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暗黒ひなまつり

●ひいなあそび -3/3-
 女子のすこやかな成長を祈る節句の年中行事。
 ひな人形を飾り、桃の花を飾って、菱餅、雛あられ、ちらし寿司と吸い物を拵えて、飲食を楽しむ節句祭りである。
 立春の2月4日頃を過ぎたら飾り始め、翌日に仕舞うのが、理想とされるものである。
 ひいなあそびともいう。


●ひな祭りの暗黒面 -Dead End-
 3月3日をとうに過ぎ。
 雛人形を片づけ始める時分。
 いやさ、むしろ早急に片付けなければ「嫁に行き遅れてしまう」という呪詛めいた言い伝えが、この行事の暗黒面である。
 昨今の時勢をチラチラ鑑見れば、容易に想像がつく。……

 最初にカップルが映し出された。
「手作りチョコ美味しかったよ。うーん、お返しは何がいいかなあ?」
「えーっとねえ。三倍返しなんて言わないから、あっくんの手料理でいいよ?」
「え? そんなのでいいの?」
 手を繋ぎ、男はホワイトデーのお返しについて語りかけ、女は何が良いかきゃっきゃと語り合う。
 二人を祝福するかのように、春一番が過ぎ去った青空と、陽気な光が、嗚呼甘く暖かい季節を演出する。
 やがてカップルは、ある古美術店の前を通りかかる。ショウウィンドには、古びた雛人形が飾られていた。
「ん? 今、人形が動かなかった?」
「えー? うそー?」
 二人はまじまじと、雛人形を見ると、やはり別段と異変は無い。気のせいだったのか。
「行こ」
「うん」
 去らんとした刹那、二人の脳に直接叩きつけるかの如き、怨嗟が響き渡った。

『おおお怨怨怨怨怨! こんかつぅぅぅ!』
『今日も仕事明日も仕事明後日も仕事おおおギギギききき』

 カップルに走る突然の苦痛。
 男は自身の胸と腹を抱えるように押さえる。女は両手を頭にやる。
 雛人形にあまたの怨念が宿ったか!
 男雛が血反吐を吐きながら動き出す。女雛が血涙を流しながら動き出す。一対の雛人形が、バッと両手を広げる様な動きをする。怨嗟がさらに強まり、男は血反吐を吐き、女は血涙を流して仰向けに倒れる。
 蒼穹が広がる、春の下。
 雛人形が流した血涙と血反吐と、まるで同じような死体が一対、出来上がった。



●「雛人形の前でいちゃつけ」と、酔狂堂は言った。 -Love Love Chu Chu-
「……E・ゴーレム、識別名『暗黒雛人形』を撃破する」
 『参考人』粋狂堂 デス子(nBNE000240)27歳独身は、腕を組み、あんまり思い出したくない現実にため息をつきながら、目的を告げた。
「急行すれば最初の被害者が出る前にはたどり着けるだろう。古美術店に陳列されている事と、人通りがそれなりにあるので、そこが面倒だ」
 地図をアクセス・ファンタズムにダウンロードして貰う。画面に映し出される。
 ざっと考えるに、人払いだけでなく、店主の乱入も考慮が必要になるだろうか。ショウウィンドウのガラスを砕けば、それだけで音が出る。何事か? とあいなる事は想像に難くない。
 一般人になるべく被害を出さず、且つ神秘の秘匿の面からしても、『面倒だ』と曰ったデス子の物言いは正しい。
「男雛も女雛も、フェーズ1.5ほどと言えようか。何やら男女関係のトラウマに作用する精神波を繰り出す。威力はそれなりだが、どちらかといえば状況の方が面倒だろう」
 実質的な戦闘より、やはり状況が焦点か。
「ただ、敵はカップルを優先的に狙う。実際にカップルで無くとも良いのだ。演技でもな。性別も問わんらしい」
 なるほど。
 実際の戦いに関しては、やりようによっては、やりやすくはなるだろうか。
 性別も問わない。リベリスタは、集まった面子を見回す。どうしたものか。
「精々、色々な意味で遺恨の残らない程度にやってくれ。私から言える事はそれだけだ」
 意味深な言葉を放ち、デス子は資料諸々を置いて、パイプ椅子に物思いに耽る様に腿で頬杖を作った。




