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工場跡地の戦い

●破壊するもの
 ガリガリと何かが削れる様な音が子供達の耳に飛び込んでくる。
 いや、そんな生易しいものではない。
 耳の奥を、頭を揺するくらいに激しく大きな音だ。
 それが何なのか、ふたりには分からなかった。
 何が起こっているのか、分かっているようで……頭がそれを理解するのを拒んでいる。
 広い遊び場があると思って、親に内緒でこっそり遠出しただけなのに。
 響いているのは……二人がしゃがみこんでいるコンクリートの残骸が、削れる音。
「うぅ……うぇぇ……」「バカっ、泣くなよ」「で、でも……」
 泣きだしそうになる女の子を、男の子が必死に宥めようとした時、だった。
 ゴウンと響いた音は、先程までとは違うもの。
 それ以外の音は、女の子の耳には入らなかった。
「……ぁ……こ、う……ちゃん?」
 辺りに突然漂ったのは……むせ返るような、鉄の香り。
 べったりと身体にこびりついた、べとべとする何か。
 それが何なのか、少女の頭は理解しようとせず……幼馴染を探そうと辺りを見回した彼女の眼に映ったのは……音を立てながら迫ってくる、金属の塊の姿だった。

●工場跡地の戦い
「みんな、お仕事」
『リンク・カレイド』真白・イヴ(nBNE000001)はそう言うとキーボードの上に指を滑らした。
 ブリーフィングルームに設置されたディスプレイに、幾つもの映像が表示される。
「場所は市街地からかなり離れた工場……の跡地」
 そう言って示された画面に映し出されたのは、錆びた鉄骨やプレハブの様な残骸が転がり、崩れかけたコンクリートの壁が所々に残っている廃墟の様な場所だった。工場が立っていたと思われる場所の地面は、ひび割れたコンクリートで覆われている。
「数日後、ここに遊びに来た子供達が潜んでいるエリューションに殺されてしまう」
 その前に、皆にそのエリューションを倒して欲しい。
 そう言ってイヴは端末を操作した。
「ここに潜んでいるのは、E・ゴーレム。フェーズは1だけど、3体居る」
 続いて表示されたのは、戦車の様な姿の『何か』
 キャタピラの付いた車体には機銃らしきものが装備され、車体に対してやや大きめの砲塔には主砲らしきものが付いている。
「多分……基はプラモデルか何かだと思う。こんな外見だけど、車体は長さ1~2m程度」
 迫力のある外見の割に、結構小さい。
 それでも、元がプラモデルならかなり巨大化していると言えるだろう。
「で、戦闘になると……砲塔の部分が取れて、飛ぶ」
 表示されていた戦車の砲塔部分が、彼女の言葉に合わせて外れて動いた。
「あまり難しく考えずに、車体タイプの敵と砲塔タイプの飛行する敵が3体ずつ居ると考えた方が分かり易いと思う」
 そう言ってからイヴは更にキーボードを操作した。
 分かれた車体と砲塔の付近に、文字や数字が表示される。
「車体の方は機銃で攻撃してくる。威力は大した事ないけど命中率は高い。一度に複数も狙える」
 耐久力は高く、防御力も高い。反面、動きは遅く回避力も低い。
「砲塔の攻撃は、主砲。こちらは威力は少し高めだけど命中率は飛行してるのもあって、低め」
 耐久力も低く、飛行している為に防御力も下がっている。ただ、回避力はそこそこあるらしい。
「あと、砲塔の方は飛行状態……高度は4mちょっと、くらいの位置を保って攻撃を行うみたいだから、自分も飛行するとかで近付かない限りは近接攻撃が届かないから、注意」
 もちろん遠距離攻撃が行えるなら問題なく攻撃できる。
「知性らしきものは殆どなし。ただ、できるだけ複数で1つの目標を狙おうとしたり、程度の行動指針みたいなものはあるっぽい」
 あと、不利になっても逃げようとかは考えずに最後まで戦おうとするみたいと付け加えて、イヴはキーボードから手を離した。
「見た目は戦車っぽいけど、あくまでエリューション。似て非なる存在。戦車だと、こう……とかあまり考えない方がいいと思う」
 目標は全てのエリューションゴーレムの撃破。
「個々の強さはそれほどではないけど、数も居るし油断できない相手。気を付けて」
 そう言いながら自分達に真っ直ぐに向けられた彼女の瞳に心配と信頼の色を感じ、リベリスタ達はそれぞれの形で肯定を返した。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:メロス  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年07月05日(火)23:12
オープニングを読んで頂きありがとうございます。
初めまして。メロスと申します。
今回は、工場跡地でE・ゴーレム達との戦闘という依頼になります。


