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風の巣

●風の巣
 まるで空そのものに、穴でもあいているかのようだった。
 白にも灰色にも見えるその小さな穴の周囲には、強い風が穴を包み込むように渦を巻いている。
 そして、穴からは絶えず風が吹き出していた。

 その風に惹かれでもするかのように、周囲には幾つもの小さな竜巻が存在している。
 それは、ただの自然現象では無かった。
 世界が傷付き、壊れ始めている証。
 世界を蝕む、崩界のカケラ。

 風は、一帯を包むように吹き荒れる。
 春の雰囲気を宿した、暖かさと湿気を含んだその風は……
 激しい吼えるような音と共に、辺りの草木を薙ぎ払い始めた。


●大地を引き裂くもの
「以前とは違う場所になるんですが、風のE・エレメントが出現しました」
 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう言ってスクリーンに画像を表示させた。
 付近に建物等が見当たらない森林の一角に、広場のような円形の空地ができあがっている。
 伐採された、という様子では無かった。
 空地には折れた樹木が幾本も転がり、地面も所々下生えの雑草もろとも抉られている。
 森が切り開かれた形で見通しは良くなっているかもしれないが、足場の方は悪くなっていると言えるだろう。
「出現したE・エレメント達の仕業です」
 フォーチュナの少女はそう言って、画像を拡大させた。
 空地の上空……と言っても地面から20m程度の高さだろうか?
 小さな竜巻のような何かが浮かんでいる。
 小さいとは言っても本来の竜巻に比べれば、である。
 高さや大きさは2~3m程度には大きかった。
 竜巻の中には、穴のような何かが存在しており、そこから風が吹き出している。
 その竜巻の周囲には、それよりさらに小さな……1m程度の大きさの竜巻が複数存在していた。
「こちらが今回出現したE・エレメント達になります」
 マルガレーテはそう言って、小さな竜巻の方から説明し始める。

「こちらのE・エレメントは全部で6体になります。すべて、フェーズ1です」
 普段は大きなE・エレメント、竜巻の周囲を回っているが、敵を発見すると近付いていって攻撃を開始するようだ。
「飛行能力は持っていますが、戦闘時は地上近くにおりて低空飛行で戦闘を行うようです」
 攻撃は竜巻の周囲に発生する風の刃による神秘系の単体近距離攻撃のみ。
「異常など特殊な効果はありませんが、動きの速さが刃の与えるダメージに加わるようですので油断は禁物です」
 動きも機敏で、攻撃を命中させたり敵からの攻撃を回避する能力もフェーズ1としては高めのようだ。
 攻撃力の方も速度が加わる為、決して低くはない。
「反面、防御力はかなり低めで、耐久力そのものもやや低めみたいです」
 E・エレメントたちは知性らしきものは殆んど持ってはいない。
 ただ、本能的なものなのか防御力が低めのものを狙う傾向があるようだ。
動き回りながら攻撃を行い、攻撃が効きそうなものを探すという感じらしい。
「ただ、ダメージが蓄積したり大型のエレメントが攻撃を受けると大型のエレメントの近くに戻る、という行動を取ります」

 大型のE・エレメントのフェーズは2で、数は1体のみ。
「こちらは殆んど動かず、E・エレメント達の力を強化したり傷を癒したりといった行動を取るようです」
 接近すれば近接攻撃も行ってくるが、回復や付与を優先して行動を行うようだ。
 ちなみに回復よりも付与を優先する傾向があるらしい。
 どちらも遠距離までの広い範囲に効果がある。
 回復は傷を癒すだけでなく、異常を解除する効果もあるようだ。
 付与の方は、命中や回避、速度の他、複数回行動する可能性を向上させる効果も持つようである。
「エリューションそのものは動きが機敏で2回の行動を行ってきます」
 速度や回避能力も高いし、フェーズ1のものと比べて防御力や耐久力も高いらしい。
「攻撃という面では大したことはありませんが、配下がいますので逆に難しい相手と言えるかもしれません」

 そう言って説明を終えると、マルガレーテは集まったリベリスタたちを見回して……短く口にした。
「戦場なども含め、色々不便な点もあるかと思います」
 どうか、充分にお気をつけて。
 そう言って少し不安げな顔をするフォーチュナに向かって、リベリスタ達は力強く頷いてみせた。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:メロス  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 6人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年03月30日(土)23:31
オープニングを読んで頂きありがとうございます。
メロスと申します。
今回は風のE・エレメントの集団との戦いとなります。



