● アーク本部、そこには似合わぬ小さな少女が存在している。 背丈は一メートル程度だろうか。大きなリボンのワンピース。 少し癖のついた白に桃色がかった髪は低い位置で二つに結われている。その背には髪と同じ色合いの羽が生えていた。 猫の耳が生えたキャップを被って、可愛らしい手袋を嵌め、コートを着ている小さな小さな少女。 ――少し、待って頂きたい。何処かで見た事がある様なこの外見。 ● ブリーフィングルームに入って呼び出して来た筈の外見詐欺フォーチュナの姿が見えずにリベリスタは首を傾げる。 「おねがいしたいことがあるわ!」 両手に苺大福を持って『常闇の端倪』竜牙 狩生 (nBNE000016)の膝に座っていたのは紛れもなく『恋色エストント』月鍵・世恋(nBNE000234)その人だ。 幼女フォーチュナとして名高い『せんきょうよほーするよー!』の子やアイドルイヴたんよりも群を抜いて幼い姿になっている世恋。 「見て分かる通り小さくなっちゃったの!」 「……あんまり、変わってないような……」 「小さくなったもん! 幼稚園児っぽくなったもん! 私、24歳ですー! ほら、145.0cmから小さくなってる!」 ブーイング。本人である事には違いないが外見が明らかにマイナス20歳分だ。 ……違和感がないのは何故だろう。あと145.0cmの5cmのさば読み感がハンパない。実際は143.5位だと彼女の姉貴分が言っていた。 瞬いたリベリスタ達に「おねえさまも同じ状況よ」と唇を尖らせて幼女――ではなく、世恋は言う。 「あのね、アザーバイドがいるんだけど。魔法の粉をぱさぱさーってしてきて……」 「月鍵君。私が説明します。 とあるアザーバイドが此方に迷いこみました。その体には蝶々の翅が生えており、その鱗粉が幼児化する効果を持っていたという訳です。 アザーバイドは運命の寵愛を受けており、この世界に害はないのですが……」 ひょこり、とブリーフィングルームの扉の端から何者かが顔を出す。蝶々の羽を生やした小さな少年はリベリスタに歩み寄り――! 狩生のスタイリッシュ避けが炸裂した! 「悪戯好きの様で、鱗粉を振りかけに回っているようです。 人体に害は有りませんし、この効果はフェイトを得た人間に最大で一週間程度影響を与える――のですが」 「戻し方は分かってるわ! とりあえずあの子を――『ぴーたーぱん』を捕まえて『解毒剤』になる瓶を手に入れれば後はなんとかなるの! だから、一緒に探してほしいの。私は『ぴーたーぱん』側よ! 『ティンカーベルの瓶』はお姉さまが探してくれるはずだから!」 ふんす。胸を張っていう世恋と目線が近くなったような気がしてリベリスタは嫌な予感がする。 先ほど、大量に粉を被ってしまったが――嗚呼、こなければよかった。 「これでお揃いね。皆で元に戻る為に頑張りましょう、ね! 大人のおねえさんにもどるの!」 いや、元に戻っても其れは無理だ、という言葉をリベリスタは呑み込んだ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:椿しいな | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月28日(木)00:11 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ぶりーふぃんぐ アーク本部。ブリーフィングルームで胸を張っていた幼女――『恋色エストント』月鍵・世恋(nBNE000234)の存在を目の当たりにして『蒼き祈りの魔弾』リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)は瞬く。 (つ、月鍵様……違和感があまり……) 「……はい、大人の月鍵様に戻りましょう。お手伝いします」 戦場ではないけれど、任務に望むなら彼女は常の言葉を胸にして、お祈りを始める。眼を伏せて口にして、次の瞬間、首を傾げるフォーチュナと目線が一致した。 「えっ、世界が大きく……?」 「ちちんぷいぷいちいさくな~る粉をスタイリッシュ避け……れなかったんですよ!」 驚愕のリリ。