●季節外れの 3月も既に後半。北風が南風に変わり、暖かい日が増えてきた。 暖かい地方では、早くも桜が咲き始めたとニュースが伝えている。 そろそろお花見のシーズンである。 いざ花見をしようとなれば、それなりの準備が必要だ。 花見の下見にとある川原を訪れた青年は、そこで予期せぬ光景を目にした。 「なんだあれ? あんな所に、梅なんてあったっけ?」 川原のど真ん中に生えている、桜と見まごう程に大きな梅の木。その一本を中心に、周囲にもおよそ10本程の梅の木がある。 その全てが満開であり、紅梅と白梅が入り混じり中々見事な光景だ。 だが、昨年まではこんな所に梅が咲いていた記憶はない。 これだけの大きな木ならば、見覚えくらいはあるはずだ。 そもそも梅の花の時期はもう過ぎている筈である。しかもこの香りはなんだろう。梅の香りにしては少し違うような、嗅いでいると何故か口の中に唾が出てくる。 青年は違和感を覚えつつも、漂う香り引き寄せられるかのように梅の木にフラフラと近寄ってしまう。 ――ゴチン。 梅の木から飛来した何かが青年の頭を直撃。それが致命傷となり、青年はその場で絶命した。 ●梅は梅でも ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達が目にしたのは、食べかけのおにぎりを手になんとも言えない顔をしている『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)の姿だった。 「ん~っ。梅干し、ベリィサワーだぜ」 いきなり何を言ってるんだろうこの人。 「そんな顔してるが、お前達も同じ思いをするかもしれないぜ?」 おにぎりを置いた伸暁は、ブリーフィングルームの大画面に一本の大きな梅の木とその周囲の並ぶ梅の木の光景を映した。 「とあるリバーサイドに現れたこいつら、全部E・ビーストだ」 数日前、中央の梅の木が芽吹いた。その時点で革醒済み。 フェーズを上げながら周辺にも革醒した梅の木が増やしていき、現在に至る。 「センターのビッグツリーがフェーズ2。残りはフェーズ1。センター以外は大した事ないが数が多い上に、こいつらはただ革醒した梅の木じゃない」 「どういう事だ?」 「もうすぐ桜がフローリッシュして花見のシーズンだ。花見にランチボックスは付き物。そして、花見と言えばライスボール……おにぎりだろ?」 説明を求めたリベリスタに対し、何故か先ほど食べていたおにぎりを手に取り話し出す伸暁。 「おにぎりの具と言えば、梅干しだ」 伸暁の説明は止まらない。 「で、お前達。外でおにぎり食べて、梅干しの種があったらどうする? 自然に還したした事はないか?」 自然に――つまり梅干しの種をその辺に捨てた事はないか、と言う事か。あるかもしれない。 「もしかして……?」 「イグザクトリィ。こいつらは梅干しの種が革醒した『梅干しツリー』ってワケだ。すぐ近くに桜があってな。ここ数年、花見客が増えてきているそうだ」 花見客の誰かが川原に残した梅干しの種が、どういうわけか今になって革醒して木になったと言う事のようだ。 ゴミは持ち帰りましょう。 「詳しくは資料にまとめたが、ツリー達のメインは種の攻撃だ。こいつは当たると、食べてないのにベリィサワーになるぜ」 サワーは、酸っぱいか。 「2,3日もすれば近くの桜がフローリッシュだ。花見客で賑わう前に、このツリー達をなんとかしてきてくれ」 リベリスタ達に資料を配ると、伸暁は食べかけだったおにぎりを完食したのだった。酸っぱそうな顔して。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:諏月 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年04月01日(月)23:12 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 春告草。