●進化 冬の海辺、寒風吹きすさぶ中開いたディメンションホール。そこから這い出して来たのは1匹の黒いトカゲだった。尻尾まで含めて体長およそ2メートルといった所だろうか? 全身が真っ黒で、そのギョロリとした眼だけが白い、そんなトカゲだ。 寒さに身を縮めながらトカゲは砂の上を這いまわる。 何かを探しているのか、或いは単なる好奇心故か、トカゲはキョロキョロと周囲を見回しながら歩き回るのだった。やがて、トカゲが辿り着いたのは荒波の打ち付ける海辺。岩を削るような勢いで押し寄せる海水をトカゲは全身で浴びる。 寒さ故か……。 トカゲの体に張り付いた海水が、時間と共に氷つき始めた。 「…………」 波打ち際からトカゲが離れる。 足跡を砂に残しながら、ゆっくりと……。 後に残ったのは、氷で出来た道だった。トカゲの通った後には、いつの間にか氷が張っていたのだ。 先ほどまでの鈍重な動きと打って変って、トカゲは素早く砂浜を駆け抜ける。 それから。 背後に開いたDホールから、もう1匹、同じトカゲが姿を現した……。 ●適応するトカゲ 「トカゲの正体は分からない。アザ―バイドだということだけは、ハッキリしているけど」 困ったように仲間の顔を見渡して『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はそう言った。モニターに映るのは、氷の道を作りながら歩く、トカゲの姿だった。 全身真っ黒だった筈のトカゲの皮膚には、薄く氷のラインが通っている。 「恐らく、その場の環境や受けた攻撃に適応し、進化する生物だと思う。今は、寒風と海水を受けて、氷に耐性を持っているみたい」 つまり、今現在のトカゲからは氷を使った攻撃が予測される。 「成体になるまで、あと2回ほど脱皮して、進化するみたい。進化後にどういった姿になるかは分からないけど……。こっちの対処方法次第ね。2匹目もいるから気をつけて」 2匹目のトカゲは、まだ何に対しても耐性を持っていないようである。 相手は言葉の通じないトカゲだ。このまま放置しておくと、通りすがりの一般人が被害に遭うかもしれない。 なるべく早い対処が必要になるだろう。 「対処方法は任せるから。なるべく早く、始末してね。Dホールの破壊も忘れないで」 それじゃァ、よろしく。 そう言って、イヴはモニターを消す。 「上手く進化させてみるのも、楽しいかもね」 なんて、悪戯っぽくそう言った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:病み月 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月28日(木)22:52 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●未知数 浜辺。冷たい水が寄せては返す。寒風吹きすさぶ中、黒いトカゲが2匹、這いまわる。時折足を止めては、辺りを見渡す。何かしら、観察しているのだろう。 現状に適応し、姿を変える。それがトカゲ達の特徴であった。すでに片方は、寒さに対して耐性を得ている。見知らぬ場所に出て困惑しているのだろう。砂浜を歩きまわるトカゲを見降ろす影が8つ。アーク所属のリベリスタ達である。 「脱皮で進化する敵か。進化する方向をこちらで決められるのが救いなのか、迂闊に進化させたら手が付けられなくなる厄介さなのか、判断に悩むところだね」 やれやれ、と眼鏡の位置を直しながら四条・理央(BNE000319)がそう呟いた。周囲に人気がないのを確認し、陣地を展開する用意を始める。 