● 山奥の廃村。 昔は鍛冶で栄えた鉱山村だったものの、事故が続出し、鉱山は閉鎖。 仕事が鉱山での作業のみに集中していたため、人が次々と出て行った村は、当然の如く誰も住まない場所と化した。 だが、それでも過去の栄華は僅かな人の興味を惹く。 人々はどのようにして生活していたのか? 鉱山の中では、どのような作業形態をとっていたのか? 興味を持つ人間にとっては、この廃村は美しい宝石にも勝る魅力を持った場所。 「なんてナレーションしてみたのは良いが、これは確かに面白い場所だ」 片手にメモ帳を携え、首にはカメラをぶら下げた男が、目を輝かせて廃村を見渡していく。 如何に人がいなくなったとはいえ、当時の生活はこうして見て回るだけでも推し量れるというものだ。 「ん? ……なんだ?」 ふと、男が何かに気付く。 目に留まったのはボロボロながらも一際大きな鍛冶場。恐らくは製鉄所のようなものだろうか? いや、男の視線に映っているのはその鍛冶場ではない。 『存分に戦いたい』 『存分に力を発揮したい』 その時、『ソレ』は静かにそう言った。 刀と槍を携えた、武芸の得意そうな武者。 巨大な盾を構えた、いかにもパワーファイター風の巨人。 鉄弓を片手に、男の後ろにあった的を鋭く射抜く狩人。 「ええと……人、いたのか? にしちゃ、なんか妙な格好をしているが」 男は知らない。 それが、エリューションと呼ばれる存在であることを。 男は直後に知る。 自身が、彼等の餌食となることを。 ● 「朽ちた山村の遺物……なんでしょうか?」 エリューション達の手にした武具は、恐らく過去に鉱山村で作られたものなのだろうと『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は考える。 廃村に姿を現したエリューションの数は9体。 武者、巨人、狩人が1体ずつで編成されたチームが3つ存在するようだ。 ならば、普通に倒せば良いのかと問われれば、そう簡単に倒させてくれるような存在でもないらしい。 武者は単体攻撃に長け、最も威力の高い攻撃を放つ。 巨人は味方を庇う事を得意とし、鈍重ではあるが他の2体を守り続ける盾となる。 そして狩人は的を性格に射抜く射撃能力と素早さを有し、その命中力を活かして火矢や毒矢をばら撒く援護役。 そんな編成で構成されたチームが3つもあるのだから、苦戦する事は間違いない。 しかも戦場となる廃村は、少なからずの人間が興味を持って訪れる場所なのだ。 「真新しい戦いの傷跡が残っていれば、何かしらの問題に発展する可能性もありますね」 戦いの最中に人が訪れる事はないものの、戦いの傷跡が激しく残れば、『ここで最近誰かが戦ったのか?』という疑問を持つ人間も現われるだろうと和泉は言う。 神秘は、隠匿されなければならない。 だが好奇心の旺盛な人間ならば、もしかするとその『戦いの傷跡』から色々調べ上げて何かに辿り着く可能性だってある。 「ということなので、なるべく村に傷跡を残さないように戦ってください」 厄介な敵を倒さなければならない。 加えて、あまり目立つ傷を村に残すなという2つの難しい注文。 果たして集まったリベリスタ達は、その両方を無事にこなす事は出来るだろうか――? |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月24日(日)23:30 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●索敵から開戦へ 「ふむ……なるほど、確かに『ある程度』ではあるがのぅ」 戦場となるであろう廃村を眼下に収められる場から、双眼鏡で村を眺めていた『破壊の魔女』シェリー・D・モーガン(BNE003862)はそう呟いた。 言葉とは時に確実なものもある中で、一方では曖昧さを有したものも存在する。 ある程度も、また然り。 「どれほどの距離なのかね?」 隣に立っていた『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)が彼女に問う。 