梅の別名である。奈良時代までは、花見と言えば梅の花だったらしい。 「季節に合わせてエリューションが現れたか」 江戸端唄を小さく口ずさんでいた『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)が唄をやめ、呟いた。端唄とは渋いと言うか、随分と日本文化に詳しいロシヤーネの御仁である。 さて、常人よりも遥かに遠くまで見通せる彼の視界には、既に目指す川原にある梅の巨木の姿が映っている。 それは、千里眼の能力を駆使している『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)も同じくだ。 「人影はなし。やはり川を背にしていますね……しかし唾液が出そうになるな」 周辺の状況や、梅干ツリーの並びを把握するためなのだが、疾風の口の中には若干の変化が起こっていた。梅干しを想像するだけで唾液が出そうになるというのに、彼の視界には満開の梅に紛れて木に生っている梅干しの種が映っている。想像以上に掻き立てられても仕方がない。 「ウメボシ! サワーテイストの日本のフルーツでゴザルな! いや、フルーツなのか?」 梅干しの分類に首を傾げる『ニンジャウォーリアー』ジョニー・オートン(BNE003528)は今日が梅干し(の酸っぱさ)初体験。話に聞いてはいたけれど、まだ食べたことはない。 「梅干しは、お漬物ね」 ジョニーの疑問に答えたのは、『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291)。 「漬物でゴザルか……拙者、ウメボシは初めてなので実は楽しみなのでゴザル! しかし相手はエリューション。油断はならず!」 聞くに、枝からウメボシの種を投げつけてくるというではないか。 「そうね。私、甘いものばかりじゃなく酸っぱいものだってわりと好きなのだけど、甘く見ずにがんばるわ」 初梅干しのニンジャと食べるのが大好きな淑女の2人が拳を握る。 だが、梅干しを楽しみにしている者ばかりではない。 「梅干しは酸っぱいからあんまり好きじゃないけど、梅の花の香りっていい匂いなんだよね~」 『六芒星の魔法使い』六城 雛乃(BNE004267)は梅干しの酸っぱいの匂いよりも、梅の花の香りを期待していた。 「梅味のガムとか結構好きだし」 「最近の梅味のガムは、粉末と香料だったと思うぞ。梅の花とはまた違わないか?」 『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)はこう見えて、大の甘党であり普段は甘味処の従業員だ。 「ま、梅の花も桜に劣らずよいもので」 『息抜きの合間に人生を』文珠四郎 寿々貴(BNE003936)も雛乃の言葉に頷く。 聞けば梅干しの木は満開だと言う。満開から散り際までを早回しで見られると思えば、まぁ悪くない。 悪くない理由はもう1つある。 「ぃゃぁ、今日の仕事は割がいい。実にね」 前を歩く面子を見る。アークの中でもトップランクに数えられるメンバーを始め、戦い慣れている者が多いのだ。 手抜きをするつもりはないけれど、ピリピリする必要もあるまい。 「いい香り……これは近いわ……!」 寿々貴がへらりとした笑みを浮かべていると、ニニギアが何かの臭いに気づく。 程なく、川原にでーんとそびえるでっかい梅の木を、全員が目にした。 ● 「移動出来ないだけマシだが一般人が来る前に片付けるぞ、変身!」 疾風の全身が、龍をモチーフにした特撮ヒーローを思わせる全身鎧に包まれる。 情報通り、梅干ツリーは動かない。リベリスタ達には、敵の射程に入る前に準備を整える余裕があった。 梅干ツリー達も既にリベリスタを認識しはいるようだ。明らかに通常よりも巨大な梅干しの種が飛んでくるが、飛距離が足りず目前に転がってくるばかり。 