● 「『――この刃の前の全ての禍を斬り裂き、この手が届く全ての命を護ってみせる!』」 ぱくぱくと、動いた唇から零れる少女の声。運指は軽やかに、ボーイングは流れる様に。止めどなく零れる音色と、合わせて動く銀の髪。 それを眺めながら。奏者は酷く不満げにその眉を寄せていた。 「うーん、どうもあの時程の迫力が無いなぁ。これじゃあ再現性に欠けるね」 もっと狂おしい程のメロディが必要なのだろうか。それとも、美しくも儚いビブラート? 奏でる音色が変わる度。少女は動いて喋って。けれどそこに、熱は無い。 生の温度も意思もその記憶人格の欠片さえも。その身体には残っていない。あるのは慟哭。痛み。そして空虚。 死と言う名の生は終わってはいなかった。何処までも甘やかな音色は少女に歪んだ生を与え続ける。ぶらり、と皮一枚で繋がる蝋の様な腕が揺れた。 「まぁ、お人形遊びは往々にしてリアリティに欠けるものか。……嗚呼アリオ、俺は今日、君の為に素敵なアリアを『彼女』に歌って貰うよ」 死を纏う役者は十分に揃えた。後は『主役』に演じて貰うだけ。正義を背負い仲間を守らんとした者が、護りたかったものを壊す様を。絶望を。悲しみを。憎悪を。そして。 仲間であった筈のものを『壊す』苦しみを。 面白い演目だと、小さな声で笑った。誰も悪くない。この結末を選んだのは、間違いなくこの少女の意思だったのだから。 「さあ、踊ろう、キリカ。今日は君が俺の『principessa』の代わりだ」 嗚呼愛おしきはただ一人で。 厭わしきは溢れる程に。 美しく張られた弓が弦と触れ合う。奏でるのはたったひとりの為の愛のメロディ。 嗚呼。チェリストは今宵も、恋を奏でる。 ● 「……『指揮者』が来たわ。手が空いてる人で良い、今日の『運命』聞いて頂戴」 「さっさと要件を話せ、時間が無いんだろ」 机に放られる資料の束。『導唄』月隠・響希 (nBNE000225) の声に応えたのは『銀煌アガスティーア』向坂・伊月 (nBNE000251) だった。 未だ顔を合わせた事の無い者も居るのだろう。適当に名だけを名乗った彼に僅かに視線をやって。フォーチュナは一言、アシュレイの言う通りだった、と告げた。 先の戦いで受けた喪失と痛みが癒える間もなく。ケイオス・“コンダクター”・カントーリオのスコアは転調したのだ。『不死』の『楽団』の次の手は恐らくただ一つ。 ――此処、三高平市の制圧。 「まぁ、幾らプロフェッショナル揃いの『楽団』とは言え、戦力には限界があるって事よ。数は圧倒的にあたしらの方が多いの。……魔女サン曰く、身を以てアークって奴を知っちゃったケイオスが、持久戦を嫌うのはほぼ確実なんだってさ。 だから、急いだんでしょうね。加えて……まぁ、あたしには良く分かんないんだけど。有難く無い事にケイオスは、その身に……『悪魔』を飼ってるらしいのよ。『魔神王』キース・ソロモン。ケイオスサンのオトモダチの助力、って奴ね」 その身に飼うのは恐らくソロモン七十二柱が一『ビフロンス』。『死体を入れ替える』と言う伝承に基づくならば、持つ力は空間転移の一種であろう。その力は『軍勢』を此処まで送り込むことも可能だろう。そこまで魔女が告げたのだと、フォーチュナは息をついた。 隣に腰を下ろした魔術師が面倒そうに舌を打つ。続きを促す視線に頷いて、もう一つ、此処を制圧する目的があるのだと小さく告げた。 「『あの』ジャック・ザ・リッパーの骨がアーク地下本部にあんのよ。……多くの芸術家が持ち合わせる喝采願望、すました顔しながらあの指揮者さんも持ってんのね。……『公演』は常に劇的であるべき。 だからこそ、彼は骨を求めてんのよ。……公園でモーゼス・“インディゲーター”・マカライネンがジャックを呼び戻せなかったのは、その『格』の問題だけじゃなかったの。 拠り辺足り得るものが、此処に封印されてたから。……分かるでしょ、取られたら終わりよ。負けました、じゃ済まない」 微かな溜息。落ち着かなさげな魔術師の足を蹴って、フォーチュナは緩やかにその視線を上げる。 「……その上での魔女の提案については、あんたらも知ってる通り。まぁ、……何がどうあれ倒すしかないのよ。指揮者を仕留めなきゃ話にならない。でも、楽団員の蹂躙も止めなきゃ、倒す以前の問題よ。 幸いにも、此処の防衛能力は高い。……此処で戦うって言うのはハイリスクだけど、ハイリターンなのよ。状況は以上。