● 数日前まで普通に暮らしていたのだろう。その者達の服装は疎らであった。 数日前まで普通を生きていたのだろう。その者達は今では異常な存在だ。 数日前まで普通に生きていたのだろう。その者達は今は魂無き器(アンデット)だ。 神への冒涜か、それとも神への挑戦か。禁忌の檻の中で、苦悶に満ちて歌えよアンデット。 私のために。 「私の軍隊に敗北の文字はありませんわ」 翡翠の瞳が嬉しそうに歪んでいた。 進む死の行進は雄々しく、それでいて美しさを兼ね揃えて。狙う『塔』へといざ行かん。 「嗚呼、神様が居るのなら……私を享楽で染め上げて下さいまし。 ……違いますわね、私の神はただお一人。唯一神であり……そして私の居場所。 あの人に褒められたい、見てもらいたい、あの目を独り占めしたい、私こそ私こそ私こそ!!!」 架空の神に、捧げる鎮魂歌は死臭の味。 ● 「大人は忙しいって言うのよ。あっちへバタバタ、こっちへバタバタ。 本部には人の群れが雪崩れ込んで来るからうるさくて仕方ないわ。だから、マリアと遊びましょう?」 『クレイジーマリア』マリア・ベルーシュ(nBNE000608)は集まったリベリスタに吐き捨てた。 「忙しい理由を説明してあげようか?」 「――ケイオス様の次の手は恐らくアークの心臓、つまりこの三高平市の制圧でしょう」 シリアスな口調でマリアは魔女の言葉をなぞった。それは先日アシュレイが口ずさんだ未来の形だ。 そうアシュレイが踏んだ理由は三つある。 一つは、アークの総戦力はどれほどしぶといか先日の戦いでケイオスは知った。だからこそ持久戦では先が見えない。これ以上あちらの戦力である楽器が壊されるのは避けるだろう。 二つ目には、ソロモン七十二柱が一『ビフロンス』の存在。 バロックナイツ第五位『魔神王』キース・ソロモンの力を借りたケイオスは先日の戦いでも解るように、例え首を落とされても笑えるという事があった。それは死体を入れ替える――そんな空間転移系の作用が働いていたため可能とした事。 つまり、その力を応用して空間転移で『群れ』を三高平へ送り込むのは容易いのだ。 三つ目には『あの』ジャック・ザ・リッパーの骨がアーク地下本部に保管されている事だ。その骨を手に入れて何をするかなんて語らずとも簡単に推測可能だろう――最悪の事態だ。 「とまあ、そんなこんなで先日の投票は知ってるでしょ?」 上記の事を事前から防ぐためにアシュレイは大胆な提案を投げている。 大規模な結界を張って、空間転移の座標を『外周部』へとずらす事。 フォーチュナとカレイドの力を使って、楽団の枢軸であるケイオスの居場所を測りたいというもの。 「結果は皆のが知ってるでしょ? だもんで、此処(三高平)はこれから決戦の地なのね」 それは最大のチャンスで有りながら、最大のピンチとも言える状況。 「ま、リベリスタ組織ならいつかはフィクサードに目をつけられてこういう事もあるんでしょーねぇ。でもちょっとハードモードなゲームに見えるわ」 それでも戦うのでしょう?とマリアは金髪の髪を払った。 「解った所で、遊びの内容を教えてあげるわ。 超簡単よ。公園でうじゃうじゃ居る蟻を見つけて石にして潰すのよ。ね? 簡単でしょ? 居合わせたリベリスタも応戦するけど、まー、持たないでしょうね」 バサリとマリアが投げたのはおそらくフォーチュナが作ったのであろう資料だ。そこにはカテリーナと書かれた女の詳細が書かれていた。 「でもね、マリア、それだけじゃあつまらないから女王蟻を殺したいって思うの。翡翠の色の目をした女をね? 形さえ残らないくらいにそりゃあもう芸術的に」 更に投げ捨てた一枚の写真――祈る女だ。 だが神々しさを感じないのは、彼女が死体に囲まれているからだろうか? 「別に聖女でも無いわよ、そいつ。