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ケーキ中毒

●やめられないケーキ
 繁華街を少し外れた位置にある、個人経営のこじんまりとした喫茶店。多少交通の便が悪い場所にあるにも関わらず、開店から閉店まで、客が絶えることはない。結構な繁盛ぐあいだった。コーヒーに紅茶も店主こだわりの銘柄を使用し、美味しいと評判だったが、中でも多くの客の目当ては店主自ら焼いているケーキだった。
 すこし華やかさは劣るものの、素朴な味わいがあり、一度で満足することなく、何度も食べたくなってしまう。そんな味だった。
「本当においしいよね、このケーキ」
 最近店の存在を知った女子高生が友人に言った・
「ほんとほんと、最近毎日通ってるわよ」
「わたしもよ、おかげでちょっと太っちゃった」
女子高生は互いに張り詰めたボタンを見せあって笑った。そんな様子を見て、中年の店主はほくそ笑む。焼きあがったケーキに粉砂糖をひとつ振りかけた。
「明日からちょっと控えなきゃね」

 しかしその宣言もむなしく、彼女達は毎日毎日その喫茶店に通っていたのである。そしてお小遣いが底を尽きると、今度は親の財布から札を抜き始めた。二人には、もう痩せていたころの面影はなかった。

 ●ケーキ中毒
「甘いものには中毒性があるってよく言うわよね。それで太っちゃう人の多くは自己責任だけど、もしそれを人為的に行っていたらどうかしら」
『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はチョコレートをひとつ摘みながら言った。
「最近、やたら繁盛している喫茶店があるの。ケーキが美味しいって評判で、一度食べたら毎日のように食べないと気が済まない。結論から言うと、店主がフィクサードなの。でも組織には所属してはいないわ。彼は個人的な趣味の為にみみっちいことを行っている」
「みみっちいこと?」
 リベリスタの一人が声を上げると、イヴは困ったように目を伏せた。
「ふくよかな女性が好きなのよ。だから自分の能力を悪用して、ケーキ中毒にさせてるの」
 平たく言えばデブ専だ。なんとも微妙な顔をするリベリスタの面々にイヴはスライドを見せる。そこに映し出されたのは可愛らしい小ビンに入った粉砂糖だった。
「そいつが用いているのがこれ。『ホリック・シュガー』と言って、食べた人を中毒状態にするの。こんなふうに着々と自分の欲望を実現しているのよ」
 女の子の敵よねとイヴは意気込んだ。
「とにかく、健康と健全な精神を阻害するっていう理由では、これも立派な害悪なのよ! どうにかやめさせて来て頂戴」




■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:あじさい  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年03月10日(日)23:05
どうもあじさいです。甘いものが止められない人も多いんじゃないでしょうか?今回はそんなお話です。

●エネミー情報
フィクサード(喫茶店の店主)×1
一見その辺にいる平凡な中年男性。世界を破壊しようと大層なことはたくらんでおらず、性癖をささやかに満足させる毎日。能力を悪用し、自身が作るケーキを食べずにはいられない状態にする。ふくよかな人が好き。店主自身は中肉中背です。

『ホリック・シュガー』
店主が用いる粉砂糖で、これを食べた人はこの砂糖を摂取したくてたまらなくなってしまいます。中毒状態を引き起こす原因。

●成功条件
 店主の説得、または懲らしめてやってください。

●場所
 閉店後の人気のない喫茶店で接触してください。

それではお願いします。


参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
インヤンマスター
依代 椿(BNE000728)
プロアデプト
彩歌・D・ヴェイル(BNE000877)
★MVP
プロアデプト
如月・達哉(BNE001662)
スターサジタリー
雑賀 木蓮(BNE002229)
ナイトクリーク
月杜・とら(BNE002285)
ダークナイト
街多米 生佐目(BNE004013)
デュランダル
アディ・アーカーシャ(BNE004320)
ミステラン
リリィ・ローズ(BNE004343)

