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はるの訪れ、しあわせ探し


 はるがくる。はるがくるからうさぎがはねる。
 あちらの茂みにひとつ、菜の花の影にひとつ。まだ咲かない桜の木の影に、ひとつ、ひとつ、もうひとつ。
 まっしろなウサギは、綺麗な洋服に身を包んだウサギは、あちらへこちらへ気儘に跳ねまわる。
 籠いっぱいのタマゴを隠し終わると、イヒヒヒヒと楽しそうに、それはそれは楽しそうにわらった。


「お菓子、食べ放題アルか!!」
「うん、見つけることが出来たらね」
 ブリーフィングルームでは、『迂闊な特攻拳士』李 美楼 (nBNE000011)と、『セントエルモの灯火』白河 よふね(nBNE000250)が何やら楽しそうに語らっていた。
 ブリーフィングルームの前を通ったリベリスタたちに、よふねが声を掛ける。
「あ、まってまって! ねえ、時間あるなら僕の話、聞いてくれるかな?」
 へらりと笑みを浮かべて、リベリスタたちをブリーフィングルームへと招き入れる。
「イースターって、知ってる? 僕はそんなに詳しく無いんだけれど」
 それは、復活祭と呼ばれるお祭り。
 日本ではそこまで馴染みが無いが、誰しも一度くらいは耳にしたことがあるだろう。
 その日には、イースター・バニーと呼ばれるウサギがいろいろな所にタマゴを隠していくそうだ。
 そして、そんなイースター・バニーに似たアザーバイドが、この三高平に現れたらしい。
 そのアザーバイドは色々な名前を名乗るので、便宜上イースターさん、と呼ぶことにした。
 イースターさんが置いていったタマゴのなかには、とてもとてもおいしいお菓子が入っているらしい。
「お菓子食べ放題って、よふねが言ってたヨ!」
「イースターさんが帰るまでにまだすこし時間があるから、会ってみたいなあって思ったんよ。
 おいしいお菓子にあたたかな日差し。きっときっと、しあわせな気分になれるんよ」
 よければ、一緒にどうかなあ?
 リベリスタを誘うよふねの背中では、はたはたと白い翼が楽しそうに揺れていた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:あまのいろは  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年04月04日(木)22:57
 イースターエッグに、むねきゅん(死語)。あまのです。
 はるがきたので、うさぎがきました。なので、たまごをみつけましょう。

●行動や場所など
1.タマゴ探し
2.見つけたタマゴのお菓子を食べる
3.イースターさんと交流
4.その他

 選択肢として。プレイングの最初に番号をお願い致します。
 未成年の煙草やら飲酒やら、公序良俗に反する行動はダメダメです。
 それ以外でしたら、ご自由に。出来るだけ描写したいと思っております。
 
 場所はどこかの森のなか。
 春らしい花が咲き始めていますが、桜はまだ咲いていないようです。
 イースターさんの隠したタマゴがあちらこちらにあります。

●アザーバイド『イースターさん』
 春が近くなると、ボトムのあちらこちらにお菓子の入ったタマゴを置いてまわるアザーバイド。
 名前は聞くたびにころころ変わるので、便宜上『イースターさん』とよふねが名付けた。
 タマゴがたくさん入った籠を持ち歩いているが、すべてどこかに置いたらしく今はからっぽ。
 ベストに帽子、見た目は正装をした兎。服装はどことなく奇抜。
 笑い上戸で騒がしい。落ち着きが無くあちらこちらをぴょんぴょこ跳ねる。
 会話は可能。けれどたまに話が噛み合わないかもしれない。
 楽しい事が大好き。お話するのも大好き。ほんとうはひとに見つかってはいけないらしい。
 フェイトは得ていますので、ご心配なく!