■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:Celloskii  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年03月14日(木)21:28
Celloskiiです。
男女関係のトラウマやら、誰と誰がいちゃつくか等、ネタ成分多めです。
ですが、難易度はNormalです。そこだけご注意ください。

●目標
・『暗黒雛人形』一対を撃破する
・神秘の秘匿がある程度できている事

●状況
・1分間の間に2,3人は通る人通りです。
・歩道に沿った店舗の為、地形は悪くありません。近くに人通りの少ない裏路地があります。
・古美術店の店主は普通に居ます。眠りこけています
・敵は、ショウウィンドウの中に居ます。物音を立てると店主の介入があります。店の内側から取り出し、場所を移す等も可能です。(買う、というのも手です)
・問答無用で雛人形を殴ろうとした場合、即戦闘開始です。

●エネミーデータ
E・ゴーレム『男雛人形』
・トラウマビーム   神遠単 EPダメージ中
・胃潰瘍ブラスター  神遠単 ダメージ小   猛毒/呪い/致命
・傷病手当      神近単 回復大     自分毒

E・ゴーレム『女雛人形』
・トラウマパンチ   物遠単 EPダメージ中
・コンカツミサイル  物遠単 ダメージ大
・ニクショクッッ!  物近単 ダメージ中   出血/呪い/致命


特記事項:いちゃいちゃしているカップルを優先的に狙います。性別は問いません。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
クロスイージス
春津見・小梢(BNE000805)
スターサジタリー
雑賀 木蓮(BNE002229)
マグメイガス
宵咲 氷璃(BNE002401)
ソードミラージュ
リンシード・フラックス(BNE002684)
スターサジタリー
雑賀 龍治(BNE002797)
ナイトクリーク
宮部・香夏子(BNE003035)
マグメイガス
シェリー・D・モーガン(BNE003862)
デュランダル
エオストレ・アウローラ(BNE004421)

●明かりをつけましょ爆弾に -Booooom!-
 一方は古美術店へ。
 一方は裏路地へ。
 リベリスタ達は、人払いを済ませた後に二手に別れる作戦――要領よく、それぞれの役割を果さんとする作戦を執った。

 ――カツリッ。
 古美術店の暖簾を滑らせて少女が二人、店内に靴を響かせる。
 『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)と、『鏡操り人形』リンシード・フラックス(BNE002684)であった。
 奥を見れば、老店主は眠りこけている。なんとも春らしい。
 氷璃は、粛々と眠りこけた老店主を揺り起こし、早速と交渉に入った。
 リンシードの顔は何故か物憂いた様に、何故か暗い。
「ごきげんよう。あの人形を見せて欲しいのだけれど?」
 老店主は老眼鏡を手にとる。
「あ、ああすまんすまん。あの雛人形かい?」
 老店主の目が光ったような気がした。「由緒ある品でね」などと老獪な側面をチラチラ見せる。
「氷璃お姉様、お高くなりそうですか?」
 リンシードがすかさず合いの手を入れて、ここに熾烈な商談が始まる。
「ふぅん、少し日焼けして状態が悪いわね。お幾らかしら?」
 箱が無いのなら値は下がる、由緒があっても手入れ状況その他、日の当たるショウウィンドウで痛みが出ないのかエトセトラ。『こんないたいけな少女達にふっかけるなんて良心が痛まないのか』といった方向性で、値切る値切る値切る値切る。……