●性癖の起源
 喫茶店は大変な繁盛具合だった。素朴な手作りのケーキ、それだけでも充分に人を引き付けたが、店主はある日から中毒を引き起こす成分が入ったシュガーをケーキに一振りするようになっていった。
 連日甘いものを食べに通う客は見る間に体重が増加し、その眺めはまさに圧巻だった。少なくとも、特殊な性癖を持ち合わせている店主にとっては、まさに天国といったところだろうか。
 ふくよかな女子高生も捨てがたいものがあるが、中年マダムを見るのもなかなかに楽しかった。
 
彼の性癖は、未だ幼いころの経験にさかのぼる。彼の近所に住んでいた一回り年上のお姉さんが、彼にとてもやさしかったからだ。そのころから、痩せたきつい印象のある美人よりも、多少見劣りがするかもしれないが、親しみがあって安心感を与えてくれる女性の方が好みになっていった。そうすべては幼少期のお姉さんのせいだ。そのお姉さんが甘いものが好きだったのも、将来に大きな影響を及ぼしていた。
 
 ダイエットが推奨され、理想の体型としてメディアが痩せすぎな女性を電波にのせて放送するこの時代。店主のような性癖を持つものはもちろん、女性にとっても生き辛い時代ではないだろうか。画一的な基準から外された女性は、まるで何かの間違いかのように糾弾されてしまう。それはやはり時代が間違っているのではないか。そんな思いから砂糖を振りかけるようになった。
 しかしいたずらに太り、今まで「おいしい」と微笑んでいてくれた女性が、中毒に依って店を訪れ、虚ろな瞳でケーキを貪っていく。そんな状況にいつしか疑問を感じてはいたが、店主は今日も『ホリック・シュガー』をケーキの仕上げとして一振り振りかけるのであった。


それを遠くから見守るリベリスタ達の姿があった。潜入する前に、どれほどの被害状況であるか、確かめておきたかったのである。
「うわあ、丸い人がぎょうさんおるなあ……」
『レッドシグナル』依代 椿(BNE000728)は顔をしかめながら呟いた。
 女子にとっては自身の体型というのは常に重要で、悩み事の大きな位置を占める問題である。それだけ多くの乙女達が頭を悩ませているからこそ、ダイエットビジネスが成立しているのだ。そしてそれは椿にとっても変わらない。
「自分がぽっちゃり好きやからって、女性の方を好みに合わせて太らせるとか……、許されることなやないわ」
 今ケーキに食らいついている女の子の中には、ダイエットをしている最中だった子や、やっと成功した子もいただろう。その喜びを踏みにじるのは許し難い。
「ちょっとお灸据えたらんとな。まあ反省するならあまり事は荒立てたくはないけど」

 店の椅子はほぼ埋まり、満席状態であった。その結構な繁盛具合が、正当な評価か否かを確かめるために『The Place』リリィ・ローズ(BNE004343)はじっと客の顔を見詰めた。
 殆どの客が必死になってケーキを貪っている。その顔には幸せはなく、ただ飢えを満たす動物の様な様相が感じ取れた。余分な肉がついた身体がひたすら食べ物を求める姿は見ていて余り気持ちの良いものではない。
「なんだか、怖い……」
リリィはそう呟く。事態は思ったよりも深刻なのかも知れない。店主が用いる中毒を引き起こす甘い砂糖、『ホリック・シュガー』がどれほどの効き目かは分からない。しかし店の中には、ケーキを純粋に味わって食べようとしている人間は一人もいなかった。
「本当にあの人はこれでいいのかな……」

――本当に店主はこの状態で幸せだと感じているのだろうか。
そんな疑問と共に吐き出されたリリィの呟きを、『灼熱ビーチサイドバニーマニア』如月・達哉(BNE001662)はどこか憤ったように見詰めていた。菓子作りに携わる者として、やはり思うところがあるのだろう。
 一行はすぐにでも店の扉を叩きたい心を抑えながら、ひたすら客足が遠のくのを待った。

●ケーキの味
 最後の客を見送り、そろそろ店じまいをしようかと思った時、店主は顔をしかめた。見慣れない男性が現れたからだ。最近は中毒による常連客ばかりですっかり顔を覚えてしまったため、店主はそれが新規の客であることが分かった。純粋に自分の評判を聞いて訪れてくれる。そんな客は久方ぶりだと思いながら、彼はいつものようにケーキをふるまい、紅茶を入れた。