 タマゴはすべてに綺麗な絵が施されています。割るとお菓子が出てきます。
 タマゴのなかに入っているお菓子は、チョコやマシュマロ、ゼリービーンズなど。
 他にも色々入っています。どれもとてもおいしいです。

●備考
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。←重要!
・獲得リソースは難易度Very Easy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。
・特定の人と絡む場合は『時村沙織 (nBNE000500)』という形で名前とIDをご記入ください。
・NPCを構いたい場合も同じですが、IDとフルネームは必要ありません。名前のみでOKです。
・グループ参加の場合は【グループ名】のタグを冒頭にお願いします。
 このタグで括っている場合は、個別のフルネームをIDつきで書く必要はありません。
(グループ名は必ず『全員』で記載をお願いします。記載がない場合迷子になる可能性があります)
・内容は絞った方が描写が良くなると思います。

●参加NPC
 李 美楼 (nBNE000011)と、
 白河 よふね(nBNE000250)の、二名が同行します。
 美楼はタマゴ探し、よふねはイースターさんの様子を見てのんびりしています。
 お誘い頂ければどこにでも顔を出しますので、どうぞお声掛けください。
参加NPC
李 美楼 (nBNE000011)
 
参加NPC
白河 よふね (nBNE000250)


■メイン参加者 30人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ホーリーメイガス
アリステア・ショーゼット(BNE000313)
デュランダル
東雲 未明(BNE000340)
ナイトクリーク
斬風 糾華(BNE000390)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
プロアデプト
オーウェン・ロザイク(BNE000638)
ナイトクリーク
五十嵐 真独楽(BNE000967)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
ナイトクリーク
リル・リトル・リトル(BNE001146)
ナイトクリーク
神城・涼(BNE001343)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
ナイトクリーク
レン・カークランド(BNE002194)
クリミナルスタア
烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)
ダークナイト
フランシスカ・バーナード・ヘリックス(BNE003537)
レイザータクト
ミリィ・トムソン(BNE003772)
レイザータクト
伊呂波 壱和(BNE003773)
レイザータクト
リオン・リーベン(BNE003779)
レイザータクト
ユイト・ウィン・オルランド(BNE003784)
レイザータクト
ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)
マグメイガス
シェリー・D・モーガン(BNE003862)
覇界闘士
喜多川・旭(BNE004015)
レイザータクト
神葬 陸駆(BNE004022)
ソードミラージュ
七月・風(BNE004135)
ナイトクリーク
浅葱 琥珀(BNE004276)
ミステラン
チャノ・ビスマス(BNE004327)
ミステラン
ヘンリエッタ・マリア(BNE004330)
ミステラン
ルナ・グランツ(BNE004339)
ミステラン
エフェメラ・ノイン(BNE004345)
マグメイガス
フィリス・エウレア・ドラクリア(BNE004456)


 寒さが和らぎ、新緑が芽吹き始める。あたたかな日差しと、ほのかな花のかおり。はるである。
 楽しそうな笑い声の主は、ピンとまっしろな耳を立てると、まあるい赤いひとみをくるくる動かした。
 どうやらひとがくるようだ。異界からの来訪者は思案する。シンキングタイム、ほんの数秒。ほんとうはダメだけれど。まあいいかいいじゃないか、はるだからね!ケラケラ!

「むむむ、モノ探しか! それならば犬ビーストハーフの私にお任せである」
 えへんと大きな胸を張る。ぴくぴく、くんくんくん。ベルカの耳と鼻が忙しなく動く。
「この身に息づくハスキー犬の因子よ、今こそ顕現せよ!」
 彼女は異界からの来訪者―――イースターさんが隠したという、タマゴを探していた。
 そんな彼女は、花のなかにまるくてふわふわした、何かが埋もれているのを見つけた。明らかにタマゴではないけれど、好奇心が勝った彼女はその何かに手を伸ばす。その瞬間。
 その、何かが跳ねた。同時に響く楽しそうな笑い声。何かは彼女の前にすたっと着地すると、帽子をとって仰々しく一礼。ウサギのみみが、ゆらり揺れる。
 成程。情報通り、落ち着きがなく騒がしい、ウサギに似た来訪者。イヒヒと笑いながら、ぺらぺら饒舌に喋り続ける。近くで様子を見ていたフランシスカが口を開いた。
「タマゴを隠す、ウサギさん? あの、お名前は?」
「おや? 御嬢さんワタシのことをご存知で? こりゃ驚いた! ワタシはヒェンヒェンというよ!」
「わたしたち、タマゴを探しにきたんだ」
「そうかそうかナルホド! ぜひぜひ楽しんで探しておくれ! はるだからね!」
 イースターさんは楽しそうな笑い声を残すと、フランシスカの前から跳ねて跳ねて姿を消した。

