●繁殖するカビ 大理石の敷き詰められた公園。普段は、近隣住民の憩いの場になっているその場所だが、今、この時ばかりは状況が違った。普段は白一色のタイルや噴水が、どういうわけか緑や赤、青など色とりどりのカビに覆われているのである。 不気味がって、住人達は近寄らない。原因不明のカビが大量発生したことにより、公園はすぐさま町役場によって封鎖された。それが、3時間ほど前のことである。 そして、数名の調査団が公園に入っていったのが2時間前だ。 その後、調査団からの連絡は途絶えてしまった。それもその筈、彼らは皆、カビに囚われ動けなくなっているのだから。 大量発生したこのカビは、この世界のものではない。公園中央、噴水の傍に開いたDホールから現れたアザ―バイドである。少しずつ、時間をかけてそれらは公園をカビで覆い尽くした。 現在、カビに覆われた公園内にはカビで出来た人型のオブジェクトが6つほど点在している。原因不明のカビを調査しに訪れた、調査団たちだ。幸い、まだ辛うじて息はあるものの、そう長くは持たないだろう。 その間にも、カビは少しずつ範囲を広げて行っている。公園を被いつくし、外に出て行くのにあと2時間も掛かるまい。 じわり、とカビが蠢き地面から這い上がる。這いあがったカビは、歪ながらも人の形を形成していく。調査団達を参考にその姿を取ったのだろう。 ゆっくりと、カビで出来た人型が歩み始める。更に、人型は分裂し、2体、3体と数を増やしていく。 歩くたびにカビをばら撒くそいつは、公園を調査し終えて市街地へと出て行くつもりらしい。 これ以上、被害が拡大する前にここでカビを喰いとめる必要がある。 その為に活動を開始したのが、アーク所属のリベリスタ達であった。 ●カビを殲滅せよ 「アザ―バイド(モールド)。意思らしい意思は持っていない。ただ繁殖するだけ、という目的というか本能を持って行動しているみたい」 赤、青、緑、黄と様々な色合いのカビである。大理石を被いつくし、人を捉え、木花を浸食する。カビだらけになった公園をモニターに映して、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)がやれやれと大きな溜め息を吐いた。 「この規模では、送還は無理。殲滅してきて欲しい。それからDホールの破壊も忘れないで」 殲滅、と言ったところで、しかし公園を被いつくすほどの大量のカビ、どうすればいいのか皆目見当も付かない。 「一応、人型を取って動いている部分が核、司令塔のようなものみたい。もっとも、今のところ人型のモールドは7体まで分裂しているから。そのどれかが核になっているようね。核を倒せば、繁殖は止まるから」 そは言っても、現在公園内にモールドが7体。更に6体、カビに覆われた調査団員もいる。外見的にはほとんど同じモールドと調査団員を、誤って攻撃しないよう注意が必要だ。 「また、モールドの攻撃は数ターンその場で効果を及ぼし続けるから気をつけて」 カビは、静かに浸食するものである。 時間をかけて、ゆっくりと……。 「核を殲滅、調査団を避難させた後は、火でも放ってカビを焼き払ってね。よろしく。核さえなくなれば、火で簡単に燃やしつくせるはずだから」 と、そう言って、イヴはリベリスタ達を送りだしたのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:病み月 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年03月14日(木)21:29 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●カビに覆われた公園で ジワジワと、濃い緑色のカビがアスファルトを這い進む。周囲はカビの胞子で僅かに霞んで見えていた。見ているだけで息苦しさを覚える光景だ。小動物や昆虫さえ逃げ出した公園に、立っているのはいくつかの人型。その数全部で13体。うち6体は、カビに覆われ身動きが取れない本物の人間だ。 