その答は真っ先に敵に近付こうとする彼にとっても、そしてその後を追う形で攻撃に参加する他のリベリスタ達にとっても重要な問題だ。 敵の数は9体。 3体ずつがチームを組み、『ある程度』離れた位置で布陣していると和泉は告げた。 「近かったら、休む暇はなさそうだな」 ならばその『ある程度』がどれほどのものかで、戦いは変化するだろうと考える『鈍色』亞門 一戒(BNE004219)。 5mや10mでも、ある程度。 50mや100mでも、ある程度。 それほどまでに『ある程度』とは曖昧で、その個人の主観に全てが委ねられている。 「およそ30mといったところかのぅ」 そしてシェリーが答えた距離は、言葉の通りだった。 「ある程度ではあるようですね」 「とすると、戦いが始まったら全員を相手にする形を想定したほうが良いのかな」 言葉通りに『ある程度』だと『絶対鉄壁のヘクス』ヘクス・ピヨン(BNE002689)が頷く一方、『ナルシス天使』平等 愛(BNE003951)は全てのエリューションが一気に押し寄せてくる可能性を脳裏に浮かべた。 この戦いに、どうやらインターバルは存在しないらしい。 どちらが先に倒れるか――逆に言えば、最後まで倒れなかった方が勝つ。 「持久戦ならボクの得意分野だよ。まかせてよ! 超まかせてよ!」 とドンと胸を張る愛ではあるが、彼の格好は季節的に聊か問題があった。 「と言うか寒いよ! 超寒いよ! 水着だから寒い!」 ガタガタと震える彼の格好は、この真冬にはまず見る事がない水着だったのである。 戦いに勝ち残る以上に、風邪を引かない事も彼にとっては勝利条件なのかもしれない。 「上着、ないんですか?」 息を吐けば白くなるほどに肌寒い空気の中、そう尋ねる『娘一徹』稲葉・徹子(BNE004110)の問いに「ない」とキッパリハッキリ答える愛。 ともすれば、寒さに耐えることからすでに愛の戦いは始まっているのだろう。 「では、行くとしようかの。愛様が風邪を引かぬうちにな」 ならば早めに勝利してしまおうと『不誉れの弓』那須野・与市(BNE002759)が進軍を促す。 武者、巨人、狩人で構成されたエリューション達の部隊。 中でも特に狩人に対して、自身が弓を扱う事もあってか与市の興味と関心はそこに注がれている。 (その腕をみて多少はみたいなとは思っているのじゃが……。どうせわしの矢とは比べ物にならんじゃろうし……) 凄まじくネガティブな思考ではあるが、果たして弓の腕前はどちらの方が上なのだろうか? 「はぁ、どうせこの矢はあたらないのじゃ」 それでも普通の敵にならば当てていけるだけの実力を持つ与市ではあるものの、狩人はスピードに長けているため、その答は『やってみなければわからない』が正解か。 「そう気負わないでいこうよ、当たる時は当たるんだからさ」 励ます『死刑人』双樹 沙羅(BNE004205)の言葉に「そうだと良いがのぅ」と彼女が答えたところで、先陣を切るべくウラジミールが真っ先に移動を開始した。 「僅かではあるが先行させてもらう。後は諸君の活躍に期待する」 彼は言った。 戦いは1人だけで行うものではない。仲間と協力し合い、初めて勝利が得られるのだと。 それは今から戦うエリューションとて同じ。 戦いに求められるのは、個々の強さだけではない。 仲間との連携と、組み立てた戦略こそが真にこの戦いを左右するのだから――。 ● 「任務を開始する」 先行するウラジミールは結界を展開しつつ、側面から敵を突こうと廃村を進んでいく。 敵が30mの間隔を開けて布陣しているのならば、「何も真正面から攻めることもないのぅ」と言うのはシェリーの提案だ。 「レーションや水を補給する暇はないようだが、判断としては間違いではない」 頷いたウラジミールや仲間達にとって、その提案は理にかなったもの。 そして先を行く彼の鷹の目が、端に布陣するエリューションの部隊をしっかりと捉え、真っ直ぐにその場所へと足を運ばせる。 『敵……か?』 『撃て、我等の武を見せるのだ』 しばらくの後、真っ先に姿を見せたウラジミールをエリューション達も視界に収め、狩人の放つ火矢が鏑矢となった。 