●恐れを知り己を知る ホラー、あるいは伝奇的な物語の執筆に定評のある作家が一人、居た。 名を那須坂・恭一と云う。 彼の描写する恐怖は生々しく、まるで「見てきたかのような」表現は一部の読者にカルト的な人気を博していた。 彼は言う。 「何を恐く思うのか、それがその人の本質だと僕は思うのです」 享年83歳。 少なくない人に、なにより家族に惜しまれて、その作家は息を引き取った――。 ●貴方の最も恐いものはなんですか? ハードカバーの本をパタリと閉じて『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は召集されたリベリスタの面々を見た。 「あなたたちは、ホラー小説を読みますか? 私もそんなに読むほうではないのですが、この那須坂恭一さんの本はなかなか恐くて、お勧めですよ」 にこりと微笑んでホラー小説を差し出されても困る。 「と、本の宣伝はいいです。E・アンデッドの発生が予知されました。現場には一般人も確認されています、早急な対応をお願いします」 ヴン、と軽い音を立ててブリーフィング用のディスプレイに灯がはいる。 「E・アンデッド化したのは作家、那須坂恭一です。つい先日、心臓の病気が原因で急逝なされました。 エリューション化の原因は、執筆中の作品を完成させられなかった無念と見られています」 那須坂の家族である嫁と息子は今まさに葬儀の用意をしており、遺体はまだ荼毘に付されていない。このままだと、エリューション化した那須坂が最初に襲うのは彼の家族だ。この二名の保護についても考える必要がある。 少なからず幸いだと言えるのは、遺体が既に葬儀会場へと運び込まれていたので、戦闘をするのに支障のない広さがあるということか。 「こちらが、予知によって判明しているE・アンデッドの能力となります」 ディスプレイの表示が切り替わり、E・アンデッドの攻撃能力が表示される。 恐怖の言葉を囁くことによる精神への攻撃。 手にしたペンで相手を突き刺し、呪いの言葉を刻み込む物理的な攻撃。 「この2種類の攻撃はそれぞれ精神と肉体に作用します。しかし、対処法がないわけではありません。一番厄介なのは3種類目の攻撃、問いかけの態で放たれる『恐怖を問う言葉』です」 「恐怖を、問う?」 数名のリベリスタが首を傾げ、疑問を口に出すものも居た。 「ええ。文字通り『貴方の最も恐いものはなんですか?』と聞いてきます。耳をふさげば聞こえなくなるようなことのない、普通ではない言葉のようです。耳栓をしようともどれだけ騒音があろうとも『聞こえて』しまうようです。そして、問われたが最後、応えなくともすさまじい恐怖のイメージが襲い掛かってきます。攻撃の主体となっているのはこのイメージのほうです」 防ぎようのない問いかけ。耳栓越しや騒音の中でも届くというこの言葉をシャットアウトすることは不可能であるようだ。 「それと、順番が前後しましたが『恐怖の囁き』の方も耳栓や騒音による妨害は不可能です。さらに『恐怖の囁き』と『恐怖の問いかけ』はフェイズ1のE・フォースを呼び出す能力を持ちます。特に『恐怖の問いかけ』は対象となった人数分のE・フォースを呼び出すので注意が必要でしょう」 ディスプレイが暗黒に戻る。情報はこれで全てのようだ。 「最後になりましたが、このE・アンデッドの攻撃には全てバッドステータスが付随しています。対策を怠らないでください」 詳細の確認はこちらで、と言いながら和泉は今回の事件について纏められたレジュメをリベリスタ達に手渡した。 