●タベる? いつものように一同が会議室に集まると、一同を待っていた『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)の手には『さくら餅』と書かれた箱が握られていた。 「はい」 真顔のまま箱を差し出すイヴ。嫌な予感がした。 勇気ある一人が箱を開けると、愛らしいつぶらな瞳が彼を見上げる。餅に目が付いていたのだ。 『……タベる?』 「えっ、なにこれ」 「E・ゴーレム、フェーズ1、通称『さくらモッチ』。察する通りエリューション化したお餅、有効な攻撃方法は美味しく食べること」 「食べるの?! なんで俺達はこう何度も何度も、エリューション化した食い物を食べなくちゃならないんだ!」 「あぁそうそう。この子達美味しく食べてくれる気配がないと凶暴化するから」 イヴの警告は既に遅かった。彼女が言葉を言い終える前に、さくらモッチは勇気あるリベリスタに跳びかかる。一名が襲いかかってきた餅と格闘する中、イヴは資料を配り始めた。 「今回はさくらモッチ、及びE・ゴーレム、フェーズ1、通称『白モッチ』。計二種類のエリューションを討伐してもらうわ。さくらモッチ二十匹、白モッチ四十匹、これら全てを捕獲、撃破して」 「撃破って食べろって事じゃないですかー!? やだぁー!」 ちらりと部屋の隅に目を向けると、さくらモッチと格闘していた彼は傷だらけで桜餅を頬張っている。 これが六十匹もの数で暴れたら、それこそ今のような冗談では済まされない。 「はっきり言うけど、大事なのは如何にして美味しく食べるかって事よ。モッチ達は美味しく食べる限り反撃はしてこない。逆に言えば、美味しく食べる事こそが戦い」 イヴは表情一つ変えずにキリッとした口調で言ってみせた。『真面目そうに言っても誤魔化されないぞ』一同は誰となく心の中で思う。 だが一同は彼女の言う『食べることこそが戦い』という言葉が、あながち間違いではない事をすぐに思い知らされる。 「とりあえず後七匹いるから、食べて」 「お、おう」 忠告通り美味しく食べることを意識する一同。だが一口食べた時、さくらモッチの恐ろしさに気づいた。 「やだこれすごく甘い」 「クドい」 「一つ食べたらもう食べなくてもいいかなってくらい甘い」 「ぷち甘党でもドン引きするレベルで甘い」 そう、さくらモッチの味付けがやたらめたらに甘かったのだ。一つ食べればもう十分、そんな壊滅的な味付けがなされていた。 一同は思ったことだろう『二個目はいらない』と。だがさくらモッチの数は二十匹、最低でも一人あたり二個三個は食べなくてはならない計算だ。 その上、白モッチの数は四十匹。量として考えても、八名で六十個のお餅を頂くのはわりとハードな量だ。 「念押しするけど、美味しく食べられないと襲い掛かってくるわ。どれだけ飽きずに食べられるかが、今回最も重要な要素。食べ過ぎはダメージに等しいモノと心せよ」 ●革醒 ここはとあるデパ地下。各地の美味しい物が集まるここは、さながら名産品の博覧会である。 そんな中、目立たない通路に一件、まったく客が足を止めない店があった。店に並んでいるのは、例の『さくら餅』と書かれた箱だ。 「店長、これ全然売れないっすね」 「そうだなぁ。売ってる俺達が言うのもなんだが、この味付けじゃあ売れないだろうなぁ」 店長である男性は試食品のさくら餅を口に入れる。口の中に広がる濃厚な甘味、苦味のあるお茶がよく合いそうだ。 すると店長はさくら餅にゴマのような物が二つ付いている事に気づく。まるで目のようだと彼が眺めていると、さくら餅と目があった。 『タベる?』 「……いや、もう十分です」 その言葉で、全てが始まった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:コント | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年03月20日(水)01:45 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●揺れる心、デパ地下の誘惑。 