●とある駅を見下ろして とある街の中心地にある駅を、彼は見下ろしていた。 滅崎凶一というのが、彼の名前だ。 青年がいるのはホテルの一室だった。窓際に立つ彼からは、通勤や通学に急ぐ人々であふれかえっている朝の駅がよく見える。 駅に併設された5階建てのデパートの中では店員が忙しく準備をしている頃だ。 黒いスーツの胸元で、携帯電話が鳴るた。 「そっちの準備は終わったか?」 前置きもなしに問いかける。電話の向こうから、女性の声が聞こえた。 「問題ないわ、予定通りよ」 「オーケー、それじゃあ、今度こそ本気で皆殺しにしてやろうぜ。アークの奴らも、それ以外もな」 物騒な単語を言葉に乗せた青年は、鮫のような笑みを浮かべる。 「ええ……壊次の敵討ちよ。あいつら、絶対許さない」 彼らは、先日もアークに攻撃をしかけたフィクサードだった。その戦いで死んだ彼の弟の名を、電話の向こうにいる女性……凶一の妹が呟く。 凶一の顔から、表情が消えた。 「……やめとけ」 「え?」 「人殺しが他人の命を気にかけてどうする? 馬鹿なこと言ってると、次はお前が死ぬぞ、美禍」 彼の妹は、しばし黙った。 「……キョウ兄にとって、弟は『他人』なんだね」 「当たり前だろ。せいぜい楽しくやろうぜ。アークの奴らの驚く顔が目に浮かぶぜ」 電話は無言で切れた。 5分後、線路が走る陸橋が駅の東西で爆破された。 さらに5分後には、駅前のデパートの目の前で軽トラックに満載された爆弾が爆発する。 下部が崩壊したデパートの建物が、駅舎へと落下していった。 惨事を目にした凶一が愉悦の表情を浮かべる。 彼は革の手袋越しに握っていたリモコンのスイッチを投げ捨て、部屋を出ていった。 ●ブリーフィング 集まったリベリスタたちを、フォーチュナである真白イヴ(nBNE000001)は無表情に出迎えた。 「この前の奴らが、また動き出したみたい」 先日起こったフィクサードの組織的な攻撃。あのときなんとか追い返した連中が、またもやしかけてきたのだ。 「地方都市の駅で爆破事件が起こるの。人がたくさん死ぬわ」 10万人規模の小都市だそうだが、それでも中心部にある駅の利用者は多い。朝のラッシュ時ともなればなおさらのことだ。 犯人はフィクサードだ。 主犯格は滅崎凶一という名で、かなりの実力者だという。 「8人の敵が、3箇所に爆弾をしかけてるわ。2発の爆弾で線路を分断してパニックを起こした後、本命の爆弾で駅近くのデパートを倒壊させる手はずみたいね」 駅からは東西に陸橋になった線路が走っている。東西それぞれ、一番駅に近い道路と線路が交差する場所に爆弾をしかけているらしい。 それぞれの場所には、クロスイージスとマグメイガスの能力を持つフィクサードが監視についているという。 最後の1箇所は、駅のそばに立っているデパートの駐車場だ。 軽トラックに満載された爆発物は、3人のフィクサードが守っているという。 1人は滅崎美禍というフライエンジェのインヤンマスター。先日のアーク攻撃にも参加していたフィクサードだ。 滅崎凶一の妹で、彼ほどではないものの実力はアークのリベリスタ以上だという。 さらに、彼女とともにやはりクロスイージスと、ソードミラージュのフィクサードがいる。 「爆弾はリモコン式だから、機械を操る能力があれば起爆しないようにできるはず。ただ、向こうもそれはわかってるはずだから、対策はしてると思う」 まず、敵を排除しないことには爆弾をどうにかすることは難しいだろう。 リモコンを持っているのは、リーダーである滅崎凶一だ。 主にライフルを使うという彼の実力はフィクサードたちの中でも並外れて高い。射撃戦を得意とするが、接近戦でもけして弱くはないそうだ。 「凶一は駅が一望できるホテルに陣取ってるみたい。はっきりした場所まではわからないけど、都市の規模を考えればそんなに候補は多くないはず」 フィクサードの中でも特に危険なのは凶一と美禍の2人だ。 