● 最近の通信機は随分と高性能になったものだ。 男は胸元につけたマイクを眺めながら、そんな事を考えていた。まず気付かれる事は無い、それでいて装着者の声はきっちりと拾ってくれる。 ま、別に俺等は普通の人間ではないのだから、念話が使える者を揃えられれば一番良いのだろうが。 フィクサードと呼ばれるようになってから、必要なスキルを持った者で仕事が出来る事は稀になった。 「状況はどうだ?」 自嘲の笑みでマイクを叩く。問いかけにはすぐさま、返答が返ってきていた。 『A、B共に配置完了』 「それじゃ、始めるとしよう。そちらには5分で到着する」 停めていた車のエンジンをかけ、男はアクセルを踏み込む。 「お、動いたのじゃ」 「なら、こっちも行動開始ね」 その車を見下ろすビルの屋上にて、双眼鏡を構えた少女が二人。 何処か似通った印象の二人であった。猫を思わせるような顔立ち。どちらも華奢な体型で、身長は低い。髪の色は金髪と銀髪。そして服装はオレンジを基調としたものと、紫を基調としたもの。 似通っていながら、対照的な二人であった。 一人はすぐさまロープを放つ。ラペリング降下によって降り立った金髪の少女は、隣の塀を乗り越え、何かの工場らしき施設へと侵入してゆく。 先程動いた車の目的地が此処である事は既に知れていたのだ。 男達の目的は、襲撃である。この工場内にある倉庫から、破界器一つを持ち出すことであった。 少女達の目的は、その横取りである。実質一名の戦力しか持たない彼女等が、複数名のフィクサードをまともに相手とするのは不可能。よって或る程度は男達の計画に沿いながら、どさくさに紛れる事とする。 当然ながら彼女等は一般人ではない。 フィクサードでも無いと思っている。だが、リベリスタと呼ばれるのも嫌っていた。 「さ、て。今回のお宝探しはどうなるかしら」 二人はだから、トレジャーハンターを名乗っていた。 ● 「さて……依頼よ」 『硝子の城壁』八重垣・泪(nBNE000221)はいつも通りにリベリスタ達を迎え入れる。 「今回の依頼内容はアーティファクトの回収、ないし破壊ね」 場所はとあるパン工場である。敷地内の倉庫に搬入された小麦粉のうち一袋が、昨夜革醒した。 それは今日使われる事となっているが、その前に回収しなければならない。 「ただ、問題となるのが……フィクサードの一団、それと良く分からない二人組みが既に回収に動いているという事ね。どちらも元リベリスタ。後者の方は、あまり害はないようだけれど」 どういう事なのか、とリベリスタは訊いていた。 泪はそれにこたえて、どうしようもない、とでも言いたげな苦笑で続けていた。 「前者のフィクサード集団、これは『食の探求者』を名乗っているわ。リベリスタの中でも偶に居るじゃない、エリューションを食べてしまう人達。まぁ、それ自体は別にいいのだけれど」 これまでに、胃袋に収めて処分してくれ的な依頼が出された事もちょくちょくあった。 食物が革醒してしまった場合、食べる事自体は別に構わないのだ。 「でも、食べたい物をわざとE化させようとしたり、増殖を意図的に待ったりするようになるとアウト。つまりはそういった人達の集まりというわけね」 エリューションは存在自体が害である。その能力が、ではなく、それその物が崩界要因となる。 フェイトを持たない限りそれは変わらない。 「さて後者の二人組みだけれど、基本的にはフリーのリベリスタと言ってしまって良いと思うわ。ただ、彼女達は自分の事を『トレジャーハンター』と呼んでいるようだけど」 今回のように通常の物品が革醒した程度のアーティファクトを主に回収している、フォーチュナとソードミラージュのコンビだ。回収した物は最終的にアークへ売りに現れ、小遣いとしているらしい。 「つまり、あちらが回収に成功してもアーク的には問題は無いんだな?」 「そうなるわね。けれども、今回は失敗する」 泪はそう言い切っていた。 と言うのも、『万華鏡(カレイド・システム)』などの能力支援を受けていないフォーチュナの予知は非常に断片的でかつ不鮮明である。 