次は、あんたらに向かって貰う戦場についてよ」 モニターを操作する指先は何時もより早い。現れた市内の地図を示して、フォーチュナは視線を上げた。 「あんたらが相手をするのは、『ヴィオレンツァ』と言うチェリスト。あった事ある人も居るでしょう、……今回はとにかく、こいつの撤退が第一目標。これさえ果たせればとりあえず作戦は成功。 ……連れている死体の数は凡そ150。革醒者も混じってる。まぁ、まさしく本気って奴なんでしょう。彼は全力で、アーク本部に向けて迫ってくるわ。……退ける以上の戦果や結果を望むなら、相応の危険も覚悟してもらわなきゃいけない。 食い止めて貰うのは此処。居住地区に当たる部分だけど……市民の避難は済んでるから、存分にやって頂戴。此処まで大丈夫?」 確認の声。じゃあ、と資料を閉じかけたフォーチュナは僅かに、躊躇う様に一枚、その紙を捲った。 「この戦場には、……あたし達の『仲間』だったモノが居るわ。その命を失った時と全く同じ姿で、同じように、彼女は未だ戦っている。……あたし達の、敵として。 彼女は、……霧香チャンはもう居ないわ。だから、あれは別のもの。倒さなきゃいけないものよ。……、……後は、宜しくね」 吐き出した声は僅かに震えていた。資料を閉じて立ち上がったフォーチュナの隣、同じく立ち上がった魔術師が資料を取る。 「……挨拶もそこそこで悪いけど、今回は俺も行く。ある程度の指示は聞くんで宜しく。……じゃ、あとは戦場で」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:麻子 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年03月16日(土)22:53 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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● 響く音色は何処までも、甘く、そして何時かよりずっと、細やかだった。指先一つにさえ意識を張り巡らされた精密な演奏。まるで役者が揃うのを待つかのように。只管にチェロを奏で続ける男が、顔を上げる。 割れた硝子を踏み砕いた、小さな音。きらきら、光を弾く硝子の粉を置き去りに。抜き放った刃と共に死者の海を裂いた『鏡操り人形』リンシード・フラックス(BNE002684)は瞬きもせずに、未だ遠い奏者を見詰めた。 その隣、視界にちらつく銀色にも、少女は表情を動かさない。これで、3度目。そして、最後になる筈だった。死体を返せ、なんて言うつもりはさらさらない。彼女はいない。あれは、 「……貴方のお人形です。そんなものに興味ありませんよ……」 此処で揺らげば彼女に顔向け出来やしない。未だ幼く可憐な面差しにあまりに不似合な硬さが其処にはあった。そんな彼女を支える様に、隣に立つのは金色。円陣を組んだ隊の外側、己が身の内のギアを引き上げた『巻き戻りし残像』レイライン・エレアニック(BNE002137)の両手に握られる、万華鏡の如き扇がふわりと開く。 流れるような、美しい剣筋だった。曇りない刃と同じ様に。真っ直ぐな瞳と意思が、其処にはあった。一度だって言わなかったし言えない儘になってしまったけれど、レイラインは同じ技を持つものとして、霧香に憧れていたのだ。 「悪いが、今は貴様等に構っている余裕は無いのじゃ、足を止めさせてもらうぞよ!」 この気持ちを伝える事はもう叶わないけれど。せめて、連れ帰ってやりたかった。だから、レイラインは此処に居る。帰ろう、と。胸の奥で小さく囁いた。そんな彼女の横を、ひらりと通り過ぎる揚羽蝶。その軌跡は生と死の境目を描き出す。降り注ぐそれを見遣る『告死の蝶』斬風 糾華(BNE000390)の紅の瞳が緩やかに瞬いた。 例えば零れた命だとか、護られるべき尊厳だとか。多くのものを、楽団は踏み躙った。幾度も幾度も。美しくあるべきものに易々と土足で足跡を付けた行いを、糾華は許さない。知らしめよう。刻み付けよう。その行いがどんな結果を齎したのかを。 どんなものを、敵に回してしまったのかを。 「忘れられない様にしてあげるわ。リベリスタを、アークを、この街を!」 出来得る限りの出来るだけ。指先から離れた蝶々は蠢く敵を悉く薙ぎ払う。それを眺める奏者は、不服だと言いたげにその眉を寄せた。