると酔い潰れそうでは御座るが」
(いざとなれば頼りになる自慢の愛弟子もいるしな)
「お師匠さまやったらきっと酔い潰れたりしませんよね! ……けどもし倒れたら、 膝枕しつつ救護班を待ちましょか」
「その膝を借りて横になればまあ大丈夫で御座ろう」
「お酒は時に忍すら惑わせる、て父上が言うとったんで!」
 日響が元気に、おべんともありますよと重箱を差し出す。
 ふたりは再び杯を満たすと、夜の桜たちを眺め……杯を傾けた。


●守る想い
 かるーく屋台を制覇したあと、一人静かな場所へ移り、僅かな光のランプと寝袋にくるまって。
 シェリーは満開の桜と夜空を楽しんでいた。
 去年の今頃は、こんな余裕はなかったと思い出す。
(なにせ、帰る家もなく体一つで路頭に迷っていたからな)
 僅かな食事もとれず、アークに来ていなければ死んでいたかもしれない。
「山篭りする知識はあっても、この体では限界があったからの」
 それを思えば、今はなんと幸せか。
「全てが誰かの為になるわけではない」
 シェリーは呟いた。
 罪のない誰かを不幸にしているかもしれない。
 それでも人と関わり、崩界を阻止するために生きている今の生活は嫌いではない。
 否、
「私にはこれしかない」
 そう思えるぐらいに、好きなのかもしれない。
「本当見事な桜じゃな」
 見上げ、シェリーはもう一度呟いた。


●夜桜の繋ぐもの
「お手伝い有難う」
「桜祭り楽しみにしてました。夜桜を見ながら交流と聞いて、ワクワクです」
 シュスタイナの言葉に、壱和は笑顔で応える。
 早めに来た壱和は挨拶を済ませた後、さっそくお手伝いという事でシュスタイナと一緒に花見の場所を探し始めた。
「せっかくの夜桜ですから、綺麗にみたいですよね」
 話ながらいくつか見て回り、選んだ場所に敷物を広げる。
 性別?
「……どちらでもいいけど、いつかこっそり教えてね?」
 準備をしながらそう言ったシュスタイナに、壱和はこっそり耳打ちして。
 暫し時が過ぎ、陽は暮れ始め……みなも次々訪れて。
 宴が始まる。
「シュスタイナです。皆シュスカって呼ぶわ」
 シュスタイナが先ずはと挨拶すれば、皆も次々と挨拶し始めた。
 皆と仲良くなりたい。
「年が近いみたいなので、お友達になれたら嬉しいのです」
 壱和は丁寧に挨拶してから、シュスタイナに笑顔を向ける。
「や、どうも、新田快です」
 よろしくと挨拶し、快はメンバーを見回した。
(シュスカさんと霧音さんは、本部とかで見かけたことはあるけど、こうして話をするのは初めてかな?)
「初めまして、かな。ベルカと言う」
(……そうか、シュスカだな)
「了解した、ではその様に呼ばせて貰おう。粋な催しに感謝する!」
 そう言ってベルカも笑顔で握手を交わす。
「改めて、自己紹介するわね。私は衣通姫霧音。霧音で良いわ……じゃ、これからはシュスカって呼ばせて貰うわね?」
 お友達になりましょう、と。霧音も微笑んで手を差し出した。
「そう言えば初めて会う子も居るのかな? 私はルナ、これでも皆より年上のお姉ちゃんなんだよ!」
 皆の挨拶に混じるようにして、ルナも改めて宜しくねと元気に挨拶する。
「えへへ、飛び入りになるけどお邪魔するねっ♪ エフェメラだよっ、よろしくねっ♪ エフィでもいいよっ!」
 エフェメラも笑顔で挨拶してから、咲き誇る桜たちに視線を向けた。
「サクラって綺麗な花だねっ」
(お昼のサクラも綺麗だけど、夜のサクラはなんか神秘的っ!)
 最後に、マルガレーテも丁寧に挨拶する。
「えっと。霧音さん、新田さん、ルナさん、ベルカさん、エフェメラさん……ね。マルガレーテさんも宜しく」
 笑顔で握手に応えながら、シュスタイナは嬉しそうに瞳を細めた。
 仲良くできる人が増えるのは、有難いし、喜ばしい事だ。
「快はこの間の戦いで会ったわね。その高名はかねがね。ルナも任務で一緒になったわ」
 霧音も皆に、順に挨拶していく。
「壱和にベルカ、エフェメラも。皆よろしくね?」
 皆がそれぞれ、挨拶を交わす。
「同志新田も居るな」
 ベルカは快を見てから、手荷物に視線を向けた。
「いや別に、実はひそかに新田酒店の新作が楽しみだった……とかそう言う事は全然無いのだぞ」
「お近づきの印って訳じゃないけど、飲み物を用意してきたよ」
 快はそう言って、持ってきた品々を敷物の上に広げた。
 桜の砂糖漬けで作ったシロップは、水や炭酸で割ればジュースになるし、お湯で割ればフレーバーティーになる。
 夜は冷えるから甘酒も。
「器に花びらを受けて飲めば、雰囲気出るかな」
 ちなみに自分用にはお酒を用意してきた。
 日本酒は、春霞を思わせる薄にごり。
「うむ、全くの事実無根で……やっぱ一口ください」
 ベルカの言葉に笑顔が浮かぶ。
「みんなで飲むなら、やっぱり食べ物あったほうがいいよねっ! 一応料理作ってきたんだっ。みんなで食べよっ♪」
 エフェメラもそう言って、持ってきた重箱を広げていった。
 今回は、少し勉強した和食に挑戦。
「煮しめや卵焼き、佃煮とか筑前煮なんかも頑張ってみたよっ! 気に入ってくれると良いなっ!」
「えーと、お酒に未成年者様にジュース。それにお弁当に……おつまみ?」
 ルナの方も首を傾げながら、用意してきたものを確認する。
「必要そうなモノを見繕ってきたけどこれで良かったのかな」
「お弁当も持って来ましたし、屋台もあるので食べ物は万全です」
 壱和が真面目そうな顔で頷いてみせた。
「と、兎に角っ! 皆こうして集まったわけだし、乾杯して始めちゃおうか」
 此処でお酒を飲めるのって私と快ちゃんだけ?
 そんなルナの問いに、成人が何人か手を挙げる。
 すぐ全員に、飲み物が行き渡って。
「それじゃ、カンパーイっ!」
 掛け声に合わせるように皆が器を掲げた。

