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砂の町。或いは、サンドマン襲来……。

●砂の街
 その街はかつて、城下町であった。京都のそれに比べれば規模は小さいが、碁盤の目状に区切られた街の区画や、今尚残る武家屋敷通り、小高い丘の上にあるかつての城跡。街、といっても小さなものではあるが、観光名所としてそれなりに栄えていた。
 ところが今に限っては、その観光名所としての景色は、黄色い砂で覆い尽くされてしまっていた。原因不明の砂嵐と、大量の砂がこの街を襲ったのは、およそ半日ほど前のことだっただろうか。
 街の住人は、皆家から出ることもできないでいる。この街は、文字通り陸の孤島と化したのである。
 人の気配が消え、砂塵舞い散る道路を歩く複数の影。
 先頭を歩くのは、砂で出来た体を大量の包帯で覆った長身痩躯の男のようだ。
 その男に付き従うように、砂で出来た巨人が4体後ろに続く。どうやら砂嵐を巻き起こしているのは、この巨人のようだ。
 そして、巨人を指揮するのが先頭の砂男である。
 まるで獲物でも探すみたいにして、砂男たちは砂塵に覆われた街を歩き回る。
 街の住人は、皆この状況を異常気象くらいにしか認識していないのだろうが、しかしその実、命の危険がすぐそこまで迫って来ているわけである。
 住人がそれに気付くのが先か……。
 或いは、リベリスタ達が街の異変を喰い止めるのが先か……。

●サンドマン襲来
「E・エレメント(サンドマン)と、同じくE・エレメント(砂の巨兵)が4体。じわじわと街を進行中。現在は、商店街の中を通行しているみたいね」
 モニターに映った画像を見ながら、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はそう言った。
 神秘の秘匿のためには、街の住人が襲われる前にサンドマン達を倒すしかないのだが。
「視界が極端に悪く、風も強いため戦闘には注意が必要。特に、同士打ちなどには十分注意して欲しいの」
 視界が悪く、風も強い。声が届きにくいことにも注意して欲しい。
「サンドマンはフェーズ2。それ以外はフェーズ1ね。砂の巨兵の方は少々動作が鈍いみたい。その分、攻撃力は高いけど……」
 見た目通りの重量ファイター、と言ったところか。一方のサンドマン、包帯だらけの体と長身痩躯相まって、戦闘には不向きに見える。
「見た目に惑わされてはダメ、という典型のようなE・エレメントね。サンドマンは砂を使った攻撃の他に、こちらの仲間の姿を真似するという能力を持っているみたい」
 味方だと思って近づいたら、サンドマンだった。
 そんなことが十分起こり得るのである。
「街の砂と砂嵐は、巨兵を倒せば無くなるみたい。サンドマンと巨兵、両方殲滅してきてね」
 よろしく、なんて呟いて。
 イヴは仲間達を見送るのだった。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年04月04日(木)22:54
こんにちは、病み月です。
いかがお過ごしでしょうか? 今回は少し、埃っぽいお話になります。
それでは、以下詳細。

●場所
砂に覆われた街。街には砂嵐が吹き荒れていて、非常に視界が悪い。また風も強く注意が必要。砂嵐のせいで、音が聞こえにくい状態にある。
足場もさほど、いいとは言い難い。街の住人がサンドマンに殺されてしまう、或いは、サンドマンを逃がしてしまうと忍務は失敗となる。

●敵
E・エレメント(サンドマン)×1
フェーズ2
砂の体を包帯で覆った長身痩躯の男。
現在、街を移動中。
体が砂で出来ている為自在に動かし他者の姿に為りすますことが可能。能力、知識までは真似できない。
【サンドラッシュ】→物近範[ブレイク]
砂で作った無数の拳によるパンチの嵐。
【サンドウェーブ】→神遠複[圧倒][石化]
砂の津波を巻き起こす攻撃。
【サンドブロック】→物近範[鈍化][ショック]
自身の周囲に砂で作った壁を作り出す。

