●痛みの末、闇間の光 世界は優しかった試しが無い。 それは割と当然の道理で、いっときの夢も恋物語も心の繋がりも分かり合おうとする形も全部全部、何事もなかったかのように押し流そうとするのだ。 とあるフィクサードが、アザーバイドに抱いた恋心は、只の臨死的高揚感に過ぎない。 恋心を昇華させるために彼が起こそうとしたカタストロフを、彼にとっての『上』が認めたのは、ただの打算でしかなかったのは明らかだ。 その過程、何度となく繰り返された問いかけは結局のところ、彼を満足させることはなかった。 常人には、命を賭してまで叶えたい一度の逢瀬など心底どうでもよい。 そんなもので壊れてしまう世界でもなければ、そんなものを受け入れる世界でもないだけの話だったのだ。 場を変えて、とある鍾乳洞。 恋心を標榜し世界に背いた青年は、そこに訪れ争った。 両者は終ぞ理解することも分かり合うことも知識として得ようともしなかったが。この鍾乳洞にこそ、神秘の扉となるべき地であり、凝集した『神秘』を吸う器もまた、存在したのである。 蛇が這い出るように、水を波紋が伝うように、静まり返った鍾乳洞に空気を裂いて音が響く。 神秘はただ、連鎖するように世界を蝕むだけだったのだけれど。 たった一つだけ、皮肉な置き土産を残していったのだろうか。 ●前に進めない痛み 「アザーバイド『レイディ』。強力な力を持つ反面、他チャンネルへの干渉を限定的なものとする存在で、過去二回――数十年前と今回、二度に亘りボトムに顕現しました。前者は有効打もなく周囲一帯を壊滅させ、後者はアークが召喚を限定的なものまで押さえ込んだため、召喚陣地と召喚者の被害のみで抑えることに成功しています」 「召喚者はフィクサードか? 何でまたそんなものを」 「恋心、でしょうかねえ」 過去に使用されたとされる召喚陣系や位置情報などをスクリーンに示し、『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000202)は淡々と言葉を紡いだ。 はた迷惑な恋心もあったものである……などと、過去に関わったリベリスタも思ったのは事実である。 「……それで、ですね。前回の召喚を執り行うに際し、逆凪のエージェントが数回に亘りアークと交戦を行なっておりまして、その一箇所、とある鍾乳洞なんですが」 「アーティファクト『月詠祓』(つくよみばらい)……? 何だこりゃ。これがどうかしたのか?」 「ええ。アークの目的はこのアーティファクトの防衛、逆凪はこれを移動させるか破壊すればよかった……まあ、かなり厄介なアーティファクトです。異界への親和性も高いらしい。で、ここからが本題です」 ふう、と一息ついて、夜倉が軽く首元を緩める。尤も、包帯が巻きつけられている身でそこを緩めてどうなるものかはわかったものではないが。 「その『防衛戦』に於いて、神秘に偏重した攻撃行動がかなり多数、観測されています。周囲一帯を巻き込むレベルのものも、多々。そのせいかはわかりませんが、『月詠祓』を仲介して一体のアザーバイドが出現しています。残念ながら送還手段もなく、敵性アザーバイドとして確認されていますが、更に言うなら厄介なのはその能力です」 「…………ああ」 神秘能力の高いリベリスタの一人が、察したように低く呻く。 「アザーバイド『神波の蛇(かんなみのへび)』、神秘能力が無効というわけではありませんが、如何なる状況によってか、これに対する神秘攻撃はその半分を無効化され、無効化分をリベリスタへの攻撃として返す特性をもつようです。幸いにして、範囲特性は変動しないので単体なら単体、という具合らしいですが」 「つまり全体攻撃とか範囲は危険、と」 「物理に関しても範囲や広域、全体特性は使わないで欲しいですけどね……この鍾乳洞、前もなんですけど脆くて鍾乳石が落ちてくるんですよ。凄くランダムに。下手に刺激して要らぬ傷を増やされるのは、僕としても辛いし面倒です。