「今からよーいドンで、どちらが先に見つけられるか勝負しようでござる」
「その勝負、乗ったネ」
 美楼はさらりとその勝負の承諾。ユイトの掛け声で、勝負は始まるはずだった。
「あ、その前に肉まん食べないか?」
 食べるネ!と差し出された肉まんを口いっぱいに頬張った美楼を置いて、ユイトはひとり駆けだした。
「くーっくっくっく! 忍者は忍務の為なら汚い手も使うってマンガとゲームで学んだでござる!」
 スキルも使い、木の上や足元の草も隅々までしっかりチェック。そんなユイトに、勝てる筈もなくて。
 ユイトずるいヨ、と頬を膨らまして抗議すれば、ユイトはタマゴの中身を半分渡す。
「勝負に乗ってくれたお礼。美楼殿にあげるでござる」
 タマゴの中身は、金平糖。ひとつ口に放ればにふわり、あまさが広がった。
 同じように、未明とオーウェンはちいさな賭けをして、タマゴ探しの勝負をしている。
「より多く見つけた者が、一つだけお願いを聞くというのは如何かね?」
 そんな恋人の提案に乗って。それでものんびりと、探すことを楽しむ未明。けれども、オーウェンばかりがサクっとタマゴを見つけ続けていれば、流石に焦るというものだ。
「まさか透視? それは流石に大人気なくない?」
 そんな仕掛けに気づいた未明は、賭けはやめて代わりにヒントを頂戴と、オーウェンに詰め寄る。
「全ての資源を応用するのが、俺のやり方なのであるが……まぁ仕方あるまい」
 苦笑したオーウェンは未明の手を引いて、ひとが少ない花畑へと案内した。やっとタマゴを見つけた未明は、綺麗なタマゴをそっとてのひらに包み込む。今日という日の記念に、大事に持って帰ろう。
 そんな彼女を見ていたオーウェンが、唐突に未明の頬をつついた。なあに、と未明が振り向けば、オーウェンの唇が未明の頬に優しく触れる。
「大好きだ。ミメイ」
 耳元で囁かれたことばは、お菓子よりもとびっきりにあまいあまい、あいのことば。

「幸せは探す過程を楽しまなきゃです。普通に探しましょう」
 探す過程も、楽しまなければ。楽してしあわせになっても、きっとつまらないだろうと、風は思うから。
「さてさて、幸せの卵は何処かなぁ……」
 楽しそうにちいさなしあわせを探しいてた彼が見つけたタマゴは、可愛らしい花が描かれている。
 割ることを躊躇するが、お菓子は食べたい。悩んだ末にタマゴを割って出てきたのはマシュマロ。
「やっぱり、幸せは自分の手で掴まないと面白くないですよね」
 ふわふわあまいしあわせが、口のなかでやわらかく溶けていく。
「うーっす美楼、いいタマゴみつかった?」
「まだ全然ヨ。探すのって難しいアルゥ」
 夏栖斗と美楼は、地面を掘り返したり枝葉の間を覗き込んだりしながらタマゴを探す。ふたりは同じ覇界闘士、弾む話もたくさんあることだろう。
「ひとつ、……ふたつくらい余分にもらっていいのかな? 彼女と妹にプレゼントしたら喜ぶかなって」
「きっと大丈夫ヨ! 皆が喜んだほうがイースターさんも喜ぶネ!」
 そうして、ふたりで見つけたタマゴ。ただ割るだけじゃつまらない。夏栖斗が斬風脚を用いて、タマゴの上辺だけを綺麗に切り取ってみせた。
「どう? カッコイイ? あちょーって感じで。美楼もやってみてみ」
 にんまり笑う夏栖斗にぱちぱち拍手。その真似をして美楼もタマゴを割ろうと試みる。
 が、美楼はそう、迂闊なのだ。見栄を張ろうとした美楼が割ったタマゴはぐしゃり、無残な姿に。
「ほら、他の覇界闘士の動き方も見て精進あるのみ!」
 がっくりと肩を落とす美楼を夏栖斗が慰める。その近くに居た風は美楼にマシュマロを差し出して。
「沢山ありましたので、良かったらおひとつどうぞ!」
 風がにぱっと笑顔を浮かべる。誰かと分け合うのも、きっとしあわせ。だって、笑顔が増えるのだから。
 笑顔はひとつでも多いほうがいい、そう決まってます。そう告げた風は、ふわふわ優しく笑った。

