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絶望を求む思念


 その思念は絶望を求む。
『思うがままに、絶望、絶望……そう、絶望だ。絶望の運命を決めた相手には、その結果を与えてやらねばならない』
 その思念は、絶望に至るまでの過程にすらこだわりを持っている。
 そのこだわりは、他者の異議を決して受け付けない。
『邪魔するヤツは全て死ね。そうだ、そいつ等も絶望に叩き込んでやらねばな』
 もしも阻害しようものなら、全てを巻き込んでも己の求める結果だけを望む存在。

 人の気配のない夜の公園に、その思念は現われた。

 運悪く公園を通りがかった散歩中の若いカップルを無慈悲に惨殺し、絶望を求む思念は次の犠牲者はいないかと公園を見渡していく。
 否。
 探しているのは、次の犠牲者ではない。
『どこだ、あの銀髪のガキ……』
 銀髪というキーワードを口にし、思念は憎悪を孕んだ眼で『どこだ、どこだ』と周囲へと視線を移す。
『あのガキを絶望に叩き落してやらねば、快楽が得られないではないか……――!』
 激しい憎悪と絶望を求める心に呼応したのだろうか、周囲に漂う負の感情までもが収束し始め、思念を取り巻く防衛者へと形を成していく。

 その思念は絶望を好む。
 それは過去に同様の好みを持ち、討たれたフィクサードの成れの果て。
 己の望む結果を得るがために過程を作り、目的の半ばで倒れた男の憎悪の残滓。

『邪魔するヤツは全て死ね! 俺の望む結果が、全てだ!』
 狂気の声をあげ、絶望を求む思念は求める標的が現われるその時まで、公園で殺戮を繰り返す――。


「早く倒さないと色々面倒が起こるわね」
 結論から言って、桜花 美咲 (nBNE000239)の言うとおり放っておけば放っておくほどに大変な事となる。
 E・フォースが求むのは銀髪の少女。
 そしてその条件を満たす少女が今、この場にいる。
「……なるほど、これは確かにボクが行く必要があるね」
 美咲の話を後ろで聞いていた『白銀の魔術師』ルーナ・アスライト (nBNE000259)は、アークに所属してからの初めての仕事に少しだけ緊張しているようだった。

 絶望を求む思念はフェーズ2のE・フォースであり、周囲にはフェーズ1のE・フォース『防衛者』が8体存在している。
 思念体であるせいか物理的な攻撃は通用しにくいものの、神秘的な攻撃ならば何時もどおりに戦う事が出来るだろう。
「でも……良いの?」
 ふと、美咲がルーナに問う。
「構わない。ボクはボクに出来る事を、やるだけだよ」
 そう答えたルーナの覚悟は決まっているようだが、絶望を求む思念は戦いになればルーナを執拗に狙うだろう。
 重要なのは、いかにルーナを守りつつ、勝利するか――それだけである。
「わかったわ。でもこれだけは気をつけて。思念体なせいか、精神面への攻撃が得意なようだから……」
 下手をすれば体力はあっても気力が尽きる、その可能性を指摘する美咲。
 放っておけば夜が訪れるごとに、E・フォースが潜む公園を通る人々が殺戮される以上、早急に倒す必要もある。

 絶望を求む思念に絶望をもたらされるか。
 その絶望を跳ね返し、逆に絶望を突きつけるか。
 全ては、戦地に赴くリベリスタ次第――。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:雪乃静流  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年03月29日(金)23:12
雪乃です。
ルーナ・アスライト、初出撃となります。
よろしくお願いします。
関係シナリオに過去作『絶望戦略』が当てはまりますが、読んでなくても問題は特にありません。
公園は結構広く、100m四方程度の大きさがあります。周辺には民家がありますが、寝静まっています。


勝利条件:エリューションの全撃破、およびルーナ・アスライトが無事に戦いを終える

戦場:夜の公園
電灯が輝いているので、視界には困りません。一般人が訪れる可能性があるので、そちらの対策は必要です。


エリューション詳細
絶望を求む思念(フェーズ2、神秘型、物理攻撃にかなりの耐性あり)
生前から絶望を人に与える事を目的としていたフィクサードの思念が、死後、形を取りました。
『絶望戦略』に登場したフィクサード『長岡』の成れの果てです。
銀髪の少女を殺害しようと、夜が訪れるごとに公園に訪れた人を殺しまくります。(しかし当てはまる存在がいないため、殺戮が止まりません)