華麗に情報説明してくれた『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105)くん、四歳。先程、このブリーフィングルームには探す対象である筈の『ぴーたーぱん』が居たのだ。そして見事に粉を掛けたのはじいじだけ。どこのじいじかってじいじです。 「アカンよ!? これ以上背が縮むんはアカンよ!?」 「あら、伸びるかもしれないわよ? 解毒剤で」 『レッドシグナル』依代 椿(BNE000728)組長が慌てるのだって仕方ない。元の身長が幼女だと思っていた世恋より低いのだから。組長が一番小さいのだから! 其処に救いの手を差し伸べるのは『慈愛と背徳の女教師』ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)だった。その言葉に瞳を輝かせる椿。解毒効果で大きく――なれるなら私が頂きたいものだ。 「成長するん? やったら、その解毒剤を研究して、一週間大人の姿に為る薬の開発をやね!」 「………」 「あ、あかん?」 周辺の視線に耐えきれなかった椿が項垂れる。でも大人になったからって身長が伸びる訳ではないのですよ、組長。 \お揃いなのじゃー♪/ ブリーフィングルーム内に響いた『陰陽狂』宵咲 瑠琵(BNE000129)の声は幼児化という異常事態に顔を蒼くする『ヤクザの用心棒』藤倉 隆明(BNE003933)と比べると何と明るいものであったか! 普段から幼くみえる瑠琵だが、隣に立っていた同い年位(外見年齢4歳)の世恋と背比べ。自分の小さくなった掌をにぎにぎして、やや感動を覚えたりもする。 「む、わらわの方が高い――こら、微妙な低空飛行は止めるのじゃ!」 「にゅー、ういてにゃいもん」 ぷにぷに。淡く色づく頬は苺大福。頬をぷにぷにして楽しげに笑う瑠琵とじたばたする世恋。何とも言えない光景が其処には会った。ぎゅーとしてすりすりする幼児たちの戯れを微笑ましそうに見つめている暇はない。こうしているうちにも日が暮れてしまうのだ。 「さて、いざ! 三高平市内へ!」 ~完~ 「いやいやいや、終わるなよ!?」 6歳の姿になってもつっこみ役の隆明君。危険性が無いとしても子供に戻る事は避けたかった隆明君はきちんと幼児化した時の衣服を用意していた。アーク本部を探索する組、と呼びよせるお兄さん的な隆明の目の前で悩ましげな表情を浮かべるリオン・リーベン(BNE003779)君。5歳。 「ふむ……幼児退行が実際に起こると何とも言えないもんだな」 「まあな……」 リオン君の興味は幼児退行よりも良くブリーフィングで出逢うフォーチュナへと向いているようで。自分より二歳程度しか変わらなかった筈の彼女が普段から幼かった事は認めるのだが実際に子供になってしまうとは。 「いや、実に非常に可愛らしいとは思うのだがね。しかしまあ、俺としてはやはり元の姿の方が好みだわ」 「まあ、此方の方が好きだと言うとロリコ……もがっ」 4歳になった『告死の蝶』斬風 糾華(BNE000390)もそれ以上は、言えなかった。口を押さえたティアリアの優しい微笑みが、本当に何処までも優しかった。 ●しょうてんがい 「こんな小さなゴスロリドレスとか準備されているだなんて想定外だわ……」 纏うゴシックロリィタのドレスはスタイリッシュプロアじいじが準備してくれていたものだ。流石狩生さんと口にする糾華だが、それは果たして褒めるべきなのか。世恋やその姉貴分のお洋服もうきうきわくわくと用意していた時点で。 「いえ、何この人 変 態 なんじゃないの? とか言うべきなのかしら……」 糾華さん、その言葉はそれ以上はいけない! 瑠琵と椿を引き連れて歩きまわる彼女らの中でも糾華は周囲を見回して胸に決意を抱いた。 ――しっかりしなきゃ! 実のところ椿が5歳で、一人お姉さんなのだが、身長的に見てみてもやはり……いや、これ以上は何も言うまい。 「……商店街までくるのつかれたーとおいー……わがままじゃないわ。小さくなったからだもん」 私は悪くないと頬を膨らます糾華。実年齢的に歳年長である筈の瑠琵が一番楽しそうにしているのは、まあ、何時も通りってやつでしょうか! 