それに、これ以上不用意に鍾乳洞を刺激されるのもコトです。何とか、その辺りでお願いします」 随分と簡単に言ってくれるものだ、と。 リベリスタが夜倉に向けた視線は、冷ややかなものだった。 「あ、そうそう。言うまでもないですが『月詠祓』への被害は勘弁願いますよ。あれに何かあったら、それこそ予測出来ませんから」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:風見鶏 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年03月27日(水)22:43 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●恋ひて漣 水滴が落ちる音が遠く深く、闇に響く。 『KEEP OUT』のテープはその幾つかが緩み、或いは裂かれた跡が見受けられた。……既に遠い過去のこと。 闇をするすると舞い踊る蛇達が己の意義や意図について考えることはないのだろう。 彼らは常に『導く』存在であり、『唆す』悪意でもある。 それらに悪意は無くとも、在ることが只悪意……皮肉な道理である。 「この鏡、もうチョイ安全なとこに動かす方法無いのか?」 ブリーフィングルームのディスプレイに表示されたその鏡は、革醒者ですら理解できるレベルの神秘を湛えていたことは理解できた。 それ故に、か。それなのに、か。 これを何らかの形で解決しなければ今後同様のことが起こることは『影の継承者』斜堂・影継(BNE000955)ならずとも理解できるし指摘しようがあろうというもの。 敢えてそれを放置していた……という道理はアークにはあるまいが、そうしない理由が何らかの形であったのは確かであろう。 だとしても、やはり神秘的懸念を抱え込むのは健全ではない。影継の立場があればなおさらだ。 「……真白君が何とかするだろう、うむ」 だが、影継の懸念は『閃刃斬魔』蜂須賀 朔(BNE004313)にとっては然程重要ごとではない、というより己の役割では無いことは理解できた。 戦うことを是とする系譜にある以上、戦う以外にリソースを割くことを彼女は由としないのだ。 だが、逆に言えば必要とされるタイミングでその力を揮うことだけを考えて研ぎ澄ませたそれは、彼女なりの誠意でもあるのだろう。葬刀魔喰に手をかけ、向けた視線は決して気の緩みはない。それだけ、眼前の鍾乳洞に潜むそれを正しく警戒していることの現れでもあった。 「世界が優しいなんて誰の言葉でしょうね」 他者を求めて伸ばした手が、世界の境を引き裂いた。 正しくあろうとする恋心が、巡って世界を蝕んだ。 何たる皮肉。何たる不条理。 「少女」と自らを規定する『ヴァルプルギスナハト』海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)にとって、黒く塗りつぶした白翼天杖こそが皮肉であろうに。 世界が優しければこんなことにもならなかったのではないか? それは正しい。 世界は常に不条理なのではないか? それもまた、正しい。 だが、その不条理に異を唱える彼らが居る限り、常に一定レベルの道理や常道が通じるという意味では正しい世界のあり方なのかもしれなかった。 「鍾乳洞って初めてきたけど、綺麗だねー」 そんな海依音の背後から顔を出した『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)の背は、既に翼の加護を受け、小さな翼を背負っていた。 凶悪なフォルムを覗かせるその得物に反し、その表情は柔らかく、しかし芯の強い決意を感じさせるものでもある。 貴重な場所に存在する重要物は、決して被害を出したくはない。道理である。 だが、そんな一般的道理よりも彼女は年齢相応に、『綺麗だから護りたい』と思っているのだろう。