● 『フンハァッ!』 『ヌドリャァー!』 ボロボロでズタボロの道場に、稽古を行う声が響く。 鍛え上げた筋肉の鎧を身に纏い、己の拳を武器として戦う格闘家達の鍛錬の声だ。 しかし、何かがおかしい。 「……何かっつーか、全部おかしくね?」 山歩きの途中でこの道場を見つけた男性は、覗き見た瞬間にこう言わざるをえなかった。 前に来た時は、無人でボロボロの道場だったはずだ。 これについては、誰かが使い始めたのだろうと考えれば済む話ではある。 だが、彼等の身に纏うモノは格闘家を彷彿とさせる道着ではない。 『おう、今日もオメーの筋肉が輝いているな!』 『ははは、見てくれこの素晴らしい筋肉!』 お前達はボディービルダーか何かか。 そう突っ込みたくなるような、ブーメランパンツ一丁の姿なのだ。 『俺のアフロが、この中で一番立派だろ!』 『何を、ヒゲなら俺が一番だ!』 さらに言えば全員がアフロであり、モミアゲからアゴまでが繋がったようなヒゲがもじゃっとしている。 『フハハハハ! そんな事より見ろ、お前達!』 ふと、1人のブーメランパンツアフロが入り口へと指を差した。 そこにいるのはもちろん、覗き見てる男性である。 『入門者か、道場破りである! 丁重に御持て成ししろ!』 「え、ちょ、俺こんなところ入りたくねぇっす、だから、やぁめてぇぇぇぇぇぇぇ!」 ずるずると引きずりこまれた男性の叫びが、静かな山に木霊した――。 ● 「……何よコレ、暑苦しいにも程があるわ」 深く深くため息をついた桜花 美咲 (nBNE000239)は、本当にうんざりしているようだった。 垣間見えた未来は、まだ先の話。 今から現場に向かえば、誰にも邪魔されること無くE・フォース達と戦う事が出来るだろう。 「敵は同じ攻撃を使う格闘家のE・フォースが8体よ。別に全員で戦っても良いし、望めば1対1で戦う事も出来るわ」 いきなり乱戦を仕掛けて全員でぶちのめすか。 それとも、1対1での戦いを望むか。 これについては、戦うリベリスタ次第だ。 「あ、別に1対1で負けても、その後に残った格闘家が勝負を挑んでくるわね。どちらが先に全員倒れるかを競う、総力戦みたいな感じかしら」 別に倒されてしまったとして、1対1を望んだならば、最後まで彼等は1対1の戦いを挑んでくる。 ただしその場合、問題がヒトツだけあると美咲は告げた。 「この変態達の放つ気合砲は、直線を薙ぎ払う効果があるの。こちらもそういう類の攻撃があれば叩き込んでいいけど、立ってる位置によっては巻き添えを食らうわよ」 加えて、横槍を入れたり対戦相手を狙わずに見ているアフロ達を攻撃すると、1対1を反故にしたとして乱戦と化す。 「まぁ、暑苦しいから早めに倒してもらえると嬉しいわ。……私、こういうのダメなの」 ――再び、美咲が深いため息をついた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年03月22日(金)01:42 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●熱き男の道場 「あれはどう考えても異質じゃな。HENTAIという部類じゃな!」 なるべく気付かれないように注意しながら中を覗き、『ガンスリングフュリエ』ミストラル・リム・セルフィーナ(BNE004328)はそのエリューションが『変態』だと断定した。 「どうしてこう、このタイプの敵は往々にして変態ばかりなんだ」 「まったく、暑苦しい奴らだぜ」 近くで背伸びしつつ、同様に中を覗いている『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)と『スーパーマグメイガス』ラヴィアン・リファール(BNE002787)の言葉を聞けば、その断定は正解であると言わざるをえないだろう。 オイルでも塗っているのかと思うほどにキラキラと汗で輝く体は、ムキムキマッチョなボディと相俟って暑苦しさは抜群だ! しかしその『武術』にかける思いとひたむきさだけで言うと、エリューション達はバカ正直にひたむきに鍛錬にいそしむ存在。 