「エンターテイメントとしてのホラーは、まだ楽しめる方も多いと思います……本人もこんな形で恐怖を振りまくのは不本意でしょうから、どうか、荼毘に付してあげてください」 そう、締めくくった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:Reyo | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年03月27日(水)22:44 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●問い 葬儀場の扉は開いていた。近くには「那須坂恭一葬儀会場」との看板が立てかけてあり、扉のすぐ近くには参列者の記名を待つ台帳が置かれている。 荘厳な空気。死者を悼み葬送する場の雰囲気は、数瞬後に戦場になろうとも揺らぐ事がないと思えるほどに重く、リベリスタたちを迎えた。 「そいじゃ行きますかねぇ」 武装を持つ手とは逆の手にICレコーダーを弄びつつ『足らずの』晦・烏(BNE002858)が先陣を切るように葬儀場へと歩を進める。続く他のリベリスタも己の武器を構え、事前に打ち合わせた作戦通りの動きが出来るようにと身構えた。 ――葬儀場内。 既に那須坂は棺から身を起こしていた。 彼の妻と息子は恐怖と驚愕、そしてほんの少しの歓喜、その3種が混ざった表情で棺から立ち上がった亡夫を見ている。リベリスタがなだれこんできた事に気付きながらも、目の前の状況にまだ追いついていない、そんな表情。 「作品が未完ではいけない……書かなくては表現しなくては示さなければ、恐怖を絶望を驚嘆を終焉を呪いを――」 那須坂の声自体は穏やかに、だが紡がれる言葉は異様で、何かに突き動かされるように執筆を願う。 「まだ書きたいことがあるんだこんなところで終われない――ああ良いことを思いついたそうだ次は読者の意見を取り入れてみようそうだそうしよう」 独白が途切れる。ごぎゅ、と生きている人間ならば本来ありえない角度に彼のアンデットの首が傾ぐ。 「さぁ聞かせて下さい――貴方の、最も怖いものはなんですか?」 恐怖を問う異能が響いた。 ●顕現 「間に合って……!」 必死さが『贖いの仔羊』綿谷・光介(BNE003658)に一瞬の機会をもたらす。今回のメンバーで一二を争う俊敏さが、己の恐れを自覚した思いが、那須坂の呪言に機先を制し、一般人の死傷というひとつの最悪を回避するための原動力となった。 光介の身体が2人の一般人を庇うような位置に躍り出る。 それにより呪言はリベリスタのみを襲う形となり。 「まんじゅうこわいっ!」 その問いに『息抜きの合間に人生を』文珠四郎・寿々貴(BNE003936)だけが真顔で応える。他の者はどこか苦い表情で、何かを「強制的に」思い出させられる感覚に陥る。 ぞわりと、まるで心の中を無遠慮に犯されるような精神の疼痛。ペルソナで己の本心を隠していた寿々貴にもその感覚は差別無く襲いかかった。 「ああ、貴方たちの恐怖が手に取るように解ります……」 一瞬にして8の異形がその場に顕現する。 膝を抱えうずくまる影。どこかカリカチュアされた己の姿。無気力そうに立ち尽くす茫洋な人影。傷だらけの女性。学生服の男。顔のない人形。大切な誰かを奪い去った者。――そして空中に浮かぶ数個の饅頭。 各々の深層に眠るカタチが那須坂により呼び起こされた姿。唯一饅頭が異彩を放っているが、アンデッド化した那須坂はそれで恐怖を演出するだけの自信があったのか。 寿々貴は思わず吹き出しそうになりながら、場所柄も考えなんとか堪え、マジメな顔を保った。これはこれで別の辛さがありそうである。 「先手は惜しかったねぇ……なら、こうだ!」 一瞬の先手を逃したことを惜しみつつ烏の得物が神速の連射でエリューションを襲う。同時に頼子と恭平を自陣に取り込むように前へと。 2人のリベリスタによって一般人を庇う陣形はある程度成立した。 「これが尋常でないことは分かると思う。今は何も聞かず、逃げて欲しい」 まず一般人の保護を。