● しぬって、どういうことなのかなあ。 おにいちゃんは、ましろがチビでおばかだから、わかんないっていう。 ロボはしんだから、もうあえないって。 でも、そんなのうそだもん。 ロボに、あえるよ。ましろのとこに、あいにきてくれるんだよ。 まだ夜だけど、めざましをぶるぶるするようにしておいたから、ちゃんとおきれた。 お月さまにてらされて、カーテンに、ロボのかげがうつってる。 カーテンとガラス戸をあけたら、いつもとおんなじに、ロボがおすわりしてる。 「ロボ!!」 「しっ……声が大きいよ、眞白。ご主人たちが起きてしまう」 「えへへ、ごめんね、しーっ、だね」 ロボの首にぎゅう、って手をまわして、だっこ。おそとがさむいから、ロボもつめたいね。 「ましろはロボがいちばんだーいすき! おにいちゃんはだいっきらーいだもーん」 「眞白、嘘をついてはいけないよ。本当は、ケンタのことも好きだろう?」 「うん、ほんとはね、おにいちゃんもすきー!」 ロボは、ましろのほっぺをぺろぺろってなめてくれた。ましろがわらってるとき、ないちゃうとき、ロボはいっつも、こうしてくれるんだよ。 「――眞白は、私がこうして人の言葉を話すことを、不思議には思わないのかい?」 「んーー、よくわかんない! ましろはまえからね、ロボのいいたいこと、わかったもん!」 「……そうだな。言葉がなくても、眞白やご主人に、いつも私の気持ちは通じていた」 夜だけしか、あえないんだって。パパにもママにもおにいちゃんにも、ひみつなんだよ。 ましろとロボだけのひみつ。 ロボ、だいすきだよ。ずっとずーっと、ましろといっしょにいてね。 ● 「今回の任務は、アーティファクト『エボルシオン』の回収あるいは破壊――及び、E・アンデッドの撃破」 ブリーフティングルームに集まったリベリスタたちに、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は淡々と語る。 「アーティファクトを所有しているE・アンデッドは、ロボという名前の、シェパード犬の屍体。フェーズは2だけど……アーティファクトの力で高い知性を得て、人語を操り、腐敗からも免れてる」 モニターに映し出される、暗灰色の小さな石。ひだがあり、まるで脳のようなかたちのそれは、とても危険なアーティファクトなのだと、イヴは告げた。 「所有者に取り憑き、知能を進化させ続けるの。――過剰すぎる負荷に、最終的に脳が破壊されて、所有者が死に至るまで」 その進化のスピードは元の知性が高いほど著しく、人間が手に入れれば、数日で死亡するほどだという。 ロボは今、エリューション化しながらも理性を保っており、夜ごと暮らしていた家を訪れ、飼い主だった4才の女の子と会っているだけだというが。 「おそらく、アーティファクトを所有したのが既に死亡した犬だったことが、幸いしたんだと思う。でも……今の状態は、あやういバランスの上に成り立っているだけ。そう遠くないうちに、アーティファクトはロボの理性も、記憶も、全て破壊してしまう。意思も持たず、ただ人を襲うだけのE・アンデッドにしてしまう」 1匹の犬の屍体がエリューション化し、そのE・アンデッドが埋葬されていた山に、危険なアーティファクトもまた眠っていた……それは残酷な運命の悪戯か。 イヴは伏せていた瞳を、静かに、リベリスタたちへ向けた。 「――ずっとこのままでいることなんて、できないの。ロボが一番大切な人たちを傷つけてしまう前に……お願い、彼を倒してきて」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:鳥栖 京子 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年04月06日(土)22:20 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●死せる獣の訪う夜に なだらかな山に囲まれた住宅街。 辺りには、雨戸を閉ざし眠りについた家々と、手入れの行き届いた畑と。春の夜闇は暖かく、新緑の香気を孕む。 「のどかなところだね、とっても」 今やE・アンデッドと化した犬とその飼い主の少女が過ごした穏やかな日々が、目に浮かぶようで。『月奏』ルナ・グランツ(BNE004339)は、静かに呟く。 「やるせない話ではありますが、それでも……私たちは為すべきことを為さねば、ですね」 『不屈』神谷 要(BNE002861)の言葉に、仲間たちは黙したまま頷いた。 