● ……お兄ちゃん? お兄ちゃんお兄ちゃん! お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん! お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄―― ● 「さて……依頼よ」 『硝子の城壁』八重垣・泪(nBNE000221)はいつも通りにリベリスタ達を迎えた。 「今回の仕事はアーティファクトの回収。いえ、投棄ね」 「……『アーク』まで持ち帰る訳ではないという事か?」 聞き慣れない依頼内容に一人のリベリスタが眉をしかめる。応じた泪の説明によれば、とある山中に落ちて来た上位チャンネル由来の品物を、付近に開いたバグホールへと投げ込むのが今回の仕事なのだという。 「わざわざ返却するのか」 「いえ、返却という訳でもないわ。そのバグホールが同じ世界へ続いているのかどうか知らないし」 では単にボトム・チャンネルに置いておく訳にはいかぬ代物という事か。 リベリスタ達は頷き、泪に続きを促していた。 「まずは……このアーティファクトについての説明をしておいた方がいいでしょうね」 端末の操作に従い、モニターに呼び出された画像は可愛らしいダイアリーであった。 ピンクの表紙で、小振りである。小さな銀色の鍵が掛けられているのが見て取れる。 「識別名『妹の秘密の日記』。これは誰かが所有するだけで効果があり、自動的に発動する。これを所持していると、どこからともなく血の繋がらない妹が」 「待てい」 「大量に」 「馬鹿じゃねぇのか」 「上位チャンネルから召喚されて来るという代物」 「しかもアザーバイドかよ」 「お分かり頂けたかしら?」 つまりは魔道書の類であった、上位チャンネルから魔神を召喚する。 呼び出されるのは名の知られた悪魔どもや、旧神達よりも大分可愛げのあるものだとはいえ、任意ではないという点において迷惑度はそれらとさほども変わらない。 「またこのアザーバイド――キモウト――は人間に対して敵対的ではない、むしろ友好的ですらあるけれど、知能が低く言葉が通じても話は通じないと思った方がいいでしょうね。あと非常に『日記』に執着している。持っているのを発見されると奪い取ろうとして来るでしょう」 「奪われたらどうなるんだ?」 「何処かへ隠しに行く、という所まで視えたわ」 「……つまり、そいつらを出来るだけ刺激せずに『日記』をバグホールまで運び、投げ込んで。そいつらが全員バグホールへ雪崩れ込んだのを確認したら穴を閉じる、というのが仕事の流れ?」 「そういう事ね、理解が早くて助かるわ」 泪はくすと微笑んでいた。 リベリスタ達はうんざりとした顔を並べていた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:RM | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月28日(木)23:00 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 土と砂利が剥き出しとなった程度の道をそれ、灰色の葉に覆われた林の中へと踏み入ってゆく。 リベリスタ達の足音には、ぱきぱきと雪の名残の氷を割る音が混じっていた。 「この辺りの筈ですが……」 『紫苑』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)は辺りを見回しながら呟く。 林の入り口までは車載のGPSをたよりに、そして今彼女は幻想纏いにそなえられた地図を見下ろしている。 「表紙はピンク色だったよな。それならだいぶ目立つ……と、あったぜ」 『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)はそう言って小走りに駆け、日記へと近寄っていた。 此れが――『妹の秘密の日記』。上位チャンネルより零れ落ちた品である。 「所有していると無限に妹がわき続ける日記……。 もはや、ある日突然十二人の妹が! といったどころの規模ではないですね」 可愛らしい日記を、しかし禍々しげに見下ろしながら、風見 七花(BNE003013)。 考えてみれば恐ろしい話ではあった。馬鹿馬鹿しい事ではあるが、これの対処に失敗すれば日本列島は巨大な妹島と化し、ハッピーエンドなんだかバッドエンドなんだか良く分からない形で終焉を迎えるのだ。 しかも破壊は現実的ではないと来ている。 