「まあ、こういう風に種を飛ばして遊んだりした事はない訳じゃない」 義弘は転がってきた梅干しの種を見て、飛ばして遊んだ事を思い出す。故に、こいつが生まれた一因は自分にもあると義弘は思う。 だからと言ってやられてやるわけにも、被害を出すわけにもいかない。輝く護りのオーラが義弘の体を覆う。 「種? 拙者の知ってるウメボシは種ではゴザらぬような……」 同じく梅干しの種を見て首を傾げつつも、ジョニーは体内の気を制御して戦いの為の構えを整える。 「予定外の事があると、楽をしづr……ああいや、被害が拡大しかねないからね」 寿々貴が強結界を展開する。うっかり本音漏れかけませんでした? 「そんじゃ、花見の場所取りしちゃってる梅さんを排除に出向きますか」 『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)が、2丁の銃を構える。 「任務を開始する」 同様に護りのオーラを纏ったウラジミールの言葉を合図に、梅干しの種と酸っぱさが飛び交う戦いの火蓋が落とされた。 「全力で伐採してやるぜ」 梅干ツリーの一端の紅梅に、輝く刃を纏った義弘のメイスが叩き込まれる。 「油断なくいくぞ」 その紅梅から放たれた種を半身を引いて避けながら、ウラジミールも手にする独特の刃を持つロシアの軍用ナイフに輝きを纏わせて斬りつける。 更に疾風の龍牙が、ジョニーの鉄甲が。雷を帯びた2人の闘技が風よりも速く繰り出され、ウネウネ動く梅干ツリーの枝を叩き折り幹を焦がして削る。迅雷を締めくくったジョニーの蹴足が、一本の紅梅をへし折った。 「これがNINJAスタイルでゴザル!」 忍者は体術に長けていたとも言われている。タフネスな格闘スタイルをNINJAと言うのも、あながち間違っていないかも知れない。 半円状の配置の端から攻撃を仕掛けたリベリスタ達。結果、センターの梅干ツリーが 間合いを詰めて梅干ツリーに接近したのは、男性陣4名だ。残る女性陣4人が後方からの攻撃と支援を担うと、奇しくも綺麗に男女で担当が別れた。 しかし、如何せん敵の数が多い上に、梅干しツリー達も遠距離攻撃が主体だ。全ての梅干ツリーの射程に入らない様半円状の端から攻撃を仕掛けるものの、後衛の女性陣も敵の射程に入らざるを得ない。 ゴチンっとニニギアの額を一際大きな梅干しの種が撃ち抜いた。 「すっぱい! 生易しいすっぱさじゃない!」 骨まで響いた痛そうな音がしたが、ダメージよりもニニギアが気になったのは梅干しのすっぱさ。 圧倒され、思わずすっぱ顔になってしまう。その生易しくない酸っぱさに、彼女の脳裏に浮かんだもの、それは。 白いご飯!(炊きたて) (ああっ、ごはんがほしい、このすっぱさで何杯でもいけるわ) ほかほかのご飯の上に梅干しが乗ってる図を想像しながら放つは、聖神の名を冠する癒しの息吹。 「流石ニニギアさん。すずきさんは楽でいい」 前衛陣の傷が癒えていくのを見ながら、寿々貴が飛ばす効率的な攻撃指示。 「こういうタイプには火炎攻撃がお約束だよね~」 雛乃は景気よく梅干ツリー達の中で炎を炸裂させて行く。残念ながら、こうかはばつぐん、とはならないし継続して燃やせるのは1、2本。敵の再生能力を上回る程ではないが、それでも再生する相手に継続ダメージは中々に効率が良い。 多かれ少なかれ酸っぱさを感じるリベリスタの中で、酸っぱさと無縁でいる者が1人。 あばたが梅干ツリーの種の届く距離よりも遠くから、2人の物理学者の名前を冠した2丁の大型銃の引き鉄を引く。落ちる1¢硬貨すら撃ち抜く精密射撃が、既に抉れていた幹を再生するよりも早く削り取ってトドメを刺す。 あばたにとって、この戦いは過日マスターしたばかりの精密射撃スキルの試運転も兼ねていた。 「動かない相手とは、まさにうってつけではありませんか」 当たらなければどうと言う事はない。その技術を実践し磨くのに、これほど適した敵もいない。 ――流石に切り倒されれば死ぬだろう? 折れて力尽きる一本の梅を見ながら、あばたは笑みを浮かべて次の標的へと照準を合わせた。 ● 大きな梅干ツリーを後回しに、周囲の梅干ツリーを各個撃破で倒してくリベリスタ達。再生能力を持つ敵に対し各個撃破は、最適な方針と言える。 一本、また一本と、川原から紅白が減っていく。 敵も黙って伐採されてるわけではない。リベリスタ達の頭上から、テニスボール大の梅干しの種が降り注ぐ。更に周囲の梅干ツリーも種を飛ばし、酸っぱい匂いを戦場全体に漂わせ、意志力を削いでいく。 極力、多数の攻撃範囲に入らない様にしていた雛乃だが、敵に攻撃を届かせる為には敵の射程内に入らざるを得ない。運悪く圧倒された所に連続で種に撃ち抜かれ、運命を削って立ち上がる。 「ますます梅干し嫌いになりそう。梅の花の香りをちょっとでも期待したあたしがバカだったよ!」 梅の花も咲いている。咲いてはいるが、雛乃のいる所までその香りは届かない。香るのは、酸っぱさだけだ。 苛立ちは炎に乗せて。魔炎が梅干ツリーを3本まとめて燃やした。 「梅の香りに幻惑されてはいかんぞ」 そんな中、感じる酸っぱさにも圧倒されずに戦線を支えるのは敢然たる絶対者であるウラジミール。邪気を退ける光を放って仲間についた異常を払っていく。 「ウラジミールの旦那。次は俺がやる」 「心得た」 義弘も同種の、一段強い邪気を寄せ付けぬ光を放つ技を持つ。2人が攻撃と支援を交互に担う事で、酸っぱさに因る不利を一時的なものに抑えていく。 「負けるものですか……!」 ニニギアが全員に届く癒しの息吹を招き、体力面から戦線を維持する。彼女の脳裏に浮かんだご飯は、既に何杯目になっただろうか。 「やれやれ、思ったより忙しいですね」 割が良いなどと言っていた寿々貴だが、その役割は実に多岐に渡っている。仲間への攻防両面での支援に、回復面では仲間を賦活する清かな微風を吹かせ、時には仲間が全力で戦える様にと気力を分け与える。 「ウメボシとはこんなにサワーなものでゴザルか」 酸っぱさに顔をしかめつつ、ジョニーが梅干ツリーの間で手足に雷を纏わせて、種が付いた枝を薙ぎ払う。 「梅干のポイ捨てがこんな事になるなんて、笑えないぞ」 疾風の放つ目にも止まらぬ蹴り。虚空すら斬る蹴撃が、立ち並ぶ梅の木を纏めて貫いて飛ぶ。 「『ゴミ』は『ゴミ』なりに、データ取りに役立って下さいませよ」 削れた所を的確な射撃で狙い撃ち、梅干ツリーをまた一本葬ったあばたは、にべもない。まあ、所詮元は食べ残し。ゴミに違いない。 「さて、後はお前さんだけだ」 最後の白梅を薙ぎ倒し、義弘のメイスが残る大木に向けられる。 「エリューションとはいえ、相手は木。上手くいけば燃えるはず」 ジョニーが拳に炎を纏わせ、放つ正拳突き。出し惜しみせずに大技を放ち続け、さすがに大技を使う気力はなくなっていた。 とは言え、相手は7m近い巨木。その幹を外す筈もない。 「ほら、明るくなったでゴザろう」 首尾良く燃え移る炎。まぁ、昼間だから明るさあまり変わってないですけどね。 しかし、言葉とは裏腹にジョニーの表情は固い。ウネウネ動く枝が邪魔な上に、伝わった手応えはこれまで倒したツリーに比べかなり硬かった。 「む……これは、随分と固いな」 ウラジミールも、突き立てたナイフから感じた硬い手応えに眉をしかめる。 疾風の蹴撃が虚空を貫き、幹を削り枝を切り落とす。しかし、彼も大技を放てる限界が近づきつつあった。果たして気力が尽きる前に倒せるか? 前衛陣が硬さにやや驚きを覚えたその時、後方から4色の光が梅干ツリーを貫いた。 雛乃が御神木の杖から放った、異なる属性を重ねた魔術のQuartet。 物理的にはかなりの硬さを誇る梅干ツリーであったが、神秘的な力に対してはそうでもない。見えた突破口。 それを見たニニギアが、紡ぐ詠唱を変えた。 