笑顔を振りまいて、4歳時の少女が美味しそうとねだる様な――愛らしいと言えるのか、後ろから覗くこのオーラはなんだろうか?――瞳で見つめてくるのだからお菓子屋もお惣菜屋もそっと食べ物をプレゼントしてしまう。 「ふむ、美味しいのぅ♪ 皆に報告しておくのじゃ」 何故か幻想纏いで伝わった情報は、商店街のからあげが美味しい話しだったとか、なんとか。 商店街に歩く三人の協調性の無さと言ったら、これはこれで凄まじいものだ。一人は食べ、一人は疲れ、一人は身長――いや、これは別の話でしたね、組長! 「世恋さん、ほら、手繋ぎましょ。私の方がしっかりしてるし。しっかりしてるったらしてるわ。ねー?」 「む……あの、糾華さん、私、一応、24歳……」 ねー? だなんて、にこやかに笑った糾華のこの様子を彼女の妹――というかバレンタインの本命チョコイトの相手に見せてあげたいものだ。 一軒一軒廻りながら、路地裏にも一緒に歩いていく。貰ったお菓子を抱えながら糾華の後ろをついていく瑠琵は甘いお菓子に満足げだ。 「ほら、椿さん、見て。猫よ。ねこー、ねこー」 「あ、ほんまやな。猫やけど、って追いかけるん!?」 ぱたぱたと猫の後ろをついていく糾華の背を追いかけて慌てる椿。あれ、可笑しいな、しっかりものって何だっけ? 幻想纏いから響くのはからあげの美味しい店情報。目を離せば猫を追いかけて、まったく持って突っ込み役(くみちょう)は大変なのである。背が低くても、お姉さんですもんね、女子大生ですもんね! 「と、取り敢えず、ピーターパンって永遠の子供やろ? やったら、たぶん子供が集まる場所に居る筈やと思うんや!」 「ふむ、迷探偵じゃの。して、子供が集まる場所とは?」 \おもちゃ屋さんに行こ!/ 歩き疲れたと頬を膨らませる糾華の手を引いて、真っ直ぐに向かうおもちゃ屋。何時も見つめるよりも幾分か大きく見えるクマのぬいぐるみ。飛びつけばふわふわとしていて、大きくてとても気持ちが良い。 「ほら、これとか絶対ええと思わん? あ、ほら、アレ」 「え……えっと、(´・ω・`)?」 じっと見つめる糾華に頷く椿。大きくてふわふわで絶対興味を持つ、と乗っかるその様子におもちゃ屋さんもくすくすと笑っている。子供の特権を十分に使い続けるその様子。お菓子を抱えていた瑠琵は世恋にお菓子を分けてくすくす笑いながら人形と遊んでいる。 「ねえ、椿さん、ひょっとして」 「ベ、別に、ピーターパン捕獲のためやないからね! ちゃうからね!」 イルカのぬいぐるみ抱き締めて言われても……。 ●がくえん 「うふふ、先生だものね」 新しく仕立てた赤いドレスは何時も着ているものと同じ。6歳程度であれど、纏う『邪悪ロリ』オーラは変わりがない。 幼子は癒されるわ、と呟いて。どうせならこのままの姿で留めていられればいいのに……。 「ちょっとホラーチックですね」 「あら、そんな事無いわよ。うふふ、これも事件の一つかしら。解決しましょうね」 両手に花――ではなく花束状態のませた幼稚園児亘くんは一人屋上に小細工をしてからリリとティアリア、世恋と合流した。商店街でお菓子を手にして合流したフォーチュナは今度は学園探索と洒落こむのだ。 「何だか普段と目線が違って皆と一緒だとお互いの距離が近くなって、どきどきわくわくしますね!」 へらりと笑う亘にリリもそうですね、と微笑む。年齢的には亘と世恋が4歳。リリが5歳。ティアリアが6歳と年少さんから年長さんまでが揃った形だ。お休みの学校で、リリは普段通い慣れた場所であるのに、大きくて広くて見える事に驚きを隠せない。 「ええと、此処ってこんなに広かったでしょうか……?」 低い目線で見る世界は何時もと違う。大人の自分が何時も歩む場所を5歳の少女は物珍しげに見回すのだ。 備え付けた水道も高い位置にあるし、扉を開くのだって一苦労。童心に返りたい気持ちを抑えておまじない。 私は大人ですが。 「え?」 親近感をいだいたフォーチュナが瞬くのに合わせて微笑んだ。私は、大人、ですが。 普段からも若く見えるので、違和感を隠せずには居られない言葉だが、それはそれ。子供の姿ならば隠れた居場所も生きたい場所も子供の想いのままに判るだろう。 