E・エレメント(砂の巨兵)×4
フェーズ1
砂で出来た、身長3メートル程の巨人。巨大な剣と盾を持つ。
動作は鈍いが、攻撃力は高いようだ。
【アースクエイク】→神近範[ノックB][ショック]
地面に盾を叩きつけ、衝撃波を放つ攻撃。
【フルスイング】→物近単[ブレイク][圧倒]
力任せに振り下ろされる剣による一撃。

以上になります。
それでは、ご参加お待ちしています。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
クロスイージス
アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)
ホーリーメイガス
シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)
ナイトクリーク
神城・涼(BNE001343)
ホーリーメイガス
汐崎・沙希(BNE001579)
覇界闘士
付喪 モノマ(BNE001658)
レイザータクト
波多野 のぞみ(BNE003834)
マグメイガス
羽柴 双葉(BNE003837)
クロスイージス
ティエ・アルギュロス(BNE004380)

●砂の街
 吹き荒れる砂塵と、砂の擦れる轟音。街に積もった大量の砂。元は美しい街並みを誇る城下町だったのだが、今は砂に埋もれた廃墟の体。住人達は家の扉を固く閉ざして砂の恐怖から身を守っている。砂に太陽光が遮られ、街はどんよりと薄暗かった。そんな中を進む影がいくつか。砂の巨人と、サンドマン。E・エレメントと呼ばれる怪物達である。
 武家屋敷の立ち並ぶ町並みに、彼らの姿は酷く不似合いであった。
 そんな彼らを、塀の影から眺める影が8つ。アーク所属のリベリスタ達である。  現在、戦闘開始の機会を窺っているのであった。

●砂塵の吹き荒れる街
「砂の汚れは下水仕事よりはよっぽど清潔です、うむ」
 頬にこびり付いた砂を、指先で拭いながら『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)がそう呟いた。砂のせいで仲間の元へ声が通らない為、基本的に会話は、念話やAF、ハンドサインで行っている。
「念には念を……です」
 翼を隠し、結界を発動させて、『紫苑』シエル・ハルモ二ア・若月(BNE000650)はそう言った。
『……困ったものね』
 仲間達の脳裏に直接声が届く。『蒼碧』汐崎・沙希(BNE001579)のハイテレパスによるものだろう。普段から発語を嫌う彼女にとって、音の届きにくいこの環境はさほど脅威とはならない。もっとも、視界の悪さだけはどうしようもなく、シエルや他の仲間共々ゴーグルを着用して視界を確保している。
「砂の街か、なかなか雰囲気あるじゃねぇか。不便な事のが多そうだけどよ、嫌いじゃないぜ」
 拳を握りしめ、すぐにでも戦闘に入る事が出来る姿勢を取る『黒腕』付喪 モノマ(BNE001658)。視線の先には、サンドマンと砂の巨人。時折視線を巡らせているのは、何かを探しているからだろうか。
「戦闘とは、敵の目の前に出る前から始まっているんですよ」
 タクティクスアイで自己強化を図りながら『混沌を愛する戦場の支配者』波多野 のぞみ(BNE003834)がそう言った。自己だけでなく、仲間たちをも補助スキルで強化していく。
「埃っぽいだけならまだいいけどこんなのはノーサンキュー。さくっと解決しちゃいたいね」
 ワンドを握りしめた『魔法少女マジカル☆ふたば』羽柴 双葉(BNE003837)が、小さな溜め息を零した。口に入った砂を吐き出し、顔をしかめる。
「砂塵舞い散らせ街を砂まみれ。他者の姿に為りすますとかサンドマンは絶対忍者だろう……。流石忍者きたない、犠牲者が出る前に倒すべき」
 大剣を地面に突き刺して『白銀の鉄の塊』ティエ・アルギュロス(BNE004380)がサンドマンに視線を向ける。今のところサンドマンは、包帯だらけのミイラ男のような姿をしているのだが、砂の体を変身させ他者に為りすますことができるようだ。
『用意は完了? それでは、始めましょうか』
 皆の脳裏に、沙希の声が響く。周囲に人影が無いことを確認し、のぞみが塀の影から飛び出した。砂を突っ切って飛び上がるのぞみ。サンドマンや巨兵の視線が彼女へ集まる。その瞬間、サンドマン達で向けて、のぞみは光の弾を投げつけた。
「さぁ、戦闘開始の最初の一手。派手に決めましょうか」
 光弾が弾け、閃光が瞬く。眩い光が飛び散って、周囲が一瞬、真っ白に染まった。
 サンドマンや巨兵の動きが止まる。その隙に、と『パニッシュメント』神城・涼(BNE001343)が駆けだした。彼の周囲に魔力で作られた無数のダイスが浮かび上がる。
「視界が取りにくいが、どうせ肉薄しなきゃなんないんだ。やったるわ!!」
 涼の体が、砂の巨兵に接近、肉薄する。それと同時にダイスが次々に爆裂。小規模な爆発が連鎖的に巻き起こった。
 大量の砂が、土石流のように降り注ぐ。砂に覆われ涼の姿は見えなくなった……。