「……2体を近くの戦場に引き摺りこまないといけませんね」 トカゲはそれぞれ、好き勝手に動きまわっている。一応、見える範囲にはいるものの、同時攻撃に巻きこめるかどうか、となると少し厳しいかもしれない。 さて、と一言『大雪崩霧姫』鈴宮・慧架(BNE000666)が地面を蹴って、砂浜に飛び降りた。 「なかなか柔軟性のある方のようですね」 慧架に続いて『天邪鬼』芝谷 佳乃(BNE004299)が海岸へ。刀を引き抜き、向かう先は氷耐性を持つ方のトカゲ。足音に気付いたトカゲが2匹、慧架と佳乃の方向へ頭を向ける。こちらに来て初めて目にする二足歩行の生き物だ。興味を持ったのか、ゆっくりと両方のトカゲが方向転換。 だが……。 「おっと……。絶対にそっちには行かせないっ」 2人に続き、氷トカゲ(トカゲA)の前に、鷲峰・クロト(BNE004319)が立ち塞がった。更に、残りのメンバーも海辺へ。こちらの世界に慣れていないフェリエばかりで、皆、海を物珍しそうにチラチラと見ている。 「これが、うみ……。素晴らしいね。ゆっくり眺めていたいけど」 まずは任務が優先だ。『金雀枝』ヘンリエッタ・マリア(BNE004330)は、クロトへ手を伸ばす。クロトの周囲に、不可視のバリアが展開された。 「そんじゃアークでの初めてのお仕事、一丁頑張ってみますかねっ」 太刀を引き抜き、クロトは一言、そう言った。 ●進化するトカゲ 「ここがボトムの友の世界……。なんて素敵な場所なんだろうか!」 紫の髪を潮風に揺らし『悪芽の狩り手』メッシュ・フローネル(BNE004331)が海を眺める。初めて見る海がお気に召したのだろう。だが、仕事を忘れたわけではないようだ。彼女はトカゲから理央を隠すように立っている。 「これは……トカゲというのですね?」 耐性を持たないトカゲ(トカゲB)を見つめる『胡蝶蘭』アフロディーテ・ファレノプシス(BNE004354)。弓に矢を番え、トカゲBに向ける。殺気でも感じたのか、トカゲBは砂を蹴散らし、矢の射線上から逃れるように走る。ルナの視線がトカゲを追う。彼女が矢を放つ瞬間、彼女の傍にトンボのような羽を生やした妖精が現れる。矢と共に放たれる光球が、トカゲを襲う。 「……ァァァァァ!」 低い唸り声。トカゲはその太い尾を豪快に振り回す。光球を薙ぎ払い、地面を蹴飛ばし飛び上がった。牙を剥き、アフロディーテに襲いかかるトカゲ。 「お姉ちゃんに任せなさい! 絶対、ゼーッタイ、大丈夫だから!」 アフロディーテを庇うように前へ出たのは『月奏』ルナ・グランツ(BNE004339)だ。トカゲの牙が、ルナの肩に突き刺さる。血飛沫が舞い、砂を赤く染めた。ショートボウを構え、トカゲに向ける。光球が瞬き、トカゲの腹を撃ち抜いた……。 「ゲートも割と近くにあるけど……」 トカゲBの動向を観察しながら、理央は呟く。現在、20数メートル程の距離を開け、戦場は2分されている。トカゲAの相手は、慧架、佳乃、クロトの3人。一方、こちらは主に後衛向きのメンバーが5人。トカゲBがゲートの傍にいるのは、まだ寒さに耐性を得ていないからだろうか。 「まずは、最終段階まで進化させるとしようか」 エル・レイと呼ばれる光球を作り出す理央。逃げ回るトカゲに向け、彼女はそれを撃ち込んだ。 「うぅっ!」 呻き声をあげたのは、慧架だった。トカゲAが放った冷気が、彼女の体を凍らせていく。 「念には念をいれたつもりでしたが……」 一瞬、トカゲの動きが止まったのを見て、突き進んだ結果がこれだ。トカゲBよりはこの場に適応しているようで、存外動きが素早いのだ。