滑るように動いた弦が、傍らの少女人形を動かす。青い瞳が、生きている様に瞬いて、酷く悲しげな表情を浮かべた。 「キリカ、君の友人達は随分冷たいね。如何思う?」 「『仕方ないよ、あたしが、悪かったんだから』」 紡がれた声は酷く悲しげで、明確な色を持っていて、けれどだからこそ覚えるのは喪失感だった。もう、彼女は居ない。その実感を今の今まで、『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)は得られていなかった。けれど。チェロの音色に合わせて彼女が動いて、悲しんで、笑って、喋って。其の度に。 思い知らされる。あれは彼女ではないのだと。彼女は、もう何処にも居ないのだと。拳を握った。振り抜いた腕が齎す業炎。熱風に煽られた真白いアザレアがひらひらと揺れた。 「ちがうよ。それは、霧香さんじゃない」 彼には判らないかもしれないけれど。つまらない物真似は、きっと永遠に彼女になり切る事等出来ないのだ。そっと、溜息にも似た吐息を漏らす。お人形遊びにざわついたのは、寧ろ、増援のリベリスタ達だった。よくも、と怒りの儘刃を振るう彼らの声を、耳にしながら。 振り抜かれた大斧が轟と唸る。荒れ狂う暴力は護る為では無く振るう為のものだ。敵を、ただ只管に打倒する為だけの。目の前の死体で作った肉塊の絨毯を踏みしめて。『墓掘』ランディ・益母(BNE001403)はその刃を叩き下ろす。鈍く、重い音が目を覚まさせる様だった。 「見失うな! ああなりてぇのか! 怒りは仕舞っておけ、奴にかます瞬間にぶちまけろ!」 感情は時に他の何より力を与えてくれるものだけれど。同時に時になによりその目を眩ませる。足を止める。刃を鈍らせる。怒りを飲み込め。冷静さを忘れるな。多くを語らぬまま、ランディは静かに、未だ遠い少女の姿を見遣った。 手を出すつもりも、同情を向けるつもりもなかった。嗚呼、きっと彼女は人より少しだけ、真っ直ぐすぎたのだろう。誰かの為にと、誰かの事を顧みぬままに。その命は散り急いでしまったのだから。 もう、何を言ってもそれは戻らない。感傷に浸る暇も残されてはいなかった。溢れる死者を見渡して、『敬虔なる学徒』イーゼリット・イシュター(BNE001996)は魔導の粋を抱え上げ直す。ほぼ同時に、隣で漆黒の魔本を開いた『銀煌アガスティーア』向坂・伊月 (nBNE000251) を見上げる。 「……心強い味方ね? 伊月さん」 「何、喧嘩なら後で買ってやるけど?」 交わる視線。何故か嫌味っぽくなってしまう台詞は本意ではないのだけれど。だって別に嫌いではないし。信頼は、互いに結んだはずなのだから。けれど、そんな言葉は素直には出て来なくて。唱えるのは漆黒の呪文。 「別に! ……私ね、少しだけ怒っているの。例え――」 この死体の全てが犠牲者なのだとしても。邪魔をするのなら、何もかも壊すだけ。そんな彼女の隣で、動いた指先から滴る紅色。描き出した魔方陣が、抱える魔導書が、零れたそれに力を与える。荒れ狂う、漆黒が戦場を飲み込んだ。 この場に満ちる死より、暗く暗い。同じ魔術を放ったイーゼリットの背を、伊月の手が軽く叩く。 「しっかりやれよ、憎まれ口なら後から幾らだって聞いてやる」 死ねば、それすら叶わないのだから。魔本を構え直した。蠢く死者の壁は未だ、超えられる気配を見せてはいなかった。 ● 恋の季節は長いようで、とても短かった。瞬きの間に過ぎ去る優しかった記憶。見詰めただけで気恥ずかしげに首を傾けて。可愛い、と告げれば一気に頬を染めた彼女は何時だって、自分の中に居るのだけれど。 今もちらつく笑顔が、視線の先で動く彼女に重なる様で。『咆え猛る紅き牙』結城・宗一(BNE002873)は、緩やかに首を振った。影が滲んで。取り残された残像と、地面を蹴った軽い音。 死者を裂いた。何もかも邪魔だった。彼女の様に、禍を切り開き道を作る為の刃になり切れそうにはなかった。やっと、見つけたのだ。美しい銀色を。ずっと一緒に居ようねと、微笑み合いながら繋いだ、本当はずっと小さな手を。 言葉も記憶も感情も、ともすれば吐き出してしまいそうで。けれど、宗一は多くを語らなかった。手を伸ばす。冬も近付く、10月の夜。柔らかな灯りの下、共に踊った時の幸せそうな笑顔を思い出す。 此処は美しく飾られたダンスホールではない。灯りは零れる月明かりだけで、王子様を気取るには余りに、返り血に塗れて居るけれど。 