絶望の姦計(神・遠・全、威力中、命中補正は並)追:[必殺]異:[魅了]
同士討ちを狙い、絶望に叩き込む一撃。同士討ちにならない場合は、倒す事に主眼を置いているようです。

排斥の姦計(神・遠・全、威力小、命中補正はやや高い)追:[弱点]異:[ショック][虚弱]Mアタック30
邪魔をする存在を排斥する一撃。相手を制する事に主眼を置いているようです。

絶対者のスキル所持。


防衛者(フェーズ1、神秘型、神秘攻撃にやや耐性あり)
周囲の負の感情が、絶望を求む思念に呼応してエリューション化しています。

防衛行動(神・遠・全、威力小、命中補正は並)異:[鈍化]
絶望を求む思念を防衛するため、周囲の速度を軒並み遅くさせる一撃。

負の感情(神・遠・単、威力大、命中補正は並)
溜め込まれた負の感情をぶつけます。特に余計なものがない分、威力は高め。

状況次第では絶望を求む思念を庇うこともあります。


ルーナ・アスライトが同行しています。
Rank1までのスキルしか使えない駆け出しですが、指示にはしっかりと従います。
行動については何もない限り後方で援護射撃を行いますが、何かありましたらプレイングにて指示をお願いします。

それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
参加NPC
ルーナ・アスライト (nBNE000259)
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
メアリ・ラングストン(BNE000075)
ホーリーメイガス
アリステア・ショーゼット(BNE000313)
インヤンマスター
四条・理央(BNE000319)
ソードミラージュ
リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)
ソードミラージュ
上沢 翔太(BNE000943)
インヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
マグメイガス
巴 とよ(BNE004221)

●尽きる事のない執念
 そのエリューションの行動理念は、その一言に尽きる。
「絶望絶望って、アイツ自分の末路に愉悦を感じてたんじゃなかったのかよ?」
 過去、当の本人を討った戦場にいた『やる気のない男』上沢 翔太(BNE000943) の記憶が正しければ、死ぬ間際には自身の絶望に愉悦を感じながら死んだはずだ。
 そのはずが、怨念に縛られ再びE・フォースとして出現した。
「執念深いやつよのーっ、生きておる時もしつこかったようじゃが。死んでからも迷惑かけるとはのう……」
 当時の報告書に目を通していた『デンジャラス・モブ』メアリ・ラングストン(BNE000075)は、『楽団に使い潰されてりゃよかったのに……』と思うものの、残念ながら楽団も見落としていたのだろう。
 求めるのは、あの時に殺せなかった銀髪の少女の命。
 自分の末路に愉悦を感じようとも、望む結果を得られなかった事が再び現われたきっかけとなった事は間違いない。
「ボクとしては、機会が訪れたとも言えるけどね」
 そしてその時に狙われていた少女、『白銀の魔術師』ルーナ・アスライト (nBNE000259)は今、ここにいる。

 1つのアーティファクトを奪うがために、少女の両親は殺害された。
 姉は保護されたものの、自身は絶望にまみれた死を与えようと考えた長岡に囚われる身となった。
 機会が訪れたと、少女は言う。
 あの時は組み立てられた絶望への戦略を崩す初撃を放ったものの、その手で両親の仇を討つには至らなかった。