残る7体は、彼らの姿を真似たカビのアザーバイド(モールド)である。 それなりの広さがある公園が、カビに占領された異様な光景。 それを眺める、8人の人影。 アーク所属のリベリスタ達だった。 ●人とカビと、リベリスタ 「梅雨時でなかっただけマシか」 漂うカビを吸い込まないよう、口元を手で覆いながら『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)がそう呟いた。千里眼で公園を見渡し、モールドや調査員の位置を探っている。 「まったくだ。三寒四温のこの季節にカビとは、異階層産は元気だねぇ」 パタパタと翼の先を振ってカビを払う『赤錆烏』岩境 小烏(BNE002782)。視線の先には、疾風の姿がある。彼の千里眼が、人質救出とモールド発見の鍵になるだろう。 「少量でも採取しておけば、良い研究材料かも知れないね」 傍らの柱に付着したカビを指先でこそぎ取ってスィン・アル・アサド(BNE004367)はそう呟いた。 「急ぎますか、着実に……。其方は如何ですか?」 低空飛行で移動しながら『紫苑』シエル・ハルモ二ア・若月(BNE000650)は、AFを通じてもう片方のグループに連絡を取った。もうじき、こちらのグループは最初の人型の元へ到着する。それが囚われた調査員なのか、或いはモールドなのか、それはまだ分からない……。 一方、こちらはもう片方のグループ。 「この季節にカビの被害なんてイヤすぎなのダ~。お花見の季節も間近だシ、さくっと倒シテ、公園もキレイに掃除するのダ!」 インコのような顔をした『夢に見る鳥』カイ・ル・リース(BNE002059)が杖を突き出す。杖の先端から放たれた十字の閃光が、カビを焼きながら公園を飛ぶ。 向かう先には、こちらに向かって歩み寄る人型のカビ。モールドだ。調査員は身動きが取れないようなので、動きまわっているのなら、それはアザ―バイドである。閃光がモールドに届く、その直前、モールドの体を取り囲むようにカビの竜巻が発生。十字の閃光を受け止める。 「ヌヌ!?」 驚きの声を上げるカイ。カビの竜巻は、消えることなくその場に留まり続けていた。消えるまでの間、効果を及ぼし続けるカビの竜巻だ。 「なんだこの繁殖具合は……きもちわりぃ」 カビを撒き散らしながら、『双刃飛閃』喜連川 秋火(BNE003597)が公園を駆け抜ける。カビの竜巻を避けるように旋回し、真横からモールドに斬りつけた。左右の手に握った小太刀を交互に閃かせ、止まる事のない斬撃を放つ。 「さっさと片付けてしまおうか」 刀が一閃されるごとに、モールドの体は削れていく。元々、身体は全てカビで構築されているのだ。しかし、突然、モールドの体が反転。握り拳で秋火を殴る。 「う、っ!?」 殴り飛ばされた秋火は、そのままカビの竜巻へと吸い込まれていく。カビの粒子が秋火に纏わりついて、その身を石化させていく。 削れた体をそのままに、モールドは地面を蹴り飛ばす。元々体が軽いのだろう。竜巻に煽られるように、宙へと舞い上がって戦場を離脱。 しかし……。 「これは酷い……。核があるか知りませんが、撃って千切ればいずれ分かるでしょう」 『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)が両手に構えたゲテモノピストルから弾丸が射出。まっすぐに宙を飛び、モールドの胸を撃ち抜いた。大きな穴がモールドの胴に空き、その体は真っ二つに千切れ飛んだ。 「基本は一体ずつ各個撃破、で良さそうですね」 撃ち出そうと用意していた魔弾を収束させ『バイト君』宮部 春人(BNE004241)がそう呟いた。地面に落ちたモールドは、パラパラと崩れて消えていった。 「死んじゃいましたか、こいつは外れっぽいですね……」 ピストルに付着したカビを払いながら、あばたは言う。 モールド、残り6体。 「見分けがつけばいいんだが」 と、千里眼で周囲を見渡しながら疾風はそう呟いた。視線の先には、5体の人型。