 見つけたタマゴを手に、すとんとリルが腰を下ろす。偶然通りかかった少女たちとぱちり、目があった。
「こんにちはぁ♪ あのね、よかったら一緒しよー? わたしね、旭ってゆーの。よろしくねぇ」
「リルはリルッスよ。よろしくッス」
「ボクはエフェメラだよっ!よろしくねっ♪ リル君に、アサヒちゃん!えへへっ♪」
 偶然出会ったさんにんで、開催された青空の下のティーパーティー。
 それぞれが見つけたタマゴを持って。持ってきたお茶を準備して。大きな葉っぱをお皿代わりにして。
「かわいー男の子がリルさんで、うわさのフュリエさんがエフェメラさん。おぼえた」
「……かわいーって言われると照れるッス……。旭さんもッスけど、やっぱりフュリエって美人ッスよね」
 楽しげな会話とともに、ティーパーティーの準備は進んでいく。
 さんにんでぱかり、タマゴを割った。出てきたのは、スノーボール、ゼリービーンズ、マシュマロ。ちいさくて可愛らしいお菓子が葉っぱの上に広がる。
「わ、かわいい……! ちっちゃくてもちゃんとほろほろ、クッキーしてる」
「ふわふわで甘いー♪ ねね、よかったら交換しよっ♪」
「色とりどり、カラフルで美味しそうッス。二人のも美味しそうッス。リルも交換してみたいッスよ」
 自分のお菓子を少しずつ分けて交換こ。葉っぱのお皿は、なんとも賑やかになる。
「えへへ、みんなでいると楽しいねっ♪ こういうのが、幸せっていうんだねっ♪」
 エフェメラの言葉に、さんにんは顔を見合わせて微笑んだ。
 みんなが楽しければ、しあわせ。みんなで食べれば、しあわせ。みんなで笑えば、やっぱりしあわせ。
 はるは、出会いの季節。さんにんのもとにも、はるは新たな出会いを運んだようだ。