「では、手はず通りに……」
 ブロードソードを下段に構え、アラストールが砂上を駆ける。砂塵が舞って砂の雨が降り注ぐ。そんな中を駆けていく。視線の先では、地面に崩れた砂が蠢き砂の巨兵の姿を形作っている所だった。先ほどの爆発に巻き込まれ、一度、崩壊してしまったのであろう。
「たとえコッチの姿を真似できても、こっちの事前打ち合わせまでは知らない筈。ハンドサインで確認できるでしょう」
 魔力銃片手に、低空飛行で巨兵に迫るのぞみ。全身を赤い装備に身を包み、巨兵の1体へ接近していく。
 いち早く体を再構築した巨兵が、砂の剣を振りあげる。大上段から、力任せに振り下ろされるそれを、ティエの剣が受け止めた。
「ナイトが砂製の巨人に遅れをとるわけにはいかない」
 剣を受け止め、受け流す。地面に剣が突き刺さって大量の砂が舞い散った。ティエは、身体ごとぶつかるようにして、巨兵の胴に剣を叩んだ。

「てめぇの好き勝手にはさせねぇ……って、なんだこれ?」
 仲間達が巨兵を抑えている間に、モノマはサンドマンの元へと走っていた。しかし、先ほどまでサンドマンが居た位置で彼が見つけたのは、砂で出来た壁だった。全部で4枚、箱の側面のように地面に突き刺さっている。
 その上、涼の姿も見えない。自由に動ける巨兵が1体。モノマの元へ歩いてくる。モノマが迎撃の姿勢をとった、その時……。
「ちょっとどいてどいてー!!」
 無数の魔弾が砂塵を打ち破り、巨兵へ襲い掛かる。巨兵は砂の盾でそれをガード。魔弾を打ち出したのは、後衛から援護射撃を行っていた双葉であった。彼女に任せておけば、暫くの間は巨兵を抑えてくれるだろう。その間にモノマは、サンドマンと涼の姿を探す。
 手甲に覆われた腕で、砂の壁を叩いた。瞬間、壁に亀裂が入り、崩れ落ちる。中から現れたのは、砂に塗れた涼であった。
 サンドマンの姿は見当たらない。モノマはほっと小さな溜め息を吐いた。
 しかし。
『逃げて……っ!』
 脳裏に直接、沙希の声が響く。それと同時に、涼の姿が砂と化して崩れた。背後に浮かぶ無数の砂の拳が、一斉にモノマへと叩きつけられる。拳のラッシュ。モノマは腕でそれを防ぐ。砂に足をとられたモノマは、ぐらりとその場に倒れ込んだ。
「……げほっ。あぁ……」
 サンドマンの背後で砂の山が崩れる。中から現れたのは、全身砂だらけの涼であった。口の端から血が流れる。砂を吐き出し、涼は砂の中から飛び出した。

「おおらぁ!!」
 握り拳をサンドマンの横面に叩きこむ涼。ラッシュが止まり、サンドマンがよろける。
「あぁ、一発じゃ足りねぇだろ? 遠慮することはないぜ!」
「おぉ! 面倒くせぇんだよ、てめぇの能力は!」
 素早く立ち上がったモノマの拳がサンドマンの頭を捕らえた。そのまま、叩きつけるようにして地面に殴り倒す。それを見届け、涼は巨兵の元へと駆けていった。双葉の弾幕が止んで、巨兵の姿が露になる。コートの裾や袖口から刃物を覗かせた涼は、巨兵へと飛びかかった。