「まぁっ……!」 某デパートの地下ショッピングブース、メインストリート。一同が作戦エリアに到着する中、『』セレーネ・ウィスタリア(BNE004355)はある物にその視線を釘付けにされる。 彼女の眼に飛び込んできたのは、フュリエに馴染みの薄い『こちらの世界』の品々。右も左も、見たことのない品物だらけだ。弾む足取り、スカートが揺れる。 「わかる、わかるよその気持ち」 そんな彼女を尻目に相槌を打つのは『もう本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)であった。 彼女の視線を釘付けにするのは香辛料の専門店。鼻先を擽るスパイシーな香りに、青いポニーテイルが揺れる。 店先では怪しいインド人がインド式と思われる挨拶をしてくれた。一同は後ろ髪を引かれる小梢を引っ張り、進む。だが、デパ地下の誘惑は終わらない。 「ほわ~! スイーツもいっぱい……!」 甘いスイーツは乙女の嗜み。『みにくいあひるのこ』翡翠 あひる(BNE002166)は春の新作スイーツが発する、甘い誘惑と戦っていた。 食べたい気持ちをグッと堪える彼女は、無意識に『てるてる坊主』焦燥院 フツ(BNE001054)の袖を掴む。 「ははっ、また帰りに買おうな」 フツはあひるの頭をくしゃりと撫でる。つい仕事で来ていることを忘れそうになるが、そもそも今回の任務内容が悪いのだ。今回の任務はE・ゴーレム、フェーズ1、通称『さくらモッチ』及び『白モッチ』の捕獲、処理。対応を間違えれば危険であるのは間違いないが、普段の激務に比べれば確実に「楽」な任務だった。 ここしばらくの激戦で傷ついたリベリスタには調度良い、休暇を兼ねた任務と言えよう。 メインストリートから外れ。一同が向かうのはトイレなどが近くにある隅の方だ。売れ筋の商品が並ぶ通りから反れると、品揃えの地味さは倍々に跳ね上がる。女性陣のテンションも二割減だ。 だがその地味さにこそ惹かれる者も居た。『足らずの』晦 烏(BNE002858)はつまみの専門店で足を止め、並べられた燻製を手に取る。 「……いかんいかん、今日はおじさん以外未成年だからな、酒は控えねば」 烏はそっと商品を棚に戻す。お花見でついつい未成年者が飲酒を行うのはよくあること。なればこそ未成年者への配慮も大人の努めである。 ふと彼はビーフジャーキーを見て何かを思い出した。携帯を取り出し、アドレス帳を開く。 ●女達の戦場 女性陣のテンションがすっかり落ち着いた頃、例の和菓子売場に到着した。まだ結界も張っていないというのに、売り場の回りに客の気配はない。 フツが念仏を唱えると、店の周囲に強結界が展開される。これでいよいよ持って誰も近づく事はなくなったはずだ。 「それじゃあ後は手筈通りにな」 「了解!」 一同は散開する。暇そうな店員の元へ向かうのはあひる、セレーネ、そして『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)の三名だ。 「こんにちはぁ♪ あのね、ちょっと聞いてもいーですか?」 「え? あ、はいはい、なんですか?」 旭は金髪の若い店員に声をかける。店員は客などこないだろうと高をくくっていたのか、話しかけられやや驚いていた。 「ここの桜餅ってどんなかんじ? おいしいー?」 「え、そ、そうっすね。とっても甘いですよ」 わざとらしく首を傾げて見せる旭、やや困った様子の店員。旭は注意を引くため会話を弾ませようと試食品に手を付け、衝撃を受ける。 「うっ! んー……、お、おいしーけど、ちょっと、すごく甘め……? ど、どしよかなぁ……」 甘い。和スイーツを目当てに依頼に参加していた彼女を、メッタ打ちにする甘ったるさだ。