E・アンデッドを倒し、危険なアーティファクトを回収するためにこの場に集ったリベリスタたちは、理性を保っているという屍犬の説得を選択していた。 今は戦う意志がないということを示すべく、武器をAFに収納した丸腰の状態で、大上家の垣根の傍に身を潜める。“彼”の訪れに最初に気付いたのは、透視と暗視を併せ持った『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(BNE002649)だった。 足音も無く影のように現れた、大きなシェパード犬。艶やかな毛並み、ぴんと立った大きな耳。外見上は、普通の犬と変わらないように見える。 「こんばんは、ロボ。――良い名前だね?」 特に警戒する様子もなく悠然と近付いてくるE・アンデッドに、キリエは声をかけた。 「同類さん、眞白ちゃんに会いに行くんやろ? その前に少し、話聞いてくれんかな」 食肉目イヌ科キツネ属の頭部を持つ『人生博徒』坂東・仁太(BNE002354)も、屍犬の前に歩み出る。 「――家族を危険に巻き込まない為の、大切な話だ」 『0』氏名 姓(BNE002967) は立ち止まったロボの前に片膝をつき、目線を合わせた。深い知性を湛える、ダークブラウンの瞳。その獣の口から、低く落ち着いた声が発せられる。 「……私の名も目的も、全てお見通しか。では、普通の犬のふりをするのも無意味ということかな」 ロボは目線をキツネ顔の仁太や長く尖った耳を持つルナに向けると、小首を傾げる。 「聞いても良いだろうか。――君たちは、何者だ?」 その問いに答えたのは、『ゲーマー人生』アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)だった。 「わたしたちは……崩界を食い止める者。貴方を倒すために来ました」 空には下弦の月。月明かりに照らされた静謐な世界に、キリエの声だけが静かに響く。 「ロボ、君は自分が死んでいることは理解しているね。けれども、こうして動ける。不思議でしょう? そうした事を可能にする現象を、私たちは“神秘”と呼んでいる」 語られる世界の真実に、ロボは座った姿勢でじっと聞き入っている。 「君は今、世界にとって、とても危険な存在になっているんだ。近い将来、君は神秘の影響で理性を失って、眞白や家族に牙を剥くことになる。――これは私たちが君を見つけて此処に来たのと同じくらい、約束された未来なんだよ」 姓は手鏡と懐中電灯を使い、ロボにその首輪に取り憑いた破界器『エボルシオン』を見せた。 「……君はこの石の力で言葉を操れるほど賢くなったけど、この石はとても危険なんだ。人の場合だと、数日で負荷に耐えきれなくなり、死んでしまうくらいに」 アーリィが、新緑の色の瞳を伏せて続ける。 「石の効果はどんどん加速していく……そして最後には、脳がそれに耐えられなくなっちゃう。貴方、思考がどんどん複雑になって行ってない?」 少女の問いかけに首肯する代わりに、ロボは双眸を細めた。 「でも、もう貴方は世界を壊す存在になっちゃってるから、その首輪を外すだけじゃダメなの。首輪が無ければ……自我のない怪物になるだけ」 破界器の浸食度を探れないものかと、『破壊の魔女』シェリー・D・モーガン(BNE003862)がアーリィの隣に屈む。ロボの瞳を見れば判る、E・アンデッドは今、確かに理性を保っているが。 「これは……非常に強力な破界器じゃな」 ――猶予はもはや、余り残されてはいないだろう。呟く少女の言葉が闇に溶ける。 「それに、眞白さんを傷つけてしまう可能性だけではないの」 声はあくまでも凜として。『blanche』浅雛・淑子(BNE004204)が身を屈めると、肩から白菫色の髪が零れた。 「増殖性覚醒現象。……今のままではいずれ、眞白さんたちにも悪影響が出てしまいます」 要の言葉を、仁太が引き継ぐ。 「今のお前さんが及ぼす影響で、近くにいる人間が化け物になったりしてしまうんよ。眞白ちゃんを化け物にはしたくないやろ?」 「……眞白が」 ただ一言、ロボは呟いた。 仁太は思う――できることなら、ずっと家族の傍に居させてやりたい。だが、ロボの家族を大切に思う気持ちがわかるからこそ……彼自身の手で、それを壊すような真似をさせる訳にはいかない。 「(ほっといたら誰も幸せにはならん。じゃけん、終わらせなあかんぜよ)」 まっすぐにロボを見据え、男は告げた。 「はっきり言わせてもらうと……わしらにお前さんを殺させて欲しい」 直球の言葉に少し驚いたように見返す屍犬の目線を、正面から受け止める仁太。 