 達哉は差しだされたケーキを厳しい視線で眺めた。そして砂糖がかかっていない底をフォークですくった。
 確かに味にこれといった華やかさはない。一流の店に比べると味が劣るだろう。しかし気取らない素朴さが、懐かしさを感じさせた。特別な日ではなく、普段少し疲れた時に立ち寄る店。友人と他愛ない会話をする片隅に存在する味。そんな位置を占めることのできる店だ。
 何も細工されていないであろう紅茶を一口飲んで、席を立った。
「もったいないな……」
 達哉はそう呟いた。困惑する店主と視線が交錯する。
「こんなに上手いケーキを作れるのに、なぜそんな愚かなことをする?」
 男が驚愕で目を見開くのと、リベリスタ達が店へ押し掛けてくるのは同時だった。

●潜入!
「名前くらいは聞いたことあるんじゃないか? 世界の秩序を守る組織、アークのお出ましだ」
『銀狼のオクルス』草臥 木蓮(BNE002229)は、そう言い放った。店主の顔が見る間に青ざめていくのが分かる。やはり神秘を発現させたものとして、その存在と役割は知っているようだった。多少の脅しも含めて、高圧的に話す。
「おじさんがなにをやっているか、こっちは全部知ってんだよね」
木蓮が指さす先には、綺麗な小瓶に入れられた粉砂糖。自分達が優位な立場に立つことは怠らない。
「まあ待て、何も僕達は害を与えに来たわけじゃない。まずは話を聞いてくれ」
 達哉は店主にそう言い、彼と話をさせてくれるように仲間に伝えた。そこで自分の感じたままを話す。喫茶店として、味にはなんの問題もないこと。そしてそれを私利私欲のために用いることが残念でならないかった。
「味は全く問題はない。目立つ味ではないが、むしろ美味い。それは僕の舌が保証しよう。しかし、だからこそ残念でならない」
 達哉が真摯に説得を試みるなか、『カゲキに、イタい』街多米 生佐目(BNE004013)
が割って入った。
「はいはい、ちょっといいかなー?」
 生佐目は事前に用意してきた段ボールで作ったテロップを取り出した。こういうことはこまめで真面目な彼女である。
「どうもどうも、まずこっちの言い分を聞いてくれます? それで貴方が思い止まってくれたら、こちらとしても楽なので」
 そう言いながらいそいそと取り出した段ボールには「恐怖! 糖尿病の症例!」と手書きででかでかと書かれていた。
「そもそも糖尿病ってどんな病気ってところから説明しますねー」
 及ぼす健康被害について懇切丁寧に解説していく。時々端に添えられている図が手作り感をまた際立たせていた。
「つまりですね、貴方が作ってるのはふくよかな人間ではなくただのデブ、豚なんですよ。見境のない低俗な豚だ。ふくよかとは人間の幸せが徐々に形作っていくものなんですよ。まるで年輪のようにね。ですがデブはどうですか?」
 そう投げかけると店主の瞳が揺らぐ。おそらく自分でも同じことを疑問に思っていただろう。
「貴方にとってもそれは本意ではないでしょ。これから先は言わなくても分かりますよね」
 生佐目は彼の心に訴えかける。なぜ自分が喫茶店を始めたのか、そのきっかけを思い出して欲しい。料理というのは一日で完成するものではない。それは日々の積み重ね、経験が何より重要なのだ。おいしいケーキを焼けるようになるまでに、どれほどまでの時間を要しただろう。それは性癖を満足させるためでもあったろうが、もっと別の理由があるのではないか。
 膠着する空気を、能天気な声が切り裂く。
「ねえ、看板商品どれ? モンブラン、それともミルフィーユ?」
 ニコニコしながら『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)はショーケースに並んだケーキを眺めていた。
「ねえ、おじさん。せっかく持ったお店潰したくないよねー?」
 年頃の少女に似つかわしくない含みのある笑みを浮かべるとらに、店主は黙ってショーケースの扉を開けた。