残るフィクサードたちも弱くはないが、実力は平均的なアークのリベリスタと同程度らしい。 「どんな狙いがあるかわからないけど、爆破事件を起こされたら大きな被害が出る。絶対に、阻止して」 懇願するような響きが、イヴの声には混ざっていた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:青葉桂都 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月30日(木)23:27 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●承前 とある小さな街の中心部では、今日も朝のラッシュが発生していた。 集まっている人々を惨殺しようという企みがあることなど、誰も考えてはいなかった。アークから派遣された、リベリスタたちを除いては。 人目につきにくい場所で、彼らは打ち合わせをしている。 「それでは、手はずどおり端から調べていくとしよう」 いくつかの○がついた地図を、『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)が仲間たちに配る。どうやら怪我をしている様子だったが、声の張りに衰えはない。 「あまり続けたい縁ではありませんので、これっきりにしたい所。失敗するわけにはいきませんし」 ミミズクのビーストハーフである『弓引く者』桐月院・七海(BNE001250)が言った。 彼は以前の襲撃に際しても、今回現れるはずのフィクサードと戦っていた。 「任務を開始する」 ウラジミールが仲間たちに告げた。 リベリスタたちは時計を合わせ、行動を開始する。 まず、彼らは滅崎凶一がいる場所についてわかっている情報から、彼の居場所を探り始めた。 直観に優れた四条・理央(BNE000319)や『灰燼のかぐや姫』銀咲嶺(BNE002104)が目星をつけた場所から順に、候補となる場所を調べていく。 「たくさんはないよね。すぐに見つかるんじゃないかな?」 「そうあってくれるとありがたいね。時間がそんなにあるわけじゃないし」 『通りすがりの女子大生』レナーテ・イーゲル・廻間(BNE001523)と『ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)が、トランシーバー越しに言葉を交わす。 フライエンジェである嶺は駅から離れた場所まで移動した上で飛翔し、上空から窓を確認している。 七海は警察を騙ってホテルに電話して情報を得ようとしたが、公衆電話からではいたずら電話だと思われたようで、情報は得られなかった。 時間はかかったが、しばらくして凶一らしき人物がいる部屋が見つかった。 「それじゃ、あいつの部屋についたら連絡して」 マントと仮面をつけた天乃は、ホテルの内部から襲撃する予定のレナーテへ声をかける。 「困難な作戦……だけど、悪くない。相手も強そうだし、ね」 彼女はそのまま、凶一がいる部屋を目指して壁を登っていく。リベリスタとしての能力で、彼女は壁を歩くことができるのだった。 敢えて穿いていない彼女にとって少々危険な位置取りであったが、これも修行である。 嶺も見とがめられないよう窓へと近づいて来ているはずだ。 陸橋にいるはずの凶一の配下へと対処すべく、他のリベリスタたちも移動を開始する。 「ウラさん、あたいらも行きましょう」 「うむ、ありがとう」 アゼル ランカード(BNE001806)がウラジミールにハーフメットを手渡す。 帽子を外してメットを被ると、ウラジミールはアゼルのスクーターの後ろに乗る。駅の東側にある陸橋へと、2人は移動を始めた。 七海や他の仲間もほどなく合流するはずだった。 理央は西の陸橋へと向かっている。