『金雀枝』ヘンリエッタ・マリア(BNE004330)はそう願いながら言葉を投げる。 「ここは私たちに任せて! 大丈夫、恭一さんのことは心配しないで」 逃げる、その最初の一歩を踏み出す契機に。『メイガス』ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)の声が背を押すようにたたみかけられる。同時に血液を媒体とした黒鎖が彼女の周囲を取り巻いた。 「旦那さんはしっかり天に送り届ける。だから、今は避難を」 言葉は少なく、だが確かな行動で示すとでもいうのか『ピジョンブラッド』ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963)は軽やかな身の捌きで那須坂との間合いをつめ、死を刻む一撃をお見舞いする。 ロアンが前へ出たのに呼応するようにヘンリエッタが一般人二人に近づきながら己を強化、ほぼ同時に、寿々貴の付与能力がリベリスタたちを一斉に強化した。 「思わず死にたくなるモノが出てきた、けど――大丈夫……怖く、ない!」 詠唱とは一種の自己暗示だ。己の過去を映し出した、一種のトラウマともいえる男の姿を見ながら『六芒星の魔法使い』六城・雛乃(BNE004267)は戦いの姿勢を再度整え己の魔力を賦活する。 「恭一ちゃんが成仏するまで、二人は離れた場所で隠れてて! 大丈夫、私たちはこういう事の専門家だから!」 火炎弾を放ちつつ、『月奏』ルナ・グランツ(BNE004339)が呼びかける。 それが最後の一押しとなったのだろう。 「――主人を、宜しくお願いします」 「親父を頼んだ」 ぺこりと頭を下げ、二人は後ろ髪引かれる様子ながらも、葬儀場の外へと駆けていく。 一番の気がかりについてはこれで解決した。あとは、目標を殲滅するのみ。 リベリスタたちの表情がいっそう引き締まる。 那須坂は笑顔とも取れる顔で、未だ呪いをはき続けていた。 ●恐怖とは リベリスタたちの薙ぎ払うような攻撃を受けて、当たり所の関係もあるのか饅頭と学生服の男、顔のない人形と一見しては同一に見えない3体のE・フォースがまだ残っていた。 やはり饅頭だけが異彩を放っている。 満身創痍、あるいは皮が破れてあんこ丸出しながらも、未だ健在であればその力は十分脅威に値した。 「――おたく、クサいオンナはキラいだ、あ、ぁ……」 「――!」 己の根源となった者をかぎ分ける能力でもあるのか、それぞれの攻撃が雛乃とヘンリエッタへと向かう。まるで体当たりするかのように向かってくるその姿は往年のゾンビ映画でよく見られる亡者の姿に近い。 「――だから、もう、怖くないって言ってるでしょぉ!」 雛乃は少々涙ぐみながらも気丈に声を張り、突進を受け止める。例えそれが己の悪夢の一端だとはいえ、現実ではなかったという事実が彼女に耐えるだけの力を与える。 「お前は、何なんだ、一体!」 ヘンリエッタは華麗に攻撃を捌きながらも、その得体の知れなさに背筋が僅かに震えた。 そして饅頭は、ボロボロになりながらもヒュン、と宙を舞い、これが戦場でなければ見とれてもおかしくない華麗な軌道を描いて寿々貴へ――彼女の口めがけて突撃する。 「あー、もう、すずきさん、怖がってる暇もありゃし――もがっ!?」 ヒュン、と。苦笑を浮かべながらも饅頭アタックをかいくぐっていた彼女の一瞬の間隙を突いて、饅頭が口へ飛び込む。 (確かにまんじゅうこわい! って言ったけどそれで窒息はシャレにならないよ!) 喉奥まで入り込みかけた饅頭をなんとか吐き出す。が、戦闘中という激しく酸素を求める環境での窒息は、短いとはいえ確かな打撃となった。酸素を求めて肺が喘ぎ、身体が酸素の供給を求めて停止する。 「寿々貴さん、大丈夫ですか!?」 邪を退散させる光介の術式がエリューションたちの行動に先んじて発動した。 