ただのケイオスの狂信者よ。 そんなくそったれな神に祈って報われたらマグダラのバイタでさえびっくりしちゃうわ。 典型的な楽器を揃えた楽団ね。武器は死体、それも百五十体」 恐ろしい数の暴挙。楽団の戦法であり、楽団の王道。だがしかし、此方はそれには屈しない。絶対にだ。 「安心してなんて言わないけれど、大丈夫なんて思って欲しく無いけど。 マリアも一緒に行ってあげる、だって――」 舞台は三高平公園。雪合戦をして、沢山遊んで、マリアの大事な遊び場だ。 「あいつら……アいつラは、殺、殺ス、殺すよ、ただで帰サなイ、還さなイ……」 そんな場所を、醜い集団が土足で踏み込むのでさえ許したくない状態なのだ。目が見開き、歯ぎしりをし、うっかり漏れ出した魔陣展開が殺意の色に染まっていた。 「もウ、二度ト、居場所を取らレルのは」 ――嫌、嫌、イヤイヤ嫌いやイヤ嫌イヤイヤ嫌嫌嫌!! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2013年03月14日(木)23:22 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●愛に目覚めた少女の瞳は気高く、純粋 容赦や慈悲があるのならこのような禁忌は犯さないだろう。 「臭い」 「そりゃそうだ。なんてったって死んでいるんだから、腐るだろうし」 マリアが鼻を抑えて嫌そうな顔をした隣。『薔薇の吸血姫』マーガレット・カミラ・ウェルズ(BNE002553)は目線の先の群を見て、これが楽団かと顔を上下に振った。 非道な奴等。 そんな言葉を聞いていたが、百聞は一見に如かずか。楽団は文字通りの外道共である。 その中心、カテリーナはリベリスタを認識。 「あそこも、ここも、どこもかしこもリベリスタ。うんざりですわ!」 地団駄を踏んだ彼女の足音に急かされて、連れられた死人はリベリスタ目掛けて走り出すのだ! 「そんならさっさと帰る事をお勧めするわぁ。これ以上奥には行かせへんで」 『レッドシグナル』依代 椿(BNE000728)は札を放り、鬼を作る。目線は迫る楽団へ向いていた彼女だが、懸念がただ一つ。 静かだった。 いつも五月蠅い彼女(マリア)が静かになった時、それは彼女が本気で怒ったときか。椿はそれが引っかかっていた。 『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)はそのマリアの小さな肩に手を置く。 「あいつらを許せないのは私も同じよ?」 奪われた大切な者は両手の指で数えるのに足りる数。だがそれは『多い』と判断できる数だ。許せない、例え運命の導きがそうであると設定されていたとしても。 「私に力を貸して頂戴? あいつらに身の程を弁えさせてあげましょう」 マリアの目線だけが氷璃へと向き、その口が笑った。愉しく面白く、そして悲しい程に怒りを込めて。 「は、ぁ、い、氷璃お姉様ァ」 その頃には『ザミエルの弾丸』坂本 瀬恋(BNE002749)は死人の群へと身を投じていた。 「シケた面してんじゃねーよ、マリアのジョーチャン」 己が拳(ガントレット)を武器とし、うねりにうねる軌跡を描いて死人の肉を木端へと還す。ふと振り向いた顔は笑顔だった。 人の土地に土足で侵入してきたアホ(楽団)なんて倒してしまえ。それでいて、楽しく暴れろと。 「笑え、ジョーチャン。遊んでやっからよ」 「ふん」 瀬恋に先を越されたマリアは頬を膨らませながらそっぽを向いた。その素振りにまた、瀬恋はくくっと喉を鳴らして笑う。即座、目の前に現れた死人の指が瀬恋の頬に線を入れ傷つける――だがほぼ同時に神秘の鎧がその死人を穿った。 