途中で、『雷帝』アッシュ・ザ・ライトニング(BNE001789)が合流してきた。 「今度は向こうも本気だね。でも、今回も負けるつもりはないよ」 「はっ、当然だぜ。雷の速さで片付けてやるさ」 眼帯型のアクセス・ファンタズムからアッシュはナイフを取り出す。 スクーターが加速していった。 ●襲撃 嶺は窓へと向かって、降下していく。 部屋の中にいる凶一は、今のところ彼女のほうを見てはいなかった。 「改心の気が見られないフィクサードは、処分あるのみ、です」 壁にはりついている天乃が合図をしてくる。 レナーテが行った背後からの強襲を、凶一がぎりぎりで回避したのが見えた。 杖を窓にたたきつける。ガラスが大量に部屋の中へと飛び散った。 「ふふっ、とびっきりのコールガールのご到着ですよ」 小型のダガーを構えた天乃も割れた窓から飛び込んでくる。 「正義の味方が、器物破損かよ」 素早くライフルを構える凶一に、焦りは見られない。 ただ、攻撃に移るのは嶺のほうが早い。精密に放った気糸の一閃が、敵の腕を貫く。 「織れば高価な鶴の気糸。如何でしょうか?」 「悪くねえな。……お前から、死にたいってことなんだろ?」 ライフルの弾丸が嶺の胸を撃ち抜く。さらに、瞬速で放たれた2射目が首筋をかすめた。 天乃が凶一に気糸を巻きつけた。レナーテがもたらした世界の力が徐々に傷をふさいでいくが、回復速度は十分とはいいにくい。 とはいえ、目論見どおり注意を自分に向けさせることはできた。 このまま逃がさない。嶺は凶一へ距離を詰める。 西側の陸橋でもすでに戦いは始まっていた。 『原罪の羊』ルカルカ・アンダーテイカー(BNE002495)は、真っ先にフィクサードへと突進していく。フードが外れて羊の角があらわになるが、もう気づいても遅い。 七海と『Last Smile』ケイマ F レステリオール(BNE001605)がそれぞれの武器を構えて集中する。 盾をかざしたアゼルは、後ろに攻撃を通すまいという決意を表情にあらわしている。 ウラジミールが光り輝くオーラをまとって、重々しく前に進み出た。 流れるような動きで接近して、ルカルカはクロスイージスへ攻撃をしかける。 敵の動きを見切ったかのように放たれた矢が痛打を与え、ケイマの気糸やウラジミールの盾による攻撃も集中していた。 守りのオーラをまとっていたはずの敵は、1分もかからず倒れていた。 残ったマグメイガスは、罵りの声を上げながら4つの魔光を放ってくる。 ウラジミールは魔光を受けながら、さらに歩を進める。守りのオーラをまとった彼には致命打にならない。傷はアゼルが癒しの風を吹き付けて癒してくれた。 陸橋の下、リベリスタたちの頭上に黒い塊がいくつも取り付けられているのが見える。あれが、爆弾なのだろう。 「これが奴らの本来のやりかたなのだろうな」 仲間たちがマグメイガスに攻撃を集中する。 ウラジミールは、全身の膂力を込めて盾で敵を殴りつけた。 ろくな負傷もなく終わった戦いだったが、リベリスタたちに油断はない。一番大きな爆弾をこれから片付けなければならないのだ。 「行くとしよう」 スクーターに乗って、リベリスタたちは再び移動していく。 ホテルでの戦いは、3人がかりでようやく五分五分と言った風情だった。 嶺の頭を狙って、ライフルが放たれる。それをレナーテがかばう。 天乃は気糸とナイフの波状攻撃を凶一に加える。 攻撃が外れることはないが、クリーンヒットすることもなかった。 「弱点はある?」 「物理攻撃も術も、あまり変わりません」 敵の弱点をつく戦い方をする嶺に問いかけるが、残念ながら帰って来た答えは心もとない。 凶一の銃口が天乃へ向けられた。 銃弾は放たれない。ただ、邪悪な魔力が宿っているかのような眼光に全身が射抜かれて、天乃は動きを鈍らせられる。 レナーテの身体が光を放つ。それは天乃を縛るショックを和らげてくれた。 銃弾が嶺に致命的な一撃を加えたのは、その隙だ。 