■戦場
市街地から離れた森林部。
E・エレメントたちが出現した一角は木々が全て薙ぎ倒され、見通しの良い開けた状態となっています。
ただ、薙ぎ倒された木々等で足場は悪くなっており、戦闘を行うには少し不便になっています。
(低空非行等を行えばペナルティはありません)
木々の薙ぎ倒された範囲は半径30m程度の円状の地域です。
中心部の上空にE・エレメントのボスらしき存在が浮遊しています。


■E・エレメント
◆風の巣
フェーズ2で数は1体。
飛行可能で、地上から20m程度の高さに浮遊しています。
動きが機敏で2回行動が可能。
速度、回避力も高めです。
基本は風のE・エレメント達への回復や付与を行います。
接近された場合は神秘系の近接攻撃を行いますが、回復や付与の方を優先して行動します。

癒しの風(神・遠・味全) HP回復:中  BS回復:70%
風力強化(神・遠・味全) 命中、回避、速度、Da上昇


◆風のEエレメント
フェーズ1で数は6体。
飛行可能ですが、戦闘時はできるだけ地上に降りてくるようです。
降りてきた際も地面から少し浮いている低空飛行状態の為、足場による不利な修正は受けません。
攻撃は風の刃による神秘系の単体近距離攻撃のみ。
特殊な効果はありませんが、速度が攻撃力に追加されます。
命中・回避・速度は高めですが、防御力は低く、耐久力もやや低め。

風刃(神・近・単)  命中:高  威力:中
(自身の速度を攻撃力に追加)



E・エレメント達は逃げようとせず、最後まで戦います。
全てのE・エレメントを倒せば依頼成功となります。
それでは、興味を持って頂けましたら。
宜しくお願いします。

参加NPC
 


■メイン参加者 6人■
クリミナルスタア
曳馬野・涼子(BNE003471)
ナイトクリーク
鳳 黎子(BNE003921)
プロアデプト
ステラ・ムゲット(BNE004112)
マグメイガス
六城 雛乃(BNE004267)
ナイトクリーク
青島 沙希(BNE004419)
レイザータクト
虚神 ミレア(BNE004444)

●崩界の風
(今回の相手は風のEエレメント……自然すらもエリューション化してしまうのね)
「それだったらあたしに出来る事はそんなに多くない」
『見習い戦闘管理者』虚神 ミレア(BNE004444)は呟いた。
 このEエレメントを、止めないと。
 その為に、自分が為すべき事は?
「自然現象がエリューション化した古典的なタイプだけど油断は禁物だね」
 シンプルなヤツほど強いって誰かも言ってたし。
 そう言ってから、『六芒星の魔法使い』六城 雛乃(BNE004267)は今回の相手について考え込んだ。
 自分の能力、相手の能力、相性……etc.
(あたし自身がトロくさいから動きの素早い敵って苦手だなあ……ちゃんと当たるかなぁ?)
 スカート捲れちゃいそうだし、髪も乱れそうだし……
「うーん大変そう」
 いろいろ他にも懸念が湧いて、少女はちいさく息を吐く。
「風、竜巻なんてもののくせに親玉みたいのがいて、みんなで戦ったりするのね」
『ならず』曳馬野・涼子(BNE003471)が呟いた。
「どうでもいいけど」
 そう前置きするように言ってから、『氷の仮面』青島 沙希(BNE004419)は、ある一節を口にした。
「あんまし深い意味はないけど」
 ヘッセという作家の記した小説の名は、確か……Gertrud、春の嵐……と言っただろうか?
「今が春で、竜巻みたいなエリューションが暴れてる、と聞いてなんとなく思い出したの」
(もしかしたら、つい数日前に誕生日が来たのもあるかもしれないわね?)
「わたしみたいな奴よりは、よっぽど人っぽいのかもね」
 何となしに、という口調で……どこか向こう側を見るような眼つきで、涼子が呟く。
「さて、お仕事しましょ」
 沙希は言葉を締めるように口にした。
 特に犠牲者もなし、相手の心情どうこうもなし。
「後腐れ無く倒せば終わり、って気楽でいい仕事よね」
(勿論、私達が失敗したら犠牲者も出かねないから、気は抜けないけど)
 もちろん、油断は欠片も無い。
 そもそも実戦を前にして油断するほどの経験もない。
(結構経験少なそうな人がたくさん!)
 幾人かを眺めつつ、『スウィートデス』鳳 黎子(BNE003921)はそんな感想を抱いた。
(これは先入観のない人たちに私のかっこいいとこみせるチャンスですね)
 そう思いつつ、もちろん口には出さず。
「ま、気負わずに楽に行きましょうねー」
 彼女は緊張を解すように口にした。