紡いだ聖なる呪言を刻めば、浄化の炎が梅干ツリーを包み込む。 「灰になっても香るのかしら?」 回復に徹していたが、攻撃面でも二二ギアの火力は高い。その上、浄化の炎は梅干ツリーの硬い表皮を燃やし、力を削いでいく。 「まあ、回復はすずきさんが何とかしましょう」 そう言って、寿々貴が自分自身の気力を回復させる。元より寿々貴は攻撃スキルを用意していない。支援と回復に徹するつもりだったのだから、やることは変わらない。楽は出来そうにないけれど。 遠方から響く銃声。戦闘が長引いても、あばたのやることは変わらない。 小さくとも傷が付いたなら、そこを狙って引き鉄を引く。弾丸が巨木を貫けば、脆い一点を貫いたか大きなヒビが縦に走った。匠の域に達した技術は、時に稀な幸運すら引き寄せる。 それでも、残る枝から種が投げられる。リベリスタ達を何度も酸っぱ顔に陥れてきた攻撃だったが。 「簡単に喰らうわけにはいかない」 ウラジミールのグローブを纏った手がそれを止めた。 浄化の炎で力を削がれた今となっては、それはウラジミールの防御を貫ける力を持たない。 絡め取ろうと梅干ツリーが枝を伸ばすが、疾風が一時、防御に専念し柔軟な動きでそれを回避してのける。 「サワーフレーバーはもう充分でゴザルよ!」 ジョニーの蹴りが空気の層を斬り裂く刃となり、再生する枝を切り落とし幹に傷を付ける。 枝を、削れた幹を。梅干ツリーは再生させて行くが、表皮が燃え落ちた今、リベリスタ達の攻撃は容易くそれを上回る。 「わたし、すっぱいものだって好きだけど――そろそろ甘いものが食べたくなってきたわ!」 二二ギアの放つ浄化の炎が、しぶとく残っていた梅干ツリーを燃やし尽くした。 「パベータ。任務完了だ」 ● 無事に全ての梅干ツリーを倒したリベリスタ達は、すぐにアークに帰還……しなかった。 うららかな春の陽気の川原、他に人もなし。少しくらい寛いでのんびりしてから帰っても、ばちは当たるまい。 「桜はまだだし……少し昼寝でも。報告とか後でいいよね」 寿々貴は日当たりの良い川原にごろり。そのまますよすよ。春の陽気と梅の残り香に包まれて見る夢はどんなものか。 「お茶にしましょう。和菓子もあるのよ」 すっぱい感じをなんとかしたい。二二ギアが取り出したのは水筒と和菓子。甘いもの食べたいと言ったのは、持参してたからか。 「おにぎりもあるけど?」 「おにぎり!?」 でも、雛乃が持ち込んでいたおにぎりにも思わず反応してしまうニニギア。 戦闘中にご飯を思い浮かべていたのだから、仕方がない。 「ビールもありますよ」 「お、いいねぇ。ウラジミールの旦那と、疾風の兄さんとジョニーの兄さんもどうだい?」 あばたが持参した缶ビールに笑みを浮かべる義弘。純粋に、花を楽しむのも悪くないと思っていたが、こうしてビールがあるなら話は別だ。たまには明るい時間に飲むのも良いだろう。 「折角だが、拙者は走るでゴザル!」 言うが早いか、走り出すジョニー。川原といえば走るモノ。その認識どこで仕入れた。 「ウメボシのフレーバーが、逃げたくなる程サワーフレーバーだったから! とかではないでゴザルからな!」 違うったら違う。 「いかん、目に染みるでゴザル……」 密かに抱える悩みを振り切るかのように、ニンジャはひたすら走る。 「春の兆しがあちらこちらに感じられるな」 「そろそろ花見の時期ですね。桜は咲いてるだろうか?」 対岸にも、川原の土手の上にも桜の木がズラリ。ウラジミールと疾風の目には、その中に、ほんの数輪だが既に開いている桜の花が見えていた。 三高平にも、もうすぐ桜が咲くだろう。 ジョニーが走り終えるのと、寿々貴が目覚めるのを待ってから、少し散策して8人は帰還したのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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