それでも嶺は倒れない。なおも敵を観察し、杖を振るう。 じょじょに傷はふさがっていっているが、その速度は傷に比べて弱々しい。 天乃はナイフを投じ、レナーテは嶺をかばう。 胸を貫いたナイフを引き抜いて、凶一は天乃を狙ってきた。 飛んできた銃弾は頬をかすめたのみ。けれど、叩きつけられた『殺意』が頭を強打する。 一瞬だけ、脚から力が抜けた。 しかし、天乃は倒れない。 「ふふ……戦、で身の削れる……この感覚。悪くない、ね」 いつもは無表情な天乃の口が笑みを形作る。自らの限界を超えた感覚が、戦いを求める彼女の心を刺激したのだ。 全身から気糸を放つ。凶一の全身に絡みつき、動きを縛った。 長い時間縛っておけるとは思えない。機会を逃さず、3人は攻撃を集中する。 東側の陸橋ではまだ戦いが続いていた。 理央はクロスイージスの攻撃を盾で受け止める。 そこに、アッシュが弱点を狙って両手のナイフを繰り出す。鴉へと変じた符で追撃を加えると、ようやく守りを固めていた敵も倒れた。 後衛のマグメイガスが雷撃を放ってきた。 アッシュはその敵の背後に回りこみ、理央は福音でもって雷の傷を癒す。 耐久力の高い理央と回避能力の高いアッシュは着実に敵の体力を削っていく。 「悪いけど、護ることに関しては、負けるわけには行かないんだ」 1対2に追い込まれてなお、爆弾の前に立ちふさがろうとする敵へ、理央は告げた。 4つの魔光が理央へと放たれる。しかし、愛用の盾はそれを受け止め、威力のほとんどを削いだ。 アッシュが背中に刃を突きたてると、敵はその場に崩れ落ちる。 「時間がかかっちゃったね」 「あっちの連中より先に倒しちまうつもりだったんだがな」 すぐさまスクーターに飛び乗ると、2人は2手に分かれて移動を開始した。 ●決着 駐車場に停まる軽トラックの周りで、3人のフィクサードたちが警戒しているのが見えた。 七海は羽毛に覆われたミミズクの腕で、静かに弓を構えた。感覚を研ぎ澄まし、集中力を高める。 敵ソードミラージュが、加速しながら突進してきた。それをルカルカが迎え撃つ。 ケイマも前に出た。アゼルは先ほどの戦いと同じように七海を守ってくれているようだ。 敵の周囲に滅崎美禍が結界を展開する。 さらに、ウラジミールと敵クロスイージスが守りのオーラを身にまとっていた。 ソードミラージュのナイフが残像を作り出しルカルカとケイマを切り裂く。 その動きを見切って、七海の矢が敵を射抜いた。 「いいんですか? 爆弾から離れて。凶一は貴方達がいようがスイッチを押しますよ」 声をかけると、彼女の身体が一瞬震えた。 「ねぇ美禍さん? 実の弟さんを見捨てた兄ですもの」 「殺したあんたたちに言われる筋合いはない! それに……あの時は、連れてく余裕なんてなかった」 後半は、自分に言い聞かせているようでもあった。 七海は彼女に少しだけ同情する。敵である自分たちよりも、味方のほうが危険なのだから。 変則的な動きで混乱させ、同士討ちを誘うソードミラージュは危険な相手だった。しかし、アゼルの回復が同士討ちを防ぐ。 やがて、七海の精密な矢が敵を貫くと、めまぐるしく動いていた敵は動きを止めた。 駐車場に冷たい雨が降り注ぎ始めた。 この雨で爆弾がしけったりしないだろうかと科学者のケイマは少しだけ考えた。もっとも、そんなことになるならば使ってきてはいないだろうが。 「それにしてもムカつくな。そんなに爆弾仕掛けたいなら、自分達に仕掛ければいいのに」 「……勘違いしないで欲しいわね」 ケイマの呟きを美禍が聞きつけたようだ。 「爆弾はただの手段。私はただ、人を殺したいのよ」 「なお悪いわ!」 言葉と共に、ケイマは破滅的な黒いオーラを、クロスイージスの頭部に叩き込んだ。 アゼルは活性化した魔力を循環させながら、ひたすら仲間の支援を続ける。 冷たい雨はなおも降り注いで仲間の体力を削っていたが、彼は福音を響かせてそれを癒していた。 