●戦場
「風が強い……」
 E・エレメント達によって薙ぎ払われた大地を視界に収めながら、『小さき梟』ステラ・ムゲット(BNE004112)は呟いた。
 飛んでいる者に強風は少しリスクだが、足を取られるより良いだろう。
 そう考え、背の翼を羽ばたかせ大地よりわずかに浮き上がる。
 戦いの為、脳の伝達処理能力を高め、体内の魔力を循環させる。
 雛乃も戦いに備えるように、詠唱によって体内の魔力を活性化させた。
 涼子は誇りを胸に見栄を切り、自身の限界を見据えるようにして運命を引き寄せる。
 黎子は念の為にと人払いの結界を張り巡らせてから、自身の戦闘を援護させる為に意志持つ影を創り上げた。
 他の皆の状況を確認しつつ、小さく声をかける。
「今回はこの防御行動が効率的。共有します」
 ミレアは仲間たちと防御のネットワークを構築したのち、自身の認識能力を戦場全体まで拡大させた。
 戦いの準備は……完了した。
 リベリスタたちは風たちによって破壊された空地へと、戦場へと突入する。

 黎子と沙希が前衛を固め、雛乃は後方に位置を取る。
 涼子は、いざという時に沙希とステラを庇えるように考えて位置取りを行った。
 風のエリューションたちは突然現れた存在に動揺する素振りもなく、唸るような音を立て動き始める。
 空に浮かぶ風たちの巣から空気が吹き出し、それを纏い力を強めた風たちは高速で地上のリベリスタ達へと距離を詰めた。
 小さな竜巻たちはその風の一部を刃と変えて、纏った風を鋭さに換えて、形あるものたちへと襲いかかる。
 E・エレメントたちは確かめるかのように、後方に位置する雛乃以外の5人に襲いかかった。
 黎子に2体。他の者には、1体ずつ。
 カマイタチの如き何かが、リベリスタたちを切り裂こうとする。
 ミレアの構築した防御態勢を加えても無視できないだけの威力を、風の刃は持っていた。
 もっとも、一般人ならば重傷になりかねない傷であったとしてもリベリスタ達にとっては即座に危険という程ではない。
 先ずはフェーズ1のエレメント達を1体ずつ、確実に。
 涼子は足元に注意しつつ、E・エレメント達の動きを観察した。
 すぐには行動しない。
 まずは待機して敵の様子を窺い、それを基に方針や目標を決定する。
 彼女はそう考えていた。
 一方、ステラは即座に攻撃を開始する。
「これで風の勢いが殺せれば良いんだが」
 気の糸を1体の周囲に罠のように展開すると、彼女はそれを一気に締め上げた。
 小さな竜巻は高速で動き、動きを封じられる前に空間を脱出する。
「さ、一気に切り刻んでしまいますよー」
 仲間が狙おうとしたE・エレメントに向かって、黎子は双子の月を手に踏み出した。
 足場対策にと安全靴を履いてはおいたのだが……起伏や障害物という点については、どうしようもない。
 とはいえ、元々気休め程度と自身で割り切ってもいる。
 それに、無いよりは良かった。
 抉られて起伏の生まれた地面や、薙ぎ払われた草木を踏み越えるようにして、黎子は1体へと距離を詰める。
 解放した力で創り出した無数のカードの内から、死の運命を導く一枚を選び出そうとして……納得がいかず、構え直す。
 続くミレアは仲間たちの位置に注意して声を掛けながら、神秘の力で閃光弾を創り出した。
 できるだけ多くを巻き込めるようにと敵の位置を確認して、投擲する。
 だが、エリューション達は機敏な動きで閃光と衝撃を回避した。
 敵の回避能力はかなり高い。
 それでも、集中攻撃する事で確実性は高まるはずである。
 足場の荒れた戦場内でもなるべく安定している場所に位置を取った雛乃は、皆の狙うE・エレメントを標的に定めた。
(木々が倒されて足場は不安定だけど、逆に言えば視界はよく通るようになってるはずだから狙いはつけやすいはずだよね)
 自分の攻撃精度を考えると、不安もあるけれど……とにかく此処は、手数で勝負。
 呟きながら雛乃は属性の異なる魔術式を組み上げ、四色の魔光を創り上げた。
 そのまま魔力をひとつに纏め上げ、風のエレメントに向けて放つ。
 高い破壊力を持つ魔曲四重奏を、竜巻は高速で揺らめくようにして回避した。
 残念、ではあるものの……落ち込んでいる暇など無い。
「積極的に狙って行くよ」
 自分に言い聞かせるように口にしながら、彼女は再び次の術式を組み上げ始めた。