慧架の体が氷に包まれる。 動きの止まった慧架に襲いかかるトカゲ。トカゲの牙が慧架に突き刺さる直前、背後から飛んできた不可視の刃が、トカゲの胴を切り裂いた。 「せっかくですし、心躍るような戦いにいたしましょう」 刀を鞘に納め、佳乃は言う。疾風居合い斬り。真空の刃を受け、トカゲは数度、地面を跳ねた。 「人畜無害だったら、生け捕りにして見せ物にしてもよかったんだけどなっ」 しかし、そういうわけにはいかない。倒れたトカゲ目がけ、クロトが駆け寄る。クロトが刀を振り抜いた。トカゲの胴が、真っ二つに裂ける。 「……っあ!?」 あまりにも軽い手応えに、思わず目を見開くクロト。次の瞬間、クロトの体が大きく背後に弾き飛ばされた。地面を跳ねて、砂浜に転がる。 「なんだ?」 クロトを弾き飛ばしたのは、黒いトカゲだ。だが、先ほどまでとは様子が違う。2本脚で地面に立って、鋭い爪を生やして長い腕をゆらゆらと揺らしている。大きなトカゲそのものだった先ほどまでの姿とは違う。2足歩行、武器や体術を駆使する相手と戦い、トカゲは人型に進化したのだろう。ピシピシと、氷がトカゲの体を包む。 「興味深いものです」 スルリ、と刀を鞘から抜いて。 砂を蹴散らし、前へ出たのは佳乃であった……。佳乃とトカゲの視線が交錯する。爬虫類らしい無感情な眼。人型に進化したトカゲが、にやりと一瞬、笑った気がした……。 ズルリ、とトカゲBの皮膚が剥がれる。中から現れたのは、一回りほど大きく成長した黒いトカゲ。その形状は、何処となくカメレオンに類似している。ギョロリと大きな目玉を動かし、周囲の様子を窺うトカゲ。5対1という圧倒的に不利な状況に対応するためだろうか。トカゲは広範囲を視認できる眼を得た。 「オレが守ると決めたから……。下がって」 理央を庇うように前へ出るヘンリエッタ。不可視のバリアが、理央を被う。 次の瞬間、トカゲが大きく口を開いた。牙の並んだ口の中から、無数の光球が放たれる。光球は、細い光の糸でトカゲの喉に繋がっていた。光球を舌のように自在に振り回す。 「出来れば平和的解決法が出来るといいぜ……」 光球と光球がぶつかり、衝撃波を巻き起こす。メッシュは、衝撃波に押され、砂浜の上に倒れ込んだ。メッシュだけではない、アフロディーテもルナもトカゲの放った光球に撃たれ、地面を転がっていく。のそり、と歩くトカゲがルナに近づいていく。 「やむを得ない……」 立ち上がったメッシュが、トカゲの前に踊り出た。彼女の傍を舞い踊る妖精・フィアキィ。周囲の温度が急速に冷えて行く。ピシリと、トカゲの体が凍りつく。 「ひ、光よ、貫け!」 ルナが叫ぶ。放たれる光球が、凍りついたトカゲを撃ち抜く。宙を舞うトカゲ目がけて、矢を向けるルナ。神秘属性の攻撃が、効きにくくなっているようだ。 「弓の扱いは苦手なんだけど、皆を守る為だもん。使いこなしてみせるよ」 ルナが矢を撃つと同時に、アフロディーテもまた矢を射出していた。ミステラン同士ならば、考えている事がある程度分かる、という特性を持つ故の、スムーズな連携攻撃。 ルナの矢は、トカゲの胴を撃ち抜いた。一方、アフロディーテの放った矢は、正確にトカゲの片目を射ぬく。声にならない悲鳴を上げて、トカゲは地面を転がった。片目からはだくだくと血が流れている。 「このような固い敵でも眼は柔らかいというのは定石……」 アフロディーテがそう呟いた。 「待って!」 そう叫んだのは、理央だった。地面に転がったトカゲBの体が、僅かに蠢く。カメレオンに似た外皮を脱いで、最終進化したトカゲが立ち上がった。 