所持以外にも攻撃を加えた時点で妹が湧き出し、それを妨害するが故に。 アークが選んだ対処は、都合よく付近に開いたバグホールへの投棄。 そしてリベリスタが選んだ具体的作戦は、ラグビーに酷似していた。 即ち、日記をパスで回しながらの5キロメートルの走破である。 「ふっ……かつて、高校でランニングバックと呼ばれた俺だ。アメフト、ラグビーなら得意なもんさ」 「おおっ、それは頼もしいデス!」 竜一の自信ありげな呟きにこたえる『超守る空飛ぶ不沈艦』姫宮・心(BNE002595)。 「いや嘘だけど」 「嘘デスかっ!」 「そうだよね、お兄ちゃんの事なら虎美が知らない事なんてないもの」 「いや待て、おかしな事を言うな」 『狂気的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)はべたべたと竜一に纏わり付いていた。その様子は何処か単に兄妹仲が良いと評するには違和感のある雰囲気をそなえている。主に、虎美の側から一方的に。 「うん、大丈夫お兄ちゃん! ずっとお兄ちゃんの事だけ見てるからね!」 いや何処かどころではないか。だだ漏れであった。 「ところで……アザーバイド『キモウト』か、個体差はないんだったな」 ぽつりと告げる『Spritzenpferd』カルラ・シュトロゼック(BNE003655)。 ――まさか、外見的な差異も無いのだろうか。同じ顔が大量に並ぶとか、どこのサイバースペースかと。 「最低限、こっちにいる妹には似てないで欲しいな……」 結城兄妹を何気なく眺めながら、カルラはそう零していた。 「よし、それじゃ拾うぜ」 仲間の準備が整った事を確認し終え、竜一は日記へと手を伸ばす。 その指を止めたのは、『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)のかけた一言。 「やったねりゅーにゃん、かぞくがふえるよ!」 「おい馬鹿やめろ。……いや本当に妹は間に合ってるから、洒落にならん」 「やだお兄ちゃん、虎美さえ居ればあとは誰も要らないだなんて……」「言ってねぇ」 全く、と口の中で悪態をつきながら、竜一は日記に指先を触れた。 その瞬間背筋を襲ったのは、悪寒である。手早く虎美から受け取った紙袋に日記をおさめ、駆け出そうとした竜一は、目の前にある木、その端に、小さな肌色が掛かっている事に気が付いていた。 「お兄~ちゃん?」 ひょこりと、少女が顔を出す。ハイライトの消えた虚ろな目、細身小柄な体躯。 髪型はツインテールであり、二月の山中にチェックのシャツと赤いスカートという軽装で。 キモウトは其処に居た。まさに何処からともなく湧き出したとの言葉が相応しく。 「行動開始でございますね」 告げて、シエルは背中の翼を広げていた。ふわりと僅かに地面から浮かび上がる。 「意外に可愛いのではないのカ?」 『夢に見る鳥』カイ・ル・リース(BNE002059)は首を傾げてみせる。 「どちらかと言えばお父さんと呼ばれる方が良いのだガ! この歳となってハ」 だが、その間にも「お兄ちゃん」との呼びかけは増えてゆく。 木陰から、背中から、またふと視線を逸らした隙にその逆側に、未だ数百メートルも進まない内にキモウトは次々と増え、リベリスタ達に纏い付いて来るのだ。 「お兄ちゃーん」「お兄ちゃん待ってー」「むー、無視しないでよお兄ちゃん!」 「何してるの? お兄ちゃん」「お兄ちゃんっ!」 「こ、こわっ! 強敵だとは思ってたデスけど、これは想像以上にこわいのデス!」 「ここまで増えては流石に萌えないのダ!」 悲鳴をあげる心とカイ。こうして、恐るべき妹達を引き連れての5キロランは開始されたのだった。 ● 背中に生えた翼を広げ、心は飛翔する。 辺りを見渡せる高度まで飛び上がり、仲間達を先導しようという構えだ。 「行くのデス! 勇敢な戦士達!」 進行方向を指差し、どこかうっとりとしながら仲間の居る後方を振り返る。 リベリスタ達は一丸となって駆けていた。あらゆる場所から湧き出し、纏いつくキモウトの群れの中を。 「Set! Hat! Hat! だっけ? ワオ、ジョックスみたい! 5kmとか考えるだけで死ぬけど」 翔護の口調は明るい。こちらの行く手を阻もうと襲い掛かって来るキモウト達も、友好的であると説明されたようにその手段は腕にしがみついて来たり、胴に抱き付いてきたりといったものである。 だが―― 「っ……!」 竜一の足がよろめいた。重い。 小さな少女の体格とは言え、一人ひとりの筋力はリベリスタとほぼ同等。数を恃まれれば進むも退くも出来なくなる。