「あらあら、みんな可愛らしくてどうしましょう。一人残らずお持ち帰りしたくなってしまうわ……」 くす、と笑うティアリアの手招きに、肩車でも如何と誘われて、ふわふわと浮きあがったフォーチュナは首が痛くなっちゃうわ、と笑う。 「あら、隣を歩いたらわたくしの理性が大ピンチですわ」 「ひいっ!?」 ――それは兎も角。 甘いバニラの香りを振り撒くティアリアと手を繋いだ世恋。前を行く亘はくすくすと笑いながら悪戯を狙い、子供っぽい悪ふざけを存分に楽しんだ。曲がり角を曲がる前に、飛び出して驚かす事や、楽しくてつい歌を謳う等。は、とリリは亘の謳う曲に聞き覚えがあって一緒に歌い出す。 「いつも居る場所なのにまったく別世界ですね。いつも手が届く場所に届かない」 「ええ、普段あまり入らない職員室などにも行ってみましょう?」 ぱたぱたと走る亘とリリ。見えないものまで見えそうで。まるで冒険みたいだと目を輝かす。古い校舎だとか、人の居ない時間帯とかそういう学校というものは何処か神秘的にも思えるものだ。 「かくれんぼも後で是非やりましょう! これが世恋さんが普段見てる世界なんですね!」 輝く瞳で振り返った亘の蒼い瞳が映したのはティアリアと手を繋いで盛大にむくれている世恋であった。 「え、えーと……」 「あっ、見て下さい、あれ……天風様!」 慌てる亘の前の前でリリがびし、と指差す先には探し求めた『ぴーたーぱん』。慌てて追いかける速度の亘に合わせて、秘密兵器(ちょこあっくす君)をふりふりと振って誘導を行うリリ。甘い香りのティアリアも誘う様にぴーたーぱんの前に立ちはだかる。 けれど、其処は子供。意地悪をする様に、階段を昇っていくぴーたーぱんに亘がにやりと笑った。 「リリさん、このまま上がりますよ!」 「ええ、ティアリア様、月鍵様、参りましょう!」 ぱたぱたと階段を駆け上がる。何時もなら苦にもならないそれは小さな体では重労働で。甘くて美味しくて可愛くて素敵な一品(ステマ)を手にして走るリリの姿は……その、なんというか、不思議なものだ。 チョコヽ(ONO)ノはちょっと大人な味わいなのだ。 鬼ごっこで捕まえようとするたびに悪戯っ子はその手からスカッと離れてしまう。屋上の扉を開いたぴーたーぱんの脚が瞬時に止まる。 「ふふっ……さいしゅうへいきおかしのやま!」 飛びつこうとした亘の手を慌てて掻い潜ったピーターパンはお菓子の山に飛び込んで。 「あら……」 じたじたと走り去ってしまった。 ●ほんぶ 「ふむ、此方に向かって来ている、と」 「ええ、そういうことなの」 ピーターパンを追いかける学園探索組からの連絡にリオンは頷いた。慌てて本部へと飛んできた世恋と本部を探索するリオンと隆明。 超直観を駆使してあちらこちらを見回るリオンはやはり軍師であった。一つ一つの手掛かりを積み重ねて真実を掴みとる。探偵と言うより、刑事向きですかね。 ぱたぱたと手を振り回す世恋の頭を撫でて楽しそうな隆明。少し前まで自分の拳がぷにぷにである現実に悲しみを抱いていたがそれはそれ。世恋が来たら愛でると決めていたのだ。 「うわぁお、幼児化して違和感がないってすげぇな世恋……だが可愛いからよしとしよう!」 なでなでなで。唇を尖らせた世恋が下からじっと見つめている。違和感あるもん、と言う言葉にリオンが噴き出した。 「なんだかんだ言って楽しそうな世恋可愛いよ、大人アピールする世恋可愛いよ世恋!」 なでなでなで。大人だもん、大人だもん。アピールにそうだな、月鍵と笑いを堪えるリオン。 「ふぅ、危うく新たな世界への扉が開いちまいそうだ……恐ろしい幼女!」 ――どんな扉ですか!? 普段の世恋のが好みだと告げたリオンに可愛いよ可愛いよと撫でまわす隆明。ロリコン御用達ですか! 撫でまわしている手をぺしぺしと叩き「大人です」と怒る世恋の肩をリオンはぽん、と叩いた。いやはや、全く。ロリコンは恐ろしいですね。 「いや、ほら、俺ロリコンじゃないし? ちょっと危なかったけど踏みとどまったし?」 そういいながら三人は一緒に歩きまわる。そのうち走る等をすると体が軽い事が利点だとリオンは頷いた。 背が縮むと高い場所が見えなくて不便だ。