「さあ、踊ろうぜ……こんなヤツの演奏に乗せるのが癪だが、これがラストダンスだ」 そして必ず一緒に帰ろう。囁く程の声に、奏者は酷く満足げに笑って霧香の手を伸ばさせる。死者の壁が阻む恋人同士の逢瀬だなんて、滅多に見られるものじゃあない。良い気分だと、笑う彼の顔を見遣って。 僅かに、痛む頭を押さえて。『緋剣姫』衣通姫・霧音(BNE004298)は、銘無之刀を構え直す。血霞含んだ風が、緋色の着物をふわりと舞い上げた。不思議な、感覚だった。頭の、否、胸の奥だろうか。何かが疼いていた。呼んでいた。覚えていた。 此処に居るのだと、それは呼ぶ。それを振り切るように、緋色の残像が敵を裂いた。表情は動かない。動かさない。ただ小さく、そこにいるのね、と囁いた。 「なら、往きましょう。貴女が私を、呼ぶのなら」 何かを言う必要も、感じ入る必要も無かった。答えはすべて自分の中に。何処までも冷静な彼女の後ろ。深く傷付いた仲間達を支える、癒しの烈風が吹き荒れた。柔らかな革のジャケットが舞い上がる。常日頃優しく微笑む『祈花の導鴉』宇賀神・遥紀(BNE003750)は、其処には居なかった。 ただ只管に、何処までも冷やかな瞳が戦場を一瞥する。抜けるような青空と、暮れていく夕焼け色が、何かを飲み込むように伏せられる。覚えたのは怒りなのか哀しみなのか。瞑目は一瞬。 「世界は、優しいものであって欲しいんだけどね。……誰にとっても」 けれど。そうでない事は自分が何より良く分かっていた。失われるもの奪われるもの。己が齎す癒しと死と。何もかもが美しく平和な世界など、何処にも存在してはくれないのだろう。細い、溜息が漏れた。 その視線の先で、振り抜かれたのは無骨で重い改造銃。悠然とした立ち姿からは想像も出来ない程の全力をその一撃で叩き込んで。『道化師』斎藤・和人(BNE004070)は今日もまた飄々と戦場を見渡し、肩を竦めた。 「何とも分かりやすい使い方だわねえ。絶望だの悲しみだの憎悪だの苦しみだの、心を揺さぶるにゃピッタリだからな」 符の感情は良くも悪くも人を大きく揺らすのだ。そういう意味では、理に叶った使い方だった。それに心を揺らす人間は、少なからずこの場にも居るのだろう。けれど、和人はそこには含まれない。くるり、と回した銃身に纏わる鮮血が零れ落ちた。 仲間の死。敵への憎悪。それに対する葛藤。そんなものを抱いて、苦悩する若さはもう何処かに置いてきていた。世を渡って行くには、憐憫や葛藤はあまりに重い。被った化粧は、何処までも厚かった。 「ま、しっかりカタを付けるとしますかね」 飄々と、投げられた声が死体の海へと飲み込まれる。まだ冷たい3月の夜風が、リベリスタの背をひやりと撫でる。少しでも先へ、進まねばならなかった。 ● 彼女は少し、一人で背負い過ぎたのだ、と。リンシードは思う。ふわり、と揺れた可憐なフリルと、水色の残像。誘う様に踊る様に、軽やかな足取りは死者の手を招き寄せる。 背負い過ぎて、こうして失われてしまったものは、もう戻っては来ない。ならば、代わりに出来るのはきっと、その意志を継ぐ事なのだろう。守り通す、事なのだろう。自分一人でではなく、愛しいひとと、そして、アークの仲間達と。 「あの人が護りたかったモノのため……どんなモノが障害であろうと、全て斬り捨てます。それが、私のするべき事だから……!」 そんな彼女を見詰めて、糾華はそっと頷く。彼女を、この手で守る事はしないと決めていた。彼女が身を挺して全てを護るなら。自分は、道を開ける事でそれに報いる。 だいじょうぶ、と囁いた。一緒なら、必ず出来る筈だ。道が開ける。地道に削り続けた事によって開いた其処に、飛び込んだのはレイライン。他の何よりも、したい事があった。駆け抜けた先、剣を構えた少女の前で、足を止める。宗一が恋人として彼女を想うと言うのなら。 自分は、友人として、憧れた存在として、伝えたい事がある。見せたいものがある。もうそれが彼女には届いてはくれないものなのだとしても。どうしても。 ふわり、と開いて合わさる扇が描き出す幾重もの紋様が月明かりを透かす。きらきらと、形を変えて行ってしまう万華鏡は、形を留めないからこそ綺麗なのかもしれなかった。例えば、人を想う気持ちの様に。 音も無く。空気を裂いた扇と共に凍てつく空気。きん、と空気中の水分が凍り付いて行く音がして、舞うのは、淡く儚い氷の羽根。