 『第34話:戦隊の掃除しない方』宮部・香夏子(BNE003035)は、工事案内看板を歩道に設置して、車へと戻った。
 結界もある。これで準備完了。
 車の中では、『もう本気を出す時じゃない』春津見・小梢が炊飯器を抱えてご飯を皿によそっている。
 これでこちらの準備も完了。香夏子はご飯を受け取って、車のトランクの中から鍋を出し、早歩きで裏路地へと急ぐ。
 裏路地では『破壊の魔女』シェリー・D・モーガン(BNE003862)が『keep out』と記されたテープを貼り、歩道と裏路地の二重での人払いを完成させていた。
 見れば、いちゃいちゃ要員である『八咫烏』雑賀 龍治(BNE002797)はそわそわしながら、通行止めの看板を設置している。
 いちゃいちゃ要員である、『銀狼のオクルス』は、「行くぜ!」とやる気まんまんだ。やる気。やる気?
 『メリーウィドー』エオストレ・アウローラ(BNE004421)は、世界樹の子『フュリエ』である。
 ボトム・チャンネルの風習に、素敵! ときゃっきゃして。
「オトコビナの顔を赤くして、オンナビナの耳を長くしたら素敵だと思わない?」
 見えない誰かに。誰も居ない場所に話しかけている。許されざる恋。いちゃいちゃ要員である。おそらくは。

 必殺『アークへの必要経費』により、人形を入手した氷璃とリンシードは、手筈通りに裏路地へと移動する。
 いきなり動かないように、布をかけて。
 人払いは完璧であるが故、何事もなく到着し、地べたに据える。
 人形がくれば、一気に気が引き締まる。各々、戦闘力を高める付与を準備する。
 整ったことを見計らって、氷璃は布を剥ぎ取った!

 ばさあ!
「御覧なさい。アレが雑賀夫妻(スナイパーラヴァーズ)よ!」
 試合開始のホイッスル!

 先手必勝、木蓮が躊躇無く龍治の腕をとって抱きついたぁ! 逆サイド(女性側)からのオフサイドトラップだぁ!
 木蓮が龍治の頭を撫でる! なんという高度なテク。
 『撫でると耳が揺れて可愛いのだ』と木蓮はノリノリだぁ!
「少し暖かくなってきたが、影になるとやっぱ寒いな……!」
 そのまま龍治のポケットに手を突っ込む! これは熱いっ!
「へへー、あいらぶたちゅはる!」
「!!??」
 決まったーッッッ!! ゴーーーールッッッッ!! ほおぉぉむらん!
 照れくさそうに頬を掻いてる龍治選手からのコメントは、後ほどインタビューにて……!

 ――途端、暗黒雛人形の顔が、縦長の黒き眼孔、縦長の黒き口へと変ずる。
『おおおお怨怨怨怨怨しあわせをみせつけるんじゃねえええぇぇぇぇぶちころがすぞお怨怨怨あーーッッ!!!!』
『はぁ~~~~、わかいとき怨怨怨だけだぁよそんなのは~ああ~ATMATMATM~~~人生怨怨怨怨』
 怨恨が怒髪天。天元突破して爆発した。

「男と女がいがみ合わずに怒り合わずに居られる世界ってイイよね。ルーくんもそう思うでしょ?」
 木蓮と龍治の試合を観て、エオストレがにっこりと、悠長に、見えない誰かに呟いた。



●暗黒ダークネス怨嗟パワー力 -Black Powor-
 こんなはずではなかった。
 こんなはずではなかった。
 こんなはずではなかった。

 リンシードは胸裏で反芻する。
 本来なら、愛しのお姉様といちゃいちゃして見せ付けようと思ったのに。
 愛しきお姉様がいれば、裏路地で待機しているはずだった。
 逆にいちゃいちゃするのを見て、尚且つそれを護り通さなければいけないと言う怒り……葛藤に苛まれていた。
「全てこのエリューションに叩きつけてやります……!」
 リンシードは怒りを込めて、地面を蹴る。ヤケクソとも言える。
 瞬息に男雛へと肉薄し、すらりと抜いた剣で、速度を乗せた一刀を袈裟に切る。切り捨てた男雛の断面から病的なまでに"疲れ"がでろでろとげろげろ溶け出て、切断面を接着する。何とも根深い。

『ああ~~~怨怨怨怨怨怨 ATM ATM ATMじんせ~~』
『ごろます! ごろます! ぶちごろます怨怨怨あーーッッ!!!!』

「自分達もカップルの癖に……行かず後家の怨念かしら?」
 氷璃は女雛の様子を見て呟く。
 怨嗟――かく深刻な絶望が男雛の根源ならば、かく女雛は怒りと言えようか。凄まじき雄叫びを上げている。
「焦りで変な男に躓くより、男と女のcon gameを楽しみたいわ」
 自身は、何十年経っても歳なんて取らないのだから。
 黒き葬送の調べを高速で唱えて放つ。今にも飛びかからんとする女雛の動きを止める。
 男雛はリンシードに斬られ、でろでろと動きは鈍っている。その上から葬る調べが動きを止める。