眼前の存在がやはりアザーバイドであるという事を実感として理解する。 「ほら、日記はこっちだよ!」 虎美は懐から紙袋に包まれた日記を出し、掲げてみせていた。 その瞬間キモウト達の目線が一斉に彼女を向く。虚ろな何十対もの同じ瞳を、虎美の何処か凄絶なものを帯びた瞳が真っ向から見返していた。 「お姉ちゃん?」「お姉ちゃーん♪」 同時に、虎美の眼には嘲りが浮かぶ。 こいつらは兄を見ている訳ではない。ただ日記の所有者を追っているだけだ。 (たかが日記で相手を変えるような妹は妹なんて言わないんだよ!) そのまま、前方で待ち構えているカイに日記を投げる虎美。影潜みによって己の影に退避した竜一から本物の『日記』を受け取りつつ、カイとは逆サイドへと走り抜けた。 「うふふお兄ちゃんが影潜みで私の影と合体☆ 虎美の中あったかいなり~とか言っても良いんだよ、お兄ちゃん!」 「言うかっ!」 だが、竜一の声は虎美に届いた様子も無い。彼の台詞は虎美の脳内に住まうもう一人の都合の良いお兄ちゃんによって即座に改変、捏造されていた。更に奮起して、彼女は駆ける。 「お兄ちゃんぺろぺろ渡さない絶対にだ! 理解したいなら日記なんて投げ出してついてこい!」 放物線を描いて手元へと飛び込んできた日記を見下ろすカイ。 ……確か。 「ただの囮ではなイ、本物に負けないくらい念を込めたとか言っていたのダ」 道すがらに聞いた虎美の言である。中身を見たイ! その衝動は抗いがたかった。 「カイ!」 呼びかけにはっと我に返る。 眼前にいつの間にか現れていたキモウトが、日記の端に手をかけてにっこりと微笑んでいる。 「ヒィッ! 数が多すぎるのダー!」 キモウトの群れに引きずり倒されるカイ。その手から偽の日記が奪われる寸前、カルラは日記を掴んでいたキモウトを斬り伏せ、それをもぎ取っていた。 「カイが潰された。フォローは出来るか?」 懐から撒菱を撒きつつ離脱するカルラ。追い縋るキモウトのうち数体がそれを踏み、転倒するのが見えた。 無論、ダメージと呼べるほどのものではない。僅か数秒を稼いだ程度に過ぎないが。 それで十分、とカルラは唇の端に小さな笑みを浮かべる。効いてくれたなら儲けものだ。 「はいよ、任せられた」 魔力銃を抜く翔護。横合いから閃いたハニーコムガトリングは弧を描いて宙を薙ぎ、立ち上がりかけのキモウトを含め後方から追い縋ろうとしていた一群を再び地面に叩き伏せていた。 どうやら、囮の日記は一定の成果をあげていた。 無論、キモウトが湧き出すのは本物の日記付近であるため、囮に釣られるのは一部でしかないが。それでも道を切り開くにはあると無いとでは相当な差があったであろう。 「友好的な相手を撃つのは気が引けますが……」 チェインライトニングを放ち、前方から駆け寄って来るキモウトを散らす七花。 その僅かな間隙に、虎美の影から抜けた竜一が滑り込む。 「さあ、キモウトたち! お兄ちゃんだよ!」 「お兄ちゃん?」 「お兄ちゃーん!」 一瞬にしてキモウトに飲み込まれる竜一。それら周囲を巻き込んで、戦鬼烈風陣が炸裂する。 「虎美様、こちらへ!」 きっと目を釣り上がらせた虎美から日記を受け取り、空へと逃れるシエル。そして虎美は未だ次々とキモウトに絡まれている竜一へと突進していた。 ● 残りあと1キロ程度―― 七花は幻想纏いから愛用のスクーターを呼び出し、仲間との合流を目指していた。 次々と現れるキモウト達のブロックにより、リベリスタ達も全力で走っているとは言えその進軍速度はさほど速くもない。 が、それだけに後方から追い縋るキモウトの群れが課題である事を、彼女は理解していた。 特に、討ち漏らしである。 キモウトは確かに人間に対して友好的。だが攻撃を受けても死ぬまで無抵抗な的という訳ではない。 前方からの足止め、後方からの攻撃、そして対処の間にも湧き続けるアザーバイドによって、リベリスタ達は徐々に分断され始めていた。 ハニーコムガトリングの火線を閃かせる翔護。だが、倒れた中から数体のキモウトが起き上がり、虚ろな笑みを浮かべながら彼へと突進して来る。 「お兄~ちゃん♪」 特殊な攻撃手段は無い。武器も所持してはいない。単なる拳と蹴り。 しかし数の暴力に、翔護は地面に背をつく事となる。 「これは……まずいのダ!」 カイの聖骸凱歌。タコ殴りにされかけていた翔護の傷が癒え、続いて七花のチェインライトニングが馬乗りになっていたキモウト達数体を貫いていた。 「こちらへ、お早く!」 更にシエルが車を乗りつけ、彼を拾い上げて寸での所で難を逃れる。 