それがモールドなのか、或いは調査員なのかこの距離からでは分からない。 「あの個体、呼吸に特徴的な動きを認めます……一般人かもしれません」 手近な1体を指さして、シエルは言う。それを受け、小烏が前へ出る。そっと手を伸ばし、人型に手を触れた。 「あぁ、人間だね。頑張れよ、あと少しの辛抱だ」 「大丈夫か!?」 駆け寄って来た疾風が、調査員の顔に付いたカビを拭いとる。そのまま、調査員を抱えてその場を離脱。公園の済みに、運んでいった。それを見送り、小烏は次の1体へと歩み寄っていく。と、その瞬間……。 小烏の目の前で、人型から大量のカビが噴出。周囲に紫色の胞子をばら撒いた。 「っと、菌類の方か! そんなら覚悟しな」 咄嗟にバックステップでその場を離脱。だが、撒き散らされたカビの勢いは止まらない。小烏を追いかけるように、カビは侵攻してくる。 それに加えて、更に2体の人型が動き出す。どうやら5体中3体は、モールドだったらしい。撒き散らされる毒カビから逃れるように、スィンが風上へ移動。 「カビ相手なら、マスクでも用意しておけば良かったかな?」 スィンの周囲を、冷気を撒き散らしながらフィアキィが舞い踊る。一瞬後、一気に周囲の気温が下がったように感じた。地面を這う冷気が、カビを凍らせながらモールドに迫る。モールドの体が凍りつき、動きを封じる。 凍りついたモールドに、小烏の放った式符の鴉が襲いかかった。 「核を潰すまで、もう少し我慢しておくれよ」 カビに覆われた調査員の肩を、スィンが叩く。先頭に巻き込まないように、とシエルは調査員を抱えてその場を離脱する。 「早くなんとかしないと……」 抱えた調査員から感じる鼓動はひどく弱々しい。内心焦りを感じながらも、シエルはただただ、自分の仕事をこなすのだ。そんなシエルと交代するように、調査員を避難させ終えた疾風が帰ってくる。 「浸食は喰い止める、変身!」 装備を身に纏い、拳を握る疾風。その手に業火が纏わりついた。 地面を蹴って、疾風は高く、飛び上がる。 「立ち位置には気をつけるのダ~」 カイの背後には、4体の人型。そして眼前には、3体のモールド。調査員を発見し、避難しようとした矢先に、モールド達の襲撃を受けたのである。 こちらへと迫りくる毒カビを、十字の閃光で焼き尽くすカイ。しかし、敵の数とカビの量が多い。 「調査員を救出して、下げておこう」 カイの元へと、石化から解放された秋火がやって来た。小太刀を仕舞って、秋火は調査員の体を担ぎあげた。服に大量のカビが付着する。それを横目に見て、秋火は僅かに顔をしかめる。毒カビを吸い込んだのか、彼女の顔色は少々悪い。 「私が援護しますから。………死ぬなよ、頼むぜ」 調査員に語りかけるようにそうあばたはそう言う。じわじわと迫る来るモールドに対し、次々と弾丸を撃ち込むあばた。弾丸が当たった端から、モールドの体が削れていく。 とはいえ、相手はカビである。体が欠けたからと言って、動きを止めるようなことはない。 「無事に倒せたら……このカビも掃除とかしないとダメでしょうか?」 春人が魔弾を撃ち出す。魔弾がモールドに触れる、その直前、モールドの周囲にカビの竜巻が発生。魔弾を打ち消す。3体のカビの背後には、噴水が見える。もっとも、湧き出す水にはカビが混ざって、とてもじゃないが美しい、とは言えない有様だった。 噴水から飛び散る水滴を浴びて、モールドの体が再生していく。とはいえ、ダメージまでが再生しているわけではないようだが。 周囲に撒き散らされる毒カビと、モールドを守るように発生したカビの竜巻。毒カビの影響か、リベリスタ達は少しづつダメージを受けていく。 「まずいのダ」 カイが小さな呻き声を漏らす。仲間が毒や石化の影響を受ける度に治療を施していたカイだが、このままではジリ貧だ。幸い、避難の終えていない調査員は残り1人。その最後の1人も、たった今、秋火が抱えあげた所である。 「弱っている相手から狙いましょう」 杖を手に、春人が言う。展開させた魔弾を、モールドの方へと向け、そこで気付いた。