そこに居たのは、手足のない巨大な蛇だった。長さは4メートルを超えるだろう。どういうわけか、阿頭が2つあるようだ。それぞれの頭に、目は1つずつ。そのうち片方は、潰れている。それから体には無数の穴が空いているのが分かる。穴から漏れるのは僅かな光。良く見るとその光は、矢のような形状になっている。 射出された光の矢が、ルナとアフロディーテの体を撃ち抜く。飛び散る鮮血。2人は、その場に倒れ込んだ。倒れた2人を庇うようにメッシュが動く。 「範囲攻撃と、複数相手に渡り合える形状ってわけだね。それで頭が2つか」 「そろそろ担当を後退かな」 じっと敵の様子を観察する理央。その傍らでは、ヘンリエッタが弓に矢を番えている。理央は、そっと懐から式符を取り出した……。 「う……っく。やはり敵の攻撃をこの身に受けてこそ、戦いというものですわね」 肩と腹からだうだくと血を流す佳乃。そんな彼女の眼の前で、トカゲは自身の鋭い爪を、自分の頭に突き刺した。 「っは!?」 驚愕に目を見開く佳乃。咄嗟に刀を持ち上げ、トカゲに向ける。トカゲは、爪で自分の体を引き裂いた。皮の中から出て来たのは、身体を黒い鎧のような外殻で覆ったトカゲであった。鋭い棘と、大きな体。外殻の下から、冷気が漏れる。 「まぁ、がんばってぶっ叩くしかないっ!」 トカゲの背後から、クロトが飛び出す。太刀の切っ先をトカゲに向ける。瞬間、彼の体が二重にぶれた。2本の刀が、トカゲを襲う。首元に2刀を浴びながらも、トカゲはその両腕を豪快に振り回した。クロトの胴に、爪が突き刺さる。ギシ、と骨の軋む音がする。砂浜に叩きつけられたクロトに追撃を加えるべく、トカゲが駆け出す。 顎を開き、鋭い牙を剥き出しにして、トカゲがクロトの体を掴んだ。 トカゲの牙が、突き刺さる。その直前……。 「進化と言うのは恐ろしいものですが肯定すべきことなんですよね」 トカゲの顎を、慧架が掴む。逆の手で胴を持ち上げ、足払いをかける。浮いたトカゲの体を、そのまま力一杯、地面に叩きつけた。衝撃、振動、小さなクレーターの中に倒れるトカゲが1匹。パン、と手を払って慧架は下がる。 その時、慧架の傍を一羽の鴉が通り過ぎた。鴉は真っすぐ、トカゲAに襲いかかる。 「これは……?」 佳乃とクロトの傷口を、淡い燐光が包み込む。2人の傷を癒しているのは、理央だった。 「交代、お願いするよ。一気に勝負を決めにいこう」 「こっちのトカゲは、硬く速く進化したいみたいだね」 じわ、っと理央の足元から影が伸びる。影は砂浜を這い、トカゲに迫る。不吉なオーラを撒き散らす影だ。トカゲは、咄嗟に背後へ下がってそれを回避しようとする。 それを阻んだのは、ヘンリエッタだ。光球を撃ち出し背後からトカゲを叩く。 「いつかは、オレも彼らのような一人前のリベリスタになりたい」 ヘンリエッタの視線の先には、トカゲBの方へと向かう3人の姿。血に塗れた彼らの姿を見て、小さく感嘆の声を漏らす。 ヘンリエッタに続き、メッシュ、ルナ、アフロディーテがトカゲを囲むように展開、矢を構える。 「どうか、帰ってくれ」 メッシュは言う。だが、トカゲには言葉が通じていないのだろう。怒りに満ちた目を、彼女達に向けて、その太い尾で地面を叩いた。 「解ってくれないか……。戦いって、辛いんだね」 メッシュの隣に、妖精が現れた。妖精の振り撒く冷気が、トカゲを襲う。しかし、トカゲは冷気をものともせずに、尾を振り回した。ぶん、と空気を切り裂く音がする。 「う……っぐ!?」 トカゲの尾を受け、ヘンリエッタ、メッシュ、ルナの3人が吹き飛ばされる。ピシ、と彼女たちの体を氷が覆う。 「っく。