今回の事件において、二人は敵の人数を少なく見積もり過ぎたのだ。 「貴方達がフィクサードの抑えに回れば、彼女達の計画は成功する。彼女達が『コムギコ』を持ち去るのをよしとしないのであれば、もう少しやる事が増えるかしら。そんな所ね」 「いつも通り、どちらにするかは俺達に任せるって訳か」 ところで――と一人のリベリスタが口を開く。 「その『コムギコ』にはいったいどんな効果があるんだ? まぁ、そいつで作ったパンを一般人が食えば革醒の危険があるってのは分かるが」 「食べるととても幸せな気分になるわ。粉のままでも」 「…………」 聞いてはいけない事を聞いてしまった気がした。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:RM | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年03月21日(木)10:32 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 陽光は暖かいが風は未だ冷たく、更に日の光の暖かさを根こそぎ奪い取っていくように強い。 初春の気候であった。 その風を受けながら、『風詠み』ファウナ・エイフェル(BNE004332)は飛んでいる。 長い緑の髪。突き出した長細い耳。まさに妖精、といった容姿を持つ彼女が飛翔している事に然程の違和感があるではなかったが、無論これは彼女に自然と備わっている能力ではない。 翼の加護が齎したものであった。 同様に翼の加護を受け、宙を舞う『月奏』ルナ・グランツ(BNE004339)、『夜行灯篭』リリス・フィーロ(BNE004323)。共に、同じフュリエである。 「さて、倉庫の屋根まで行けるかな……」 呟くルナ。恐らく、フィクサードも空を頻繁に警戒している訳ではなかろう。 反面、ふと見上げられでもすれば一発で気付かれてしまう危険性をはらんでいたが。 ファウナはより近くにある別の倉庫上にひそむ事を提案し、リリスもそれを受け入れていた。 「見つかったら元も子もないからねぇ」 音も無く倉庫上に降り立つ三人。 そこからひょこりと頭を出し、風になぶられる黒髪を押さえながら、リリスは下の様子を伺っている。 『……こちらから見えるものは以上です。そちらでも確認を』 幻想纏いから流れるのは『生真面目シスター』ルーシア・クリストファ(BNE001540)の声だった。彼女の千里眼によって割れたフィクサードと、そして『トレジャーハンター』達の位置を、 三人は見えるものは肉眼で。見えない位置に居る者はその辺りに居るのだと、頭に叩き込んでゆく。 「あの子は居るかな?」 言って身を乗り出すルナ。 裏口らしきドアの脇に屈み、身を隠している金髪ツインテールの少女を見つけた彼女は、どこか微笑ましげな気配を口許に浮かべて配置に戻っていた。 「うん……子供の手伝いをするのは年長者の務めだよね?」 内心は直後の呟きに篭められている。そういった事に喜びを覚える性分なのだろう。 さて、彼女等は配置についたものの、即座に動き始める様子をもたない。それは彼女等の役割が伏兵にあるためであった。 『いいよ、こっちは到着した。仕掛けて』 連絡を得て、残りの5人は動き始める。 弾かれた矢のようにとはいかぬまでも、十分な速さで塀の内へと侵入してゆく。 選ぶ道筋は最短であった。白昼、稼働時間中の一般人施設内での作戦。出来うる限り早く事態を収拾しなければならないとルーシアは理解している。 銃声が鳴り響いたのは会敵の僅か前。敵も行動を開始したのだと、『超守る空飛ぶ不沈艦』姫宮・心(BNE002595)は表情を引き締めていた。 「……やる事はいつもと同じ。みんなを守るのデス!」 所々に呆けたように立ち尽くす一般人を見る。彼等は一様に、断続的な破裂音が轟く方向を眺めていた。 日常の中で銃声を聞いたなら、先ずどのような行動をとるのが一般的であろうか。 