「ひゃー、本気でブチ切れちゃったー」
 のんびりとした声色で小梢が驚く。
 予想していた通りの展開である。これは凄まじい。
 氷璃が動きを止めたのが、更に怒りに拍車をかけたのか。女雛は縦長の口に牙が生じている。ガチリッガチリッと、頭をつきだして前のめりに、噛みつかんとする姿勢は一種、異様であった。
「小梢お姉さん、あーんして」
 香夏子が横から、カレーを掬ったスプーンを小梢に差し出す。
 小梢はぱくりと食す。じわっとしたルウの旨さが口中に広がって、異様な雛人形など忘れてしまわんとする幸せが、ただただ広がった。ご飯に良く染みたルウ。ルウの絡んだ甘いご飯の味わいは、芸術である。美学である。文学である。尊き功徳である。
「カレー美味しい、しあわせ」
 小梢がお返しに香夏子へカレーを掬って差し出す。
「もぐもぐいちゃいちゃ、カレーうまうま。香夏子、とっても役得です」
 香夏子も薄い表情筋ながら、全力で幸せを満喫する。
 すると、女雛は目から血を流して、ガチリッガチリッ。
 カレーでいちゃいちゃする小梢と香夏子。雑賀夫妻の四者へと噛みつかんと歯を鳴らす。
「食べたいです? ちがいますね」

「どの様な経緯を経れば、この様な怨念を身に纏うのだ」
 龍治は先の木蓮からのゴールに赤面し、しかしコホンっと咳払いをして気持ちを切り替える。
 相手は二体、作戦通りに戦闘を行えば難なく倒せるだろうと思索する。
 思索する途中で木蓮がたちゅはるに抱きつくような形で庇う。
「俺様の大事なもんなんでな!」
 呪縛が解けた瞬間、躍りかかってくるであろう人形から、愛しき人を守るため。木蓮は身を呈して。
「ほ、本当に、戦闘中にいちゃいちゃとするなど……!」
 龍治は、やはり赤面しなおして、火縄銃を構える。男雛に照準を合わせる。その耳は揺れている。
 放たれた弾丸は、精確に男雛に突き刺さり、でろでろしたものを噴出させる。
 ここで、雛人形達に対して、シェリーが至極真当なツッコミを入れる。
「ふと、思ったのだが、おぬしら二人でイチャついておれば良いのではないか……」
 二体の動きが一瞬ピタリと止まり。

『離婚をチラつかされてATMにされる苦しみがわかるかああ!!!!!!!』
『怨怨こんな稼ぎの少ない奴ゥゥゥ年収1000万いじょおおう!!!!』

 更に発火する。
 いやさ、この一言で、今迄でろでろ疲労を吐き出していただけの男雛の方が、ブチ切れる。
 この様子にシェリーは全力で溜め息をついた。
「ま、いずれにせよ、破壊することに変わりはないのだが」
 掌に魔を凝縮させる。敵の位置、敵の軌道を演算し。
『捉えはしたが、小さいの』
 口から詠唱が、一種の独唱の様に優美に唱えられる。
 シェリーが詠唱する最中、挟撃するような位置で剣を構えたエオストレは、盛大にクエスチョンマークを浮かべた。
「あれ……なんで私たちを狙わないの? ルーくんと一緒なのに……」
 ルー君とは、エオストレのラヴァーである。エオストレにしか見えない、ラヴァーである。
「ねえ! 見えないの? お前には私『たち』が見えないの? 何か言えよ! 答えろよ!! ねえったら!!」
 半泣きで、次第に大泣きになりながら、がっつんがっつん男雛を殴打する。
 かつて、フュリエと敵対した種族であるバイデンの、その得物、黒曜石の長剣でもって。ひたすらに。
『へぶし! ぐほお!』