「さっちゃ……こほこほ……沙希様、癒し手は必要かお尋ねくださいまし」
『………涼さんとモノマさんが、少し』
 シエルは1つ頷いて、胸の前で手を握り合わせる。燐光が舞い踊って涼やモノマの傷を癒していく。2人の傷を癒しているのがシエルだと気付いたのか、サンドマンがこちらに向かって地面を叩く。砂が蠢き、津波と化して2人を襲う。
 轟音、地響き。まるで生き物のように蠢き、起き上がる大量の砂。2人へと降り注ぐ。
「危ないっ!」
 と、一言。双葉は、傍に居たシエルの背中を突き飛ばした。長い黒髪が風に踊る。双葉に押されたシエルが砂の上に倒れ込む。次の瞬間、彼女の代わりに、双葉と、沙希が砂に飲み込まれ姿を消した。
 パラパラと砂が降り注ぐ中、シエルは「あぁ」と声を漏らす。

 仲間が砂に埋もれているとはいえ、持ち場を離れるわけにはいかない。アラストールは、歯噛みして、剣を振るう。大上段から振り下ろされた剣が、アラストールの肩に食い込んだ。砂で出来た剣だ。切れ味が鋭いわけではないが、それでも大きさが大きさである。肩の骨が軋んで、アラストールは思わず鞘を手放した。
「くっ……」
 いうなれば騎士の勘、というものだろうか。剣を勢いに逆らわずアラストールはそのまま地面を転がった。剣と入れ替わりに、砂の盾が地面に叩きつけられる。
 盾が巻き起こす衝撃波によって、アラストールの体が宙へと打ち上げられた。体中の骨が軋み、筋肉が伸びるのを感じる。
 しかし。
「自然環境的に見ても貴公等は不自然だ。疾く静まるが良い」
 アラストールの剣が鮮烈に輝く。光の剣、とでもいった様なその様は砂嵐の中でさえ、眩しく感じるほどである。落下の勢いに任せ、アラストールはそれを巨兵の頭部へ叩きつけた。

 砂の巨人の頭部が弾け、辺りに大量の砂が飛び散る。そんな中、ティエは巨兵の盾に殴られ地面に激突する。銀の髪が、砂に塗れて汚れている。
「っぐ……。誰かを守る戦いでナイトが先に倒れるなど、認可されない!」
 剣を支えに立ちあがる。すかさず、巨兵の剣がティエへ襲い掛かった。それを回避しようとしたティエだったが、自身の背後に民家が存在していることに気付く。ここで回避してしまえば、民家の中にいるであろう一般人に被害が及ぶやもしれない。そう考え、ティエは回避を諦めた。
 魔力盾を展開し、衝撃に備える。コンバットブーツを履いているとはいえ、足場が悪い。
 剣と盾が衝突。盾は砕け、ティエの体が地面に沈む。腕を痛めたのか、ダランと両腕を前に垂らしている。それでも剣を離していないのは、流石騎士と言ったところか。
「まぁアレだ。戦闘が終わったら水浴びしたい」
 血と砂を吐き出し、震える手で剣を掲げる。再び、巨兵が剣を振りあげた、その瞬間、ティエは地面を蹴って飛び上がった。巨兵の膝を足場に飛んで、その胸元に力任せの1撃を叩きこむ。胸に大穴の空いた巨兵は、ゆっくりと崩れ去っていく。
  