「ボトムの春はすばらしいね」
 フュリエであるヘンリエッタは、一面に咲いた菜の花に、未だ咲かぬ桜の木に語りかける。
「うさぎのような姿のひとが隠した卵を知らないかい? オレもしあわせをひとつ分けて貰いに来たんだ」
 ヘンリエッタの言葉に応えるように、さわさわと優しく菜の花が揺れる。
 その言葉を聞き取った彼女は感謝の言葉を述べて、植物たちの導きを頼りにタマゴを見つけ出す。タマゴには、明るく輝くお日様の模様が描かれていた。
「さて、どうしようか?」
 ほそい指で、タマゴを軽くノック。からから、おとがする。クッキーだろうか、キャンディだろうか。
「今読んでいる本たちを読み終えたら、返すついでにイースターについて調べてみよう」
 ボトムには知らないことがたくさんある。不思議なタマゴは、彼女の知識欲をくすぐったようだ。
 森の中で食料探し。昔を思い出す。少し趣は違うけれども、タマゴ探しをシェリーは楽しんでいた。
 探すことには慣れているようで、シェリーはタマゴをどんどん見つけていく。
「綺麗な模様がいっぱいじゃな」
 タマゴをひとつ、バスケットから取り出して。片手でタマゴを割ると、そのまま口のなかへ。
「確かにうまいのじゃが、一人で探すと飽きてくるの。雪待でも連れてくればよかった」
 気分転換。シェリーは自然のなか心休まる時間をくれたイースターさんに感謝する。
 シェリーの背後を、真独楽の目の前を跳ねていくイースターさんを、真独楽はぎゅっと抱きしめる。
「きゃ、超かわいい~♪ お耳触っていーい?一緒に写メとっていーいっ?」
 けれど今日はタマゴを探しに来たのだ。もふもふはほどほどにして。
「ねぇねぇ、ヒントとかないの?」
「ありますよ! すぐちかくに、そばに、こころのなかに! いつだって!」
 そんなヒントと笑い声を残して去っていく。真独楽はタマゴを探すが、はるの暖かな日差しの下。真独楽の瞳が、うとうと、ゆっくりと瞬く。ふわ、とちいさな欠伸もひとつ。
「………ふにゃ!寝ちゃダメ、キレイなタマゴ、みつけるんだか、らぁ……」
 柔らかな草の上にころんと横たわる。暫くすると、すやすやと聞こえてくるちいさな寝息。
 スイートアリッサムあまい香りのなかに、隠れたピンクのタマゴがひとつ。気持ちよさそうに揺れる真独楽の尻尾が、こつんと触れた。
「……はっ、つい寛いでごろごろしてしまいました」
 真独楽のすぐ隣。ぱっと体を起こしたチャノは、きょろきょろと周りを見回す。寝ている姿に気づくと、静かにその場を後にして。緑の森の散策を楽しむ。
 植物が多い場所は、チャノにとっては心落ち着く場所。草木は楽しそうで、まるで故郷ラ・ル・カーナのようだ。植物に語りかければ、悪戯な気配をピンと感じ取る。
「あったー。見つけました! 想像したよりずっときれいです、感激です!」
 チャノは大事そうにタマゴを持つと、誰かと見せ合おうと楽しそうに駆けて行った。

 逃げるウサギと、追いかけるひと。イースターさんを、琥珀が追いかけ回している。
「イースターさんと交流できる機会なんてそうそう無いよな!」
「こら、待て……少し足が速いぞっ! 童心に帰るのは良いが、こちらを少し気しろ……っ!」
 繋いだ手と手。引っ張られる形で、フィリスが琥珀の後ろをついていく。ヒールを履いてきたことに、すこし後悔。
「勢いよく歩きすぎた? こんなんじゃお姫様のエスコートとしては失格かな?」
「私とて、無理にエスコートをさせようとは思わないぞ?」
 楽しめればいい。笑顔を見るのは嫌いではない。楽しそうな琥珀を見るのは、すこし楽しい。もふもふを堪能した琥珀はぽーんとイースターさんを投げる。
「む、とっ?! こ、こら、危ないではないか!」
 慌てながらもしっかりとキャッチしたフィリスは、苦しくないようにそっと、腕のなかに抱きかかえた。
「今日は付き合ってくれてサンキュ!」
「き、気安く頭を撫でるでない! も、もうお前など知らぬ!」
 琥珀は、そんな様子を見ると満足そうにふたりの頭を撫でた。フィリスは、赤く染めた頬を気取られないようにと、ぷいと顔を背けたのだった。
 タマゴを抱えたレンと陸駆が、日向ぼっこをしている新米フォーチュナの元へ。
「今日はまたメルヘンな予知だな。うむ、悪くないぞ」
「結構たくさんみつかってよかったな。こういう予知が見れるのは、すごくいい」
 命の恩人であるふたりの言葉に、よふねは嬉しそうにはにかむ。
「よかった、楽しんでくれてる?」
「そういう貴様の調子はどうなのだ、アークは居心地がいいか?」
「最初は色々戸惑うことも多いだろうが、みんな力になってくれるはずだ。遠慮しないで頼ってほしい」
 伝えたいことはたくさんあるのに、その優しさが嬉しいからだろうか。うまく言葉にならない。
「貴様の予知能力は、僕達を助ける大事な力だ! また何があっても僕がちゃんと助けてやる!」
「現場で戦うばかりがリベリスタではない。よふねの力で、俺たちは何倍もの力を発揮できる」
 話しながらタマゴの中身、マシュマロにチョコレートをさんにんで分け合って食べる。
 歯医者は怖いから嫌だという少年に、ふたりが楽しそうならよかったという青年に。
 おかえりって言うから、帰ってきてね、と。短く告げれば、ふたりは笑って頷いた。
「貴様は貴様の思う通り、僕らに予知を届けてくれ。僕もレンも喜んで向かおう!」
「帰ってきたときに迎えてくれるのは、すごく嬉しい」
 喉まで出かかった、無理はしないで、なんて言葉と一緒に飲み込んだチョコレートはすこしだけ、苦い。