「効き目は上場ってとこか」 寸前で『Friedhof』シビリズ・ジークベルト(BNE003364)のラグナロクがリベリスタ全員を守護していたのだ。クロスイージスの大技だ、その消費は激しいが効果は素晴らしい。 「ま、思い切りやってくれ」 「言われなくてもねぇ、やるわよ瀬恋、シビリズ。そのために集まったのでしょう? ねぇ、楽団殺しの共犯者達?」 「勿論さね。随分怒ってるねぇマリア……いや、違うか、これは」 「何よ? 付喪も殺されたい?」 「怖い怖い」 『イエローナイト』百舌鳥 付喪(BNE002443)は鎧の奥で笑う。 彼女がリベリスタとして戦場に立った嬉しさ半分、怪我をしないか不安半分。それは付喪が胸の内に秘めていた事だが、他の者も同じ事を思っていそうだ。 「愛されているね」 付喪は誰にも聞こえない声で言った――つもりだが。 「聞こえてるわよぉ、付喪」 「地獄耳かい、マリア」 戦場では名さえ知らぬリベリスタ達も戦闘に加わっていた。だがその力量は明らかな差。 「リベリスタ集ー合ー!」 『歪』殖 ぐるぐ(BNE004311)の声が響く。『リベリスタ』そう自覚しているもの達は一斉にぐるぐの姿へ目を向けた。頭の大きなお耳がぴこりと動き、片手と尻尾を大きく振りながら言う。 「こっちこっち、皆で固まった方がきっと大丈夫!!」 こくり、頷く少年少女達。死人の伸ばした手を抜け、走り。今、一二人であったリベリスタは二十人規模の群と成る。 「なぜ笑っていられるの? このキチガイども」 千里眼。『朔ノ月』風宮 紫月(BNE003411)の瞳にはカテリーナの般若の形相が見えただろう。 楽団的には早く『塔』へと行かねばならない。そこに壁があるなら、壊さねばならない。 「面倒ですね、面倒……嗚呼、リベリスタは本当に邪魔ですの」 「そう言われましても、ここから先には行かせられませんので」 紫月はカムロミの弓の弦をギチリと引く。その矢の先にはカテリーナの心臓を狙って。――瞬時、バチンと弾いた弦。その矢はやはり死人に止められてしまうものの。 「相変わらず……楽団は人の想いを踏み躙るのだけは得意なようで。ね、姉さん?」 「蹴散らします。マリアのため……この街のため」 『星の銀輪』風宮 悠月(BNE001450)こそ、己の魔術の詠唱を始めた。 死人の群れは止まらない。余裕と笑う敵の口が、言葉を紡ぐ。 「退きなさいまし。退かないのなら加わりなさいまし!」 ――死霊の群に。 ●けして誰も一人でなくて 「壊れてるのね、お里が知れる可哀想な子」 「戯言ぉ……!!」 「落ち着くんや」 口元を隠して嘲笑ったカテリーナにマリアの目の瞳孔が一段と開き、椿はなだめんと頭を撫でる。 瞬間、飛び出したのは『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)だ。彼は複数の死人の中心に飛び込み、そのまま何十の死人の手がを掴もう迫って来た。だが、寸前で迅雷が爆発した如く弾ける――!! 「カテリーナ、マリアを唆すな。この女狐め」 「め、ぎっつね…?!」 雷に囲われ、死人が衝撃に薙ぎ倒されるその僅かな間から見えた優希の目にカテリーナの額から血管が浮かぶ。 その隣。雷に紛れて、同時に乾いた血が宙を舞っていた。 「次に細切れになりたいのはどいつだよ!!」 『パニッシュメント』神城・涼(BNE001343)は死人を切り伏せながら前へと進んでいた。軌跡に肉塊が落ちようが、何を切るまいが止まらない――全て蹴散らすまで。 前衛二人がロードローラーしているその後方――『なのなのお嬢様なの』ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)は祈り手にキスをした。 身体が発光しているその御身は、さながらの天使と言える様だ。