 妙な真似をする余裕もない店主は、人数分のケーキを振る舞い、紅茶を入れた。そしてそれを賞味するリベリスタ達は、それぞれに声を上げる。
「うーん、おいしい♪」
 とらは自然と食べ進め、さらにはおかわりまで要求する。他のメンバーもそれぞれじっくり味わっているようだ。実は甘党である『レーテイア』彩歌・D・ヴェイル(BNE000877)もその味を充分に堪能している。
 しかしそのおいしさに舌鼓を打つばかりでは、任務を遂行したことにはならない。彩歌はケーキを味わいながらも、店主にくぎを刺した。
「確かにおいしいけれど、女の子たちを中毒するのはいただけないわね。あなたも嫌でしょう? 栄養も偏ってしまって健康にはよくないわ。女の子が糖尿病になっちゃう。それにケーキってたまの楽しみだからおいしいものでしょ?」
 彩歌がそう言うと、店主は返す言葉もないようだ。
「そーだよおっさん。こんなことして恥ずかしくねーの?」
 すかさず木蓮からも店主へ怒りの声が届く。
 そうしてリリィも頷いた。
「そうだよ、おいしいものを食べるときは幸せじゃなきゃいけないの。こんなにおいしいのにもったいないよ?」
 リリィは首をかしげてみせる。そして途端に真面目な顔になって問いかけた。
「――店主さんは、幸せ? 本当にこれで幸せなの」
 おいしいものを作る人には、悪い人はいないはずだ。少なくともリリィはそう思いたかった。それに椿が続ける。
「せや、こんなに上手いケーキを作れとるんやから、神秘に頼らんでも目標は達成できるんやない?」
 店主は二人の問いに苦笑して、ケーキのおかわりをさらに持った。とらは待ってましたとばかりにそれを受け取る。説教を交えながらも皆一様に、ケーキを味わっていた。

 しかしただ一人、アディ・アーカーシャ(BNE004320)はそれに手をつけないでいた。
「あの、お気に召しませんでしたか?」
 店主がそう尋ねると、アディはおもむろに首を横に振った。機械と皮膚の境い目ももはやおぼろげな彼には、料理を味わう感覚器官をとうに失っていたのだ。
「『私には貴公の作る料理を味わうことができない』」
 くぐもった声でそう告げると、店主はどこか悲しげな表情をした。
「『聞け、唯、己の幸福を求めるヒトよ。食することを行えることが、どれほど恵まれたことで、尊いものかを、今一度考えるがいい、貴公の作る品は、貴公が望めば、ヒトに笑顔を作り出すことが出来よう。だが、其れも貴公が、自らの過ちに気づかず、利己の為のみに行えば、其れは愚かな行いとなろう。記憶の奔流から引き上げるがいい、其の能力を使わずとも、貴公の品を口にした者は、皆、笑顔では無かったのか? 為れば、貴公に其の能力は不要なモノだ。我らに託し、貴公は元の生活へと戻るがいい』」
アディは無愛想にそう告げる。その言葉が淡々としているからこそ、込められた思いが伝わったのだろうか。店主はかつての自分を思い出していた。
 ――自分のケーキを食べた人に、本当のいみでふくよかになって欲しかったのではないだろうか。幸せの年輪の手助けが、彼が本当にしたいことではなかったのか。
「『貴公の力は、人を幸せにできるのだ』」
アディがそう言う。それは躊躇いもない真っ直ぐな確信に満ちた言葉だった。
「ふくよかな女性に集まってほしいのなら、彼女達に対して割引なりなんなりすればいい。ちなみに僕は真面目に働いて女性従業員の制服をバニーにしたぞ」
 そうして場を和ませようとしようとする達哉にとらものった。
「そうだよー、ぽっちゃりさん割引とかはじめればいいんだよ」
とらは相変わらず、フォークに運ぶ手を休めていなかった。頬が幸せそうに緩んでいる。
「考え直して頂けますね」
 そう言うと、彼はうなだれた。