「長岡の絶望的な暴走は、ここで止めておかねばならんな。ルーナは存分にその火力を叩き付けてやるといい」
 その意を汲んだ『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)は、少女の手による仇討ちの成功を願う。
「大丈夫、わたしたちがいますから」
 そして巴 とよ(BNE004221)は、何があってもルーナを守りきろうという気概を持って、少女の手をそっと握り締めた。
 厄介な事にE・フォースとなった長岡は、リベリスタを魅了して同士討ちを発生させうる存在である。
「誰かに攻撃されても、必ず他の皆が癒してくれますよ」
 最悪、守るべき対象であるルーナは味方によって倒されかねない。だがそうならないようにサポートすると、とよは自信に満ちた優しい笑みを浮かべ言う。
「デ、問題の公園はココカ」
 辿り着いた公園の入り口から奥を見やり、『瞬神光狐』リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)は月光にミラージュエッジの刃を輝かせ、戦闘態勢を取る。
 どこから現われるかは定かではないが、何時攻撃を受けても対処するためには当然の選択といえよう。
 また当然ながら、公園という場である以上は一般人が運悪く通りがかる事もありえる話だ。
「なるべく中央で戦えれば良いんだがな」
 それを防ぐためにも、『てるてる坊主』焦燥院 フツ(BNE001054) はなるべく中央近くで結界を展開出来ないかと、エリューションの姿を探しにかかる。
「中央付近で出るとは思うがな」
 翔太のその発言は単なるカンでしかないものの、そのカンは決して的外れというわけでもない。

 この思念は絶望を好む。
 入り口で襲えば取り逃がす可能性もゼロではないが、中央付近で襲ったならば恐怖に駆られ逃げる標的を執拗に追う事が出来るから――だ。

「じゃ、行こうか」
 入り口で燻っていても始まりはしないと、四条・理央(BNE000319)が公園への一歩を最初に踏み出していく。
 追随してきた数人のアークの職員に警備を任せ、さらに幾つかある入り口に通行止めの標識を掲げておけば、普通の人間ならばまず入っては来ない。
 静寂に包まれる公園を、リベリスタ達はエリューションの襲撃に備え警戒しながら進む。
 一歩。また一歩。
 どれほど警戒しても、不意打ちを受ける可能性は少なからずある。
『見つけたぞ、銀髪のガキ』
 そのはずだったのだが、エリューション達は別に不意打ちをかけるわけでもなく、リベリスタ達の前に姿を見せた。
『どんなに抵抗しようとも、俺が殺すと言った以上は絶対に死ね。邪魔をするヤツも全て死ね』
 最早このエリューションに言葉は通じない。
 それが無意味な事だと説いたとしても、一切の聞く耳を持ってはいない。
「しつこいと嫌われるよ? 人を貶めることが楽しいなんて、何考えてるの」
 そう言った『尽きせぬ想い』アリステア・ショーゼット(BNE000313)の言葉も、排斥のきっかけとなるだけだ。
『銀髪が、2人?』
 むしろアリステアの銀色の髪にも反応するところを見れば、『銀髪』の対象を殺す事以外は何も考えていないのかもしれない。
「死して尚も我欲で人を殺める。もう、何の同情もできない存在だね」
 そんな事を口にした理央に対し、
「……生前思い出したら元々そうだったな、長岡は」
 と元から『面倒くさいヤツ』だったと答える翔太。
「本当に面倒臭い奴じゃな。確実に絶望させてあの世に逃亡させてやるのじゃ!」
「テメエが死んで尚ヤロウトシテルコトハシラネーシ、知る必要もネェ。――絶望ヲ振リ切ルゼ」
 そうならば何も遠慮する必要はないと、口々に「さっさと倒そう」とメアリとリュミエールが前に出る。
『お前達がどう頑張ろうと、俺がこうと決めた結果は覆らない!』
 それでも、当のエリューションはリベリスタ達――ひいては『銀髪』であるアリステアとルーナに絶望を与える事を願ってやまない。
「……覆ったではないか」
 だが、既にその願いは優希の言うとおり、1度は覆っている。故に長岡は死に、エリューションとなったのだから。

