● 深夜。 ガラガラ……と石の転がる音がした。 次いで、沢山の岩がぶつかり合いながら地を這うような音が聞こえてきた。 かすかな地響きと共に家が揺れている。 マサヨ婆さんは、目をこすりながら玄関を出た。 月明かりが、自宅の周りにある田んぼと、その向こうで揺れる杉林と、空に浮かぶ雲を青く照らしていた。 音のする方に目をやって、マサヨ婆さんは小さく悲鳴を漏らした。 田んぼの隣にある広場に、巨大な影がそびえ立っている。 その広場は建築資材置き場として使われていた。直径二メートル前後のゴツゴツした岩が山のように積まれている。山の高さは五メートル程度。そんな山が五~六個ある。 だが、今夜のそれは様子が違った。 ひとつの山が、こちらに迫ってきている。 全身を一個のキャタピラーのようにして、周囲の岩を順繰りに押し出しながら前進しているのだ。 マサヨ婆さんは慌てて自宅に戻り、家族を叩き起こした。 マサヨ婆さんの家が岩の山によって押し潰されたのは、それから数分後の事だった。 ● 「コイツは岩ナメクジ。今、俺が命名した」 ドレッドヘアーにサングラスの青年フォーチュナが静かに言った。 「で、お前達に頼みがあるんだが」 青年はニッコリ笑うと、君達に説明を始めた。 お前達には日光市の田園地帯に行ってもらいたい。 そこの広場に居る岩ナメクジを退治してくれ。 広場は田んぼ二つ分くらいの広さがある。周囲は田んぼなので、存分に暴れてもらって構わない。 お前達が到着するのは深夜になるだろう。おそらく、岩ナメクジが動き出そうとする場面に出くわすはずだ。放っておくとマサヨ婆さんの家が潰れてしまう。その前に退治して欲しい。 岩ナメクジはフェーズ2のエリューション・エレメントだ。直径一~三メートルの岩が沢山集まって構成されている。 岩ナメクジを構成する岩をすべて直径五十センチ程度に砕いてくれ。そうすれば奴は死ぬ。 岩ナメクジは、岩を射出したり、岩の集まりで触手のようなモノを作って殴りかかったりするだろう。他にも攻撃方法がありそうだが、これ以上の事は分からなかった。何かびっくりするような事をしてくるかもしれないから注意してくれ。 まあ、お前達なら、油断さえしなければ大丈夫だろう。 頼んだぜ、リベリスタ! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:本山創助 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年03月29日(金)23:08 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●序 深夜。 月明かりが、田んぼと杉林を青く照らしていた。 ここは田舎の外れだけあって、静かだ。 聞こえてくるのは、風に揺れる杉林のざわめきと――。 「くしゅん」 シア・スニージー(BNE004369)のくしゃみの音くらいか。フュリエであるシアがこの世界に来て獲得したものは多々ある。花粉症もそのひとつだ。 すんすん、と鼻をすすりながら、シアは隣に立つ軍服のロシア人を見上げた。 「すごいマスクですね。興味深いです」 「花粉症対策だ。シア嬢はそんな装備で大丈夫か?」 『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)が、フルフェイスのガスマスク越しにシアを見下ろした。 「だ、大丈夫で、くしゅん」 あまり大丈夫そうではなかった。が、症状は軽そうだ。戦闘に支障はないだろう。 リベリスタ達は建築資材の置かれている広場の前に到着した。 広場の入り口は二車線道路の脇に面している。 簡単な鉄パイプの柵と『関係者以外立ち入り禁止』の工事用看板が侵入者を拒んでいた。 柵の向こうに、岩山が五つ見える。