●風嵐
 沙希は後衛を狙わせないように位置を取りながら、伸縮する黒のオーラを振るって同じE・エレメントに攻撃をしかけた。
 竜巻は唸るような音を立てながら機敏な動きで、彼女の一撃を回避する。
 足場の悪さを感じながら涼子は、同じエリューションに狙いを定めた。
 掌に収まるほどの小型の単発銃を一瞬で構え、引き金を引く。
 彼女の急所狙いの早撃ちをE・エレメントは回避し切れず、纏う風の勢いを少しだけ弱めさせた。
 だが、戦場の中央……空に浮かぶ穴を包むように存在する竜巻から風が吹き出すと、小さな竜巻は再びその力を取り戻す。
 6体のE・エレメントたちはリベリスタ達に攻撃を繰り返し、次第に沙希や雛乃を標的に定め始めた。
 もっとも、後衛に位置する雛乃への接近は何とか妨害できている。
 涼子は足元をこまめにチェックしつつ、沙希を庇うことを重視して位置を取った。
 前衛の数が減れば、敵をブロックすることが難しくなる。
 足場に注意して、大きく避けようとはせず急所はしっかり守りながら……いなせる攻撃は、いなすように。
 涼子は常に意識しながら、体勢を崩さぬように注意して前線を支え続けた。
 無論、機さえあれば攻撃することは忘れない。
 相手にも回復がある以上、長引けば不利になるのは自分達である。
「飛べる者も少ないし巣を狙うのは難しいか」
 ステラは上空の巣を眺めて呟いた。
 別動隊で巣の支援を妨害できれば、戦いはまた違ったものとなっていただろう。
 随分楽になっていたのでは……そう考えながら力の無い我が身に歯噛みする。
 だからと言って、何かが変わる訳ではないのだ。
 自分にできることをするしかない。
 ステラには、この戦場で自分にしかできない事が確かにあった。
 仲間たちの回復である。
 皆の傷を確認しながら、彼女は詠唱によって清らかな存在に呼びかけ、癒しの福音を響かせ続けた。
 自身で想定していたように、現在はほぼ回復に専念する形になっている。
 風たちの刃は、神秘に対する防御能力の高い涼子やステラでも無視できない威力を持っていた。
 加えて精度の高い攻撃は、回避の苦手な者にとっては本来以上の力をもたらす。
 魔力を循環させてはいるものの、癒しの力を使い続けている為にステラは急速に消耗していった。
 直撃が難しく効果が薄いと判断して、攻撃に気の糸を使用しなかったのは正解だったといえる。
 回復だけでも、既に限界が見えつつあるのだ。
 もっとも、敵の戦力も目に見える形で減りつつあった。
 黎子が踊るようにステップを踏みながら両端に刃を持つ双頭の鎌を振るう。
 極端に重量バランスの悪い大鎌は、扱うには熟練よりも刃の先に敵がいるという幸運が必要だった。
 運が悪ければ掠りもしない。
 だが、運が良ければ黎子はその幸運を逃さない。
 彼女の美学に相応しい見惚れるような斬撃が、精確に獲物の急所を切り裂いてゆく。
 攻撃された時も、両極端だった。
 流れるように巧みに風刃を避けたかと思えば、見苦しいと感じるのか呆気なく攻撃を受けたりもする。
 そういった動きを冷静に観察し防御態勢に反映させ、皆に声を掛けながらミレアは幾度か閃光弾を作成した。
「気をつけて、閃光弾を投げるから」
 敵の回避能力を考慮し、時を掛け狙いを定めてから投擲する。
 それでも、エレメント達は容易に直撃を許さなかった。
 だが、直撃すれば相手の付与された力を解除し、動きを一時的に鈍らせる事もできる。
 もちろん風の巣から放たれる癒しによって回復されてしまうが、その前に巣は解除された力の付与を行おうとしたし、一度では異常を回復できない事もあった。
 そういった間を利用して、ミレアはエネミースキャンを使用して敵の状態や能力を分析しようとする。
 仲間に声を掛ける時にそういった、自分の分析できた情報も一緒に伝達する。
 その方が、戦いもやり易くなるはずだ。
 戦いが長引けば、小さな蓄積が大きな差に変わることもあるのだ。
 戦いは続き、リベリスタ達は消耗していた。
 だが、E・エレメント達も半数……3体ほど、その数を減じていた。