●絶望を求む思念
『お前達がどれほどに願おうとも、願えば願っただけ絶望は大きくなるだろう!』
 執念の深さが強さに結びついたのだろうか。
 8体の防衛者に守られ、可能な限りの安全を確保しながら戦う思念に対して一気に攻撃をかけることは、決して簡単な事ではないと言える。
「結界は張った、これでひとまずは安心だな」
 望まぬ一般人の巻き添えを避けるため、強力な結界を張って邪魔が入らないようにとフツが動く。
「死んでもなお傍迷惑カ。ブッチャケドウデモイイケド――サァ、この公園ハ私の領域ダ」
 身体のギアを上げて加速するリュミエールは、全てのエリューションを何時でも射程に捉える事の出来る位置に陣取り、仲間の攻勢の開始を静かに待つ。
 一方ではルーナの隣でとよが輝く魔陣を展開して次に備え、アリステアを守らんと翔太が壁となってエリューション達との間に立ち塞がっていた。
「上沢のおにぃちゃんのお背中をお借りします。よろしくね、なの」
「あぁ、任せておけ」
 短い会話を交わし、翔太に守られながら役目を果たさんとするアリステア。『銀髪』を執拗にエリューション達が狙う以上、彼女が狙われる事は容易に予測出来る。
「……さて、ここからだね」
 そしてルーナはフツやとよの指示を受け、後方からの援護に徹する構えを見せた。
『守りながらの戦いか? 無駄だ、無駄無駄! お前達がそういった希望を持っても、結果は決まっている!』
 慌しくも次の攻撃に備えるリベリスタ達の動きを嘲笑うかのように響く、絶望を求む思念の狂気の声。
 最初に邪魔者を排除せんと、相手を弱めんがための姦計が排斥の刃となりてリベリスタ達へと襲い掛かる。
「それしか言えないのかのぅ。バカの一つ覚えも程があるのじゃ」
 しかしてそれはメアリにとって、さっきから聞いてばかりの言葉でしかない。
 戦況を把握しようと下がり、かつ仲間達の数人の体に走る衝撃を、魔を祓う光を持って祓った彼女の視線には、丁度攻勢に出た防衛者と優希が打ち合う姿が映る。
「決まっているならば、すでに結果は出ているはずだ。その結果は必ず阻止して見せよう」
 防衛者の実体の薄い本体を難なく貫いた優希の一撃は、『確定した結果』を幾度となく口にする思念に対して打ち込まれた1つの楔。
 くだらない絶望など叩き潰してしまえという気迫が、彼の拳には強く乗せられている。
 攻撃をかける防衛者によって傷を負っても、それはアリステアやメアリに癒してもらえば良い。
「よし、ここからが勝負だネ!」
「攻撃は任せたぞ」
 何時アリステアが狙われるかが判らないために庇い続ける翔太が見守る中、音頭をとったフツを起点に攻勢に出るリベリスタ達。
『守るだけでは勝てぬぞ、防衛者ども! いけ、攻めろ!』
 対するエリューション達も、絶望を求む思念を守るだけでは勝てないと防衛者に攻撃指令を下し、真正面から受けて立つ構えだ。
「真正面カラ来ルノカ? 自信過剰はイイカゲンにシトケよ」
「そうするだけの根拠があるなら、まだわかるんですけどね」
 だがリュミエールやとよがそう言うように、その攻勢は戦略的には決して是ではない。
「まずは1体ずつを確実に倒すぞ、確実にな」
「うっふっふ。じわじわと数を減らしてくれる!」
 先んじて優希が打ち込んだ楔は小さな穴でも、打ち込めば打ち込むほどに大きな穴となり、メアリの放つ聖なる光の輝きがさらに大きく穴を広げていく。
『何故こうも簡単に……』
 絶望を求む思念は、1体、また1体を少しずつ数を減らす防衛者の戦いぶりに不遜な顔を見せるも、正面からぶつかれば1点に集中して数を減らすリベリスタの戦略の方が有効ではあった。
 だが、それでも組み立てられた姦計はまだ張り巡らされたままだ。
 邪魔者を排斥しようとする姦計が一手目で通用しなかったなら、次に取る姦計は1つ。
『……ならば、お前達の手で『銀髪』を殺すのだな!』
 目的を守る仲間自身にやらせれば良いと、操る策略へと転向したのである。
「長岡の姦計に乗る位ならば、この腕を切り落とした方がまだマシだ……!」
「何とか耐エタイ……ガナ!」
 どす黒い誘惑に必死に耐えようとする優希とリュミエールが、くるりと踵を返して刃をリベリスタ達に刃を向ける。
「わたしたちでルーナちゃんを殺すとか、絶対にだめなんだから!」
「そうじゃな、妾達がそうはさせぬぞ」
 とはいえ、絶望を求む思念はアリステアとメアリの存在をまったく考慮してはいなかった。
 どれほどに姦計を張り巡らせて排斥に動こうとも、同士討ちを狙おうとも、この2人が健在な限りは大した効果を及ぼす事はない。
「すまない、味方を殴るところだったぞ」
「ヤッテクレルジャネーカ、仕返しハ2倍3倍でカエスゾ?」
 即座に魅了から解き放たれた2人は口々に礼を述べ、再びエリューション達に向き直る。