■戦場
市街地から離れた工場跡地になります。
崩れかけの壁や残骸が所々に残っている程度で、比較的見通しの良い開けた場所。
視界が一時的に遮られるような事はあっても、一度発見した対象を見失うような事はありません。
また、周囲に人等はいません。
現地に入ればエリューションの方から近付いてきますので捜索する必要はありません。




■戦車型E・ゴーレム(車体部分)
全部で3体。
攻撃:機銃(物・遠・複) 命中:高 攻撃力:低
防御値は物理が高く、神秘もそれなりに高くなっています。
耐久力もかなり高め。
反面、回避や速度はかなり低めです。


■戦車型E・ゴーレム(砲塔部分)
全部で3体。
接近してくる最中に車体から分離し飛行を開始します。
攻撃:主砲(物・遠・単) 命中:やや低 攻撃力:高
防御値は物理・神秘共に低め。
耐久力も車体部と比べて、かなり低め。
回避・速度の方は、やや高めのようです。
(データは既に飛行による修正が加わった状態です)
また、近接攻撃の届かない高度を保ったまま戦闘を行いますので、
自分も飛行を行う等して近接しない限り、近接攻撃は届きません。
(遠距離攻撃は問題なく行う事が出来ます)



車体部と砲塔部、全てのE・ゴーレムの撃破が目的となります。
それでは、興味を抱いて頂けましたら宜しくお願いします。



参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
プロアデプト
本条 沙由理(BNE000078)
インヤンマスター
宵咲 瑠琵(BNE000129)
ナイトクリーク
源 カイ(BNE000446)
クロスイージス
ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)
スターサジタリー
モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)
デュランダル
小崎・岬(BNE002119)
マグメイガス
百舌鳥 付喪(BNE002443)
ホーリーメイガス
氷夜 天(BNE002472)


●工場跡地にて
「これより任務を開始する」
『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)は短く口にし、イーグルアイで拡大した視野で周囲を警戒した。
(砲台と車体を分離するという発想、如何にも実験機だな)
 データにも残らぬように処分せねばと思考を巡らせながら呟く。
 工場跡地に到着したリベリスタ達は念の為にと結界を展開した後、今回の敵となるE・ゴーレムの捜索を行っていた。
「戦車に分離機能取り付ける意味は分からぬが、フェーズが進めば変形機能も追加されそうじゃのぅ」
『泣く子も黙るか弱い乙女』宵咲 瑠琵(BNE000129)も熱感知を使用して敵を探しながら、今回の敵について色々と想いを馳せている。
(戦車から人型へ、掟破りの驚愕究極変形なのじゃ!)
 馳せた想いを色々と膨らませつつも、油断することなく彼女も周囲の様子を窺っていた。
(犠牲者が出る前にE・ゴーレムを破壊しなければなりませんが……)
 源 カイ(BNE000446)が口には出さず思った時だった。
 少々離れた瓦礫の影から、説明を受けていた戦車の様な姿の存在達が姿を現す。
「あのフォルムはっ……某国民的ロボットアニメのマニアが見たらお持ち帰りしたいと思うのでしょうね」
 カイのそんな言葉が聞こえたのか、聞こえないのか。
「何だか懐かしいねえ。ほら、昔あっただろ? アレだよアレ、模型屋で売ってた……」
『イエローナイト』百舌鳥 付喪(BNE002443)もその姿を目で追いながら首を捻った。
「あ~、思い出せないと気になるねえ。まあ、燃やして灰にしちまうから関係ないか」
 でも危ないので破壊しますと口にしたカイに頷くようにそう締め括れば、その会話を聞いていた『プラグマティック』本条 沙由理(BNE000078)も首を傾げた。
「アニメか何かの有名な戦車なの? 砲塔が空を飛ぶなんて、冗談としか思えないけれど」
(攻撃機と戦車を運用した方がよっぽど強いんじゃないかしら)
 ロマンがない、って怒られそうだけど、でもとっても興味があるわ。
「あんなの考えついた人の、柔軟な発想にね」
 言葉通り興味津々の様子の沙由里を眺めながら……『キーボードクラッシャー』小崎・岬(BNE002119)も現れたエリューションを眺めつつ想いを馳せた。
(空を飛ぶ不思議な砲塔……このプラモのモデル考えた人は未来に生きてるよねー)
「だがしかし、エリューションによってしか実現できない時点で所詮架空兵器、せいやくがあってこそ光るびがくがないのだー」
「そうは思わないかな、ロシアの人ー」と問い掛けたのは、ロシアには結構そういう挑戦的な兵器が存在しているから、らしい。
 そんな様々な視線の中、『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150) はどこか熱を感じさせる瞳をエリューション達に向けていた。
(戦車とはまたお誂え向きの相手ですね。私の武器の元は対戦車ライフル。戦車を屠る為に造られた武器ですからね)
 勿論、相手はエリューションである事は理解している。それは実際の戦車相手とは勝手が違うという事だ。
(ただそれでも、愛用武器の本懐に近い標的となると気の持ち様が全然違ってくるものです)
「そんな訳で……その主砲を拉げ、車輪を砕き、装甲が剥がし、原型を留めぬレベルまでボコボコの全力全開で行かせて頂きます」
 呪うなら私よりも、たとえガワだけでも『戦車』の形を取ったその身の不幸を呪って下さい。
 無表情にそう言い放ちながら、彼女は武器を構え戦闘態勢を整える。
「巨大化プラモなぁ……こんなモンが蔓延してちゃあ、安心して遊べる場所なんて無くなるね?」
 棄てられた場所ってのは好みじゃないけど……今ばかりは、丁度いい。
 呟いてから確認するように辺りをちらりと見回した氷夜 天(BNE002472)は、エリューション達に向かって言い放った。
「ここで君ら廃車なんで、ヨロシク?」