 春の日差しが心地良い。青い羽根がおひさまをいっぱいに浴びて、きらきらと輝いている。
 イースターさんがきた、運命の悪戯に感謝する。そんな亘の前を、茶色の長い髪が遮っていった。
「初めまして美楼さん、自分は天風亘と申します。宜しければ以後お見知りおきを……」
 深々と一礼。かのファイエット家の令嬢に仕える亘だ。どんな時でも礼儀を弁えている。
「ふふ、美楼さん。今日は休みですがちょっと修行も兼ねて探してみません?」
「修行! もちろんやるヨ! 何するアルか?」
「何ちょっとだけ最大限の力で探すだけです。遊びも本気でやってこそ楽しいですし」
 亘が空へと飛びあがる。亘は空で、美楼は地上で、タマゴを探し始めた。
 アリステアと涼の見つけた、色とりどりのタマゴ。見ているだけで、なんだか楽しくなってくる。アリステアの頬がゆるんだ。
「このたまご可愛いねー!」
「綺麗な絵だし割るのは少し勿体無いね」
 笑いながらも、涼がタマゴを割る。なかから出てきたお菓子を口に頬れば、涼の頬もゆるんだ。
 美味しそうに食べる彼をじ、とアリステアが見つめている。彼女のてのなかには、タマゴがそのままちょこんと乗っている。アリステアの口の前につい、と差し出されたチョコレート。
「ふぇ? えっと……」
「アリステアも食べる?」
 すこし遠慮がちに、差し出されたそれを口のなかへ。あまいお菓子の味も、なんだかよくわからないのは、なぜだろう。アリステアと涼の視線がぱちりぶつかる。 
「えっと、お返しにどうぞなのです。食べてくれる?」
 涼は、視線を逸らして頬を掻く。すこし気恥ずかしいけれど。その申し出を断るわけがない。
「……恥ずかしいけれども、美味しいね」
 アリステアの頬がまた、桜の蕾よりもあかくあかく色付いた。花が咲くまで、きっと、もうすこし。