 排斥しようにも、迫るリベリスタ達はそれをものともしていない。
 同士討ちをさせようとも、すぐに正気を取り戻されては姦計どころの話ではない。
『なぜだ、なぜ俺の戦略が崩れる』
 もちろんこの部分については、メアリとアリステアの2人の力に寄るところが大きい。
「お前の戦略や姦計なんて、そこまでなんだよ」
「そうだナ、目的に執着しすぎて周りがまったく見えてないぜ!」
 狙われる対象となるアリステアを庇う翔太が、ルーナを庇うフツが、その姦計の甘さを口にする。
 あまりに『銀髪』に執着しすぎているせいだろう、邪魔者を排除してとっとと銀髪を排除しようと考える一方、その邪魔者の戦い方や強さを、絶望を求む思念は一切考慮してはいなかった。
 それが出来ないほどに執着している――と言う事か。

「陣地、作れたよ!」
 この時、同時に理央の展開した陣がようやく完成に至る。
 一般人を決して巻き込まない、その狙いで言えば作られた陣地は大きな効果をもたらすだろう。
 とはいえエリューションの目的である『銀髪』はすでにここにいるのだ。
『何だ、妙な空間が……』
「余計な邪魔をいれさせないためだよ」
『邪魔? 『銀髪』はそこにいるだろう!』
 狙いを定めたルーナと、同じく『銀髪』であるアリステアを見やり、絶望を求む思念は今もなお不敵に笑う。
 確かに、一般人を寄せ付けないという意味では作られた陣地は保険としては最高だが、目的の存在が見えている現在では、どうやら念には念を入れすぎた形となってしまったらしい。
『世の中の全てが憎い、ニクイニクイニクイ!』
『あの上司、一度殺してやらなきゃ気が済まん!』
 そうではあったとしても、防衛者は特に『銀髪』に固執しているわけではなかった。
 相手の動きを鈍くし、絶望を求む思念を至高として守ろうとする者もいれば、負の感情を吐露して刃とする防衛者達。
「私がお前等如きに足を止められると思ッタノカ?」
 そんな動きを全く気にせず、リュミエールは一路、主である思念へと迫っていく。
 立ちはだかる防衛者の壁は残り5枚。
「道は切り開くのですよ! いきましょう、ルーナさん!」
「わかった」
 可能な限り仲間に当てない位置を心がけながら、とよがルーナと共に防衛者を炎に包んだことで、さらに1枚壁が減った。
『何をしてる! 『銀髪』を狙わないか!』
 もはや壁は薄くなったと感じた思念は、守りを捨てて『銀髪』への集中攻撃を防衛者達への指示とする。
 姦計をめぐらせてもダメ。
 正面から邪魔者を排斥しようとしてもダメ。
 ならば最大の目標だけを狙うという考えは、理解可能な範疇ではあった。
「どこ見てるの? 貴方が殺したいって思ってるのは、私でしょう!?」
 ここでエリューション――特に絶望を求む思念に誤算があったとするならば、名乗り出たアリステアの存在があるだろう。
 狙うは『銀髪』であり、アリステアも『銀髪』だ。
 単に『銀髪』だけを狙うのならば、ルーナとアリステアで狙いは分散されてしまう。もしウィッグを付けるなりで銀髪が増えていれば、もっと狙いは分散出来ていた可能性だってある。
「目標を集中攻撃ってのはわかるがっと!」
「そうさせないために俺達がいる!」
 それを端的に表すかのように、防衛者はルーナとアリステアの2人に分散して攻撃を仕掛け――彼女達を守る翔太とフツが、その攻撃を決して通しはしない。
『何故こうも狙い通りにいかない!』
「簡単な話だよ。その戦略は絶対的な力で押し通すから、可能なんだよね。ボク達の戦力が、それを上回ってたって事なんだよ」
 崩されていく戦略に恨み節の思念に対し、防衛者をエル・ファナティックレイの光で打ち倒していく理央が言う。
 反抗を許さない力があれば、その戦略は確実に成功したと考えられる。
「そうですね、あまりにもお粗末過ぎた感じがするのですよ」
 激しく雷を奔らせたとよが言うように、限定された戦力の中で行う作戦としてはお粗末過ぎた部分は否めない。
「そら、お前さんの守りは突き崩したぜ?」
「確実に絶望させて、あの世に逃亡させてやるのじゃ!」
 式符を投げたフツと、再度聖なる光を輝かせたメアリが、ついに防衛者の壁を完全に打ち砕く。
「怨念だろうがルーナに近づくな。貴様は寄りつくだけで害悪だ」
 うろたえる素振りを見せた思念の横っ面を叩いた優希の目を普通の人間が見れば、下手な考えを起こそうとも思わなくなるだろう。
 さりとて相手はエリューションであるがゆえに、消滅させなければ止まりはしない。
「人の思いがこうやって形になって残るのって。ロマンチックなものもあるかもしれないけど……。今回はちょっといただけないね」
「これで終わりにするのですよ」
 アリステアの魔法の矢、とよの黒き魔力の鎌によって確実に消滅へと追い詰められていく思念。
『終わらない、この姦計は終わらない!』
「いいかげんにしとこうよ、しつこすぎるよ?」
 最後まで全力で仕掛けた姦計による影響を理央が打ち祓った時、勝敗はもう決していた。
「オメーも終わりダナ。絶望スラ振リキッタ先ガ私ダ」
「いや、最後は……」
 トドメともなりそうな一撃を叩き込んだリュミエールが、完全にトドメを刺そうとしたところを制し、翔太が優希を見やる。
「ルーナも悪夢はここで終わらせるとしよう。引導を渡してやるがいい」
「……うん」
 優希が望むのは、ルーナの手による決着。
 これまでの全てを終わらせよう。その思いを乗せて、全てを焼き尽くす炎が飛ぶ――。