「美咲が暑苦しいって言ったのも分かるが……悪くねぇな」 己の武力を試す存在としては最適であり、『ヤクザの用心棒』藤倉 隆明(BNE003933)が力試しに心躍らせるのも当然だ。 余計な小技を排除し、力だけで押す戦い方は搦め手には脆い部分もあるが、逆に言えばその屈強な体から繰り出される一撃は侮っていいものではない。 「まあ、どんな武術が相手だとしても、わたしのムエタイの前に敵はないんだけどねっ!」 などという『魔獣咆哮』滝沢 美虎(BNE003973)ではあるが、苦戦する相手である事に違いはなく――油断をすればやられる可能性もある。 そのために一計を講じた美虎の策は、果たしてどのような結果を生み出すのか? 「相手が了承する事が前提だが、その時は頼むぜ」 「任せてよっ!」 その策を共にする相手であるラヴィアンとそんな会話を交わした時、 『入門希望者か!』 声の大きさで、どうやらエリューション達も気付いたようだ。 こうなってしまえば、やる事は1つしかない。最初にやる事としては、非常に大事な事だ。 「よっしゃ! 楽しいアルティメット道場破りの時間だ!」 そう、道場破り宣言である! 高らかに宣言した隆明が真っ先に道場へと乗り込むと、エリューション達も『おお、よくぞきた挑戦者!』と歓迎ムード一色でリベリスタ達を迎え入れる。 「アークではあまり見ないタイプの戦士だね。……オレももう少しきんにくが欲しいな」 「同意はするが、あそこまで筋骨逞しくなりたいか……と言われれば、流石に過剰だな」 一方で彼等の筋骨隆々な体に『金雀枝』ヘンリエッタ・マリア(BNE004330)は『自分も少しは欲しい』と感じ、『百叢薙を志す者』 桃村 雪佳(BNE004233)は同意しつつも『やりすぎ注意』とヘンリエッタに告げた。 「割と真っ当な武道家さんたちなのです。エリューションでなかったらなあ。すこし残念なのです」 武を求む『娘一徹』稲葉・徹子(BNE004110)は彼等がエリューションである事を惜しみつつも、その体裁きを目に焼き付けようとし、目は真剣そのものだ。 試合方法は1対1の総当たり戦。 それ以外の細かい部分を詰めた後、エリューション格闘道場の看板をかけた戦いが始まる。 ●タイマン勝負 Round 1 1戦目を行う福松は戦いの前に口の中の飴を噛み砕き、眼前の巨大な筋肉を見据える。 体格差は大きいが、こと神秘世界の戦いにおいて求められるのは単純な体格の差ではなく、それぞれの力量、技量だ。 (1番手は相手の力量、動き等を仲間達に見せる意味もあるからな。全力で行かせて貰う) 後ろに軽いステップを踏んで下がった福松は、その思いを秘めて戦いに臨む。 「おい、まさかお前故意に巻き込むような技、使わないよな? 正々堂々とタイマン張ろうじゃねえか、えぇ?」 と同時に、相手が無茶な事をしないようにと釘を刺す事も忘れない。 『運が悪ければ知らんがな!』 が、当のエリューションは最初からそんな事を狙ってもいなかった。運が悪ければ、気合砲に巻き込まれる事もあるだろうといった程度の感覚でしかない。 『では行くぞ!』 豪腕を唸らせ、力任せに叩き潰しにかかる一撃は、当たれば福松とて一瞬でよろめくほどの威力を秘めている。 「……ちっ、直撃したらどうなるんだ、これ!」 直撃を避けてカウンター気味に拳を叩き込みはしたが、体に走る衝撃は並大抵のものではなかった。 「くそ、相手の動きを見るんだ……」 鋭い視線が、相手の動作を逃さずに視界に捉える。 攻撃の動作にすら巻き起こる風の音は、集音装置がしっかりと拾う。 『判っていても避けきれたものではないぞ』 そんな福松の動きを察知しながらも、エリューションは意に介さずに蹴りを放つ。 「あぁ、確かに避けられないだろうな。……だが!」 とはいえ、彼は避ける事を考えていない。 あくまでも直撃を避けて受け流す事だけを念頭に置いているのだから、動作がわかれば対応する事は十分に可能だ。 『ははは、受け流しても衝撃は強かろう! 次で終わりだ!』 