絶えず回復を飛ばすその傍ら、腰の引けているリベリスタ達が見えた。 駄目。 そう思った。 「ルメだって、怖いよ……手が、震える」 「え?」 「でも、みんな一緒なら……きっと大丈夫だからね、がんばろう?」 祈り手を解き、傍の少女の手に自らの手を置いた。成る程、確かにルーメリアの手は小さく震えていた。 戦いの中に投じる戦士として、怖いというのは恥ずかしい感情であるだろう。その包み隠さない態度に、名も知らぬ少女は言う。 「私にも、できるかな?」 「大丈夫なの。ルーメリアが、護るの」 「解ったわ」 そう言って少女は剣を握りしめて優希と涼の後ろを追っていく。 (流石だね、ルーメリア) マーガレットは右手をじっと見つめた。戦闘が始まる前に、ルーメリアが握っていてくれた手だ。 「……ボクも、負けられない」 ローズワイヤーをその手に絡め、マーガレットは走り出す。死人の群れに入り込み、ワイヤーが何体もの死人の首に巻きつく。何重にも、逃がさぬようにと! 付喪の炎と合わさって、ワイヤーは赤く煌めいていた。 「今度こそ、おやすみ」 二度目のおやすみはきっと、安らかなものであればいい。 ズンッ。 一斉に引くワイヤー。その一引きでごとりと落ちた首の数は多かった。だが、まだこれも三ケタの数の前では僅かな程。 「全部、その首落とす!!」 次だ、休む暇さえ無くマーガレットは糸を引いた――その前方から流れ込んできたのは死人達。足、手、首、胴、掴まれては身動きが取れない。 「マーガレット!!」 「そこを動かないで、ルーメリア!!」 咄嗟に、友人が捕まった事にルーメリアの足が助けたいと前に出た。だが、マーガレットの声と、シビリズに抑えられて出れない。 大丈夫だから、そんな目線でマーガレットは心配性の彼女を射抜いたのだ。 「今は回復を、だ」 「解ってる……の」 シビリズはルーメリアを宥め、それに彼女は納得したように目を瞑った。 「誰かが捕まったら近い子がフォロー、はいこれ今だよ!!」 幻影を振りかざしながら、ぐるぐが叫んだ。 「精鋭たちの行動を止めさせないで! 死人を剥がすのよ、十人がかりならできるわ!」 叫んだのは、先のルーメリアが勢いづけた剣の少女。一斉にマーガレットへと向かう力弱き彼等。だが十人一緒なら――!! 「皆……っ!!」 思わず込み上げた感情。ルーメリアの回復に一層輝きが増す――。 救出には紫月の矢も加わった。的確に射抜かれたそれは、死人を炎上させ、マーガレットの身体を解放する。 「いけいけー! この勢いは止められないぞ!」 ぐるぐは楽しそうに後を追い、気軽に振った多重幻影剣が死人の防御を貫いた。ついでに堕天落しでもと見まねでやってみたものの、はやりそれはちょっと…できない。 「今まで以上にアンラッキーガールですわ」 チャキっと構えた楽器。ひとつ音楽を奏でれば死霊の弾丸が椿を襲った。 「その攻撃、オカ研としては興味深いんやけど。いらんわ、そんな趣味の悪い攻撃」 額に落ちた血の雫を払い、椿はお返しと呪いの弾丸を放つ――だがやはり楽団の肉壁というものは厚いのだ。まだカテリーナに届かせるには『数』が多過ぎる。 「うう」 彼女の後方で頭を抱えてマリアは唸る。 「ココココ、ああ、あいつ殺す、殺、殺すううう!!!!」 「マリアさんを……悪く言われるの、うち、耐えられへんねん!!!」 親だからか、溢れる親愛があるからこそ傷つけてはいけない椿の逆鱗がある事を、カテリーナは知らず。 「あらあら、沸点も低いのですか? ふふふふ、うふふふふ」 更にカテリーナはマリアを刺激をした。なんの意図か、そこが脆いと解られたか。優希や悠月が『やめろ』と言いながら攻めるが、死人の壁に守られる楽団の口は達者が極まる。止まらない。 