 後は皆でワイワイと。
 持ち寄ってきたものを、飲んだり食べたり。
「美少女(?)に囲まれてなんて、ちょっと贅沢だな」
「こういう雰囲気で呑むお酒もおいしいねっ♪」
 快と同じようにお酒を飲みながら、エフェメラが笑顔で口にした。
(最近、お酒がはいると騒いじゃう事多かったしねっ)
 今日は大人しく、ゆっくり呑みたい。
 壱和もお弁当を広げながら、改めてシュスタイナを愛称で呼び、笑顔で言葉を交わす。
 夜桜を見ながら、新しい出会いに感謝をして。
 霧音も皆と共に、夜桜を楽しむ。
「器に桜の花びらが落ちる光景は、風情があっていいわよね」
 持ち寄ったものに箸を伸ばしながら……シュスタイナは、ゆっくりと桜を愛でた。
 夜の闇が暗い中に、ぼんやりと桜色が浮かび上がる。
「これもまた実に風情がある事だな」
「昼の桜は圧倒されるような美しさだけど、夜桜は夜空と桜のコントラストが印象的になるよね」
 ベルカの言葉に快が相槌をうち、器に春の霞を注ぐ。
「桜はどんな姿も好きだけれど、夜桜は一際美しいわ」
 霧音も静かに頷いてみせた。
 夜の闇に浮かび上がる桜の花。
「本当に綺麗」
 ためいきを零すように、呟く。
「こういうのも、素敵だなぁ……♪」
「明るいところで見る桜も良いけれど、こうやって夜に見る桜も趣があって良いよね!」
 瞳をキラキラさせながらエフェメラが呟き、ルナも元気に口にした。
(今までは一人で眺めていたけれど、こうして、誰かと見る桜も悪くないわね)
 そんな光景を瞳に収めながら、霧音は想いを馳せる。

 夜の桜は一人で見ると魅入られそうだけれど。
(今は、穏やかな気分)
 シュスタイナは、ちらと……お酒を飲む者たちへと視線を向けた。
 ちょっとだけ飲んでみたいと思うけど、きっと怒られてしまうだろう。
 あと、何年だろう?
 その時は、できたら……

 少女は器を傾けながら、夜を彩る花々へと再び瞳を向けた。




■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
御参加、ありがとうございました。
参加して良かった、好いひと時を過ごせた。
少しでもそう感じて頂けたら、嬉しいです。

それでは、また。
御縁ありましたら、どうぞ宜しくお願いします。