鎧兜に身を包んだ武者は、空気をも貫くような槍で遠方から彼を貫き、軽々に接近戦を仕掛けようとはしていない。 「少しは知性があるようじゃ」 すぐさま追いついてきた与市は、矢を撃ち返しながらも『盾』である巨人を中心としたエリューション達の戦略に知性を感じている。 否、それは知性と言えるだろうか? 「どっちかっていうと、戦いの本能じゃないか?」 沙羅の言うとおり、それは戦いを求める存在であるが故の本能であるのかもしれない。 戦端は開かれた。 ウラジミールはこの時、多少は下がって相手を引っ張る事で自身の受ける傷を減らす選択肢もあったが、 「残念ながら、早々やられてやれるほどに、ヤワではないのだよ」 と自身で言うほどに彼は頑丈だ。 巨人が全ての攻撃を簡単に弾く堅牢さを誇るのと同様に、彼もその役割を担えるだけの実力がある。 「後ろはボクに任せてよ! ボクがいれば安心安全、だから大丈夫!」 加えて後ろには真冬に寒過ぎる格好である水着姿で、傷を癒す役目を担う愛が控えてもいるのだから、継戦においてはエリューション達すらも上回る事だろう。 「残念ながらヘクスと直接戦う事はないんでしょうが……せいぜい戦うと良いんじゃないですか」 その愛を庇いながら、ヘクスは戦い踊るエリューション達の戦いぶりを見物するような雰囲気で眺めていた。 連携しての攻撃ならば、確かにこのエリューション達は強いといえよう。 如何にこちらが戦略を持って戦いに臨んだとしても、何らかの形でその穴を貫いてくるかもしれない。そう思えるほどに、肌で感じる強さは本物だ。 だからこそ、面白い。 「ヘクスは、そう言う人のプライドをぽっきり折るのが好きなんですよ」 そんな存在の猛攻を防ぎきった時、どれほどの甘美な感覚に酔いしれる事が出来るのか。 「さぁ、砕いて見せて下さい。この絶対鉄壁を!!」 鉄壁を自負する守りこそ、ヘクスの武器。彼女は何時でもその猛攻を受け止めるつもりで、要となる愛の守護を受け持つ。 だが、ある意味では危険な挑発だったのかもしれない。 『ならば、砕いてみせよう!』 まずは最前列に立つウラジミールを突破しなければならないが、エリューション達はそのヘクスにも狙いを定めたのだ。 彼が簡単に突破されるような事はないものの、されてしまえば集中砲火を喰らう可能性だってある。 「ボクだけを攻撃してこいよ、まだ非力だけどボクに手加減はいらないよ。中途半端な力で舐められたくないし、それに強者を越えて強くならないと意味がないから!!」 だがそんな狙いは付けさせないと挑発を続けたのは、沙羅だ。 エリューション達には、越えたいと思うだけの強さがある。 ましてや武人の思念が集まったE・フォースなのだから、真っ向から勝負を仕掛けるだけでも、それが強さとなるはずだ。 『面白い。我々は存分に戦いたいのだ。己が誇る武器があるなら、強さがあるなら、それを見せてみよ』 武士の放った言葉は、そんな沙羅に全力で戦うだけの実力があると感じたからこそ出た言葉。 僅かに打ち合っただけでも、リベリスタ達の『武力』は素晴らしいとエリューション達は感じていたのだろう。 「そう。その姿は正しい。お前達は武器だ。他者の作品ではあるが、そうやって己の在り方を捉えた獲物というものは本当に美しい」 その『在り方』を認めた一戒にとって、エリューション達の戦う姿は「美しい」の一言に尽きた。 武器は戦うための道具。 戦士は戦うための存在。 それらが最も眩く輝くのは、戦いの中でしかありえない。 「でも、相手を見ずに刃を向ける人は、徹子は好きではありません。断固として打ち倒します!」 しかしその武を力無き者にまで振るうエリューション達は、徹子にとってはとても許される存在ではなかったようだ。 厄介な狩人を相手取り、彼女の木刀が勢い良くその『面』を打つ。 「武力を見せたいならば、見せられる相手との戦いで見せるべきです!」 『お前達は、その『見せられる相手』なのだろう。ならば我等をもっと楽しませよ!』 徹子自身も武を極めようとするが故に、その『在り方』には信念がある。 横槍を入れた武者の斬撃を木刀で受け流した彼女は、武者の問いには答えずに剣を振るう。 