「危うい所でしたわ……」 一団より離れ、軽く一息を吐くシエル。 「ちょっト乗せてくレ~!」 声にちらりとバックミラーを見やれば、そこには手を振っているカイの姿があった。 シエルは軽く頷いて、ハンドルを切る。 だが、その瞬間ぞくりと彼女の背筋は震えていた。 びたりと、車のフロントガラスに肌色の物が張り付いている。屋根から伸びるように。 次いでさかさまのツインテールがぶらりと垂れ、虚ろな二つの眼がじっとこちらを見た。 「ひっ……!」 ブレーキを踏みながら急ハンドルを切って、停止。車を幻想纏いに収納し、二人は仲間と合流する。 「今は、日記は誰が?」 「こっちデス!」 低空飛行の心が応えていた。偽の日記は、既にこれまでの攻防で紙袋が破られ、囮としても機能はしなくなっている。本物の方もピンクの表紙が剥き出しとなっていた。 残り100メートル。 「バグホールは……あれデスか!」 矢のように飛びながら、心はそれを見出していた。木々の間に不自然に開いた穴。 しかし彼女の見ている前で、進行方向に見える木の裏からは続々とキモウトが現れこちらを伺っていた。 「……連戦でフットボールしてる気分だぜ……」 苦く呟くカルラ。翔護はかすれた口笛を吹くと、彼女に片手を差し出す。 「こりゃあ厳しそうね。妹の日記、こっちにくれるか?」 受け取った日記を小脇に抱え、すぐさま竜一の方向へ投げる翔護。 「りゅーにゃん、妹の日記だ!」 軌道は大きく逸れていた。当然ながら囮の日記である。しかしキモウト達の視線は、一瞬確かにそれに集中していた。 その隙に、心は本物を竜一へと受け渡す。 「これでラストだ。行くぜ白王……」 「お兄ちゃん、乗って!」 幻想纏いから愛馬を呼び出そうとした竜一の前を、虎美のバイクがかすめる。 咄嗟に飛び乗った竜一を後ろに乗せ、けたたましい爆音をあげながらバグホールへと直進するバイク。 そして仲間の援護射撃が、邪魔な位置のキモウト達を次々と打ち倒してゆく。 「良し虎美、横に避けろ!」 だが妹からの返答はない。それはいつもの事だが――笑っている? 「……誰もいない世界で結ばれるとかいいよね? 最高だよね? お兄ちゃん! お兄ちゃん? お兄ちゃんっ! お兄ちゃーんオ兄ちゃんお兄ちゃん☆お兄ちゃん♪ お兄ちゃんお兄ちゃンお兄ちャんお兄ちゃんお兄チゃんお兄ちゃん★お兄ちゃんお兄ち婚姻届もあるから結婚はよ!q!!」 「でぇい!」 強引に後ろからハンドルを掴み、バイクを横転させる。 そのまま、回転しながら日記をバグホールへとトライ! 追い縋ったカルラがジャケットの背を掴み、竜一をこちらの世界へ引き倒していた。 「ほラ、あそこに日記とお兄ちゃんなのダ~!」 次々と日記を追ってバグホールへと突っ込んでゆくキモウト達。リベリスタ達は周囲にキモウトが残っていないかを慌しく見回した後、ゲートを破壊する。 「結城お兄ちゃんを生贄に! 異世界への門を閉じる!! ……いえ、言ってみたかっただけなのデス」 「そんなにお前等は俺をあっちの世界に行かせたいのか」 虚ろな笑いでこちらを眺めながら、ゲートに飛び込んだ最後の一人の「お兄ちゃん」という呟きを残して、辺りは何事もなかったかのように静まり返っていた。 「……ラグビーやアメフト選手の大変さが少し分かりました」 大きく溜息を吐く七花。恐るべき、そして過酷な5キロメートルであった。 革醒者の身であっても限界が近い。彼等の多くはそのまま地面に座り込んでいる。 「兄妹とは良いものですね……」 ふ、と笑って言ったシエルだが、今現在その言葉に同意出来る者はどのくらい居るだろうか。 とりあえず全員無言だった。 「……キモウトさんの世界はどのような世界だったんでしょうか」 「絶対ロクでもない世界だぜ、間違いない」 うんざりだとばかりに七花に向かって肩を竦めるカルラ。 そして心はふと、転がっていた偽の日記に目を留めていた。 「そういえば、このニセ日記は何が書いてあるんですか、ハマリエルさん」 「むっ、残っているのカ!?」 飛びついてぱらぱらと読み始めるカイ。ほどなくして、彼はおかしな声をあげて悶絶していた。 それを見て一同、内容について訊くのはやめる事とする。いや話し始めても耳を塞ぎたい勢い。 「まぁ、アレだよね。女の子怖いね」 呟く翔護。『何処』を見て言っていたのかは、言うまでもなかった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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