 戦いは、リベリスタ達の優位に運ぶ。
 とかく最速のリンシードが足を止める。氷璃が、最速とはいかずとも二体の足を止める。
 そこへ追撃に入る龍治の精密な射撃。
 誰を狙うのかがほぼ明瞭であるのだから、装甲の硬い小梢や木蓮が、薄い者を守れば良い。
 安全圏のエオストレがそのデュランダルの火力を存分に発揮し、香夏子のデッドリー・ギャロップが更なる呪縛を施せば。
 ――封殺、とはいかずとも、結果は目に見える形で出てくるのである。そして――

「『くだらぬ怨念ごと、塵一つ残さず消滅させやろう』」
 シェリーが放つ四色の魔光、魔の奔流が最大火力。怨念を飲み込むのである。
 ――『Time to make the sacrifice』



●ぱぱになります?(←?が良心的) -Tachuharu-
 恋は罪悪です。
 嬉しい恋も積もれば、恋せぬ昔がかえって恋しい。
 そういうものですよ、君。

             ――――黄泉ヶ辻の呪詛師『俳座』


 執念か。
 男雛がズタボロになった所でようやく呪縛を引きちぎって、雛人形達が動いた。
 男雛は、でろでろとした光線のようなものを噴出させ、女雛はガチリッガチリッと歯を鳴らす。
 光線も歯もやはりに、龍治達を狙う。そして光線から龍治を庇う形で木蓮が食い止めて、歯は射線上にいた小梢の腕に食らいつく。
 ぱさりと力なく後方に倒れそうになる木蓮を、龍治が介抱するように受け止めて。
「大丈夫か?」
「……俺様、……俺様。悪いとこいっぱ…い…わーん!」
 トラウマである。
 男女関係に関するトラウマを見せる。
「大丈夫だ、大丈夫」
 龍治がよしよしと、木蓮を慰めている間。
 歯からトラウマ成分を注入された小梢が、だらーんとする。だらだらだらーんとする。
「はー、早く帰ってカレーが食べたい」
 路地裏であるのに、その場でごろーんとする。とりあえず噛み付かれた腕から女雛をぽいっと投げ捨てる。
「大丈夫です、お酒の入った雑賀さんが話してくれたじゃないですか。性格も、見た目も…そして何より胸!って! その胸さえあれば永遠の愛を手に入れたも同然です」
 リンシードがとうとう病んだ様な顔をして木蓮をフォローをする。だらーんとした小梢を羽交い絞めにして、ずるずる引き摺りながら。フォローになってんのかなってないのか、夫妻はただただ「「ッッ!!??」」を浮かべるのみである。
「こちとらだってカップル、カップルなの! カップルになりたかったのぉ!!」
 ぽいっと中空にあった女雛を、エオストレが叩き落とす様に、上から下、大きく振りぬいて地面に激突させる。
「種としてはキライでも、個としてはスキだったんだもぉん! カップルなの! だから狙ってよぉぉぉ……」
 がっつんがっつん女雛をコンクリにめり込ませて行く。
 男雛は自身を省みず、女雛へ傷病手当を施そうと近接する。刹那、黒き奔流が再び男雛を飲み込む。
「薄々気付いていたけれど――貴方、尻に敷かれ過ぎよ」
 氷璃が放ったものである。
『ウオオオオオオ怨怨怨怨怨怨怨怨』
 ズタボロだった男雛は、でろでろした疲労感と共にあっけなく消滅した。
 一呼吸。
 巨乳好き草食狼を見て、男雛の残骸を見る。
「男はやっぱり、沙織のように自信に満ち溢れていないとダメね」
 氷璃は、The・沙織一筋であった。