そして、狂気増す少女の瞳が姉と慕う女の襟首を掴んで怒りを吐くのだ。 「どけぇ!! 氷璃ぃ!! あいつはこの手で首を!」 振りあがったのは―― ――パンッ 「伏兵が居るわ。誘いに乗ってはダメよ?」 「……ふ、ぁ?」 氷璃は手のひらでマリアの頬を打つ。 力無くとも、痛んだのはマリアの心。 「もう少し、冷静になりなさい。誘いに乗って前に出て死んだら、私、泣くって先日言ったはずよ」 振り向き、氷璃は切れ目程に細くなった目でカテリーナを見た。そのまま何も言わず、葬送曲の音色が死人を穿いた――その威力が全てを物語っているように。 ●貴方が居るから頑張れるって リベリスタは複数攻撃に長けているものが多かった。そのおかげか、死人の駆逐は思った以上に優勢へと向いている。 特に悠月と氷璃――マグメイガスをいう砲台は馬鹿にはできない。 「危なくなったら一旦全力防御、君が倒れたら誰かが君の分まで壁する事になるよ!」 それに、ぐるぐの指示が適格だからこそか、そのおかげもあって顔さえ知らぬ者達の生存率は高い――だが、やはり。 「あ、ちょっとそこ!!」 ぐるぐが叫ぶが―― 「ここまでかな……ごめん、ルーメリアさん。ありがとう、勇気をくれて」 「あ……っ!?」 死人に囲まれて、どうしようも無く命が消える者も居た。回復を紡ぐルーメリア――だが、間に合わない。 「焔獄……舞いなさい!」 紫月が苦い顔をして、今死んだばかりの彼女へ標準を合わせた。吹いたインドラの矢は芽吹いたばかりの死人を燃やし尽くす事は簡単だ――。 「覚悟はしてきましたが……」 「しっかりするんだ。戦場に居る以上、死は隣り合わせさ」 そう口ずさんだ付喪が放つのは雷神。眩しい金色の光が、迅速で死人を射抜く。 「こんなに死体をよく集めたもんだよ」 「一体何処まで踏み躙れば気が済みましょう?」 付喪と紫月は楽団に吼えた。それが跳ね返されると解っていて、だがいつか砕くと思いを込め。 轟、と燃えたのは二人の放った炎たち。燃ゆる思いに同化して、消せぬ炎は死人を火葬し尽くす。 それよりも、だ付喪は彼女を見る。 「大丈夫かい」 「やるわよ」 瞬時、マリアは再び堕天の詠唱を行う――繋がり、広がる陣から漆黒の線を吐きだして。 「手伝いましょう」 続く悠月の呪いが意志を解かせぬ基盤となっていた。 「女王蜂を狩りに来たもの。歌ってね、綺麗な声で断末魔」 「よっしゃぁ、いくぜ、根性見せろコラァ!」 「いいわね、付き合うよ」 「ぐるぐさんも!」 石化が決まったその間を縫いながら瀬恋とぐるぐ、マーガレットが走った。 その後続に涼や優希の前衛を混じらせて。止まる事を知らない前衛の腕は次々に死人を飲み込んむ――潰して、飛ばして、見えたカテリーナ!! 「待つんや!! まだ!!」 椿は言う、彼女には見えていた次なる存在。 「あはは、なんか来た」 くすり。 何故、まだ彼女は笑えているのだろうか? 拳があと一歩の所で楽団に届く、その手前。瀬恋は気配に気づいて横を見た。 ――それは増援だ。リベリスタ達を挟むようにして五十の軍勢が表れたのだ。 紫月達後衛の目の前で瀬恋達前衛が飲まれて消える――先に死んだ少女の状況の様な。 即座に後衛陣は詠唱を紡いだ。 「はは、焦ってるの?」 「五月蠅い。後で構ってやるから黙っとき」 苛立つ椿の声。 「こんなものか、楽団ってのは」 囲われて姿が見えない者達の安否が危うい―― 「しかしよ、うちの子達はしぶといわよ」 氷璃は焦りもせず、言った。 「そうさね、色んな戦場を駆け抜けたもんねぇ」 そう付喪も言った。 ――……と思われただろうが、そこはやはりアークの精鋭だからか、誰一人として倒れる者はいなかった。 すぐに体勢を立て直したマーガレットの糸が死人の首を跳ね、優希と涼は立ち上がり、ぐるぐが死人を退けて楽団へと迫るのだ。 