だが、歩幅が小さくなる代わりに行動力は上がるかもしれない。 的確に利点などを探し続けるリオンと愛で続ける隆明。リオンの方針は操作を全て世恋の直感に任せると言う物だった。夢見がち乙女チックフォーチュナに任せてしまっては日が暮れてしまうと思うのだが……。 「さて、そろそろだな」 隆明がおいでおいで、と呼ぶのはアークが誇る鉄壁ブリーフィングルーム。そこに揃えた甘いもの。つまりは『ぴーたーぱん』のおびき寄せだ。 商店街で椿や糾華、瑠琵の買ってきたぬいぐるみも常備。学園で鬼ごっこをした『ぴーたーぱん』は確かに疲れている事だろう。 息を潜めて今か今かとピーターパンが現れるのを待っている隆明はしっかりと暴徒鎮圧用ワイヤーガン等と言う物騒なものを握りしめていた。カップケーキにチョコレート。甘い物の臭いが漂うブリーフィングルームは異様な空気に包まれている。 スタイリッシュ避けができず、幼くなってしまった事から速攻戻りたいと思う隆明君6歳と冷静に受け止めて利点を探すリオンさん5歳。不思議な組み合わせの二人が懸命に待っている所――ぎい、と扉が開く。 『アーク本部に追い詰めました! ターゲットそっちに向かいます!』 などと言う亘からの通信にぐ、と物騒なワイヤーガンを握りしめ今か今かと待つ隆明。 ぎい、と扉が開いたと同時、ワイヤーガンから網が発射され―― 「きゃあ!?」 「え、な、何じゃ!?」 かかったのはなんと商店街組。辛うじて危ないわと避けたのはヤクザの勘――ではなく野生の勘か何かであろうか。十三代目、5歳が慌てて糾華と瑠琵を起こすその隙間、ぴょんと飛び込んだピーターパンに向かって走り込んできた亘が手を伸ばす。 続いて入ってきたリリがお菓子を揺らし、其れに目を奪われたピーターパンをティアリアがキャッチした。 「こら、もう悪戯しちゃめっですよ?」 「あかん子やねえ。あ、あの店の鯛焼きとか大判焼き美味しかった!」 おすそ分け、と冷めてしまった鯛焼きをピーターパンへと手渡せば、嬉しそうに小さな口で咥えこむ。もう逃げる意思はないのか、優しいお姉さんたち(今は子供)の腕の中でぴーたーぱんはお菓子を食べるのみ。 「うふふ、羽、綺麗ね」 ぎゅ、と手を握った糾華が羨ましそうに言うのに続き、悪戯は駄目よ、とティアリアが頭を撫でた。 どうせなら公園や学校でかくれんぼなどをして遊びたいけれど、そうしてるうちに日が暮れてしまうだろうから。このブリーフィングルームであれば時間はあるかな、と時計を視てぼんやりとフォーチュナは呟く。 「のぅ、悪戯は楽しいが一人では寂しかったじゃろう? わらわたちと遊ぼうではないか」 可愛い女の子達だとおもちゃ屋が持たせてくれたいるかや(´・ω・`)の人形を指差す瑠琵に瞳を輝かせて羽を揺らすピーターパン。 ブリーフィングルームだからといっても油断は禁物だと逃げる事に気を使ってブリーフィングルームの扉はしっかりと閉められていた。 「あとは……そうね、お姉様達を待ちましょうね」 「じゃあ戻る前に、記念写真を」 如何ですか、と聞く亘に折角の記念だと満場一致で写真を撮る事に決定した。撮影者は実は先ほどからずっとブリーフィングルームに居たじいじこと狩生さんにお任せして。 「後で皆に見せたいものね?」 四歳になれるなんて凄い経験じゃない、と笑う糾華に楽しいのうと瑠琵はぴょんと跳ねた。 五歳の自分から見ればきっと周りのみんなも小さい筈、と思って見回した時あまり変わりなくて絶望した椿などは『大人っぽいねー』と言われていた高校時代を思い返して、『オトナに戻れば大きくなれる』と考えている。 考えるだけって、タダだものね――? 「それじゃ、いいですか?」 「任せろ、最高の良い顔をしてやる!」 はい、ちーず。普段通りのリオンの隣で開き直って満面のピースサインの隆明。 余談だが、元に戻った際に亘が世恋に言おうとした「あれ? 縮みました」という発言は椿の方へブーメランしたとか、してないだとか……。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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