●戦端、開かれる
 エリューションとリベリスタ、両者の距離が詰まっていく。
 説明を受けていた通り戦車の砲塔が分離し、飛行を開始する。
 その時間を利用してリベリスタ達も戦闘準備を行っていく。
 カイが自身に世界から借り受けた癒しの力を宿らせ、ウラジミールも岬に再生の力を付与していく。
 付喪は詠唱によって体内の魔力を活性化させ増幅し、沙由里は脳の伝達処理能力をスキルによって上昇させ集中力を高めていく。
 モニカも感覚を研ぎ澄まし、集中力を高めていく。常人には到達できない圧倒的な領域を目指して。
 それら、仲間達の様子を確認しながら瑠琵は視界を遮られない様に移動すると、守護結界を展開した。
「見せて貰おうか、混攻(仮)のE・ゴーレムの性能とやらを」
 印を結ぶ事によって生み出された力がリベリスタ達の周囲に展開し、攻撃を阻む障壁へと変化する。
 そしてメタルフレーム達の無限機関が主の能力使用を確認し、消耗したエネルギーを補充しようと稼働を開始する。
 やがて両者は戦闘距離に突入し、戦端が開かれた。
 最初に放たれたのは、天とカイの投擲用の短剣だった。
 天が車体に命中させたのを確認したカイは、砲塔にスローイングダガーを投射する。
「さぁ、こっちに来て下さいね」
 砲塔はそれを回避したものの、器用に飛行しながらその砲身をカイへと向けた。
「さあさあ皆の衆、子供のためにも頑張っていこうか」
 その砲塔達に向かって付喪が、チェインライトニングを発射する。
 強化された魔力によって精度と威力を高められた雷の束は拡散しながら砲塔達に襲い掛かった。直撃ではないもののそれでも荒れ狂う雷達は砲塔達を激しく打ち据える。
 反撃するように砲塔達はリベリスタ達へと主砲を発射した。
 カイはそれを機敏な動きで回避する。
 ウラジミールと岬は攻撃を受けはしたものの、共に高い物理防御力を備えておいた二人にとって受けた傷は決して重いものではなかった。
 それでも、決して油断はできない。
 続くように動いたウラジミールは自身にも再生の力を付与していく。
「全部まとめて相手にしてあげる。この世界には場違いだってこと、教えてあげなきゃね」
 沙由里は意志によって収束させた聖なる光を放って車体達を攻撃し、その動きを鈍らせた。
 直撃では無かったものの砲塔の1機にもダメージを与える事に成功する。
 その砲塔達に対してモニカが武器の照準を合わせた。耳を打つような轟音の群と共に、放たれた砲弾が次々とエリューション達に向かって殺到する。
 完全には捉えきれないものの激しい攻撃によって砲塔達は装甲を削られダメージを蓄積させていく。
 一方、瑠琵は沙由里の攻撃によって動きを鈍らせた車体部の1体に狙いを定めた。
 幼げな外見が連ねる完成された印と共にE・ゴーレムの周囲に幾重もの呪いの結界が展開され、その動きを封縛する。
 それらを確認しつつ岬は、別の一体に向かって前進した。
 受けた傷が賦与された力で癒されるのを感じながら、黒いハルバードを振りかぶり全身のエネルギーをその一点に注ぎ込む。
 彼女の力を受けたアンタレスはゴーレムの身体を抉るのと同時に収束された力を爆発させるように放出し、戦車の様な敵の体を吹き飛ばした。
「もとプラモだけあって見た目の印象よりもずいぶんと軽いんだよー」
 気軽にそうは言うものの、実際に行おうとすれば簡単な事ではない。
 常人であれば吹き飛ばすどころか、戦う事や攻撃を耐える事すら難しい相手なのだ。
 リベリスタと言えども油断はできない。
 1体は瑠琵の呪縛によって動けない状態ではあったが、残りの2体は駆動音の様な何かを響かせながら搭載された機銃をリベレスタ達へと向けた。
 沙由里の放っていた閃光によって動きを鈍らせたゴーレムの攻撃がカイ、ウラジミール、岬達前衛に加え、後方寄りにいたモニカを捉える。
 だが、精度の落ちた射撃は本来の威力を発揮せず、全員の高い物理防御力と瑠琵の守護結界によって弾かれた。
「弾幕が薄いな。その程度か?」
 挑発する様なウラジミールの言葉を理解したのか、続くように動いたもう一体はショックから立ち直り、車体の鈍さとは対照的な精密な動きで機銃を前衛達と沙由里へと向ける。
 放たれた無数の銃弾が防具もろとも沙由里の身を抉った。
 痛みに微かに表情を歪めながらも、沙由里は機敏に構えを取り直す。
 相手を倒す事は、仲間達に任せる。
 自分の役割は敵の動きを鈍らせ、戦力を低減させる事だ。