カビの集合体でしかないモールドは、パッと見ただけでは弱っているかどうかなど、判別できない。 「……もう一頑張り、しないとですね」 呻くようにそう言って、春人が魔弾を撃ち出した。と、同時にモールドの1体が両手を前に突き出すような姿勢を取る。腕に集まったカビが、まるで矢のような勢いで撃ち出された。魔弾と交差するようの飛んだカビの矢は、そのままリベリスタ達の間を抜けて秋火の抱えた調査員へと迫る。 一方、魔弾はモールドの頭部に着弾。カビを撒き散らして、モールドの頭部が爆ぜた。 「カビの矢とか……きもちわりぃ」 秋火は調査員を庇うように体を動かし、代わりにカビの矢を受ける。カビの矢は秋火の背中に突き刺さり、大量のカビを噴出。飛び散る鮮血と、緑の胞子。秋火の口から、血が吐き出された。そのままカビに押されるようにして、秋火の体は前へ吹き飛ばされる。落下の寸前、秋火は調査員を庇うように体を反転させた。地面に落下した秋火の上から、調査員が落下。それを受け止める。 「……っぐ!?」 秋火の背から大量の血が噴き出した。傷口から発生したカビが、彼女の体を包む込む。どうやら、意識を失ったらしく、秋火はピクリとも動かない。 「回復を優先するのダ!」 カイの周囲に、淡い燐光が発生する。燐光は、ふわふわとその場を漂い、傷ついた仲間の元へと向かう。傷が癒えたのを確認し、春人は大きく頷いた。 「もうちょっとです、一気に押しきりましょう!」 まっすぐ、眼前のモールドへ向けて杖を差し向ける春人。放たれた魔弾が、まっすぐ宙を駆け抜けてモールドへと直撃した。先ほど、春人が頭部を砕いたモールドだ。体中に魔弾を受け、その身は粉々に砕け散る。再生する様子はない所を見ると、これで撃破した、と見て良いだろう。 背後に倒れたままの秋火を心配そうに尻目に捕らえたまま、カイは杖を振るった。杖の先端から放たれる十字の閃光が、右端のモールドへと迫る。展開されたままだったカビの竜巻と、閃光が衝突。両方纏めて、消え去った。 身を守る竜巻が消えたのを確認し、あばたはそっと銃を掲げる。 「やれやれ、胞子を浴びすぎました。帰ったら銃のメンテしませんと」 カチン、と銃の撃鉄が降りる。火薬が爆ぜ、次いで僅かな破裂音。射出された弾丸が空気を切り裂き、モールドへ迫る。咄嗟にカビの竜巻を発生させようとするモールド。だが、間に合わない。あばたの弾丸は、寸分違わずモールドの胸から上を吹き飛ばした。モールドは崩れ、風に吹かれて、消えていく。 「あと1体なのダ!」 そう叫んだのは、カイだった。だが次の瞬間、カイの脇腹にカビの矢が突き刺さり、爆ぜる。後ろへと吹き飛ばされるカイを受け止めたのは、よろよろと立ち上がった秋火であった。 「カビは当分見たくないな……ほんとに」 戦闘不能から、フェイトを使用して復帰を果たしのだろう。カイの体を地面に降ろすと、秋火は2刀を腰から引き抜く。タン、と軽い音。秋火が地面を蹴った音だ。漂うカビを切り裂いて、秋火が駆ける。モールドは、秋火目がけてカビの矢を射出。 「……っと!」 だが、秋火は矢が当たる寸前でそれを回避。不安定な姿勢のまま、脅威のバランス感覚で宙へと跳ねる。落下する勢いそのままに、秋火の2刀が閃いた。秋火とモールドが交差するその1瞬の間に、何度斬りつけただろうか。モールドは微塵に切り刻まれ、消える。 「やれやれ……。これでこっちは、討伐完了だな」 噴水の傍に開いたDホールを破壊し、秋火はその場に倒れ込む。胸から溢れる大量の血が、噴水の水を赤く染めていく……。 ●這い寄る驚異 「カビは燃え尽きろっ!」 炎に包まれた腕を振るう疾風。凍りつき、その場に固定されたモールドを3体、纏めて殴り飛ばした。氷が砕け、蒸発。周囲に蒸気が散る。 モールドの1体が、自身の周囲にカビの竜巻を発生させた。 「う、おぉぉ!?」 竜巻に巻き込まれ、疾風の体が石へと変わる。 「核が分かれば、集中攻撃で殲滅できるのに」 忌々しげにそう言うスィン。再びエル・フリーズを放つ為にフィアキィを出す。