「あぁ、お前の負けでな?」 まともに食らえばタダではすまない攻撃を受け流し、そして反撃を叩き込み――傷は決して浅くはない。倒れてもおかしくはない。 しかし消耗しているのはどちらも同じだ。 『なんだ……と』 勝敗を決したのは、1発の乾いた銃声。 「悪いな。チャカを使わないとは一言も言っていない」 ゼロ距離から放たれた銃弾はエリューションの体内を破壊しながら走り、消滅させていく。 Round 2 「次は俺だぜ。勿論タイマンを希望するが……ちぃっとばかし提案だ」 2戦目が始まる直前、対するエリューションに提案を持ちかける隆明。 『どんな提案かね?』 「俺は避けねぇからお前も避けんな。一発ずつ殴り合って先に倒れた方が負けってどうよ?」 問い返すエリューションに、隆明は続けて自身の提案を端的に説明した。 互いに避けずに1発ずつを叩き込む。 最後まで立っていた方が勝ち。実にシンプルな提案だ。 「シンプルでいいだろ? 男を競おうじゃねぇか!」 『そういうのは面白い、望むところだ!』 当然の結果だったのかもしれないが、エリューションにとってその提案は拒否する理由もない面白いモノ。 『拳の速さが早い方が有利! ぬどりゃ……ぐほぁっ!』 「俺の方が早かったな?」 ならば当然先手必勝と殴りかかるエリューションではあるものの、速度の上では隆明の方が上を行っていたようだ。 暑苦しい顔を全力で殴り飛ばした彼に、 『ならば力比べだ!』 とエリューションが殴り返せば、男の戦いは気迫の勝負となる。』 ドガッ! バキッ! という効果音が似合う殴り合いは、まさしく拳で語るという言葉が相応しい。 「先程から皆頑張っておるが、まだまだじゃのう」 その様子を威勢の良い態度で見守りながら『自分の出番はまだか』と言いたげなミストラルの出番は最後、8番手である。 リベリスタのオーダーは強いものから順に――であったため、実際のところ実力は彼女が一番劣ってはいるようだ。 (さ、最後じゃしタイマンとやらにはならないはずじゃ! し、しかし何かのまんじゅうかとおもいきや1対1とは……危なすぎるのぅ、妾はそんなにまだ強くないのじゃ!) ミストラルの威勢の良い態度は、虚勢である。 さらにはタイマンをまんじゅうと思っていた辺り、フュリエである彼女はまだ知るべき事も多かった。 「たいまんをするにはまだまだ力不足だけど、いつかはあんな風に挑めるようになりたいな」 隣に立つヘンリエッタは実力が足りていない事を隠しはしないが、代わりに強さを求める心は人一倍強い。 「大丈夫ですよ、これから強くなれば良いんです」 「そうだな、もっと精進するよ」 強さとは積み重ねだと考える徹子のアドバイスを素直に聞き入れた彼女は、これからの戦いでさらに力強い存在となれるだろう。 「決着がつくぞ」 そんな会話を遮り、雪佳が『出番がきた』と前へ進む。 「男の勝負……俺の勝ちだ」 『見事だ、貴様にはこのブーメランパンツを授け……』 「全力で断る」 勝者である隆明を認め、己の魂を授けようとエリューションが脱……ぐ前に消滅したのは幸いか。 Round 3 『ぬぅ……なんたる素早さ!』 3戦目を戦う雪佳は持ち前のスピードを活かし、相手の焦りを誘うような戦いを挑む。 「俺は力でねじ伏せるタイプじゃない、足の速さと技こそが武器なのさ」 その言葉の通り、先手を取るという意味合いでは彼の速度は十二分にエリューションを翻弄する事が出来ていた。 『私の3倍近い速度なのに何故赤くない!』 「それは知らないが。行くぞ、筋肉達磨……付いてこられるか?」 その場に留まらず、軽快というより目にも留まらないフットワークで距離を詰めた雪佳の一撃が、エリューションへと叩き込まれていく。 『その攻撃の一瞬……そこに隙がある!』 最初に戦った福松をして、まともに食らえば危ないと評した一撃。その一撃が、攻撃に転じて止まった一瞬を狙い雪佳を襲う。 「ぐはっ!」 あまりの衝撃に体が軋む。 運命の力を引き寄せればまだまだ耐えられるが、豪腕から繰り出されるパンチはたったの1発で彼をよろめかせる凄まじい拳打だ。 