大丈夫、皆? もう少しだよ。だから頑張ろう!」 素早く起き上がり、光球を撃ち出すルナ。 「……そこです!」 ルナに続き、アフロディーテも。 トカゲに襲いかかる2つの光球。トカゲは、鋭い爪を振り回し、光球を掻き消した。唾液を振りまきながら、トカゲは着地。素早く方向転換し、理央へ飛びかかる。鋭い爪と牙。重厚な印象を受ける外見とは裏腹に、その動きは非常に軽い。 「……」 鋭い爪を、理央の喉へと突き出すトカゲ。しかし、爪が突き刺さる、その直前、理央の影がトカゲを捉えた。足元から腰、胴、胸、と影がトカゲを飲み込んでいく。 「ガァァァァァァ……」 低い唸り声を残し、トカゲは影に飲まれて消えた。 ●そして残った1体は……。 「げはーっ、やーらーれーたーっ! ……なーんて、うっそっだっよっ!」 無数の光の矢に貫かれ、クロトが地面に倒れ込んだ。しかし、クロトはゆっくりと起き上がる。体中から血を流しながらも、クロトはふらりと立ち上がる。今にも途切れそうな意識を繋ぎとめ、刀を引き抜く。クロトの刀は、2頭の片方を貫いていた。 ダラン、とトカゲの首が地面に垂れる。それと同時に、クロトもまた、地面に膝を付いた。彼の足元の砂が真っ赤に染まっていく。致死量に迫る大量出血。そんなクロトを庇うように、佳乃と慧架がトカゲに切り掛かる。 「はぁぁぁぁ!」 大上段から、刀を振り下ろす佳乃。オーラが佳乃の刀を包み込んだ。するり、と流れるように移動しそれを回避するトカゲ。刀が地面にぶつかって、大量の砂を巻き上げる。 「心躍りますね」 にたり、と佳乃が笑う。視線の先には、砂を蹴散らし、トカゲに迫る慧架の姿。 炎を纏った彼女の拳が、トカゲの胴に突き刺さった。じゅう、と肉の焦げる音がする。 「一気に攻め立てていきましょう」 体を反転、拳を引いて次の攻撃に備える慧架。 その時である。 反対側の戦場で、トカゲAが息絶えたのは……。理央の影が引いた後、残っていたのは巨大なトカゲの遺体だった。それを目にしたトカゲBの動きが、ピタリと止まった。 「…………ッシ」 一瞬の沈黙の後、トカゲBはくるりと反転。体に空いた無数の穴から、大量の光矢を射出する。地面を転がりそれを回避する慧架。 その隙に、トカゲはDホールに飛び込み、姿を消した。 仲間がやられたのを見て、危険を感じたのだろう。仲間の死よりも、身の安全。血痕を残し、トカゲは元の世界へ帰っていった。 慧架はトカゲが返っていったのを確認し、はぁ、と大きく溜め息を零すのだった。 「これでよし、っと」 Dホールを破壊し、メッシュはふう、と汗を拭う。2体来たトカゲのうち、片方は死に、もう片方は元の世界へ逃走。戦果は上々と言えるだろう。 「ラ・ル・カーナでも似たような固体はいましたが」 なんて呟くアフロディーテ。大きな布で、死んだトカゲを覆い隠している。 「大きい水溜り! これが海って言うんだね!」 アフロディーテと並んで、年長者である筈のルナが海を見ながら盛大にはしゃぐ。そんな彼女の傍らでは、ヘンリエッタが海水に手を浸して、悦に入っていた。 「ふふ、うみは本当にしょっぱいんだね。本に書いてあった通りだ」 なんて、海水に浸した指先を舐めて、笑う。 この世界に来たばかりの彼女達にとって、海やこの世界のものは全て、興味深いものであるらしい。 そんな彼女達を、冷たい潮風は優しく撫でて行くのであった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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