思いのベクトルとしては正しく、リベリスタとしてのあり方としてもまた正しいと言えるだろう。 「ふむふむ……私に向いてそうな仕事ですな」 「私に掛かればカモと呼べる相手ですね」 物理特性に偏重した射手である『怪人Q』百舌鳥 九十九(BNE001407)と『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)からすれば、示された敵の特性は決して案ずるレベルの敵であるとは考えられなかった。 だが、それは飽くまでも撃破のみを主眼に置いた場合の扱いである、と言うことは誰あろう彼らが一番良く知っている。 幾ら早急な撃破が成ったとして、推定通りの戦いが出来たとして、その深奥にあるアーティファクトが砕け散り、或いは動かされてしまっては意味が無い。 口で容易いと言い連ねる人間がどれほどにその言葉の奥を理解しているかは解らないが……少なくとも、モニカと九十九の二人に関して言えばそれは、自らを律するための言葉であったといって過言ではない。 言葉以上の役割を自らに課すための柔らかな鎖は、きっとその身を苛むのだろう。それこそ、何度も。 「あの鏡いいよね、欲しい」 過去に護る立場としてこの場に立った『K2』小雪・綺沙羅(BNE003284)にとって、『月詠祓』の持つ存在感とその能力は忘れ得ぬ存在であったことは間違いあるまい。 フィクサードが求めた想いの終着点を見遣り、その過程で知り得た神秘の存在に思いを傾ける。 限定的であれ、その地を制御するに足る神秘存在は彼女にとって殊更に興味を高めるものであることは間違いなかった。 ……もっとも、それらの存在意義や重要性を知っている彼女が無理に何かを考える、ということは十中八九無く、それも願望と言うよりは素直な感想の一つであったことは間違いないのだが。 「まだ私にはあまり理解できないことが色々あったけど、経験を重ねたらわかるようになるかな……」 チャノ・ビスマス(BNE004327)に、人の思いの機微はわからない。彼女がフュリエであること、異界の存在だったこともその大きな要因ではある。 思いを言葉に込めずとも通じた世界に察するという言葉も無く、互いを理解しきっていた彼女らに、能力に拠らない心の交流を、恋心の機微を理解しろとは簡単な要求ではない。 けれど、それでも。想いの延長線上に現れた蛇が何なのか、は彼女にも分かる。 結局のところ。 世界は今日もまた、不条理なのだ。 ●願ひて引き潮 「アンタらこっちに何しに来たんだ?」 「ここからは行かせないよ!」 小さく震え、身悶えするように動く蛇に向かって、影継が大戦斧を振り上げ、真っ直ぐに叩きつける。 呼吸を合わせ、コンパクトに構えた刃を振るい、もう一体の蛇を壱也が弾き飛ばす。 事前に両者が呼吸を合わせることを念頭に置いていたのもあってか、内側へと進もうとしていたそれらはいとも簡単に入口側へと弾かれた。 『…………!!』 それに合わせるように、と言うよりほぼ反射的に喉奥から銀色を絞り出す蛇の一撃を、二人同時に得物で弾く。此処で重要になるのは、その方向だ。下手に鍾乳洞にダメージを与えようものなら、より露悪的な影響が出るのは火を見るより明らかでもある。 酷く当然のことではあるが……逆に言えば、それだけの余裕を与えられていた、と言ってもいいだろう。 「上出来ですよ! よく出来た羽柴ですね!」 「最初から被害が出たら辛いからね、楽なのは助かる」 その初動を称賛する海依音と、綺沙羅の影人が彼らの脇を抜け、一直線に鍾乳洞を駆け抜ける。目標は考えるまでもなく、奥側の月詠祓。 単純に攻撃対象として殲滅するだけではない。流れ弾ですらも、月詠祓を害することは許されないのだ。 「こちら側に来て直ぐに恐縮ですが、即刻消えて頂けますかな?」 「我流居合術、蜂須賀 朔。推して参る」 壱也に吹き飛ばされた蛇の接近を盾でいなしながら、九十九が至近で構えた銃口が吠える。