●それぞれの想い、皆の力
 戦況が一気に傾いたのは、天が蓄積した岬の負傷を天使の息によって回復した直後だった。
 カイの放ったスローイングダガーが砲塔の1体を貫き、蓄積した損傷がついにエリューションの活動を停止させる。
「派っ手に、散りな!!」
 続いて放たれた付喪の雷が同じくダメージの蓄積していた2体の砲塔を打ち砕いた。
 オートキュアーと無限機関によって損傷と消耗を回復させつつ、ハイディフェンサーで防御力と回避性能を向上させたウラジミールが、残った混走攻(仮)達の注意を更に引き付けようと牽制の攻撃を行っていく。
「砲塔がついてない方が、よほど戦車らしいわよ」
 動きを鈍らされていた車体の1体が、沙由里の放った気の糸で強制的に活動を中断させられる。
(随伴歩兵の居ない戦車なんてただのイイ的だと思っていました)
「勿論、エリューションなのでそう簡単にはいかないとは思いましたが」

 モニカは表情を変える事なく呟きながら、動きを鈍らせながらも自分達を攻撃しようとする戦車達に向かって引き金を絞った。
 反動で激しく揺れる銃身を無骨な金属製の腕とほっそりとした白い腕で押さえつけ、嵐の様な攻撃を加えていく。
 ハニーコムガトリング。無限機関を使用してもエネルギーの消耗速度を鈍らせる事しか出来ない消耗の激しい攻撃ではあるが、その破壊力は高い。
 回避能力に劣る車体部達は直撃を受け、厚い装甲をものともしない攻撃によって損壊していく。堅固な装甲が悲鳴のような音を上げながら貫かれ、削られていく。
 追い打ちを掛けるように瑠琵が陰陽・氷雨の術式を完成させた。呪力によって発生した冷たい雨が車両内部に流れ込み、凍りつく。
 オートキュアーで傷を完治させた岬も更に前進しながら1体を集中攻撃し、態勢を崩させながら後退させていく。
 もっとも、恐怖心が無いのかゴーレム達は怯む様子もない。
 瑠琵の呪縛を振り払った1体が、カイとウラジミール、沙由里、モニカ、瑠琵に狙いを定め、薙ぎ払うように銃弾を発射した。
 ウラジミールはそれを高い物理防御力と光のオーラで完全に弾く。
 瑠琵も重く動きが鈍る事も厭わず装備していたガードとディフェンサーによって銃弾の雨を防ぐ事に成功した。
 カイとモニカの負った傷も軽微なものでしかない。一方で、沙由里は少しずつではあるものの確実に体力を削られていく。
 彼女の気の糸で麻痺を受けたゴーレムは動く事はできなかったが、岬に吹き飛ばされた車体部はその場から機銃掃射した。
 前衛3人と沙由里を射程に捉えた攻撃は岬とウラジミールを傷付ける事はできなかったが、カイは僅かに負傷する。
 そして沙由里の傷は蓄積し深刻な状態へと近付いていく。
 だが、仲間達の負傷の段階を天はしっかりと確認していた。
 戦力を残す為であるなら、自身の傷も、運命を費やす事すら、厭おうとは思わない。
(戦るからには、誰も奪わせてやんない)
 戦況を見る冷静な判断力と、強い決意。
 天の呼びかけに応えた清らかな存在がもたらした風が、沙由里の受けた傷を癒していく。
 そしてカイの傷は自身に施しておいたオートキュアーによって完全に回復された。
「どんなに装甲が厚かろうとも、隙を突いて打ち貫くのみです」
 そのままカイは全身から気の糸を放ち、ゴーレムの1体を締め上げ動きを封じる。
 付喪がさらにチェインライトニングで薙ぎ払い、ウラジミールがカイと同じ目標に突撃を仕掛け、傷付いていた混走攻の活動を停止、沈黙させる。
 残りの2体向かって沙由里が再び放った閃光は、ゴーレム達にダメージを与えつつショックにより動きを鈍らせた。
 止む事なく続くモニカの制圧する様な射撃で更に1体、ゴーレムが破壊し尽くされ、残骸のようになって動きを止める。
 最後に残った1体に向かって瑠琵は式符で生み出した鴉を放った。式神は速度を緩めることなく突進し、ゴーレムを貫く。
 攻撃を受けたゴーレムは怒るような駆動音を響かせ、彼女の方に向き直ろうとした。
 その直後だった。
「相手は、ボクだよ」
 大きく振り被られた岬のハルバードが、振り下ろされる。
 黒い超重量の金属塊は装甲諸共ゴーレムの身を引き裂き、篭められてた力が戦車の様なその体を、原形を留めぬほどに破壊し尽くした。