●持久戦
 味方や周囲の木々を巻き込まないと判断した時、雛乃は迷わず範囲を巻き込む魔炎を召喚した。
 単純な威力であれば強力だし、消耗も魔曲と比べればやや少ない。
 とはいえ、精度は劣る。
 雷撃は威力は高いものの更に精度で劣る為、今のところ使用は考えていなかった。
 消耗の方も大きいのである。
 ひたすら攻撃を続ける為、力の限界が近付きつつあった。
 それでも、動き回って接近戦を行う者に比べれば足場を気にしない分、恵まれていると思う。
 だから、ひたすら手数で勝負なのだ。
 味方を巻き込む可能性を考えて、今度は別の魔術式を組み上げていく。
 雛乃の前方では、沙希が竜巻たちの進路を妨害するようにしながら大鎌を振るっていた。
 攻撃が命中し難いという事を考え、敵の動きに意識を集中させ狙いを付けてからの攻撃を繰り返している。
 それでも外れる事の方が多いくらい敵の動きは機敏だった。
 だが当たれば、沙希でも充分にダメージは与えられる。
 直撃でなくとも傷付けられるのだ。
 無論、回復されればそれまでだが、皆の攻撃が幾度か命中すれば倒すことができた。
 そうやって、敵の数を徐々にだが減らせてきたのである。
 だから、沙希は焦ってはいなかった。
 性分というのもあるかもしれない。
 冷静に状況を確認し、自分のできることを果たす。
 足場には特に注意した。
 多少距離など短くなろうとも、体勢を崩したり転んだりしなければ良いのだ。
 後退する時はすり足で障害物を探し、見つけたらまたぐという形を取った。
 それが難しいなら、多少の被弾覚悟で敵に背を向けて動くべきだと割り切っている。
 他に注意することは、フェーズ1を全て倒してしまうまで風の巣に不用意に近づかないという事くらいだろうか?
 僅かな時間とはいえ狙いをつける為、結果としてその分だけ力の消耗は抑えられていた。
 それに、集中しないよりは確実に攻撃の精度は上がっている。
 戦いは長期化しつつあったが、彼女は冷静さを保ったまま自分にできる事を続けていた。
 雛乃に近付けないE・エレメント達は沙希に攻撃を集中させ始めたが、それを涼子がフォローする。
 風の巣が配下達への強化付与を多用した為、ミレアは結果としてフラッシュバンを多用することになった。
 とにかく、味方の戦う環境を整えるために。
 そう考え、彼女は神秘の力で幾度目かになる閃光弾を創り出す。
 黎子は影の僕を再度創り出すのを確認し、防御のネットワークを再構築する。
 戦いはそれだけ続いているのだ。
(こんなあたしでも力を発揮できる)
 そんな風に幸せを感じながらミレアは仲間たちと声をかけ合った。
 沙希は攻撃を続け、涼子が体勢を立て直す。
 黎子の攻撃で傷付いたE・エレメントを狙って、雛乃が四色の光を放つ。
 光は竜巻を掠めるように傷付け、更に1体のエリューションが消滅した。
 だが、そこで雛乃は能力を振るう為の力を使い果たした。
 ステラも力を使い切ったことで、負傷の蓄積が加速する。