逃げるか、伏せるか、騒ぎ立てるか――そう、『気にしない』が正解だろう。まず判別がつかない。 『歪な純白』紫野崎・結名はすれ違いざま、一般人に微笑みかけていた。 「こことは別の離れた場所で休憩してください」 それ以前とはまた違った呆け方で、こくりと肯く一般人。何故こんな所に子供が、という言葉すら投げかけて来ないのは、結名の持つ魔眼による催眠状態にあるため。 現状では最良の対処か。これから、騒ぎを聞き付けた連中が集まって来た場合わからぬが。 既にフィクサードもこちらを認めている。フォークリフトを蜂の巣にするという時間と鉛の無駄遣いを止め、こちらに銃口を向けてきていた。 喉から胸の辺りに手を当て、何事かを言っている者が居るのは他の班との連絡を行っているか。 それでいい。邪魔はしない。『大砲娘』螺 みぞれ(BNE004422)は前衛に踊り出る。 「変なものばっかり食べてお腹壊してもしらないよ!」 自身が実力不足なのは承知しているが、援護射撃くらいならば出来る。 心の構えるラージシールドには銃弾が跳ねていた。眼前のフィクサードは舌打ちを漏らし、標的を変更。 5対3の不利な状況で、硬い相手になどは構っていられない。 「それを許すと思いますか!」 ジャスティスキャノンが閃いていた。直撃を受けてこちらを睨むフィクサードに、更に後方から『貧乏くじに愛されて』シヅキ・ユノ・ユーナ(BNE004342)の魔曲・四重奏が突き刺さっていた。 「ふらちなわるいひとには、おしおきです! アーク参上です」 結名は名乗りをあげる。フィクサード側にさしたる驚きが無いのは、ルナの感情探査によっても分かる。 伝わって来るのは当初から一貫して焦りだ。 彼等の任務内容を考えても、帰還出来ない事を覚悟で臨むようなものでない事は明らか。 「……人数、多すぎたかな」 そうルナは呟いていた。 ● 襲撃側の目的は、敵フィクサード全ての倉庫外への釣り出しであった。 外に居る面子だけでは対処は不可能、しかし内部のメンバーを増援として呼び出せれば撃退可能と思わせるラインを演出する事にある。 まぁ、戦闘自体を加減する気は毛頭無いのだが。 然るに倉庫外に居るフィクサード達の動きは、その作戦が成功したとは言い難かった。 倉庫内への撤退に動いている事は、ルナの意見を待たずとも明白である。 何とか引き留められないか。ユーナは小さな容器を取り出し、フィクサード達に見せる。 「この『最古500年モノの梅干』と『古すぎて化石になっちゃったフカヒレ』に引き続き、 コムギコも回収させてもらうわ!」 「……あー、そういえば、さっきの任務で回収したもの、まだ持って帰ってなかったねー」 さらりと応じる結名。 「それは言っちゃあまずいんじゃないですかい?」 続いてみぞれが、焦ったように口を開く。 果たして反応は。 「……いや、流石に無いだろ」 突っ込みであった。三人口を揃えて。それはそれとして三人全員の銃口がユーナを向く。 「ぎゃー! 無いって言った直後にどうして集中攻撃して来るのよぉ!」 「弱そうだからだよ」 非道い話である。 涙目になりながら攻撃範囲外まで逃げるユーナ。そちらは追わず、フィクサード達は後退を続けながら次の目標を見定めている。 横合いから飛ぶのは結名のトラップネスト。しかし拘束するには至らないか。 ルーシアは天使の息で後退したユーナの傷を癒し、フィクサード達の追撃に前進してゆく。 伏兵側の三人が屋根を飛び降りたのはこのタイミングであった。 「んなっ……!?」 突然現れた三人に、目を白黒させる『ほのか』。 当然と言うべきか、騒ぎを聞きつけそちらを注視していたのだろう。 「あぁ、気にしないで。邪魔をするつもりじゃないから」 ルナはそちらに声をかける。 「お姉ちゃん達がお手伝いしてあげるから、もう少し頑張ろう?」 「はぃ?」 恐らく、だが。 ルナが告げた台詞が『地球は狙われている』であったとしても、ほのかは同様の顔をしていたであろう。 