サイコロの六を縦にして左奥を抜いたような配置だ。 どの岩山にも動きはない。 『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)は、目を細めて岩山を見た。透視能力によって、岩山の表面が透けて見える。あれが岩ナメクジなら、こんな風には透けて見えないはずだ。 「ん」 モニカが眉をひそめた。相棒のトカゲの尻尾が目に入ったからだ。思わず透視を解く。 「岩ナメクジ? いいセンスだ」 『神速』司馬 鷲祐(BNE000288)が、岩山を見上げながら言った。 特に警戒するような素振りも見せず、ウィンドウショッピングでもするかのような気軽さで立ち並ぶ岩山を見比べている。 他のリベリスタ達も鷲祐に続いて広場に入った。 「結界使っておくか」 和服の上に黒衣を羽織った『眼鏡置き』小崎・史(BNE004227)が暗視ゴーグルをかけながら言った。辺りの空気が一変する。 「どういう原理か未だ良く判ってねぇがな」 「とにかく便利だってことは分かってるよ!」 外見的には小学生の『ゲーマー人生』アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)がぴょこんとジャンプしながら言った。銀色のサイドポニーが揺れる。 史に続いて、アーリィと鷲祐も結界を張った。ここまですれば、野次馬程度の好奇心では近寄れないだろう。 広場の奥から、ガラガラ……と石の転がる音が聞こえた。 弾けたように駆ける鷲祐。 その極端な前傾姿勢はまるで地を這う疾風のようだ。左中央の岩山を左に折れて、鷲祐は目を見開いた。 「居たぜ! 岩ナメクジッ!」 巨大な岩々が、キャタピラーの要領で山肌を逆上しながら、ゆっくりと広場の奥へ進んでいた。 トン、と小さく飛んで、鷲祐はさらにギアを上げた。 トップスピードで岩ナメクジの周りを一周する。 岩ナメクジのサイズは、幅六メートル、奥行き一二メートル、高さ六メートル、といったところだ。かなりデカい。岩のサイズは大小様々だし形もでこぼこしているが、大ざっぱなイメージとしては、直径二メートルの岩が幅三×奥行き六×高さ三の形で積まれているような感じだ。 進行方向には田んぼがあり、さらにその向こうには大きな平屋一戸建ての民家があった。民家までの距離はおよそ百メートル。辺りに他の家はない。あれがマサヨ婆さんの家だ。 「さーてどうする、ベルカ!」 鷲祐が隣に駆け込んできた『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)に言った。 「何は無くとも速攻! 背後から撃ちぬけえええええッ!」 大きな胸を反らしながらベルカが叫んだ。 「おおーっ!」 ベルカの号令によって全軍の士気が上がり、攻撃力がグンと増した。 「うりャうりャうりャなのダ!」 インコ声の気合いと共に岩ナメクジの背中が十字に光り、岩がひとつ爆散した。 『夢に見る鳥』カイ・ル・リース(BNE002059)のジャスティスキャノンだ。 岩ナメクジは何も感じなかったかのように、進路も速度も変えずに民家へと進んでいる。 「任務を開始する」 ウラジミールの軍服が光のオーラで包まれた。最前線に立ち、岩ナメクジの動向に神経を尖らせる。 「エリューションとはこういう形態をとることもあるのですね」 シアが野球のピッチャーみたいに振りかぶりながら言った。その手には、スーパーで買った安い料理用の塩(1キロ)が握られている。 「興、味は、尽きませんっ」 かけ声と共に思いっきり岩ナメクジにぶつけるシア。 岩ナメクジの体に当たった袋が破けて、塩がバッと飛び散った。が、何も起きない。 「あー、やっぱり無駄でしたか」 「まあ、フォーチュナが勝手につけた名前に本質的な意味なんてねぇさ」 そう言って短く詠唱する史。