「長期戦は不利か。動きが止まれば、まだチャンスはあるが……」 放つ音速の刃は、ほんの僅かな時間だけエリューションの動きを止める事は出来た。 『搦め手で勝ちを拾いにかかるか! だが、そんなものは気合でなんとかなる!』 「あいにくだが、こっちも気合で負けてはいられないんでな――!」 強引に体を動かし始めたところを狙い、再び音速の刃を叩き込む雪佳。 動きを止めていられる時間が長ければ長いほどに、彼の勝利は近付くのである。 『甘い!』 だがその攻撃がエリューションの動きを止め切れなかった時、先の2人より体力的に劣る彼は敗北へと近付いていく。 叩き込まれた拳圧は雪佳の体内に凄まじい衝撃を流し、雪佳が倒れる要因を作り上げた。 「まだだ……まだ!」 必死に気力を振り絞り立ち上がるが、勝敗は既に決していたといえる。 『中々に面白い戦い方だった。だが……まだまだ!』 エリューションもボロボロであるために、惜敗ではあった。後1歩及ばない、その1歩が、勝敗を分けたのだ。 Round 4 「これで3戦目まで終わりだね……と、ここでちょっと趣向変えをしてみない?」 4戦目を前に、美虎が再度エリューションへと提案する。 1対1ではなく、2対2にしてはどうか――と。 『別に構わんぞ』 これに対しても、エリューション側の返答は『是』であり、否定する気配を見せはしない。 「ならば俺と美虎が相手となろう、今回も頼むぜ、相棒!」 「よっしゃ行くぞあいぼー!」 ならば遠慮する事もないとラヴィアンが援護に動き、美虎が2体のエリューションへと肉薄する。 「戦闘は筋肉が全てってわけじゃないんだぜ。喰らえ! 滅びのブラックチェインストリーム!」 『どこの社長だ!』 織り成した魔力は筋肉バカを相手にするには相当の威力を誇るらしく、輝く汗を蒸発させるほどの熱量を持って大きなダメージを叩き込み、 「わたし達が2人揃えば……無敵だっ!!」 その間隙を縫った美虎が仕掛けるのに十分な役目を果たす。 だが彼女達は気付いているだろうか。自分達で提案したこの戦い方に対し、エリューション達も対応する手を持っている事を。 「妾の出番はまだか?」 内心では『出来るなら来ないでくれ』と願いながら、戦況を見守るミストラル。 「危ないんじゃないか、そこ」 そこへ、倒れた雪佳が戦闘の影響を受けないようにと注意していたヘンリエッタからの注意が飛んだ。 『後ろから穿つ!』 戦闘は美虎とラヴィアンのコンビに翻弄されながらも、戦い続けるエリューション達がラヴィアンへと攻撃をかける姿が見て取れる。 どれほど直線にならないよう心がけても、2人同士での戦いならば移動するだけで直線に収める事は十分可能だ。 『食らえぃ、気合砲!』 放たれた全てを貫く気合の砲弾は、美虎を基軸に後ろのラヴィアンを捉え、そしてさらには――。 ジュッ。 「……は?」 一瞬の出来事に、ミストラルの口がぽかりと開く。 彼女のすぐ隣の壁には、気合砲で出来たらしいぽっかりと開いた穴。 「ふ、ふん、この程度で妾がビビるとでも思うたか!」 (ジュッってなんじゃ、壁に破片も残さず穴が開くとか、もし当たってたらどうするんじゃ) 表向きは平静に強者を装う一方、内心ではもうミストラルは汗だくっていうかテンパってたっていうか。 彼女が思うことはひとつ。 (こんなのと戦ったら骨も残らん! どうにか狙われないようにせねば!) いかに相手の攻撃に狙われる事なく、無事に乗り切るかだけ――。 (……焦ってるな) その様子を、感情の動きだけが僅かにわかる交感能力で感じたヘンリエッタは、それでも冷静に雪佳の手当てをしていた。 「なるほど、2対2だとそれがあるってことだね」 運良くその攻撃から難を逃れた美虎ではあるが、後方にいたラヴィアンはそうもいかない。 「さっさと決めるぞ、こんなの何度も食らってられん!」 戦いが始まる前に施しておいたマナブーストのおかげで火力の問題はないが、体力面では先に倒れた雪佳と同じ道を辿りかねない。 否、ラヴィアンを捉えた強烈な一撃は同じ道を歩ませようとしていた。 