そんな表情で、彼女は倉庫内に突入してゆく三人を見送っていた。 「……ったく、勝手な事言うだけ言って」 それだけの言葉を絞りだす迄に数瞬の時間をかけ、ほのかは不機嫌そうに倉庫内へと侵入してゆく。 倉庫内にはもうもうと白煙が立ち込めていた。 小麦粉の粉か、唇と舌が瞬時にぱさついた感覚を訴える。 まず目に入ったのは無人のフォークリフト。鋼鉄で出来た物体に、鋭利な刃物によって刻まれたと思しき幾条かの傷跡が浅く残っていた。 承知の事ではあるが、地面に血痕の類は無い。相手に積極的に一般人を手にかける気はない。 断続的な咳が聞こえて来る。恐らく一般人の作業員は視界も呼吸も困難なこの場所で、壁際に退避しているものと思われる。 「見えますか?」 問いかけるファウナ。応じたのは、ルーシアである。 『ええ、それで間違いはありません。フィクサード達は分散して、裏口の間近に』 会敵時の感情では増援に応じる意図であったようだが、諦めたか。 既に仕事は終わっているとみていい。『コムギコ』はその手の中、という事だ。 今は脱出の機を伺っている。 制圧、奪還しなければならないだろう。 『あの子も、内部へ侵入したようです』 「それは面倒ねぇ」 付け加えられた言葉に、リリスは小さな溜息を吐いていた。 ● 倉庫内へと駆け込もうとするフィクサードに、マジックアローを飛ばすルーシア。 出来ればこのまま、自分も突入したい。あちらは……自前の戦力だけを考えるなら、人数優位はないのだ。 「つっ……! ちょ、ちょっと手加減してくださいよ」 防御を固めるみぞれ。フィクサード達の戦術は、当初から一貫して集中攻撃による数落としだ。 自身も後退しながらでなければ1~2名は落とされていたかもしれない。結名は天使の息を用いて、負傷者を回復してゆく。 ――工場の外へ撤退してくれるなら、見逃していたのに。 心はジャスティスキャノンで攻撃を自身に引き寄せながら、心中に呟いていた。 別に全滅させる事が目的でもない。出来るだけ早く騒ぎを抑えるのなら、撤退はむしろ有難い。 その時、後方に音。ユーナはそちらを振り返っていた。 「回収の……?」 車のブレーキ音である。運転席から飛び出した男が長剣を引き抜くまでを見て、ふと気付く。 「え、あれ、こっち来る?」 二度見であった。そしてわたわたと、側面方向へ。 挟まれる状況から抜け出す方角へとユーナは走り出す。 「停電だよー!」 闇の世界を広げるリリス。辺りは一瞬にして暗闇へと包まれ、男達の唸り声が上がる。 まさか元々視界を悪くした場所で、更にそれを制限して掛かるとは。予想外だったろう。 「いかん、すぐに此処を出ろ!」 フィクサードの声が響く。闇の世界の効果範囲はさほど広くも無い。現状ではさほどの影響があるとも言えないが、脱出経路を塞がれては手詰まりであろう。 撃破して押し通るという手段は、外の戦況が思わしくない段階で望み薄ではあったが、この時点で完全にその目を失っていた。 外の戦力が全てだとしても、別働隊が居たとしても、どちらにせよ倉庫内に引き込んでから遣り過ごそうと考えた彼等の作戦は完全に裏目に出た格好である。 だが、まだ賭ける事は出来る。リリスは接近するフィクサードが全身から気糸を閃かせるのを見た。 デッドリー・ギャロップ。 行動不能にさえ陥らせてしまえば、通り過ぎる事だけは出来る。 ぎゃり、という金属質の音色を構えたナイフが奏でていた。暗視で見た相手の眼には苦さ。 直撃ではない。気糸の中心は大きく身体を逸れていた。 そしてルナの放つ氷精と化したフィアキィが、フィクサード達の身体をまとめて凍結させていた。 「……?」 七人目のフィクサード、クロスイージスがぴたりと足を止めたのを見て、ユーナは怪訝そうな顔をする。 だが、理由はすぐに知れた。何となくではあるが、倉庫内へと向かった仲間達が『コムギコ』の奪取に成功したのだろうというような気分が伝わって来たのだ。 幻想纏いからの連絡は未だなので、断言は出来ないけれども。 