「なぜこの世にコレほどバランスの悪い味付けをしたスイーツがあるのだろう?」彼女はさくら餅を飲み込みながら思う。 「な、何と合わせて食べるといーだろ……。ね、店員さんはどー思う?」 しかし旭は笑顔を崩さず、場を和ませるようにと店員に話を振る。健気だ。 一方あひる、セレーネの二人は老け顔の店長の注意を逸らしていた。試食をして犠牲になったセレーネであったが、こちらも笑顔は絶やさない 「ず、随分と甘いんですね……。何か飲み物が欲しくなる様な味です。こういった物には、どういった物が合うのでしょうか?」 首を傾げてみせるセレーネ。店長は彼女を外人さんだと思っているのか、少し珍しいそうに彼女を見ていた。 「渋いお茶……、やはりコレに尽きるでしょうね。日本の緑茶は飲んだことがありますか?」 「恥ずかしながら、此方に来てから日が浅く……」 「そうですか、馴染みがないと少々苦く感じるかもしれませんが、お茶はこういう甘い物と合うんです」 店長が説明をする中、セレーネは箱の中から顔を出すさくらモッチを見つけた。さっと蓋を閉じ、手に取る。 「タダでお話を聞くのもあれですから、一箱買わせて頂きますね」 さり気なくさくらモッチを回収しつつ、店長の気を引くセレーネ。近くでは静かにバタバタと仲間達がモッチ達を追い掛け回している。 「まてーい!」 すぐ近くをフツが通り過ぎた。店長は気になって視線を向けようとする。 「わ、わあー! あっ、これってなんですか…!?」 すかさずあひるは店長の気を引く。オーバーなリアクションで適当な一品を指さした。指の先にはどこかで見覚えのあるメガネみたいな形の饅頭、なんだこれ。 「あぁ、それはトキムラ饅頭ですよ」 「と、ときむらまんじゅう?」 「2つのまんじゅうがつながっていて、中に色の付いたあんが入ってるんです。おひとついかがです?」 「きょ、今日はさくら餅だけでいいです……」 ちょっと気になるスイーツであったが、あひるはグッと我慢するのだった。 ●もちもちテクニックとナマステ 「う~~もっちもっち」 今もっちを求めて全力疾走している僕はいいとこ生まれのごく一般的なリベリスタ。強いて違うところをあげるとすれば労働に興味がないってとこかナ……。名前は遠藤ネイル『※ネイル・E・E・テトラツィーニ(BNE004191)』。そんなわけで人気のないデパ地下の菓子屋にやってきたのだ。 ふと見ると物陰に一匹の小さいさくらモッチが隠れていた。『ウホッ! いいモッチ……』そう思っていると突然そのモッチは僕が見ている目の前で、桜の葉っぱを脱ぎ始めるのだった。 『タベナイカ』 「なにをやってるのかしら……」 ネイルのやり取りを不審そうに眺めながら『粉砕者』有栖川 氷花(BNE004287)はさくらモッチをつまみあげる。 捕獲作業は順調だ。仕事をしないイメージがあるネイルも、今日は五感を研ぎ澄ませて捕獲作業に当たっている。 まめに連絡を取り合う氷花の几帳面さもいい方向で出ていた。見落としがちな場所も確認し、あっという間に一同は五十匹近いモッチを捕獲する。 しかし問題は数が減ってきてからだった。全体数が減ればそれだけペースも落ち、残り一匹が見つからず捕獲報告が途絶える。 「もう随分探しているが、残りの一匹が見当たらないな……。おじさんもちょっとここまで見つからないとは思わなかった」 「残りはさくらモッチ一匹。いったいどこに居るのかしら」 「もう探すの面倒くさゲフンゲフン。頑張って見つけよう」 烏、氷花は持ち前の超直感を、ネイルはマスターファイヴと透視能力を頼りに捜索を続ける。フツも合流して、一箇所ずつしらみ潰しに探す。 「どうだね焦燥院君、そっちは見つかったか?」 「いや、まったくだな。……そういえばさっき電話してたみたいだけど、どこに掛けてたんだ?」 「なに、以前知り合った鼻の効くリベリスタがいたものだから、非番なら手伝ってもらえないものかとね」 「ネイルの鼻でダメとなると難しいだろうな……。