戦う力を持たない者に対して『武力』を行使するのを嫌う徹子。 そして一方ではそれも『在り方』だと、『武器』の宿命だと認める一戒。 「もっと見せておくれ、お前達の生きたいという願い。殺したいと願う力を」 『良かろう、だが貴様も……手は抜くなよ!』 会話と共に攻撃を交錯させた武者と一戒の頬が、少しだけ緩んだ。 互いに全力を尽くしても構わない相手であり、倒されたとしてもそこに悔いはない。 「君達の輝きを、しかと見せてもらおう!」 そして一戒はエリューション達に告げた。 己の在り方を存分に示せと。 ――その強さを持って、戦えと。 雨霰のように狩人の矢が飛ぶ。 同様にリベリスタ達の攻撃も苛烈であり、巨人に守られずに単騎で戦っていた狩人がそのまま散っていく。 後方を見やれば、残る6体も勢いを付けて戦場へと迫ってくる姿が見えた。 「やはり増援はあるか……最後まで気は抜けないのぉ」 まずは武者を庇い続ける巨人を穿てと、シェリーの魔法がその盾の上から巨人を貫く。 「これも当たらないんじゃろうなぁ……」 等とぼやいた与市の矢は、外れるどころか巨人の急所をしっかりと射抜くほどに正確だ。 一方で、問題はあった。 普通に戦うだけならば、双方が全力を、死力を尽くして戦えば良いだけの戦場だっただろう。 「この妾に“破壊するな”などと、窮屈でかなわん……面倒くさい事この上ない!」 だがリベリスタ達には、『廃村に大きな傷を残してはならない』という制約が課せられていたのである。シェリーが「窮屈だ」と、「面倒だ」と感じるのは仕方のない話だ。 そうなれば、攻撃は出来うる限り正確に当てるしかない。 飛び交う攻撃は、防ぐ事を念頭に置くしかない。 「防ぐだけなら、ヘクスにとっては願ったり叶ったりですね。攻撃を防がれた時の顔、中々に良いですよ」 この『防御』という部分にかけては、やはりヘクスは他者とは一線を画していた。 「やー、うん。頼もしい! ボクも頑張らなくちゃね!」 彼女に守られた愛は動き続けた事がウォーミングアップに繋がったのだろう、戦いが始まった当初よりも声に張りも出てきている。 「歌をうたって天使たち!」 水着姿の男の娘が、天使の顔を浮かべて歌う。 「吐息を漏らして大天使!」 その歌声が風に乗って響き、仲間達の傷を癒す。 「このボクの可愛さを永遠にたたえるといいよ! あっはっはっはっは!」 高笑いした愛は、ナルシストらしく自分の世界に浸りきっていた。 『……これもヒトツの武か』 『ある意味では厄介な武でござる』 如何に火力で勝ろうとも、愛の存在がある限りはエリューション達は『決定打』を得る事は難しい。 それほどまでに、ホーリーメイガスの存在は仲間であれば重要であり、敵であれば厄介だ。 「余所見をしている暇があるのかね?」 そしてエリューション達が愛へと視線を移したその隙を、歴戦の軍人であるウラジミールが見逃す事は決してない。 堅牢で攻撃を弾き返す盾も厄介だが、その防御を掻い潜る方法など彼にとっては幾らでも存在するのである。 「残りは5体……いやこれで4体かの。一気に殲滅出来れば楽なものを!」 盾が砕けた直後、間髪を入れずに武者へとありったけの魔力を叩き込んだシェリーが残る敵を見やり、言った。 廃村に傷を残してはいけない以上、地道な攻撃は必須。 戦場に立つリベリスタの中では最も――それ以上に『絶大』な火力を持つ彼女にとっては、自慢の火力を見せ付ける機会は確かに少ない。 だが、だからといって彼女の火力は抑えていてもエリューション達には脅威である事も事実。 『貴様の不可思議な力、相当な武である。その素晴らしさに、敬意を表そう……』 倒れ、消え行く武者もその絶大な火力を認め、満足げな表情を浮かべ逝く。 「うれしい言葉をもらったものじゃ。どれ、どんどんと行くぞ!」 賞賛の言葉に調子付いたのか、シェリーの魔法は見た目にも少し派手さを増したようにも見える。 そんな中で、当たらない当たらないと言いながらも堅実に矢を当てていく者がいた。 『よく当たる矢ではないか……名を聞いておこう』 「わしは与市。……那須野・与市じゃ」 その矢は狩人に勝るとも劣らず。