「ねーねーもうちょっと骨のある遊びをしよーよ」 ぐるぐが何食わぬ顔で双鉄扇を振り落とす。幻影を交えたそれは死人の壁さえ退ける程だ。 (あと何回立ち上がれるか解ったもんじゃ) ふらり、よろめいた瀬恋の背中を両腕で持ち上げた誰か。姉と親の手を抜け出して、支えたマリアはぼそりと呟く。 「瀬恋……また、遊ぶ約束しなさい?」 ここでやっとだ、カテリーナが焦りの表情を見せた。右眼の下が耐えずビクビクを動き、手汗に楽器を地へと落した。 「何故……死なない……」 カテリーナは後方へとじりじり下がる素振りを見せる。だが、逃さない。 「何処へ行くん?」 椿の弾丸が彼女の頬すれすれを横切る。たらりと流れた血が、冷や汗に混じって地へと落ちた。 「逃げ場なんて、ありませんよ。此処は踏み込んではいけない虎穴でしたね?」 紫月の言葉が突き刺さる。横見ても、どこ見ても、リベリスタは死人を吹き飛ばして迫るのが恐ろしく思えた。 苦渋だ。 ケイオスに認めてもらいたい一心で此処に居るというのに、撤退を余儀なくされてしまったこの状況。 「貴方達の敗因は、この公園を戦いの場所に選んでしまった事……そして、何より。私達、アークを敵に回した事です」 紫月の指が再び矢を引く。今度こそと、その矢の先にはカテリーナの心臓を目掛けて。 アークがどれほど恐ろしい組織か知らないのか、無知は罪と言うが、己の強さの過信も罪であったか。 石化の雨に重なる、範囲の攻撃達――もはや、死人の数が尽きるのも時間の問題! 「そんな、そんな、ばかな!! 私の群れに敗北なんて……!!」 「なら、これが最初の敗北だね! 残念だったね。マリアちゃんも帰っちゃヤダって」 見てみなよと、ぐるぐが半身を逸らしてその後方に居るマリアを見せつける。 「キャハッ! チェックメイトよ。女王蟻サマ?」 積み上がっていた、詠唱からの堕天落し。それはもはや―― 「いひっ!? いやだああああああ!」 「あと、頼んだわ」 ――パチン、と指を鳴らしたマリア。その瞬間に飛んだ石化は真っ直ぐにカテリーナを包んで、そして残りの死人を捕えて石とした。 いやいやいやいやぁぁあ!! と首を振るカテリーナにリベリスタ総勢が武器を持って走り込む――チャンスだ。 「全員で帰りたかったんや、名前も知らない子も含めてな!!」 「そうなの、返してなの。優しいあの子を!」 「無様ね、狩られる時の事を考えなかったのかしら?」 「いやはや、命って重いっていうのを死に際で知ったのは遅すぎたね」 「怒りも、恨みも、ここで晴らすときだ。ね、ルーメリア」 「あの世で待ってな!! すぐに大好きなケイオスもそっちに送ってやらぁ!」 「それだけ神が好きなら、会いに行けば宜しいかと――見るに耐えませんね、あなた」 「あれっ、もう終わりフラグ? もっと遊んで欲しかったなぁーまあいいかっ」 それでは皆さん、ご一緒に。 「バイバーイ、楽団のバイタ。マリアより、その人たちこわーいのよ?」 マリアがカテリーナに笑顔で手を振った直後。 アサシンズインサイトが、葬送曲が、チェインライトニングが、無類の拳が、インドラの矢が、多重幻影剣が、ブラックジャックが、ソウルクラッシュが、壱式迅雷が、ギガントスマッシュが―― 撃たれ、放たれ、迸り、振り落とされ、雪崩れこみ、雨の様に堕ち、射抜かれ、打ち砕かれ、痺れ壊され、粉砕され。 もはや、女王蟻の状況とか語るまでも無いのだろう。 楽団が消えた瞬間、死人の動きはその場で止まり、崩れ落ちた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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