「いやー、すずきさん油断しちゃったよ、ありがとね」 「いいえ……役に立てて、なによりです」 癒しが寿々貴の身体を正常へと復帰させる。礼を述べながら彼女は浮かぶ饅頭と那須坂とを見て、まさか物理的恐怖だとは思わなかったよと呟く。 当の那須坂はぐるりと首を360度、いっそねじ切るように周囲をながめ、そしてニィ、と気色悪い笑みを浮かべた。その視線が捉えるのは、接近戦を挑んできた、自身に最も近いロアン。 「ちっ、次は何だ!」 ロアンが那須坂の行動に対応すべく身を低くする。 「貴方の恐怖は、そう、描くのに良い題材だ……」 アンデッドならではの人と思えない動きで、那須坂はロアンに詰め寄る。ごぎり、とまだ残る骨が硬質な音を立てて砕け、動きの変幻自在さが増す。 「大切な者を守れない無力、届かないのではないかという疑惑。人は変われる? いいえ、人間の本質たる恐怖は簡単には変わりません」 「ぐ、ぬぅぅ!」 言葉の一つ一つが刃と化したように。胸の奥底がざわざわと気持ち悪くざわめき、揺れる。 「これが貴方の根源です――受け入れなさい」 那須坂が手を広げ、彼の真横に血にまみれた傷だらけの少女が現れる。それが誰であるか、ロアンは一目で理解し、ぎり、と奥歯を噛みしめた。 「そして、そこの貴方――そう、貴方です」 「おじさんのことかい? にしても、それだけ喋れるのなら先生、原稿の続きは口頭でいかがで?」 那須坂の言葉に心を蝕まれるロアンからついと視線を逸らし、その眼が烏を見る。 「悪くない提案ですが……それよりも貴方の恐怖も、興味深い」 ごぎり、と再度骨折の音。那須坂の手に握られたペンが、中空に文字を描く。 「見たことが無くても、再現してあげましょう――私の文字で」 斬、斬、斬、と切り裂くような鋭さでペンが踊る。あたかも中世の殺人鬼伝説を再現するかのように、激しく、何度も。 「さぁどうぞ――私の作品です」 中空の文字は無数の行となり、それが掌編程度の量となり烏を襲う。刻まれた文字は作品というカタチを取った中世殺人鬼の呪い。 「っ! まさか、直筆が貰えるとは、思ってなかったよ」 避けきれない文字の重圧を受けて、烏の全身が切り刻まれる。体中を切り刻んでなお余りある文字列が彼を絡め取り、攻撃の構えを取らせない。 「ロアンさん、烏さん! ……くっ、いけっ!」 ウェスティアの黒鎖が放たれる。次々と黒鎖を生み出しながら、彼女の攻撃がエリューション全てを討っていく。 「那須坂さん、あなたの描くものは確かに怖い……けど! 仲間が、友達がいるから、今はもう、怖くない! 今はあなたを送り出すことに全力を注ぐよ!」 意志は強く。過去の恐怖に捉えられることなく、望まぬ恐怖を振りまく那須坂を送りだそうと、ウェスティアは黒鎖を振るい続ける。 「変わるのが簡単でないとしても――それでも、人は変わっていく、変わることが出来る! 今と昔は違うんだ! 気持ちを切り替えて、気を取り直して行くよ!」 ウェスティアに続くように、また恐怖を打ち破る者がひとり。ロアンは己の不調などものともせず、意志の力で戦闘を継続する。死角からの一撃は健在で、流れるような動きで痛烈な一打が放たれた。 「オレだって、アークのリベリスタだから。那須坂、しっかり送りだしてやる! 今は、キミの描く恐怖は、呑み込む!」 ギリギリと弓を引き絞り、狙い澄まされた精密な一矢が奔る。ヘンリエッタの思う恐怖、具現化されないソレを押し込めて、リベリスタとしての責務を果たそうと放たれた一撃は確かに那須坂を縫い止める。 「まさかまんじゅうこわいが形になるのは想定外だったけど……すずきさんとしては、それは対抗できるものだから、何とかなっちゃうね」 仲間を癒す息吹を振りまきながら、寿々貴は続ける。 「心身へのダメージは死を想起させるけど、それは死が怖い、つまり間接的だよね? 