此方に向かってきた少女の刃が、光の飛沫を散らした。きらきらと、交じり合う花弁と羽根。 「これが、わらわの舞いじゃ。さあ、共に舞おうとしようぞよ、霧香!」 きっと。こうして刃を交えるのもこれが最後だ。本当なら、生きて、その術を目に焼き付けて欲しかったけれど。もうそれは叶わない。死者に邪魔されぬ、刃の交わりを僅かに見遣って。旭はその手をリンシードへと伸ばす。 どれ程身のこなしが鮮やかであろうとも。僅かずつにでも与えられる傷も重なれば致命傷になりかねない。現に、即座に群がった死体に囲まれたリンシードのドレスは既に、血に染まっていた。その彼女を、死者の腕から庇って。刃を代わりに受けて、見る見るうちに染め上げられたドレスは、大好きで、大嫌いな真っ赤。 耐えなくちゃ、と痛みを飲み込んだ。けれど、その彼女の献身を薙ぎ払う様に。振り抜かれた、リベリスタであったもののハンマー。細い身体は容易く跳ね飛んで、硝子塗れの地面へ叩き付けられた。運命が燃える。咳き込んで、零れた血を拭った。立ち上がる。 鮮やかな翠の瞳の奥で。運命の残滓が揺らいでいた。まもるためなら、自分を顧みない。大して歳も変わらなかった少女は、そういう人で。だから、彼女にはもう会えないことを、旭は良く知っていた。 護る為に、自分は自分を捨てられるだろうか。竦む足は要らなかった。助けられなかった、なんて思いたくも無くて。でも、自分は、自分の命も、何かの為に要らないと、言えるのだろうか。答えは出なかった。耳を澄ます。面白い、と。楽しい、と。 笑う、男の声がする。理解が出来なかった。上辺をなぞるのに精一杯の、お粗末な演奏に何て心は揺れない。それは彼女ではない。でも。 「……何がたのしいの。ねえ、何が、たのしいの」 分からなかった。分かりたくも無かった。こんな血と肉と死しかない空間で。どうしてそんなに楽しい楽しいと笑えるのだろうか。決定的に自分とは違う、相容れる事の無い存在に、旭は首を振って、けれど、その目を逸らさない。 べったりと、血で張り付いた髪を払った。生は痛みだ。苦悩し悲しみ、葛藤して。けれどそれ以上に喜び、笑い、幸せだと手を重ね合う。どちらもあるから美しかった。生きると言う事は、命のきらめきは、何時だって美しい。 「生きてる時が一番きれいだって知ってるから、そうやってなぞるんでしょ?」 死は絶対だ。けれど、そこに成長は無い。変化はない。絶対不変の暗く重たいもの。眩しい程の生のきらめきは、死者に絶対に宿らない。底が知れるね、と笑ってやった。そんな彼女に手を貸して。開かれた魔本が、示す指先に齎したのは爆ぜる業炎。 奏者を掠めたそれのあおりを受けて、柔らかな銀髪が舞った。くすくすと、笑い声を立てて。イーゼリットは首を傾げる。哀しいと、絶対に許せないと、言って欲しいのかと嘲笑った。 「ごめんなさい、それね、霧香さんには全然似てないの。悪趣味で傲慢で、ふふ、どうしようもないわね?」 挨拶が遅れちゃった、と。紫を細めた。皮肉たっぷりに微笑めば、スカートの裾を摘まんで御機嫌ようと淑女の御挨拶。楽器は直ったの? 笑ってやれば、奏者は酷く不快げにその眉を跳ね上げた。 「相変わらず全然駄目だね。これじゃあキリカに申し訳ないよ、最高の演奏を聞かせてあげたいのになあ」 けらけらと、笑う奏者の奏でる音色が激しさを増す。視線の先、銀色の少女とレイラインの隣に、飛び込んだのは宗一だった。きん、とぶつかり合う刃の音。死者になっても変わらず迷いの無い太刀筋は、もう何度も何度も見ていたそれと全く同じで。 記憶が逆流する。愛おしさと、幸福に満ちていた。出逢って一年半。漸く、好きだ、と告げて。細い身体を抱きしめて、手を繋いで。そんな関係を築き始めてからは、まだほんの半年程だった。 楽しかった。本当に、夢の様な毎日だった。愛さなければ失う事も無かったのだろうけれど。好きになった事を後悔したことは、一度だってなかった。今だってそうだ。好きになってよかった。彼女と、共に歩いた時間があって、良かった。 だから。だから、ここでお別れだ。 「愛してるぜ……霧香」 振り上げた。全力を込めた刃は少女の肩を深く裂いて。痛い、と表情を歪めた彼女はけれど、その手を止めない。己の腕が取れてしまいそうだとしても、振り抜かれた刃が零すきらめきが容赦なく、宗一の喉元を抉った。ぐらり、と意識が遠ざかる。 けれどそれでも、運命を燃やした。倒れられなかった。彼女を、連れて帰るまでは。