 崩れ去る巨兵を背後に、ティエはその場で膝を付いた。荒い呼吸を繰り返し、肩を大きく上下させる。と、そんなティエの頭上に大きな影が落ちた。顔を上げると、そこには巨兵の盾がある。たった今、ティエ目がけて盾が振り下ろされる瞬間だった。
「くっ……。間に合いませんか」
 全速力でこちらへと飛んでくるのぞみ。盾に殴られ、吹き飛ばされていたようだ。欠けた鎧の隙間から血が流れているのが見てとれる。のぞみはせめてもの抵抗に、ディフェンサードクトリンを発動させる。ティエが防御態勢を取ったのと、盾が叩きつけられたのはほぼ同時であった。
 砂が飛び散り、砂塵が視界を埋め尽くす。風に煽られ、前後左右が分からなくなる。のぞみは地面に着地すると、銃を掲げて自身の足で走りだした。
「ますはこの砂嵐を止めさせていただきますよ!」
 魔力の弾丸を撃ち出しながら、砂上を駆けるのぞみ。巨兵は、弾丸を盾で防ぐ。それならば、と今度は光弾を投げつけた。光弾が炸裂し、閃光が弾ける。閃光を受けた巨兵が大きく仰け反った。その隙にのぞみは、巨兵の足元へ。
 そこには、血塗れで倒れていたティエの姿。意識は辛うじてあるようだが、満身創痍、といった有様である。慌てて助けに駆けるのぞみだったが、そこでふと、サンドマンの能力に付いて思い出した。
「同士討ちなんてごめんですからね、偽物か否か把握させてもらいますよ」
 AFを通じて、ティエに声をかける。返ってきたのは、ティエの荒い呼吸だった。それをもって本人であることの確認とし、のぞみは血塗れのティエを助け起こす。
 ティエを抱え、飛び立つのぞみ。
 そんな彼女の背後から、巨兵の剣が突き出された。砂の剣が、のぞみの腹を刺し貫く。
「っぐ……あ」
 口から血を吐き、腹から血を撒き散らしながらものぞみは全速力でその場から離脱する。目指すは後衛、シエルや沙希などの回復班の元だ……。

 よろよろと砂嵐を突き抜け、そのまま地面に倒れ伏すのぞみ。傍らには、満身創痍のティエの姿がある。剣を支えに立ちあがり、戦場へと復帰しようとするティエを、沙希が引き止めた。
 沙希の傍には、砂塗れの双葉が居る。ワンドを手に、戦場をじっと、見つめていた。
「すぐに治療致します」
 シエルは言う。淡い燐光が、ティエとのぞみの体を包む。燐光は2人の体を包むと、その身に受けた傷を癒していく。しかし傷は癒えたものの、のぞみの意識が戻らない。戦闘不能。シエルはのぞみの肩を抱き、そっと物影へと運んでいった。跡には点々と、血の跡が残る。
『癒し手が2人揃って石化したら、洒落にならないものね』
 シエルが離れていったのを確認し、沙希はそう呟いた。先ほど砂に埋もれた際に負ったものか、頬には大きな痣が浮いていた。
「すまない。ありがとう」
 礼を告げ、戦場へ戻っていくティエ。そんな彼女を見送って、沙希と双葉は戦場を注視する。

「砂の巨兵は、間違えなくていいな」
 涼の周りに魔力のダイスが浮かび上がる。ダイスは次々爆発し、2体の巨兵の体を纏めて削っていく。それでも、流石に2体纏めての相手はきついのか、涼は次第に押されていく。アラストールも援護に回るが、やはり2体もいると勝手が違うのか、上手くいかない。
 と、その時、涼の脳裏に涼やかな声が響き渡る。
『もう少し、砂嵐の外側へ……』
 砂塵が邪魔で、涼の位置から沙希達は見えない。涼とアラストールは頷き合うと、そのまま巨兵に背を向け、砂塵の中を駆け出した。モノマとサンドマンの姿は見えない。巨兵は、鈍い動作で2人を追う。振り下ろされる剣を避けながら、なんとか砂塵を突破した2人。
『貴方達は、本物?』
 脳裏に響く沙希の声。予め決めていたハンドサインで、遠目に見える沙希に返事を返す。沙希は1つ頷くと、2人に回避するように指示して双葉の背を叩いた。
「こちらは私が」
「任せた。俺はサンドマンの方へ行くよ」
 アラストールにその場を任せ、涼は再び砂嵐の中へ戻っていく。
「我が血よ、黒き流れとなり疾く走れ……いけっ、戒めの鎖!」
 ワンドを伝って、双葉の血が地面に滴る。流れる血は、意思を持っているかのように蠢き、黒い鎖にその形を変えていった。大量の鎖が、濁流のように砂上を走る。アラストールを追って巨兵が姿を現したのと同時に、鎖は巨兵を飲み込んだ。
 鎖に飲まれ、消えていく巨兵を、アラストールはじっと見上げ続けていたのだった……。