至近、加えて精密性を重視したそれが次々と突き刺さるを待たずして、朔の電鞘抜刀が通電を察知し白く爆ぜ、葬刀魔喰を常識外の速度で吐き出して叩き付けるよう誘導する。 刃の流れは、幻影を生むそれだ。跳ね返るダメージ量を考えれば看過できるものではないが……少なくとも彼女は、自らの傷よりも憶測に基づく効率性の確認が優先すべきと判断したのだ。 (若干は攻撃が通るが……効率的ではないな。何より) 刃を叩きこみ、数歩下がった朔は自らの状態を確認する。ダメージは軽微だし、若干ながら通りもよい。だが、自らは兎も角メンバーにかかる負担を考えれば決して良い選択と言い切れぬのも確かであった。 背後では、息を大きく吸い、歌とともに吐き出すチャノの姿がある。魔力量を鑑みれば、然程無理をさせられるレベルではない……つまりは、多少愚直でも常道を貫く方がマシ、とも言えるだろう。 当のチャノは、崩折れそうな膝をがくがくと揺らしながらも、眼前の情景を刻み込もうと目を瞠っていた。 回復に携わるということは、同時にそれだけに集中する存在となることだ。同じアクションを繰り返すのみと思われようが、最も周囲の状況を把握する必要があるのは誰あろう彼女だ。 「海依音さん!」 「分かってますとも、ご安心ください」 心なしか浮き気味のトーンでチャノの警句を聞き届けた海依音は、直情から落下する鍾乳石をセイクリッドアローで撃ち抜きにかかる。 戦況の苛烈さから、というわけではあるまい。明らかに、何らかの状況から落下したと考えるべきだが……正直、彼女にとってそんなものはどうでもよかった。 アザーバイド。神に近い存在と言える彼らは嫌うべき存在だし、その意図を打ち砕くなどとても素晴らしい意趣返しではないか、と一人笑うのだ。 飛び散った破片が月詠祓に襲い掛かれば、それは綺沙羅の影人が打ち払う。ダメージにすらならないそれを止めることなど、造作も無い。 (仕損じる事が出来ないのは地味に結構プレッシャーなんですけどね……) 細く息を吐き、入口側背後からモニカが殲滅式自動砲の銃口を傾ける。彼女の膂力はその怪物級の砲塔をゆうゆうと持ち上げるが、しかしそれでも、常人が気付かぬレベルの僅かな震えを湛えるのは、即ち彼女の決意の深さの顕れでもあった。 己と相対するに敵わぬ敵を愚弄することも、戦いを優位に進めんとすることも、全ては飽くまで一つの駒として、英雄たるリベリスタを支えんが為の行為である。 役割以上を行おう、などという自惚れは無い。 役割以下になるまいとする、凄絶な覚悟はある。 ……外せば、影響は甚大だ。必ず中てる。 チッ、と砲口から僅かに火花を散らし、叩き込まれる砲弾が蛇を傍らから貫きにかかる。身を捩っても、簡単には回避出来まい。 (……もどかしいですね) 中ったのは分かる。だが、やはり面制圧を是とする己の戦い方が許されないのは歯痒いものだとも思う。駒とは、斯くも不自由だ。 「カモンレッドスネーク!」 軽快に声を上げ、挟撃の姿勢を崩さず前進する影継。だが、そこにカウンター気味に放たれたのは存在感の希薄な巻きつき……振り上げた戦斧が絡め取られ、背後に引き倒された。 倒れた状態から、更に得物を持つ手を地面に縛り付けられた彼は立ち上がることが適わない。するりと蠢く蛇の眼光には、僅かばかりの愉悦を感じもするのだ。 「それで逃れられるとでもか。無駄だ」 だが、動きを止めた影継をカバーするように、蛇を背後から捌いたのは朔だ。速度と鋭さを主眼に置いた刃は、居合の軌道を違えることなくその胴を膾に切り刻み、蛇の存在の大半を奪い去る。 それでも、しかし。蛇の命は途絶えない……! 「っ……大丈夫です。もっとがんばれます!」 もう片方の蛇から吐き出された銀の液を杖に受け、その片手すら凍りつくような痛覚に見まわれながらもチャノは声を張り上げた。運命を削ることはない。危険性は未だ、想定を超えていない。 怖い。強い。戦うに際して、彼の手合いは明確な恐怖の対象だ。