 続く攻撃を、ステラと沙希は運命の加護を手繰り寄せるようにして耐え抜いた。
 守りを固め何とか凌ごうとしたミレアも、続く風の刃で膝を折りかける。
 断ち切れかけた意識を、彼女は無理矢理に繋ぎ止めた。
「こんな所で立ち止まってる訳にはいかないから……」
 そう言い聞かせながら力を篭めれば、何かが内から湧き上がってくる。

 3人とも傷付いた体が不思議と動き、消耗した力の幾分かが戻っていた。
 それを拠り所に、3人は戦い続けた。

●凪、風の終わり
 ステラは一度だけ気の糸で、風の巣を狙って罠を仕掛けてみた。
 風は、流れるような動きで彼女のしかけた罠を掻い潜る。
 難しいと即座に判断し、ステラは再び回復へと回った。
 巣から距離を取り、味方の体力に気を配る。
 ダメージの蓄積している皆に続けて使用するだけで力は尽きてしまうだろう。
 それでも、3度は福音を響かせることはできる筈だ。
 その間に、更に1体のエレメントが消滅した。
 黎子が敵の注意を自分に引き付けるように派手に動きながら最後の1体へと狙いを定める。
 彼女は受ける手傷はあまり気にせず、仲間の回復に任せていた。
 自分の為すべき事は、攻撃に集中し早く倒すことだ。
(それで味方の被害を防ぎましょう)
「あんまりかっこ悪いところは見せられませんね!」
 鮮やかに間合いを奪い、形を得た竜巻の表面に触れるようにして……死の刻印を、刻み込む。
 続く沙希の斬撃は直撃せず威力を半減させられたものの、それでエレメントは限界を迎えたらしかった。
 力を失ったかのように風が渦を解き、消滅してゆく。

 これで6体の小さな渦巻きは、跡形もなく消滅した。
 黎子が、ステラが、皆が……最後に残った1体、空に浮かぶ風の巣へと視線を向ける。
 リベリスタたちの視線の先で、竜巻はゆっくりと高度を下げ始めた。
 風を撒き散らしながら風の巣が降下してくる。
「それにしても、まったく」
(春だからって風ばっかふかなくてもいいじゃない)
 風の巣を油断なく眺めながら、涼子は呟いた。
「空に穴でもあいて、竜でも落ちてくるっていうわけ?」
「春一番とか、つむじ風、って程度なら可愛くていいんだけど。ここまで暴れてるとちょっといただけないわね」
 警戒しながら、沙希も呟く。
 流れるような動きで、黎子が無数の、死のカードの群を創り出した。
 風の巣は、エレメント達と比べればフェーズが進んでいる分、強力だったかもしれない。
 だが、能力は直接戦闘には向いておらず……何より、1体だけだった。
 回復の力を持ち、攻撃を回避する能力も高い。
 それをリベリスタ達は、手数で圧倒するという形で迎え撃った。
 総力戦となった時間は……長くはなかった。
 数十秒の攻防で巨大な竜巻は力を失い、消滅する。

 戦いが終わり、風が……止んだ。
 残るのは、文字通り竜巻が通り過ぎでもしたかのような大地の傷跡のみである。
 だが、その激しい傷跡も……新たな草木によって覆われ、消えてゆくのだろう。
 倒れた草木も、やがて大地へと還ってゆく。
 崩界をもたらす欠片は消滅したのだ。

 ステラは晴れた空を見上げると、何事もなかったかのように静かに呟いた。
「つつがなく、春一番。ってところかな」



■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
依頼の方、お疲れさまでした。
長期戦となりましたが、無事に全てのE・エレメントの撃破に成功しました。
負傷や消耗もかなり激しくなりましたが、フェイト使用等で何とか凌ぎ切るという形にできたようです。
回復が行える方がいた事も継戦能力に大きく影響しました。
終盤EP不足が発生しましたが、序盤の敵が多い状況を乗り越えられたのは回復を出し惜しみしなかったというのもあるかと思います。

御参加、どうもありがとうございました。
それではまた、御縁ありましたら。