だが、次の瞬間、竜巻の影から射出されたカビの矢が、スィンの肩に突き刺さる。カビが吹きだし、スィンの体は大きく後ろへ弾き飛ばされた。その場に取り残されたファイキィが、スィンを追って下がる。 「まいったな。この後にまだ仕事が控えてんだ、ここでへばっちゃ話になんねぇ」 小烏は、大量の式符をばら撒いた。式符は瞬時に鴉へと変化。大量の鴉は、一斉にモールドへと襲い掛かる。竜巻を打ち消し、3体並んだモールドの元へ飛んでいく。竜巻とぶつかった際に、結構な数の鴉は消え去ってしまったが、それでもまだいくらか残っている。 鴉が数体、モールドへ到達し、その体を撃ち抜いていった。 2体のモールドの上半身が砕け、胞子と化して飛び散って消える。だが、モールドの体はジワジワと再生。ある程度の損失は即再生できるようだ。 「癒しの息吹よ……」 シエルが呟く。周囲を舞い踊る淡い燐光。石化した疾風と、地面に倒れたスィンの体を、燐光が包み、傷を癒していく。 「皆さん、ご無事ですか?」 スィンを助け起こしながらシエルが問う。スィンは小さく頷いて、立ち上がった。スィンを心配するように彼女の周りをファイキィが飛びまわっている。 「核、見つけないとな」 全ての鴉が打ち消され、モールドの体も直に再生完了だ。ダメージまでが消えているわけではないようなので、このまま攻撃を加えていけば、倒せる筈だ。 もっとも、周囲を漂う毒のカビを吸い込み続ければ、遠からずこちらも倒れてしまうだろうが。 「否、核は見つけた」 体にこびり付いた石化カビを払いながら、疾風は言う。指さした先に居るのは、右端のモールド。恐らく、先ほど小烏が破損させた際に千里眼で見つけたのだろう。 「それなら……」 スィンが光球を撃ち出した。向かう先は、左端のモールド。竜巻を発生させ、光球を防ぐ。 それを見て小烏は、なるほど、と呟いた。式符を鴉に変えて、投げる。鴉はまっすぐ、真ん中のモールドへ。モールドは、カビの矢で鴉を撃ち抜いた。周囲に舞い散る、大量のカビ。 それを焼き尽くしたのは、シエルの放った眩い閃光だ。 「裁きの光……世の理外れし者を焼き払え」 閃光を避けるように、モールド達は互いに距離を取る。右端のモールドが孤立した、次の瞬間、疾風は弾かれたように飛び出した。 放電。紫雷を撒き散らしながら、疾風は公園を駆け抜ける。片手に構えたナイフを振りあげ、モールドに迫る。モールドの放ったカビの矢を、ナイフで受け止める。矢が爆ぜ、疾風のナイフは大きく後ろへと弾き飛ばされた。 だが……。 「消え去れ、カビよ!!」 大きく1歩踏み込んで、握り拳をモールドに当てる。電気が弾け、モールドの体を削る。そのまま目にも止まらぬほどの高速で何度も拳を、モールドに叩きつける。 カビが飛び散り、モールドの体が削れていく。モールドの上半身が砕け散った瞬間、その中心に赤く光る宝石のようなものが姿を現した。 強い生命力を感じる宝石だ。不気味に明滅を繰り返す。宝石が光る度に、モールドの下半身からカビが伸び、宝石へと向かう。 「これで終わりだ!」 腰から引き抜いた拳銃の銃口を、宝石へと押しつける。疾風はそっと、引き金を引いた。撃ち出された弾丸が、宝石を砕く。 一瞬、全てのモールドが動きを止めた。 モールドだけではない。公園中のカビが、停止したのを感じる。 次の瞬間、全てのモールドは大量のカビへ変わって、その場に崩れ落ちていく。核を失ったモールドの最後だ。それと同時に、じわじわと公園を浸食していたカビもまた、動きを止めた。 異世界から来たカビの最後である……。 「カビも突き合い方次第……。こんなことになってごめんなさい」 シエルはそう呟いて、神気閃光を放つ。聖なる炎が、公園を被いつくしていたカビを焼やしていった。パチパチと音をたて、燃え上がるカビたち。 核を失ったカビは、抵抗することもなく、燃え尽きていく……。 カビが燃え、立ち上る煙を見上げながら、シエルはそっと目を閉じた……。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|