彼女より高みにある者の攻めてを、しかも複数のそれを凌ぐだけでも奇跡に近い手合いの一撃が、彼女にとって痛撃でないはずがない。 だが、それがなんだというのだ。運命が音を立てて削れ、全身が苦鳴を上げたからどうだというのか。 自らの吐き出した神秘が仲間を支えている。それだけでもここに立ち続ける価値がある。 「いじ……めるなぁぁぁぁぁぁッ!」 吼えたのは、壱也だ。 先輩として、とか。そんな大仰なことを考えなかったろうし、そも、彼女はそんなことを考える器ではない。 仲間の為に戦うことが自らの役割であり、誰も傷つけず戦いたいと思うのが前に出て戦うものの道理である。 それに純粋なだけで、決して大仰ではない……等身大の願いが在る。 再びに壱也に吹き飛ばされた蛇の射線には、綺沙羅。 全身を使い、捻りを加えた動作から振りぬかれた綺沙羅ボードⅡ(の角)が、蛇の頭部、その半ばまでを穿って抜けた。 九十九が軽く一歩引くと、その眼前に先端を砕かれた鍾乳石が落下する。鼻先(鼻は隠れているが)で躱した彼は何処か満足気だが、結局のところそれは勘働きによる回避だったことは否定出来ない。 それでも、幾百の銃弾が舞うよりはずっと遅く、エリューションの牙よりはずっと脆いそれを避けることなど、視界の動きがコマ送りになりつつある彼の前では造作も無いこと。 残された頭部、その中に映る小さなコアを撃ちぬくのとて、針穴を徹す精度の一撃をもってすれば造作もなく――先ず、一体。 「直線上の駒を取れないルークなんて、単なる木偶の棒ですよね?」 遠雷のような砲撃音を従え、モニカが前進する。 下手をすれば胴を半ばまで持って行こうという威力は、しかし神秘存在である以上十全に物理法則が影響する訳ではない。それでも、相応のダメージを負わせることには成功しているようではあったが。 ……だが、一発で堕ちぬなら何発でも、というのは正直な話だ。何度でも、倒すまで。 「ねえ、カミサマ。ワタシは貴方が嫌いです」 殺さぬ杖を戦いに向け、白を黒に染め上げて海依音が真っ直ぐに構えをとる。既に落下するであろう鍾乳石など存在しない。そこまで激しい戦いは発生し得ないと、理解している。 神は嫌いだ。憎んでいるといってもいい。それでもその姿を捨てなかったのは、ある種の意趣返しであったはずだ。 神が作った道理を壊したくて神が与えた運命とやらも砕きたくて、神がそんな運命を定める事実も打ち消したくて、ただ戦う。 撃ち放った魔力が、写し鏡のように自らの胴を貫いても、海依音の表情は一切変わらない。 その倍に比する一撃が既に蛇を喰らっているなら、己の痛みなど何だというのか。 「出て来ちまった以上は戦ってもらうし、消えてもらうぜ……!」 魔力の矢に怯み、動きを止めた蛇の更に上から、影継の一撃が振り下ろされる。 目の前の一切合切を切り飛ばすように振り下ろされた一撃は、確かに蛇の存在を余さず破壊し、消滅させたのだった。 ●終えて凪ノ瀬 九十九と影継がバグホールを探し探索を進めている傍らで、綺沙羅は興味深げに月詠祓の前に立っていた。 目的は、その存在について知識を得ること。 装飾や文様は、神秘を暴露するためには最も扱いやすいファクターである。彼女はそこに目をつけ、観察を繰り返しているわけだが……どうやら、外縁の文様は魔力を受け入れる仕組みらしい、と気付く前に、既に掌から魔力が抜けていく感覚を味わっていた。 無論、予想の外だが……直後、月詠祓を中心に光が屹立し、その姿を覆い隠す。 (魔力を使った隠蔽……? それより、何か今) とても大人びた『誰か』が、鏡の向こうで微笑っていた気がする、と。 少しだけ思ったけど口にしない、そんな感傷的な戦場の終わり。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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