それで来てくれるのか?」 「それが電話したらなぜかイヴが出てな、『彼女ならアークの研究に協力してもらっているから』と切られてしまった」 「……それは不安になる回答だな。そのリベリスタ、改造人間にされて戻って来なければいいが」 二人が他愛ない会話をする中、突如としてAFから小梢の声が聞こえてきた。 『我、標的ヲ発見セリ』 「マジか!」 一同が小梢の元へ駆けつける。小梢がいたのは香辛料専門店の前。店先ではインド人が奇妙なポーズをとっている。多分ヨガだ。 よく見るとインド人の頭の上に、さくらモッチが鎮座している。 「なるほど……カレーの匂いが甘い匂いをかき消していたのか、これじゃあネイルでも見つけられないわけだ」 「ほらね、別に仕事してなかったわけじゃないんだよー」 「それで……彼女は何をしているんですか?」 インド人と共にヨガのポーズを取る小梢。セレーネはこれが何なのか理解できないのか、首を傾げる。無論、他の一同にもこれが何なのかはわからない。しばらくの間その様子を眺めていると、小梢は深くお辞儀をした。 「……参りました」 「戦ってた?!」 インド人は彼女の肩を叩くと、頭のさくらモッチを差し出す。インド人は母国語と思わしき言語で一言だけ言い残すと、店内へと戻っていった。顔を上げた小梢の頬には、一筋の涙が伝う。 「私は……あの人に勝ちたい……っ!」 一連のやり取りを理解できたのは、多分インド人と大体インド人の小梢だけだろう。 ●楽しいお料理タイム 「氷花と」 「旭の」 「「かんたんクッキーングっ♪」」 全てのエリューションを捕獲し、一同は花見の用意を始めた。『ただ料理しただけじゃ間が持たない』という運命の声に導かれ、二人は小芝居をさせられている。観客役のセレーネが見守る中、二人の料理が始まった。 「それで、今日はいったいなにを作るの?」 「今日はおかき風揚げ餅と、とろとろミルク餅を作るよ。材料はもちろん白モッチ!」 調理場に並べられた大量の白モッチ。真っ先に一同が着目したのは、食感を変えることだ。カリッとおかき風に仕上げれば、本来お餅では味わえない歯ごたえが楽しめる。 ちなみに氷花は既にお雑煮とぜんざいを用意している。ミルク餅の食感的な被り具合が気になる所だ。 小芝居の傍ら、あひるとフツはワッフルメーカーを使い、白モッチを『ジュッ』としている。後にあひるは「もっちをセットする時につぶらな瞳がこちらを向いていて辛かった」と語ったが、決してリョナではない。 多くの女性陣が甘いスイーツを作る中、小梢は一同の期待通り逆の発想で調理に望む。彼女が用意したのはもちろんカレーだ。 「お餅カレーとカレーお餅、どっちも金魂さまのお墨付きなんだ。問題は……」 テーブルに並べられたさくらモッチ。試しにそのまま一つ食べてみたが、カレー大好き人間の舌には拷問レベルの甘味だった。 だが、だからこそ彼女は向きあわなければならない。このさくらモッチという強敵に。 「というわけで、さくらモッチをカレーの中に、シュー!」 鍋に超!エキサイティングされたさくらモッチ。鍋をかき混ぜればかき混ぜるほど酷くなる甘い匂い。『本当に大丈夫なのだろうか?』彼女の心に不安が過る。 一同は思い思いの料理を作り、花見へ。 ●実食! 花びらが舞う桜並木。烏はマイ茶碗に桜の花びらを浮かべながら、さくらモッチを頬張る。 旭の入れてくれた茶を啜り、甘味を一口。なかなか風情があり、渋いお茶は甘いお菓子によく馴染む。 「おじさんちょっと食べ過ぎたかねぇ……。やはり胃薬を飲んだのは正解だったようだ」 箸休めに味や食感の違う料理に手を付けていると、意外なほど食が進んだ。とはいえ四十代後半の胃袋に無理は効かない、直に胃薬の効果に助けられる事となるだろう。 「お抹茶、あひるも頂きたいな……。そっちのも、美味しそう……!」 