刃を紅が染めていた。それぞれの戦いは、到底終わりを見せてはくれなかった。 ● 「『ごめんね……ごめんね、こんな事したくないのに……っ』」 悲痛な声が、唇から零れ落ちる。これは彼女ではないのだと、此処に居る誰もが知っている。けれど。其の声は心の隅を引っ掻くのだ。傷を抉るのだ。それを耳にしながら。霧音は冷やかにその瞳を細めた。 「幼稚な人形劇ね。つまらないわ」 予見者も言っていた。あれは、あの真っ直ぐだった少女ではないのだ。何を言おうと、何をしようと。それはただの人形遊び。揺らぐ事は無い。それを、霧音は誰より知っている。だって。 真っ直ぐに、刃を構えた。彼女の様に、研鑽された美しい型なんて知らないけれど。背筋を伸ばして。何処までも静かに、息を一つ、吐き出した。 「――この刃の前の全ての禍を斬り裂き、この手が届く全ての命を護ってみせる」 禍を切る為の刃も、命を護る手も。今此処に確かに存在している。囁く様な声が言うのだ。自分の志は、此処にあるのだと。少女と対極にある様な、漆黒の髪が、紅の瞳が、今このときは同じいろを湛えて前を見る。 「終わりにしましょう、三流奏者。下らない演目は此処までよ」 「そーそー、まぁ、また俺等に殴られに来てくれたんだし、もうちょっと遊んでこうぜ?」 そういう趣味をお持ちなら、満足させてやろう。あくまで緩々と、けれど明確な挑発の意思を含む台詞を吐き出して。和人は目の前の、チェロの弓を持った女を見据えた。傷だらけの彼女の瞳はうつろで。何の色も見出せない。 もう一度。歪んだ生を与えられた事を、彼女は喜んでいるのかも知れなかった。その命を捨ててまで救った師匠が望むのなら。きっと、これは彼女にとっては不幸ではない。けれど。 「……本人が良くても俺ぁダメだわ。想いの果てがこれってのはさ」 誰かを護りたくて、支えたくて、救いたくて。命を捨ててまでそれを果たした先が、こうして無理矢理に起こされて、使い潰される、だなんて。報われない、と思うのは自分が彼女でないからだろうか。 何も言わずに、銃を叩き付けた。損傷の激しかった死体はもう、立っている事も出来てはいない。這いずる様に、それでも音色に従う死体が、弓を取り落として、それでも和人の靴を掴む。その手に力は無かった。振り払おうとも、思わなかった。 がりがりと、何処かを引っ掻き続ける爪の傷を、遥紀の神聖術は癒す事が出来ない。それでも只管に、増援の仲間たちとその術を振るい続けて。返り血と、肉片と、滴る汗を拭い取った。 「これで何度目だろうな、弟子に護られた腰抜け」 吐き出した声は、憎悪も怒りも通り越して、何処までも冷やかだった。あの日身を挺して、死してなおこうして奏者の為に動き続ける一人の女。彼女は、たった一人の師匠に顧みられることも、想われる事も無く、ただの塵の様に扱われているのだ。 報われないな、と遥紀は哂う。嗚呼本当に報われない。その死が誰からも想われない事がどれ程哀れな事か。その瞳が、未だ立つ少女を一瞥した。 「霧香は違う、あの子の想いはお前達如きでは穢せない。――迫力なんて出る筈がない。自分の醜さを投影する「哀」しか知らぬ三流役者が看板を背負えるとでも?」 分を弁えろ。路傍の石と呼ぶ事さえ勿体無い程の塵は、まさしくチェリスト自身だと言うのに。明確な挑発は、死体を動かす。防御に秀でた和人は未だしも、手の足りぬ状況は遥紀の傷を抉るのだ。溢れだした血が魔本を濡らした。運命が飛んだ。 耐える事さえ許さない筈の攻撃を、受け止めたのは伊月。自身も決して打たれ強くは無い彼が動いたのは、遥紀の怒りを感じたからだろうか。目の前の敵を、魔力砲撃でぶち抜いて。僅かに振り向く。 「しっかりしろよ、お前が倒れたら困るんだ」 露払いならやってやる。それだけ告げて、遥紀の前に立つ彼もまた、思う所はあるのだろう。霧香に視線を向けて、僅かに首を振った。そんな戦場を裂いたのは、不意に響いた笑い声。 「嗚呼、そうかそうか。やっと分かったよ。……一つすれ違っているね、死体なんてどれも同じだ。拾ったから使うだけ」 けらけらと。何処までも冷たいリベリスタの視線の中で、奏者は声を上げて笑った。つまらない芝居だと冷笑するけれど。只のお人形遊びに価値なんてある筈も無いのだ。 「その上で、生の輝きに満ちた君達が苦悩して絶望する顔が見たいだけだよ。その為に使えるのなら、キリカじゃなくたって構わない。