「爆弾で大量殺戮なんて絶対に阻止するのですよー!」 少年の地道な回復は、確実に効果をあらわしている。 ウラジミールと敵が膂力のこもった一撃の応酬を始めた。 さらに、ルカルカのよどみない動きが敵を追い詰めて動きを封じる。 ケイマが放ったオーラが頭を砕き、それが止めの一撃となった。 美禍がリベリスタたちに背を向けて、軽トラックに近づこうとする。 アッシュが駐車場に到着したのはそのときだった。 「よお、この声に聞き覚えはねェか? 無い訳無いよなァ、あのでかぶつを引っ張り出して殺した。正にその敵の声をよォ」 大声を上げると、美禍が顔を向けてきた。 「爆弾に巻き込んで殺す、ンな冗長な手段で手前ェは満足か? 力を頼って生きて来たんだ。ンな訳ねえよなあ。殺したいだろ、自分の手でよォ!」 スクーターを止めて美禍を挑発する。 「俺は逃げも隠れもしねえ、どうした! 殺しに来いよ!」 美禍が走ってきた。意図を悟った仲間たちはそれを妨害しない。グリモアールから放たれた呪力を受けながら、アッシュは両手のナイフで反撃する。 七海の矢と、ウラジミールの盾が美禍を打つ。ルカルカやケイマも攻撃に加わった。 「最速の雷を殺そうなんざ、百年遅ェっ!」 美禍はなおもアッシュへ攻撃をしかけるが、それを回避して彼はナイフを振るう。右手のナイフを彼女の胸に突き刺し、左手のナイフで喉を切り裂く。 「あ……ごめ……ん……」 謝罪の言葉は、死んだ弟へのものか。美禍は倒れ伏し、もはや動くことはなかった。 ホテルでの戦いも、終わりが近づいていた。 立っているのは2人きりだ。 レナーテと、凶一。どちらも倒れる寸前だった。 特にレナーテは一度倒れかけて、どうにか立ち上がっている状態だ。もう一度立つ自信は、ない。 「こんな強いくせに……やるなら正面からきなよ。関係ない人巻き込むとか最低」 「万華システムなんてチートアイテム持ってる奴らに正面から挑めるかよ。……ま、そんなもんなくても、正面からは行かないけどな」 吐き捨てるレナーテを、あざ笑う凶一。その笑いは途切れ途切れだ。 (もう、後がないよね……柄じゃないけど、やるしかない) 凶一の背後に壊れた窓が見える。 レナーテは突進した。 青年の身体に抱きつくようにして、外へと押し出す。 「てめえ……っ!」 飛ぶ手段のなければ、革醒した者と言えども重力には逆らえない。 遥か下にあるはずの地面が、レナーテにはなぜかよく見えた。 ●帰投 理央は息を切らせて、血まみれで地面に倒れているレナーテに駆け寄った。 戦闘が起こっているはずの部屋まで一度上り、状況を理解したところでまた駆け下りてきたのだ。 凶一の姿はない。 壊れたリモコンと、ひしゃげたライフルが血だまりに落ちている。そして、なにかが這ったような跡が道路の端で途切れている。 レナーテにしても死んではいない。理央は急いで癒しの符を彼女に貼り付ける。 「この出血なら……どこかで、力尽きていると思いたいね」 致命的な傷を負っているのは確実だ。ただ、リベリスタなら致命傷からもときに生還することがある。それが少し気がかりだった。 駐車場にいたウラジミールは理央からトランシーバーで連絡を受ける。 「爆弾を起爆するリモコンは破壊できたらしい。凶一の死体は未発見ということだが」 残る爆弾の処理については、警察に任せるつもりだった。連絡すれば、なんらかの対処は行われることだろう。万一凶一が生き延びていたとしても、手を出してこられる状態とは思えない。 「任務終了」 事件は解決し、リベリスタたちは街の平和を守った。 少なくとも、それだけは間違いない。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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