「くそ……子供だと思ってると痛い目みるぜ!」 『良いコンビプレーだが、片方を落とせば……な』 運命の炎を燃やしてまで立ち上がるラヴィアンに襲い掛かり、パンツアフロが不敵に笑う。 「置き土産だ……存分に持って行け」 それでも倒れる間際に余力を全て振り絞った魔力を放つ辺りに、彼女のプライドがうかがえるだろう。 「うん、確かに片方を落とせば良いよね」 そして同時に、美虎の方も敵の片方を沈める事に成功していた。 『ちっ……!』 「まだわたしには余裕があるよ! ラヴィアンの分の、お返しだー!!」 援護をもらいながらの戦いのおかげか、余裕のある美虎がそのまま2体目を沈めていく――。 Round 5 「姓は稲葉名を徹子、号を娘一徹と申します。未だ拙き身の上ですが、一手、ご指南ください」 『よかろう、来い!』 リベリスタ側は雪佳とラヴィアンが、エリューション側が4体を倒される戦いの中、徹子の戦いが始まった。 これまでの戦い方をしっかりと見てきた彼女は、相手がどう出てくるかをしっかりと観察していたのである。 「彼等に対して有効な戦い方は……これ以外にはありません!」 相手の攻撃を受け流し、カウンターを叩き込んだ福松。 避ける事を考えず、体力勝負を挑んだ隆明。 速度と搦め手で翻弄し、手数で勝負した雪佳。 彼等の戦いに加え、2対2を制した美虎やラヴィアンの戦いから選んだ選択は、福松のそれと同じもの。 『防御に念頭を置いた戦法か……打ち崩してくれる!』 自慢の拳を剣で防がれたエリューションは、強引にその守りを突破しにかかり、 「そう簡単には崩させませんよ」 対する徹子は良く守り、確実な一撃を相手に与えていく。 「……そろそろか。準備はいいか?」 ふと、ヘンリエッタが仲間達に問う。 「あぁ……傷も癒えてるし、精神統一も出来ているぜ」 「この戦いが終わったら、即だな。滝沢はいけるか?」 答えた隆明と福松は、何時でもいけると言わんばかりに準備は万端だ。 「問題ないよっ。ここまで来たら勝たないとね」 ついさっき戦いを終えたばかりの美虎も、テンションは高い。このまま行こうと力強く笑みを浮かべて応える部分からは、頼もしさすら感じられる。 リベリスタ達は、狙っている。 徹子の戦いに決着がついた直後、エリューション達に一斉に攻撃を仕掛けるその時を――。 『守りもここまでくると、たいしたものだな』 「いえ、そちらの攻撃は受けるだけでも大変です」 木刀と拳を交え、互いを認め合うような会話を交わす徹子とパンツアフロ。 武を求め切磋琢磨する気持ちに、人か人ならざる者かの垣根などは存在しないのだ。 『……見事、面ありだな』 「お相手、ありがとうございました」 深々と礼をした徹子は、静かに消え行く相手を見送る。姿形はどうあれ、武を極めんとした者の姿を。 ●総力戦へ 「突然ですが…ここで全面戦の開始だー!!」 『何!?』 そして徹子の戦いが終わると同時に、残ったエリューション達へと襲い掛かるリベリスタ達。 「済まない、キミと相対するにはまだ力不足なんだ。卑怯だと謗られても仕方ないね。もっと強くなってから、出会いたかったよ」 ヘンリエッタは詫びるが、エリューション相手に敗北するわけにもいかない。 確実な勝利を得るためには、これもまた戦略の範疇だ。 2人を欠きながらも、準備を整えていたリベリスタ達にとって、手負いも含めた3体のエリューションを倒す事はさほど難しい事ではない。 『卑怯とは思わんが……お前はお前の戦いに誇りを持て』 散る間際、詫びたヘンリエッタにエリューションが言う。 これもまた戦いだと。 気付けなかった自分達にも非はあるのだと。故に詫びる必要はなく、誇りを持てと――。 「肉体的な強さだけでなく、精神的な強さ……そういう、ことかな?」 消え行くエリューションの言葉を受け止めつつ、ヘンリエッタは求める強さの先を模索する。 静かになった道場の中で、道場の片隅に掲げられた看板が彼女の目についた。 それは、心技一体――。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|