嗚呼、子供ばかり集めてきたりした方が楽しませてあげられたかな?」 これは失礼。笑いながら肩を竦めた彼はけれど、もう飽きたと言いたげにその首を振る。この人形と芝居では、楽しませられやしないようだから。奏でる曲が変わる。まるで道を阻むようにリベリスタの前へと動いた死体を見遣って。 踵を返しかけたその姿に、声を投げるのは宗一だった。 「どこに逃げるつもりだ? アリオーソだってじきに死ぬぞ」 足が止まる。興味を引けたのかと、此方を向いた優男の顔を見遣った。海辺で歌い続ける歌姫の下で、その音色を奏で続けるヴァイオリニスト。彼女の命を奪うと決めていた宗一は、冷やかにそれでも逃げるのか、ともう一度呟いた。 きょとん、と奏者の瞳が幾度か瞬いて。すぐに、可笑しそうにその表情が歪められる。それがどうしたのだと、男は笑った。 「生きているか死んでいるかに何か違いがあるのかな? 俺とアリオは愛し合っている。その事実はどんな事があっても揺らがない」 仮にこの戦いでどちらかが、それともどちらもが。命を落としてしまう事になったとしても。それが何だと言うのか。自分は彼女を愛していて。彼女は自分を愛している。その事実以外に何が必要なのかと、奏者は心底不思議そうに首を傾けた。 「どんなものも、俺と彼女の愛を別てない。――入れ物が活動を止めただけで揺らぐなんて、君の愛は随分お粗末だね」 三文役者はどっちだと言うのか。面白そうに肩を竦めた、彼の目前。ふわり、と舞う蝶々。次々と、雨の様に降り注いだ夜の色が、死体の群れを切り開く。指先に乗せた美しい翅。糾華は静かに、その瞳を前へと向ける。 友達だった。己の命と引き換えに仲間を救い死んだ少女は、矜持を穢され、魂を貶められ、そして――緩やかに、首を振った。多くを語る事が無意味であると知っているから。ただ、僅かにその瞳が伏せられる。 この戦いの中で。彼女と自分の友情は、交わした絆は、まさしく華の様に散ってしまうのだろう。失われたものは、もう結べないのだから。だから。自分がするのは、餞だ。彼女が彼女として眠りにつけるように。 「……然様なら」 道を、開ける事だ。開けた其処に、踏み込む長身。背負い上げた大斧を握る手に、僅かばかりに力を入れた。ランディの心に恨み言などない。言えた義理は無かった。 「お互い様だ、俺も山程殺した、取り戻すなんて恐れ多くて言えやしねぇ、俺はただ」 ――お前の鼻っ柱を圧し折りに来た。伸びた腕が、かわす間もなく細腕を掴み、其の儘顔面を殴り倒した。歯の折れた鈍い感触。拳が切れて、それでもランディはその手を離さない。 斧を突きつけた。彼の愛情は恐らく、何処までもアリオーソのみに向けられているのだろう。そして、その在り様は『普通』を大きく外れて居る。ランディはそれを許容しない。大切な女性を、深く真っ直ぐに愛する事を知っているから。 「てめぇは死体にも魂にもしてやらん。ここで……消えるんだよ!」 全力を刃の端にまで。振り上げられたそれが、そのまま叩き付けられる。爆発的な力の奔流が、奏者の骨を砕いた音がした。けれど。撃ち返される、死霊の弾丸。ふらつきながらランディの腕から抜け出して。男は、荒く息を吐き出した。 紙一重。まさしく死霊の如き『悪運』を帯びたその身体は立ち上がる。傍らに落ちていたチェロがもう一度鳴った。吹き荒れたのは、仲間のものではない癒しの烈風。傷が癒えていく。死霊も、奏者も。 悪夢だった。数は明らかに減り、けれど未だ全てではない。ぶつり、と肉を引き千切る音がした。脇腹を裂いた、リベリスタだったものの手。ぐらり、回る視界に膝をつきかけて、けれどリンシードは運命を燃やす事で踏みとどまる。己を庇ってくれる手はない。それぞれが、目的の為に、己の心の為に動く中で。 手を貸して欲しいなどと言える筈も無かった。自分も、彼女を取り戻す為に来たのだから。膝は折れない。甘えてなど居られない。此処で、役目を果たすだけ。 「私は、此処でやらなくちゃ、いけないんです……っ」 ぜ、と。荒い息を吐き出した。眩暈がする。血の気が失せていく。それでも。あともう少しの為に、少女はその手を伸ばす事を諦めなかった。 ● 地面は、血と零れ落ちた臓物と、黄色い脂肪でぬるついていた。多くの死体は物言わぬ肉塊へと変わり、奏者の限界も見え始めている。舞い散る氷の羽根。 軽やかに、踊る様に。レイラインの動きに合わせて謡う風切り音。死者が、少女が、傷を深めて行く。 