 よっつのティーカップに、お茶が注がれる。
「さあ、素敵なティーパーティーを楽しみましょう。私には紅茶をお願いね」
「いろいろ支度してきたのだな。すまないな、手伝えばよかったか」
「いえいえ、お気になさらず。美味しいお茶になるように頑張って淹れるのです」
 リオンの言葉に壱和が笑んだ。糾華に差し出された紅茶から、ふわり昇る湯気と、あまいかおり。
「素敵な贈り物をくれたイースターさんと、お誘いしてくれたよふねさんに感謝しないといけませんね」
 やさしく笑んだミリィ。彼女こそが今日のパーティーの主役だということを、ミリィ本人は知らない。
 お菓子を好感して、お茶を飲んで。やわらかな日差しのなか、おだやかにパーティーは進行していく。
 糾華がタマゴと一緒に、綺麗に包装された箱をミリィの前へ。ミリィがきょとんと首を傾げた。
「28日が誕生日だったわよね? おめでとう、ミリィさん」
「トムソンは先日誕生日だったな。おめでとう」
「ボクも、タマゴいっぱい見つけてきました。おめでとうございます」
 きんいろのひとみが、ぱちぱち、またたく。ああ、こんなことって。なんてなんて、しあわせなこと!
 ミリィには秘密だった、バースディパーティー。ペーパーナイフに懐中時計、それからタマゴ。どれも、すてきな想い出と宝物になるだろう。
 そういえば、と糾華が口を開いた。皆同じ指揮者だけれど、私だけ全く畑が違うのね。
「……同職同士のお茶会にお邪魔しちゃったかしら?」
「お邪魔だなんて、とんでもない!」
「畑は違いますけど、斬風さんも大切な仲間です。気にせず楽しみましょう? 冗談でも寂しいです」
「さほど気にする事はないのだがな。穏やかなときを楽しむのに垣根は不要だ。そう思わないか?」
 間髪入れずに続いたさんにんの言葉に、くすくす笑って紅茶をひとくち。
「……なんて、冗談よ?」
 尻尾がぱたり、服のなかに隠れて嬉しそうに揺れて、あの、と遠慮がちに壱和のこえ。
「皆さんを名前で、呼んでもいいでしょうか」
「もちろん、だって、もう友達でしょ?」
「勿論。だって私達、友達じゃないですか」
「呼び方は如何様にしてもらっても構わない。俺は、そうだな。同姓のものが出たら考えようか」
 なんてな?と、リオンが笑った。よっつのえがおに、わらいごえ。しあわせ音色の、カルテット。

 リベリスタたちの楽しそうな姿をみて、イースターさんも楽しそうにケラケラわらっている。
 そんな彼に悠里がすっとちいさな箱を差し出した。きょとんとひとみをまるくして、悠里を見る。
「初めまして。僕は設楽悠里。うさぎさんはお名前なんていうの?」
「名前? 名前はそうだねどうしよう、イベリスなんて如何かな?」
 笑い続けるイースターさんに釣られて、悠里もわらった。
「折角なんで簡単に食べれるサンドイッチも作ってきたけどうさぎさんも食べるかな」
「なんと! きゅうりがいいね、きゅうりはあるかな。レタスもいい。けどマスタードはいただけない!」
 自炊してるから味には自信があるよ、と差し出されたサンドイッチをちいさな手が掴んで、ぱくん。
 これは美味しい! お耳をぴくぴくさせて、イースターさんがころんころんと芝の上を転がる。
「みんなに幸せを配ってくれた君にお礼というかねぎらいというか」
「ありがとう、設楽悠里。ああけれど、マーチヘアやホワイトラビットとワタシを一緒にするのはよろしくないね! だって私はイースター・バニー!」
 そんな会話をしていると、誰もがよく知る人物が現れた。あの、戦略司令室長、時村沙織である。
「イースターさんに用事があるんだ。やぁ、愉快な兎さん。ちょっといいかな?」
 彼への評価は様々だが、そんな彼にめろめろになる女性は後を絶たない訳で。そんな彼の笑顔で言われたら、悠里も思わずイースターさんから離れる訳で。
「ふははっ、ははははは!! イースターさんは私が頂いた!!」
 勿論、多忙な彼が来ている筈がない。イースターさんを独り占めするが為に、エーデルワイスが彼の姿を借りたのだ。彼女はイースターさんを抱えると、風のように去っていった。
「美楼のために、バニー服を用意しました」
「バニー服?」
「そう! バニー服! よふねも着たいって? 仕方ないなあ。復活祭だし、春だし、サービスだよ?」
 ほんとだったら男になんか着せないんだからねっ!と、間違ったツンデレ(のようなもの)を振りまく竜一が、美楼にバニー服を押し付ける。こんな未来すこし見えたんだ、と呟いたよふねの声はとどかない。
 バニー服を押し付けて満足そうな竜一は、イースターさんを発見するとそちらに方向転換。
「よし、俺は遊びに行こう。うさぎだし、もふもふしたいし」
「このもふもふ感は渡さないのですね」
「バニー服貸」
「いらないのですね」
 ふたりの間に火花が舞ったその瞬間、ぎゅうっと抱きしめられ続けてすこし苦しくなったのか、するりとエーデルワイスの腕から抜け出したイースターさんを、竜一がキャッチ。
「頬ずりもふもふ、尻尾ふかふか、お腹さわさわ、お鼻つんつん! うさぎかわいいよ、うさぎ!」
「早く返すのですね!!」
「にんじんあげよう、にんじん! だっこだっこ、耳なでなで!」
「竜一ー?」
 エーデルワイスがきぃっと声をあげた、その直後。背後から美楼のこえ。
 試着結果。すとーんで、ぺたーん。スタイルが良いからこそ、バニーガールは映えるのだ。
「………いつもの服に戻っていいアルか……」
 消え入りそうなこえ。竜一がカメラを持ってこなかったことを後悔したかどうかは、定かではない。