大丈夫、傷の手当てはすずきさんに任せておいて」 癒しが振りまかれる中、続くルナは目の前に現れ、そして倒れていった恐怖の姿を見て思う。 「――そうか、本当に恐ろしかったのは、そっちだったんだ」 氷結の術を紡ぎながら、ルナはどこか合点がいったという表情であらためて那須坂を見る。 「うん、私が戦ってる理由も、そうだ。私は、何も出来ずに失うのが、怖いっ!」 氷結術が解き放たれる。仲間を巻きこまぬよう注意して放たれたそれは、那須坂たちエリューションだけを巧みに討っていく。 「ありがとう、おかげで気付けたよ、恭一ちゃん」 戦闘は、佳境を越えつつあった。 ●乗り越えた先に 那須坂の示す恐怖はあるリベリスタにとっては過去の幻影であり、あるリベリスタにとってな乗り越えるべき壁であり、またあるリベリスタにとっては己の戦う根本を為すものだった。 E・フォースをコンスタントに召喚する能力は数の差を埋めるかのように戦闘を長引かせるが、烏やウェスティア、そしてルナや雛乃の攻撃がその増加を許さない。 那須坂本人もロアンの死角からの攻撃により満身創痍といえるだけの負傷を負っている。 光介と寿々貴、二人による癒しはリベリスタたちを致命傷から遠ざけ、傷を負いながらも倒れた者は未だ一人としていない。 そして――。 「那須坂先生。先生の新作、楽しみにしてたんだぜ」 烏の、E・フォースごと狙い撃つ速射が、戦いの始まりと同じように、今度は、その終わりを告げた。 「……何処かしらの天国に、彼の魂が受け入れられんことを」 崩れ去るE・フォースを見ながら、ロアンが十字を切る。 「あー……ねぇ、すずきさん、そろそろ笑ってもいいよね」 地面に力なく落ち、消えつつある饅頭を眺めながら、寿々貴はもう堪えきれないといった様子で渇いた笑みを漏らす。 「……そうだよ、もう、一人じゃないから、負けたりしない」 膝を抱えてうずくまっていたのは、きっと過去の自分の姿だ、とウェスティアは思う。少し見回せば、仲間がいるのだから、もうくじけないとも。 「バイバイ、ちょっとだけ、思い出しちゃった」 あれは夢の中の話、と雛乃は自分の中で区切りを付ける。死にたくなるような思い出だけれど、もう、結構前のことだ。それよりは目先の締め切りのほうが、よほど怖いかも知れない。 「結局、分からないまま、だな――でも、リベリスタとしては……」 恐れを呑み込んだ自分は、また一つ理想に、願いに近づけただろうかとヘンリエッタは自問自答する。恐怖が切っ掛けでも、何か答えはでるのか。彼女の答えを知るのは、彼女だけだ。 「あらためて、お礼を言わなくちゃ、ね。本当にありがとう、恭一ちゃん」 エリューションとなってしまった作家。彼が見せてくれた自分の恐怖。それが自分の戦う理由だったと、気付く切っ掛けをくれたことに、感謝を捧げるルナ。 「――作家である、というのは、凄いことなんですね」 自分の怖さを自覚し、今回の戦場では一般人を守り抜くことも出来た。何も出来ないことが怖い、それを表したのは、あの立ちぼうけの影だったのだろう。慧眼とはまさにこのことだ、と光介は呟きを漏らす。 「しかし、那須坂先生の絶筆作……読んでみたかったねぇ」 棺の前、戦闘の余波でもなんとか無事だった祭壇で、ひとりの作家が逝ってしまったことを、烏は純粋に惜しんだ。せめてもの手向けと、彼は黙祷し、焼香を行った。 ――その後、リベリスタたちは烏に続くように簡単に焼香を済ませ、処理班と入れ替わるようにして帰投した。 作家の愛した家族は、頭を下げ、彼らを厳かに見送った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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