巨人が盾となって武者を庇い続ける一方で、狩人と撃ち合いをしていた与市も、相当なスコアを叩き出している。 飛び交う矢を射った矢で打ち落とし、かつすぐさま放った2発目で狩人を穿つなど、中々には出来ない芸当だ。 「まったく、凄まじい戦いだね。制約が無かったら、もっと楽しかったのに」 そんな戦いを間近に見ながら、傷を付けすぎてはならないという制約がある事を悔やむ沙羅。 「キミ達は楽しいかい? ボクは楽しいよ。戦いを求める同士、戦いの中で死ねたら本望だろ? ボクもそうだしね」 『そうだ、戦士は戦いの中で死ぬ事が本望だ』 同意しあい、沙羅と武者が剣戟を交わす音が戦場に響く。 一合、二合……決して互角ではなく沙羅が押されてはいるものの、大きな傷を受ける事無く打ち合っていられるのは気迫の賜物か。 「君達の憂いが晴れるまで、付き合ってあげる。だからその前に、倒れるわけにはいかない!」 しかしそれでも、小さな傷はどんどん蓄積されていく。 体中を走る痛みに倒れかけながらも、彼は懸命に剣を振るう。 「ボクはまだ負けられない、この世の強者を倒し尽くすまで! だから、君達の前で終わるわけにはいかないんだ!」 「その意気や良し。じゃが無理をする局面ではないぞ」 必死に戦う沙羅に対し、自分達は1人で戦っているのではないと、後方から魔弾を放ったシェリーの注意が飛ぶ。 「そうじゃの、わしの援護も忘れんでくれよ? ……しかし良く当たったもんじゃのぅ」 よろめきながらも沙羅に剣を振り下ろそうとした武者を、与一の弓が射抜く。 「傷ついた皆をしっかりと癒す、そんなボクのオンステージ!」 受けた傷は愛の歌声によって消え、決して誰も倒させない状況を作り上げるリベリスタ達。 「気を抜かずに行きましょう、残り僅かとはいっても、やはり1対1では不利です」 金属を殴打する甲高い音と共に、最後の巨人を吹き飛ばした徹子も、跳ね返ってきた衝撃に少しだけ血を流す。 だが、そんな傷も彼女は全く気にしてはいない。 「武の見せ方を間違えなければ、『武の道を進む者』として認められもしたのでしょうけど……」 それは痛みを耐えるだけの信念に、起因しているのだろうか。 数では勝っていたはずのエリューションを撃退出来るだけの信念こそ、彼女をこの場で活躍させる武器であった事は違いない。 「残りは1つ……盾としてはヘクスのほうが優れていたようですね」 守るべき武者も狩人も失った盾は、最早盾としての機能を無くしたも同然だ。 自分は残った。相手は倒れた。ヘクスと巨人のどちらが上かは、真っ向からぶつかったわけではないのでわからないが、勝った方が優れていたのだとも言えるだろう。 「お前達は私の望むもの、魂の篭った刃だ。しかし、お前達には足りない」 最後の巨人に対し、一戒が告げる。 「本当の振るい手、お前達を最も活かせる者が揃って初めて武器になる」 どれほど良い武器であっても、使い手がダメならば、ダメなのだと。 「まだ、美しく成れるだろう?」 猛攻を受けて崩れ去る巨人や、先に倒れた武者や狩人も、使い手がしっかりしていれば、その手にしていた武具はまだ輝けるのだと。 手にした武器を大地に落として、エリューション達は消えていく――。 ●傷の残る廃村 激しい戦闘によって多少の爪痕が残ったものの、誤魔化せば多少はどうにかなる具合で廃村の被害が済んだのは僥倖といえるだろう。 「カレーを塗ったおかげで、壊れた部分も一目瞭然でしたしね」 「これで、素人目には解らないだろう」 破壊箇所に何時の間にかカレーを塗っていたヘクスのおかげで、ウラジミールや他のリベリスタ達にも、修繕箇所は一目瞭然だった。 完全とはいえないが修繕を終え、愛は「終わったーっ」といった表情を見せている。 そう、戦いは終わった。 「どれ程朽ちていようが直してやる。それが鍛冶師としての仕事であり、性癖である。お前達はまだ戦える」 しかしエリューション達の使っていた武器や、鍛冶場に転がっていた武具を集めた一戒の戦いは、武器の修繕という形でまだ続くようだ――。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|