「あひるさんのもっふるおいしそ……! かわいいー」 「あひるのと、物々交換しようっ」 「いいよ♪」 旭とあひるは持ち寄った料理をトレードしている。料理を食べきるのも任務の内なので、これも作戦成功のために必要なチームプレイだ。 するとあひるは何かを思い出したのか、別にとっておいたタッパーを取り出す。 「フツの分も……じゃじゃん、つくってみました……!」 「おぉ! ハイカラ! なんかクリスマスの時を思い出すな」 フツはあひるが作ってくれた手料理を美味しそうに食べている。二人の微笑ましい姿を眺めつつ、仲間達の一部はご馳走様でしたと手を合わせた。 両手を合わせていたネイルの鼻先に、はらりと桜の花びらが落ちる。タダ飯に夢中になっていた彼女であったが、見上げると思わず関心の声をあげた。 「しかしなるほど。見事なもんだなー、これでまだ満開じゃないんでしょ?」 「そうですね……、彼らも『まだ俺は全力の八割も出してないぜ』といっていますし、きっと満開になる頃は、もっと綺麗なのでしょうね」 セレーネは桜と語らい、聞こえてきた声にくすりと笑みを浮かべる。氷花はぜんざいと箸を置くと、口元を拭いながら桜を見上げた。 「桜達はなんっていってるんです?」 「『一週間待ってください、本当の花見を見せてあげますよ』と自信たっぷりに。しかし、皆さん。先ほど拝見させていただきましたが、調理をするのがお上手ですね。此方の世界の女性という物は皆そうなのでしょうか」 「それほどでもない」 ブルーシートの中央にドカッと置かれた鍋。小梢特製さくらモッチカレーの登場だ。彼女は真剣な表情でさくらモッチカレーを貪り、ブツブツと何かをつぶやき始める。 「……美味しいですか?」 「バーモンドのように林檎と蜂蜜で甘くしてあるカレーは少なくない……。しかしこの和菓子独特の甘さは……、マズ、いや、ウマ……、かゆ、うま……」 一同は気にせず美味しそうな料理だけ食べることにした。 ●ごちそうさまでした さくらモッチ二十匹、白モッチ四十匹を使った料理の数々もあらかた食べ終わった。食べる係はすっかりお腹がいっぱいになったのか横になり、桜を見上げている。 「いやー。働いた後のごはんは実においしいねー」 ネイルは平たい声を上げながらさくらモッチを掴み、頬張る。『あ、これは甘すぎるな……』とそっとお茶を手に取り、胃袋に流し込む。 隣を見れば食べ過ぎでフツがうなされ、女性陣も甘いスイーツに飽きたのか食が進んでいない。小梢は謎多き未知なる味と格闘中だ。 「あれ……、これもしかして完食できない予感」 今更になって彼女はイヴの言葉を思い出す。 『念押しするけど、美味しく食べられないと襲い掛かってくるわ。どれだけ飽きずに食べられるかが、今回最も重要な要素。食べ過ぎはダメージに等しいモノと心せよ』 今更になってもう少し働いてお腹を空かせておけばよかったかと思いつつ、手に取ったさくらモッチを食べ終えた。残るさくらモッチは一匹、しかし彼女の胃袋は『これ以上は食べられない』と言っている。 「もっ、もうちょっとなのに……!」 「おぉ、よくここまで食べたな」 するとネイルの肩に手を置き、何者かがさくらモッチに手を伸ばす。彼女が振り返ると、そこには最後のさくらモッチを頬張る烏の姿があった。 「おっ、おやっさぁん……!」 「おじさん、ちゃんと胃薬飲んでるからな」 烏は「ご馳走様でした」と手を合わせる。すると彼は背を向けると、再びデパートの方へと歩いて行く。 「なぁからっちー、デパートに今更なにしに行くんだ?」 「なに、店にさくら餅の代金を払いに行くだけさ」 一同は烏の背を見送りながら、『胃薬って凄いんだな』と認識を改める。 こうしてリベリスタ達のちょっと早い花見は、静かに幕を閉じたのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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