●砂に塗れて
 まるで夢でも見ていたようだ。
 街を覆い隠していた砂も、吹き荒れる砂塵も、砂嵐も、全てが一瞬で消え失せた。キラキラと光る粒子になって、風に霞んで消えていく。砂の巨兵が4体、全て倒れたのだろう。多少残った砂が、轟音撒き散らしながら降り注ぐ。恐らく消えなかった分の砂は、もともと道路などに散っていたものなのだろう。
 そして姿を現したのは、猛烈な勢いで殴り合う2人のモノマであった。
 激戦の最中、AFを落としてしまったのだろう。連絡が通じないことに、涼は首を傾げて唸る。サンドマンとモノマ。どちらがどちらか、良く分からない。
「しかし逃がすわけにはいかないからな。違ったら後で謝るわ。すまんな!」
 拳を握りしめ、全速力で駆け出す涼。2人のモノマが、彼の方を向いた。ハンドサインや声かけで確認している暇はないだろう。そうでなくとも、降り注ぐ砂のせいで声は届かない。涼はまっすぐ駆け抜けて、そのまま手前のモノマを力一杯殴りつけた。
「うぉぉお!!」
「う……っぐ!?」
「おぉ!? 間違えた!?」
 鼻から血を噴き出して倒れ込むモノマ。にやり、とモノマに化けたサンドマンが笑う。砂が蠢いた次の瞬間、そこには元の姿のサンドマン。降り注ぐ砂を集め、砂の津波を巻き起こした。
 砂に飲まれて、2人の姿が掻き消える。その隙に、とサンドマンは踵を返す。巨兵がやられた今、このまま戦うのは得策ではないと考えたのだろう。
 リベリスタ達の目を誤魔化す為に、その姿を涼のものへと変化させる。
 しかし……。
「逃がさない……!」
 サンドマンの前に立ちはだかるティエ。体当たりで、サンドマンをその場に留める。変身する瞬間を見ていたのだろうか。或いは、逃げる動作に不審なものを感じたのかもしれない。
 砂で出来た無数の拳がティエに襲いかかる。ティエは剣と盾でそれをガード。完全には防ぎきれないが、それでも彼女は必死にその場を動かず、耐える。
 そうしているうちに、砂山が弾け、中から涼とモノマが姿を現した。涼の周囲にはダイスが浮いている。ダイスの爆発で砂を吹き飛ばしたようだ。だが、それに巻き込まれたのかモノマは額から血を流していた。
「さて、ウダウダやんのはここまでだ。一気にいくぜっ!」
 モノマの腕を業火が包む。拳を振りあげ、駆け出すモノマ。サンドマンがそれに気付いた時にはすでに遅い。炎の拳は、その眼前にまで迫っていた。力任せに振り抜かれる拳。サンドマンの頭部を粉砕し、其の体は業火に包まれ崩れ落ちた。
「結局てめぇらは狩る側じゃなくて狩られる側だったな」
 炎に燃えるサンドマンを見降ろし、モノマはそっとそう呟いた。

 ほ、っと溜め息を吐くシエルの背後で民家のドアが開く。中から顔を出したのは、不安そうな顔をした幼い少女であった。
「是だけの砂嵐ですもの、少し位錯乱しても仕方ないですよ」
 慌てて翼を隠し、シエルはそっと微笑んだ。少女が何かを言う前に、有無を言わさずドアを閉める。
 サンドマン討伐指令、これにて終了……。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした、依頼は成功です。
サンドマン、および砂の巨兵は殲滅されました。
砂に覆われた町の話、これにて終了となります。いかがでしたでしょうか? おたのしみいただけたなら幸いです。
それではそろそろ失礼します。
縁がありましたら、また別の依頼でお会いしましょう。

このたびはご参加、ありがとうございました。