体内に魔力がみなぎってくる。 「さて、お掃除しましょうか」 メイドらしい台詞を言うモニカ。対物ライフルと戦車砲とリボルヴァーキャノンを継ぎ足したような物々しい右腕を岩ナメクジに向け、狙いをつける。 銃声。 と同時に、バガガガガガンッ! と連続的な破砕音が鳴り響く。 細かく砕けた岩が、シャワーとなって奥の田んぼに降り注いだ。 岩ナメクジのど真ん中に、縦長の穴が空いている。 あの青年フォーチュナが見たら、きっとこう言っただろう。 「コイツは岩チクワ。今、俺が命名した」 ●破 土手っ腹に風穴を空けられて、岩ナメクジ、もとい、岩チクワが止まった。 「モニカさん、すごいです!」 アーリィが歓声を上げつつ、極細の気糸を構えた。 その時。 ボッ、という音と共にウラジミールが吹っ飛んだ。背後の岩山に激突し、そのまま埋もれる。 岩チクワの上部から、岩の連なりが一列になって一〇メートルほど伸びていた。まるでビリヤードのキューが玉を弾いたみたいだ。 「そこっ」 アーリィの気糸がキューの先端を真っ二つに割った。 「根元を絶つッ!」 キューの真下に潜り込んだ鷲祐が、真上に跳び蹴りをかました。 付け根の岩が宙を舞い、本体から外れた岩の連なりがバラバラになって地に落ちる。 岩チクワが震えた。 岩チクワの両側がキャタピラのように回転し始め、猛スピードで突進してきた。このシルエットは、岩戦車、と呼ぶべきか。 「反撃に備えええええッ!」 ベルカの号令で、皆の防御力がグンと高まる。 横っ飛びで散り散りに避けるリベリスタ達。 岩戦車はウラジミールが埋まっている岩山に激突した。 「ま、まずいのダ! 岩を補充されたラ」 カイが叫んだ。 岩山にめり込んでいた岩戦車が、キャタピラを逆回転させてモニカに突進した。 「コイツ、さっきからモニカばかり狙ってるぜ! 強い刺激に反応する。それがコイツの行動原理かもな!」 史が仮説を立てた。ウラジミールはモニカへの攻撃をかばったのだろう。 「やっぱり増えてるのダ~」 カイが悲鳴を上げた。 モニカに風穴を空けられて少しスマートになっていたはずの岩戦車が、元通りの体積にまで戻っている。 「モニカさん、田んぼに移動しましょう」 シアが広場の右奥を指さした。左奥にはマサヨ婆さんの家がある。広場で戦っていても岩を補充されてキリがない。残るは右奥だけだ。 「了解です」 モニカは広場を出て田んぼの中へと走った。 追って岩戦車も田んぼに下りる。 「止めるぞ、カイ殿」 いつの間にか戦線に復帰していたウラジミールが岩戦車の前に立つ。 「おう、なのダ!」 カイもウラジミールに並ぶ。 そこに突っ込んでくる岩戦車。二人は両手で岩を押さえ、乾田の土に足をめり込ませながら岩戦車を止めた。 モニカの右腕が火を噴いた。 派手に破片を散らかしながら、岩戦車は再び岩チクワになった。 「モニカ、あと八発くらいそれを当てればアイツは死にそうだぜ」 史が敵の体積から体力を計算した。 「そんなに撃てません」 「来るぞ!」 ベルカが叫ぶと同時に、岩チクワのキューがドゴゴゴッと田んぼに突き刺さった。 「モニカさん!」 アーリィが叫ぶ。そこはモニカが居た場所だ。 「うう」 モニカは少し離れた場所で這いつくばっていた。 「二人じゃブロックしきれないのダ!」 カイが叫んだ。そして隣を見てハッとした。ウラジミールの姿が無い。 バン、とキューの根元が砕けた。鷲祐が跳び蹴りの姿勢で宙を舞っている。 「分割して総量を減らしてしまえば、小さく可愛くなるというものだ!」 遠くに散らばったキューの構成部が、田んぼから吹き上がった炎に飲み込まれた。が、岩にヒビが入るに留まった。 「やっぱり神秘はイマイチか」 フレアバーストの手応えに舌打ちする史。 「それでも全然効かないわけじゃないよ!」 