「中毒になった女性を救うにはどうすればいいんですか」
 店主はその砂糖の効果は一時的なもので、一定の期間接種しなければそれは自然に回復すると語った。厳しい視線を感じて店主は自嘲気味に笑った。
「俺は間違えたんですね。やりたかったのは自分のケーキを食べた人が幸せになってくれることだったのに」
 幼少期の体験が鮮やかに思い出された。自分がケーキを焼くのは、人の笑顔を見たい為ではなかったのか。それをいつから私利私欲のために用いるようになってしまったのだろう。しかし許されるのならば、今からでもそれをやり直したい。
「大丈夫だ、ケーキの味は嘘をつかないからな」
 達哉はそう言った。自身もパティシエである達哉は華やかに見えるお菓子作りがいかに大変かを知っている。重い小麦粉の袋を運ぶことや、生地の仕込みがどれほどの重労働であるか。そして人に振る舞っても恥じない味にするまでに途方もない時間がかかることも承知していた。
さきほど食べたケーキの味は、誇っていい。彼が犯した過ちは擁護すべきでないが、そのケーキの味まで否定することはない。
「やり直せ。こんな上手いケーキを作れるんだ。その腕を今度こそ人の為にふるえばいいじゃないか」
 店主は感極まったように涙ぐみ、消え入るように返事をした。
「一時的に客足は減るだろう。しかしまた繁盛させればいい、今度は正真正銘の君の腕で」
 達哉がそう言うと、店主は力強く頷いた。
 同じパティシエの言葉が胸に響いたのだろう。反省した様子の店主の肩を木蓮が叩く。もう同じ間違いは繰り返さないでくれるだろう。ちゃんと思いなおし、更生してくれるのならそれにこしたことはない。何も物事は力づくで解決するばかりではない。誤った人間を正しい方向へ導いてやるのも、大切な役目だ。
「そうだおっさん、自分の尻ぬぐいは自分でするもんだ。それが大人ってもんだろう? あんたはいい大人なんだからな。今度こそは年下で子供の俺様に説教されることのないようにしてくれよ。隠れてまた同じことやったらただじゃおかないからな?」
 木蓮の激励を受け取ったのか、店主はリベリスタ達に深々と頭を下げた。
 これから客足が多少引くかもしれないが、それは自業自得として、頑張るしかないだろう。とらが頭を上げた店主に微笑みかける。
「しばらくはお客さん減っちゃうかもしれないけどしょうがないよね。おじさんは信用が第一って言う商売の基本を怠ってたんだから」
それは今の店主には、きつい一言であった。しかしとらは続ける。
「まあ、頑張ってよ。これまでズルしてたしわ寄せだから。本当に美味しいケーキを出していれば、お客さんは自然に足を運んでくれるはずだよ」
 じっくり信用を築いていけばいいよ。とらはそう言った。
 その道のりは険しいだろうが、地道に働いていけばなんとかなるだろう。今の店主の顔を見ると、そう思うには十分なくらい晴れやかな顔をしていた。

 

●店主の改心
 店主は改心した。もう神秘にも頼らないと誓った。電子機器から砂糖の情報を掴むことの出来なかった彩歌はその作り方を店主に尋ねる。そうすると、それは店主自身が作ったものであり、地下組織から得たものではないこと、そしてもう二度とそれには頼らないことを語った。
「いい心がけだよ、おじさん。あなたも好きな女の子が自分のケーキで死んだらいやでしょ。そんな当たり前の気持ちを思い出してくれたのなら、よかった」
 神秘を得た砂糖は、リベリスタ達がいる目の前で処分され、二度と作成することもないと約束させた。
立ち去る前、アディはガラスケースに陳列されたケーキをいくつか見つくろってもらい土産として持って帰った。もちろん、例の砂糖は未使用だ。自身が食べられなくとも、幸せを分けることはできる。それはアークの面々に振る舞われた。

 依頼を完了してしばらくして、リベリスタ達の元に詫びの手紙が送られてきた。謝罪とともに、招待券が添えられていた。
 『ぜひまた食べにいらしてください。お待ちしています。お友達の女性もお誘い合わせください』
 その文面を見て、リベリスタ達は笑い合った。性癖は相変わらずらしいが、どうやら上手くやっているようだ、と。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
ありがとうございました! 
あなた方の説得により、店主は本当の気持ちを思い出したようです。性癖は相変わらずのようですが。

MVPは迷いましたが、パティシエの立場から彼を説得し立ち直るきっかけを作ってくれた方に差し上げます。