●砕いた絶望の先
「貴様の終りはザマァという感情しか持てぬわ」
「クダラネーヤツダッタナ」
 メアリとリュミエールは消滅した思念のいた場所に視線を移し、そんな言葉を口にする。
「でもボクが死んでれば、こんなのも出なかったのかな」
 その一方、ルーナは自身の存在がエリューションを生み出したのではないかと考えていた。
「オレが死者の声を聞けるのは知ってるよな。犠牲になった人たちは、お前さんのことを恨んじゃいないよ」
 もちろんそれに対しての答は『NO』であり、諭したフツに少女は静かに頷いて応えた。
「でも、自分たちのような犠牲がこれ以上出ないようにしてくれてありがとうって言ってる」
 降霊術を使っていない今、フツの発言には根拠はない。
 だがルーナに重荷を背負わせないためには必要な、優しさから出た一言でもある。
「ルーナは見事な戦いであったな、今後とも宜しく頼む」
「そういや、ルーナはアークに正式参加することになったんだな。ま、たまにはよろしく頼むわ」
 今後も共に戦うであろう優希と翔太の言葉には、少し照れながらも「うん」とだけ応え、
「無事でよかったです。じゃあ……帰りましょうか」
 怪我もなく無事に済んだ事を祝い、手を繋ぐとよには、ぎゅっと手を握り返して「ありがとう」の気持ちを少女は伝える。

 絶望への姦計は、完全に砕いた。
 最早少女を縛る過去の鎖は、もう存在しない。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした。
『銀髪』のワードのみに固執する(ガキとは言ってますが、目標としては『銀髪』のみ)に対象を絞った思念の駆使する姦計に対し、
ルーナと同じく銀髪であるアリステアさんが囮となった点はエリューションの目標を散らすのに一役も二役も買った形です。
これがもし全員が『銀髪』状態なら、良い意味でどうなっていた事やら。
構成的にもエリューションのBS戦法に十分対処出来るものでしたし、敗北の可能性はかなり低かったと言えるでしょう。

それでは、また機会がございましたら。
ご参加ありがとうございました。