 快がタマゴを拾い上げる。そうして、同じ場所にそっと、イースターエッグを置き直した。
「よもや自分の配ったイースターエッグの中に別のイースターエッグが混じっているとは夢にも思うまい」
 悪戯な笑みを浮かべた快の目に、楽しそうな景色が飛び込んできた。亘が見つけたタマゴを広げて、ちいさなパーティーを開いていたのだ。
 快の隠した道明寺やも、見受けられる。どうやら、ちゃんと見つけてもらったようだ。
 チャノがこんなタマゴを見つけたと嬉しそうに笑っている。目を覚ました真独楽のてのなかでは、ピンクのタマゴが大事そうに包まれている。その場を通りがかったベルカの口から思わず涎が垂れた。そこには、彼女のお目当てのゼリービンズ。耳と尻尾、鼻も動かすベルカを、フランシスカが招く。
 今日は、ちょっと変わったイースター・パーティーなのだ。えがおがえがおを呼んで、広がっていく。
 イースターさんとたくさん飛んで跳ねて、遊び回ったルナも、パーティーに参加していた。
「イースターちゃんが描いたの? あの絵、綺麗だね」
 肯定の言葉と共にお食べなさい、と差し出されたお菓子を食べる終わると、その殻のなかにルナ手作りのお菓子を詰めた。そして、イースターさんの前に、差し出す。
「素敵な贈り物を貰ったんだもん、私も何か送ってあげたいなーって、思ったの!」
 素敵な贈り物を届けてくれてありがとう、ルナの言葉にも、やっぱり、楽しそうにわらう。ちいさな手が、ルナからタマゴを受け取った。
 そろそろ帰らなくちゃね、と呟くイースターさんは、今日、初めて聞いた寂しげなこえ。
「そうだ! 新田快、キミからのタマゴもひとつ貰っていくよ。美味しいお酒にあいそうだ!」
 けれども、すぐに笑顔になったイースターさんは、快の作ったタマゴを掲げてわらった。どうやら、快の悪戯も、お見通しだったらしい。籠のなかにルナから貰ったタマゴと、快の作ったタマゴを入れて。ウサギの背中は遠ざかっていく。たのしそうに、たのしそうに。
「さてさてそれでは、ハッピーハッピーイースター!」
 はるがくる。はるがくるからうさぎがはねる。たくさんのしあわせをもって、はるがきた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 ハッピーハッピーイースター、です。
 どなたもとてもとても楽しそうで、私も楽しませていただきました。
 勿論、イースターさんも、美楼もよふねも、とても楽しんだようです。

 これからも、たくさんのしあわせが訪れますように。
 ご縁がありましたら、また。ご参加ありがとうございました。