「……何時までも何時までも、そろそろうんざり。目障りなのよアナタ」 調律の狂った演奏なんて聞き苦しい。恋人に会いたいのなら、お望み通りあの世でにすればいい。送り火は、自分が齎そう。魔本が煌めく。叩き付けられた業炎が、奏者の皮膚を焼いた。 「さあ、ここで燃え尽き、存分に奏でなさい」 逃げる事だけは絶対に許さない。冷やかな言葉を放ちながらも、イーゼリットとて無事では無かった。否。リベリスタ側が無事では無かったのだ。仲間を癒し続けた遥紀が、敵を引き付け続けたリンシードが、既に戦線の後ろに横たえられている。 増援の面々とて無事では無かった。死者の海に飲み込まれた者が、手足を引き千切られたものが、幾つか転がっている。決着を付けねば、形勢は逆転しかねなかった。 宗一の刃が、霧香の脇腹を裂く。少女はもう表情を変えなかった。ただ、突き出された刃が、宗一の腹部を貫通する。ぐらり、と視界が回った。引き抜かれて、溢れて落ちる紅い色。耳元にある唇が、薄く笑った。 「『愛してるよ、宗一君』」 だからさようなら。力を失い崩れ落ちる彼に、少女の手は差し伸べられない。けれどそれでも。宗一は手を伸ばす。霞む視界の中で、取り返したいと願う少女へと。血に塗れた手を、必死に伸ばして。 「霧香は、返して貰うぜ……っ」 「無理をするなよ、死んじゃうぜ? ……ってまぁ、此の侭じゃあ俺も、君達に殺されて死ぬんだけどね」 如何したものかな。もうチェロを弾く手さえおぼつかない程に、ランディや旭の猛攻で傷付いた奏者は首を傾げて、良い事を思いついた、と言いたげに笑った。 「復讐だっけ。じゃあ、果たせない様にしてあげよう。何も残っていない生の苦しみに君は耐えられるのかなあ。ねえ、死は何時だって優しいよ、principe」 それじゃあこれにて幕引きを。チェロ弾きは悠然と微笑んで。その指先を己のこめかみに当てた。最後の音色が自分の頭を撃ち抜く音だなんてきっと一生一度だけだ。くすくすと、笑い声が漏れて。 寄り添う、美しいヴァイオリニストが見えた気がした。意趣返しだと、刃を向けた筈の彼女は酷く、憐れむように彼を見ていた。 ――わたくしは、愛しい人と会えない苦しみをずっとずっと与え続けますわ。 此処にはいない筈の声がする。寄添い続けるのは心だけでは無かった。遠くで響く筈の愛に満ちた音色を想った。紡いでくれるであろう声を想った。リベリスタを眺めてもう一度笑った。 嗚呼、けれど私はヴィオレンツァを愛していますの。死してもなお、どこかに彼が居てくれる――いいえ、常にわたくしの中には音色が響いてますの。愛情なんかでは生温い、恋情といえば安っぽい。そうですわ、これは愛や恋ではないのですわ。 「この感情は恋と呼ぶには煌めきが足りなくて、けれど愛と呼ぶには余りに鮮やかすぎる。君には、君達には判らないかもしれないね。これは、そのどちらでもないんだ」 ――わたくしは彼で、彼はわたくし。ただ、それだけですの。 「俺は彼女で、彼女は俺。ただ、それだけだよ。嗚呼――アリオ、愛しのシェリー、俺は何時だって君達を、」 ぐしゃり。 脳髄を撃ち抜いた音がした。其の儘、糸が切れた様に折重なる死体の上に。転がるチェロと、その操り手だったもの。彼を始末し、死体を取り戻す。そう、決意を固めてきていた筈のリベリスタの手はあまりに足りなかった。 言葉は無かった。其の儘崩れ落ちた霧香の死体が、宗一の上へと折重なる。それを、僅かに見遣って。糾華は静かに、リンシードの手を取る。傷付いた手は、ぎこちなく、けれど確りと、糾華の背へと回った。 「……少しだけ、こうさせてください……」 人形は泣かない。泣いたりしない。分かっている。あれは霧香では無かった。敵だった。敵だったのだ。それでも、割り切れない感情が少しだけ声を震わせて。それを聞きながら、糾華はそっと抱き締め返した水色の髪を撫でた。緩々と、瞳を伏せる。 「大丈夫よ、人形は涙を流さない。だから、」 貴女は、私よりは人間よ。囁いた声は小さかった。もう、チェロの音は聞こえない。終らない、死という名の生を終えた仲間は、静かにそこで眠っていた。 夜の三高平は酷く静かで、ただ、遠くで戦いの音が聞こえていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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