くるりと現在交戦中のフィクサード三人、クリミナルスタアに視線を戻す。 戦闘不能は2名、残り1名。決着は――今つこうとしていた。 確かに、今から加勢に入ったところで無意味だろう。 リベリスタ達は回収役の男を警戒しながら、倉庫内へと踏み込んでゆく。 そうだ、と思いついたように、みぞれはその孤影に一言。 「そのー、変異した食べ物って美味しいんです? 甘いんです? 辛いんです?」 男は苦笑していた。 「さあな。大体変わらんだろうよ」 返答を聞いて、みぞれは首を捻っていた。 袋を担ぎ上げたまま、リリスは倉庫の外へ。 それをカヴァーするようにルナとファウナは裏口を固める。リリスが離れるにつれ、周囲の暗闇が晴れる。 フィクサード達の凍結は解けつつあった。次撃の準備を行うが、敵の次なる動きは――再奪還ではない? だいぶ収まりつつあるが、未だ舞っている小麦粉を利用して彼女達からじりじりと遠ざかっていた。 「追う気はありませんよ……今回は」 告げるファウナ。ルナもまた肯きながら、裏口から倉庫の外へと後ずさる。 「うん。貴方達の目的とする物は、もう手に入らない。その上で私達と戦おうって気がないなら」 見逃してやると、そう告げていた。 互いに武器を構え、行動を注視しながらすれ違う。ナイトクリーク三人が背を向け、回収役の車に向かって駆け出した時点で、二人は軽く吐息を吐いていた。 「さてと、あの子はどこへ行ったのかな」 ● 「で、それをくれるって訳?」 トレジャーハンター達。少なくともそのうちの一人の態度は、お世辞にも友好的ではなかった。 不機嫌さの理由は、察するまでもない。 「貰う義理とかねーわよ。あたし達は何も出来なかったもの。最後だって真っ暗だしフィクサードは最初から最後まであんた達が片付けたんでしょ?」 「……いや別にくれると言うなら貰っておけば良いと思うのじゃがのぅ」 もう一匹の方はなんか塀の上に上半身だけ登り、伸びていた。どうやらここで受け渡しをする手筈になっていたらしい。ほのかはそちらの意見をきっぱりと黙殺、無視。 「じゃ、ともかくそういう事だから」 言うだけ言って塀に飛びつこうとする。そこにぱたぱたと現れたのは、結名だった。 「また会いましたね、こんにちわ」 「……久しぶり」 僅かな沈黙が流れる。その後に、ほのかは「まだ続けてたんだ、リベリスタ」と言っていた。 「はい。お金も手に入りますし。一人でやってるよりは比較的安全ですし」 「よ、ね」 でも、性に会わない。そう言って彼女はくるりと塀の向こうに消えていた。 「また一緒に遊ぼっ。あ、でもアーティファクトで遊ぶのは程ほどにね。お姉ちゃんとの約束!」 ぎりぎりで声を掛けるルナ。その言葉に対しては、短い返答が返ってきていた。 次は敵かもしれないけれど、と。 「それで……コレ、どうしようねぇ」 リリスは手の中に残った小麦粉袋を見下ろしていた。 「いや、ええ……まさか。手に入るとは思っていなかったものですから」 軽く額を押さえながら、ルーシア。 「どう考えても小麦粉じゃないアレなような……」 そこまでを言って、心ははっと気付いたように口許を押さえた。 ルーシアと肯き交わす。 「考えない方がよさそうですね。ええ、そうしましょう」 「そうです。世の中には気付かない方が良い事も沢山ありますからね!」 「……というか、表現とか大丈夫なのかしら、色々と」 ユーナは僅かに俯きながら、そう呟いていた。 「食べると幸せになる粉かぁ……」 煙管を吹かしながらぼんやりと言うのはリリス。 「アークの人達って疲れてる人多そうだしぃ、あると役に立ちそうだよねぇ~」 続けた言葉に、一同は揃って沈黙し、或いは首を傾げる。 そうして、何処か触れてはいけない微妙な空気を纏いつけながら、彼等は帰路へとついていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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