「ひとつひとつ壊しましょう」 アーリィとシアの気糸が岩のヒビを貫き、粉砕した。 「その通ーりッ! 同士、史よ! 攻撃の手を休めるな! 破壊せよ! 殺せッ!」 ベルカの殺気みなぎる視線が、炎に包まれた岩を爆散させた。 これでキューを構成していた岩々をすべて始末できた。モニカの一撃ほど効率は良くないが、それでも確実に敵を削る事は出来る。 キューが刺さっていた穴から、ボロボロになったウラジミールが這い出てきた。 「モニカ殿は私が守ろう」 ブロックしきれないなら、ガードに専念するしかない。 カイが空を仰いで歌を歌った。荘重なメロディーを奏でる鳥の声によって、ウラジミールの傷がみるみるうちに癒えていった。 リベリスタ達は戦いの中で敵の特徴をとらえ、声を掛け合いながら効果的な作戦を導きだした。敵は桁違いの刺激を与えてくるモニカばかりを狙ってくる。その攻撃を鉄壁の防御力を誇るウラジミールがかばう。ウラジミールの傷をカイが回復し、他のリベリスタは攻撃に専念する。 この作戦は上手く機能した。 敵の体積はどんどん削れ、今や四割程度にまで細くなっていた。 このまま行けば勝てる――誰もがそう思った、その時。 棒状だった岩の集まりがコマのように形を変え、回転し始めた。 「これは……警戒すべしッ!」 ベルカが叫ぶと、リベリスタ達は姿勢を低くして敵の攻撃に備えた。 回転速度はどんどん増していき、逆三角形だったシルエットはひし形を経て球形になり、ブゥーンと音を立てながらふわりと浮き上がった。風が巻き起こり、乾いた土が敵の中心に吸い込まれていく。やがて細かく砕けた石も吸い込み、球の周りを旋回して薄いリングを形成した。 そのシルエットは、まるで土星のようだった。 ●急 マサヨ婆さんは、唖然としながら田んぼに浮かぶ土星を見つめていた。そして、吸い込まれるように田んぼに歩み寄った。 月明かりに照らされた我が田の様子は、凄惨極まりない。岩だらけじゃないか。 マサヨ婆さんは鼻息を荒くしながらリベリスタ達に向かっていった。 神秘に対する恐怖心よりも、リベリスタ達が張った結界よりも、田んぼを荒らされた怒りの方が打ち勝っていた。 「コラーッ! うちの田んぼで、なーんて事してんだ、このデレスケ!」 その瞬間、高速回転していた土星のリングが力を溜めるように収束し、弾けた。 散弾めいた石つぶてが、全方位にばらまかれる。 「ひぃぃっ」 マサヨ婆さんは、ギュッと目を閉じた。 ふわりと浮いた気がして、マサヨ婆さんは自分が死んだのだと思った。 恐る恐る目を開くマサヨ婆さん。 気がつけば、空を飛んでいた――横になって、いや、お姫様抱っこされて。 いつの間にか、イケメン青年の腕にしっかりと抱かれている。良い匂いだと思った。 そして、落ちていく感覚、ふわりと着地する感覚、猛スピードで地を駆ける感覚に次々と見舞われ、ハッと気付いたときには家の裏に立たされていた。 「驚かせてすまん。アレは土地の物怪のたぐいだ。だから、専門家の俺達が来た」 イケメンに見つめられてうっとりするマサヨ婆さん。 「詳しい説明は後で担当がするから、今は安全を確保してくれ」 こくこくと頷くマサヨ婆さんの肩をポンと叩くと、鷲祐は戦場めがけて駆けだした。 ばらまかれた石つぶては、既に土星のリングとして再集結していた。 戦場に戻った鷲祐は息をのんだ。 立っているのが自分とモニカしか居ない。 モニカの右腕から、銃弾の雨が帯状になって放たれた。 土星の背から岩の粉塵がハリネズミのように吹き出した。 蜂の巣になっているのだろうが、高速回転しているために穴は溶け込んで見えない。 土星の本体は一気に縮んだが、そのかわり、リングはさらなる石つぶてを得て膨れあがった。 清らかな歌声と共に、福音が田んぼに響き渡った。アーリィだ。 その歌声に癒やされ、リベリスタ達は立ち上がった。 