●取り戻された日常
 エリューション達の撃破は完了した。
 少年と少女が傷つく未来を、防ぐ事が出来た。
(あんなふざけた相手に子供たちが傷つけられるなんて、許せないもの)
 静まり返った戦場を見て沙由里はその事を実感しながら小さく呟く。
「任務完了だ」
 ウラジミールも短く宣言するように口にした。
「E・ゴーレムも壊せばただのガラクタ……ですか」
 完全に原形を留めぬほどに破壊し尽くされた残骸を眺めつつカイが呟く。
「反対無ければ、子どもらが来る前にちょっと片しとく?」
 皆を見回しながら天が尋ねる。
「少年時代なんて短いモンだもの。楽しい思い出なら、出来るだけ多く残させてやりたいじゃない」
 それに反対する意見は挙がらなかった。
「きっとこの工場跡地には秘密の地下施設があって、第2第3の新型エリューションが出撃するはずなのじゃ!」
 水陸両用でやたら妙なバリエーションの多い機体とか
「次は両腕に大型ドリルが付いたのとか良いのぅ」
 手を動かしながら、瑠琵が戦い前に色々と馳せていた想いを更に発展さ、膨らましていく。
 そんな言葉を交わしながら行われていた作業は、さして間をおかず完了した。
 何もかも元通りという訳には行かないが、此の場を見てここで戦いがあったと推測できる者はいないだろう……少なくとも何も知らない一般人には不可能だ。
「くようがわりに何か戦車のプラモでも作ってみるかなー、馬鹿兄ィの部屋あさればなにかしらあるだろうしねー」
 後片付けを終えた岬が呟く。
 懐かしい気分を思い出した付喪も、帰り道に模型屋にでも寄って何か買っていこうと思いながら振り返った。
(ガ、何とかだっけ? 作ってみるさ)
 荒れ果てた工場跡地には、何も無い。
 静かで辺りから虫達の鳴き声が響くだけの退屈で……そして、平和な日常の一部となった場所。
 守ったものを、取り戻したものを実感しながら、リベリスタ達は帰路へとついた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 依頼の方、お疲れ様でした。
 全員が理解し易い単純明快な作戦と、各人の能力を活かした戦闘方法。
 攻撃主力を担当する者。
 牽制を行う者。
 搦め手で敵の戦闘能力を低下させる者。
 味方の回復を行う者。
 そして戦闘前や戦闘序盤に使用された戦闘支援。
 小さな齟齬等があっても問題の起こり難い、堅実で確りした作戦だったと思います。

 負傷等はありましたが戦闘不能になる方も無く、敵殲滅に成功という結果になりました。
 重ねてになりますが、お疲れ様でした。
 そして、御参加どうもありがとうございました。