「あとは女雛だけですよ、小梢お姉さん」
「だらだらだらーん」
 香夏子の声にもだらだらだらーんを続ける小梢。香夏子はカレーを掬って小梢の口に近づける。ぱく。
「おいしい」
 だめだ、深刻なだらだら状態にある。
 女雛はエオストレによって、コンクリに生首が生えたかの如き有様となっている。
 仕方ない。と香夏子が女雛に向けてジョーカーの札を投げつける。額にサクッと突き刺さる。運に作用するから少しはこれで動きが止まるかもしれないとした試みであった。
 それは後に見事に作用する。
 ――『闇が統べる世界へ誘ってやろう』
 いちゃいちゃもだらだらーんもどこ吹く風。シェリーの最大火力、魔曲が奏でられて、それが香夏子の不吉を伴った奔流が、生首を焼き尽くす。それは猛烈な火力である。一撃で、髪の毛を残さず焼き、塗装の白紅を剥がし、黒きムンクの如き有様となる。
『ニクショクッッッニクショクッッッ!!!』
 よだれをダラダラ垂らしながら、女雛は尚も怨嗟を放つ。
 亡霊の様にしゅわしゅわと気体を放ち、その気体が40代ともつかない女性の人相を形作る。その目はギラギラしている。
「フェイト削ってでもこいつ絶対ぶっ壊すから!」
 エオストレがぶんばか振った剣が気体を切り裂く。しゃあ! と気体が飛び出して、トラウマパンチが龍治を殴打する。
「くっ……」
 木蓮の望む通りの男になれていないのではないかという思いが龍治の胸裏を支配する。
 木蓮と出会うまで、そういう経験がない。このまま傍にいて、良いのだろうか……。と耳を垂れてしょぼんとする。
「雑賀さん。貴方が装備しているプロテクターの事を思い出してください」
 リンシードが剣を構える。
「草臥さんが貴方の為にって、GPやらをつぎ込んで作った愛の結晶じゃないですか。むしろここまでして貰ったんですから、幸せにしてあげてくださいよ、本当……!」
 狙うは本体。
 一陣の風が駆け抜けて、女雛の頭部は地面に転がった。

『おおおおおおお怨怨怨怨怨怨怨怨怨許すまじ! ゆるすまじいいいい!』
 気体は尚も叫び声を上げる。まだ終らないのか?

「あ、そうだ、龍治」
 トラウマめいたものから復活した木蓮は、自身のお腹を撫でる。
「ちゃんと名前付けてくれよな、お父さんの初仕事だぜ?」
 えへへ、と笑う『渾身の演技』。
「ホワイトデーは、それでいいから」
「ッッ!!??」
 龍治は驚愕した。絶句した。
 木蓮の演技を演技と気が付かずして、脳裏には『雑賀~何』が語呂が良いか、いやさ二人から一文字ずつ取るかなどと、色々奔流する。短き間、瞬息のうちに色々駆け巡る。

『許すまじ、許すまじ、許すまじ! おるが殺す! おるが殺……――』

 キラキラキラキラキラする光の波動が迸って、暗黒雛人形の暗黒パワーが消し飛ばされるかの如き、幸福パワー。しあわせぱわー! らぶらぶちゅっちゅ力! 
 これにて、――戦いは終わりを告げた。



●愛の力の勝利 -Love is Win-
『この場に留まる理はもうなかろう』
 苛烈な戦いであった。熱い戦いであった。しかし、どこ吹く風。シェリーはそそくさと撤収した。
 エオストレは、ラヴァーに話しかけている。
「ルーくん! ボトムでの初めてのお仕事うまくやったよ! 褒めて褒めて!」
 『メリーウィドー』の初任務は成功。これからの戦い。幾度もの戦いを二人でくぐり抜けていくのだろうか。
 カレーをたくさん食べさせて元気を取り戻した小梢と、終始安全圏にいた香夏子は、さっさとテープや立て看板を回収し、今晩は何カレーにしようかと言葉を交わす。
 リンシードはげっそりと、お姉さまとお姉さまと、と氷璃にブツブツ呟く。
 元気出しなさいと氷璃が背中をぽんぽん叩いてあげて。
 照れくさそうにした龍治は、やはり改めて木蓮と手を繋ぎ、場を撤収する。
 インタビューは無粋。


 妬み、憎悪、爆発しろ。
 それらの怨恨に呪詛が渦巻く今日。そしてボトムチャンネルの敵となったように。
 負の感情の凝縮体、第二第三の暗黒雛人形が現れるやもしれぬ。
 しかし、愛の力は確かである。打ち勝つのもまた愛である。
 手を取り合って歩き続ける意思を持ち、一歩踏み込む勇気を持った者を――リア充というのである。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 Celloskiiです。
 ごちそうさまでした。