「今のはすごかったです……」 息も絶え絶えにシアが言った。 「まずいのダ。次のはもっと痛そうなのダ」 膨れあがったリングを見て、カイが目をパチパチさせた。 「ええい、怯むなッ! 次などないッ! 一気にキメるのだあああッ!」 ベルカの目が光り、土星が粉塵を上げてまた少し縮んだ。 「なんだか知らんが、ヤるかヤられるかって局面だな!」 鷲祐が全身を弾丸のようにして土星に突っ込んだ。 ボンッ! と土星を貫通する鷲祐。土星が大幅に縮み、リングがさらに膨れあがる。 「墜ちやがれッ!」 史の詠唱と共に、土星が火だるまになった。 さらに土星は縮み、回転速度もぐんぐん増していく。 田んぼ中に散らばった石をすべて吸い込み、リングはさらに太くなった。 岩同士の摩擦によってか、土星は溶岩めいて赤く発光し始めた。まるで太陽である。 「溶けてきたのダ。怖いのダ。でも、あと一息なのダ~!」 カイのジャスティスキャノンが土星に十字を刻む。 土星は直径二メートルほどにまで縮んだ。だが、その核は恐ろしいスピードで回転し、とうとう真っ白な光りを放つほどになっていた。 今、田んぼは真昼よりも明るくなっていた。隅々まで白く照らされている。 「なにが起ろうと、任務を遂行するまでだ」 核に肉薄したウラジミールのコンバットナイフが一閃した。 核が左右に割れ、直径一メートルの土星が二つになって竹とんぼの様に空に舞い上がった。 「これでどうですっ」 シアの気糸に貫かれ、片方の土星が爆散した。その欠片をすべて吸い込み、もう片方のリングが極限まで膨れあがる。そのリングが、力を溜めるように収束し――。 「間に合えっ!」 アーリィの気糸が天に伸びた。 全員が身を固め、散弾に備える。 一瞬の静寂。 その後、真っ白な明かりがフッと消え、田んぼは再び夜に戻った。 空からバラバラと石の落ちる音がした。ちょうど広場の辺りだ。 モニカが、構えていた右腕を降ろした。 「お見事です、アーリィ様。間に合いました」 そして、広場を見て、言った。 「神秘掃除、完了です」 広場の一角に、小石の山が出来上がっていた。 「鳥、後は頼んだ」 鷲祐はそう言うと、民家に背を向けて広場に向かった。 「夢さ。これは全て夢なのさ、ベイベー」 マサヨ婆さんは、マッチョなイケメンに肩をつかまれながら、これは夢なのね、と繰り返し呟いた。 実際の所は、インコ頭のカイが「夢なのダ~。これは全て夢なのダ~」と言っていたが、幻視のせいでそうは見えないのだった。 「くしゅん」 シアが思い出したようにくしゃみした。 「戦ってるときはくしゃみしてなかったよな」 史が言った。 「興味深いですね。どういう原理なのでしょう」 史は肩をすくめた。 シアと史は、戦場となった田んぼの周辺を隈無く見て回っていた。岩が散乱していたら片付けようと考えていたのだが、どうやら岩土星はすべての石や岩を吸い上げた後に広場に落下したらしく、辺りは綺麗なものだった。 他のリベリスタ達は、岩戦車が突っ込んで崩した岩山を元通りに積み直していた。 「結構重労働だなぁ……」 自分の背丈よりも遥かに大きな岩をゴロゴロと転がしながら、アーリィは汗を拭った。 「もう少しだ、同士、アーリィ」 ベルカがアーリィに並んで加勢した。 一〇分後、岩は元通りに積み上った。 広場を見て回っていたモニカが、右手でOKサインを出す。 「任務完了だ」 ウラジミールがそう言うと、リベリスタ達は歓声を上げた。 こうして、リベリスタ達の活躍により、岩ナメクジ――あるいは岩チクワ、岩戦車、岩土星の驚異は去ったのであった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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