ロボはそっと目線を逸らすと、自分の周りの人間たちを見回し、口を開いた。 「……君たちの話は、確かに私の今の状況を説明するものとして、理に叶っている。それが本当なら、私はこの世界に存在しない方がいいのだろう」 冷静ながらも、挑みかかるかの如き声音。立ち上がったE・アンデッドは、じり、と一歩後退する。 「これまでの経過は、まさに君たちの言うとおりだった。だが、未来もまた、君たちの話通りになるという確証はあるのか? ……例外や、他の可能性は残されていないのか」 祈るような言葉。しかしフェイトが得られるかどうかは、それこそ世界の気まぐれとしか言いようがない。また、動物がフェイトを得たという事例が確認されたことは、一度も、ない。 沈痛な空気が漂う中、大きな黒犬の前に、銀糸の髪の少女が歩み寄った。 「納得できないかもしれない。――でも、私たちはそんな未来を引き起こさないために、君に会いに来たんだ」 ルナの澄んだ紺碧の瞳が、ロボをじっと見つめる。 「ロボちゃん……信じて。お願い」 一瞬の沈黙の後、獣はふう、と息をついた。 「意地の悪いことを言ってしまったな。都合の悪いことに……私たち犬は、本心からの言葉か、そうでないかということは解るんだよ。“神秘”とやらの力を借りなくてもね」 ただ、真実を受け入れがたかったのだと。そう言って、ロボはリベリスタたちに向き直る。 「君たちを信じよう。――それで、私はどうすればいい?」 「……おぬしはもはや救えずとも、眞白は救うことができる。だから、手伝って欲しい」 シェリーが告げた。曇りなくはっきりと。 「眞白がおぬしの死を受け入れ、正しく成長するために――自ら別れの時を告げるのだ」 「せっかく生き返った命なんや、伝え残したことがあるなら言いに行ってくるといいで」 仁太は励ますように、犬の背を叩く。 ルナも、ロボにふわりと微笑みかけた。 「ロボちゃん、行っておいで。眞白ちゃんが君のことを待ってるよ」 ●天国への道 庭では、白椿の木が零れんばかりに花をつけていた。縁台のすぐ脇には木製の立派な犬小屋が、今は住人をなくして寂しげに佇む。 庭に面した部屋のカーテンが開き、ガラス戸を開けて、幼い女の子が顔を出す。女の子はロボを見、その隣に立つ淑子と姓の姿を見ると、あんぐりと口を開けた。 「いい夜ね、眞白さん」 淑子が笑顔を向ける。彼女の超幻影により、姓の背には大きな翼が生じ、頭上には金色の輪が浮かんでいた。 淡く輝く白い翼を畳み、優雅にお辞儀をする姓。 「今晩は、天国からの使者です」 眞白は姓に目が釘付けになったまま、ロボに向かって手を伸ばす。 「ロボ、ロボ、みて! てんしさんだよ!!」 「眞白、そんなに身を乗り出すと落ちるよ。あと、声が大きい」 「だってね、ましろね、てんしのひとはじめてみた!!」 興奮してはしゃぐ眞白に顔をなで回されて、ロボは困ったようにくぅん、と鼻を鳴らした。 「…………眞白、今日はさよならを言いに来たんだ」 手の動きがひたと止まり、眞白の顔が一瞬で蒼白になる。 「なんで?」 部屋の縁にへたりと座り込むと、幼女はふるふると小さく体を震わせた。 「ロボ、おにいちゃんみたいなこといっちゃやだ! おにいちゃんはうそつきだもん、ロボはしんだからもうあえないって、そんなの、ましろはやだあ……!」 眞白は怯えたように姓を見る。 「てんしさん、ロボをつれていかないで? ましろは、ずっとずっとロボといっしょにいたいの」 両親や兄には秘密の訪い。夜だけしか会えなくなった友達。こんな小さな子供でも、どこかおかしいということは感じていたのだろう。小さな胸に抱えていた不安が一度に溢れてきたかのように、今にも泣き出しそうな幼女の傍に屈むと、姓はゆっくりと言葉を紡いだ。 「でもね、お嬢さんがさよならをしてあげないと、ロボは天国で新しい体が貰えないんだよ。……生まれ変わり、ってわかるかな」 「……うまれかわり?」 涙を湛えた瞳が、姓を見上げる。 「そう――ロボは今の体が使えなくなるから、天国に新しい体を貰いに行かなきゃならないんだ。お別れは寂しいけど……神様に、ロボとお嬢さんがまた会えるよう頼んでみるよ」 輪廻転生とか、神様とか。姓は、本当にそれを信じている訳ではなかったが。 「(そうなりますようにって祈るのは、私の勝手)」 「……からだのあたらしいの、もらえないと、ロボはかなしい?」 ロボが黙って頷くと、眞白の丸く柔らかな頬を涙がぽろぽろと伝った。裸足のまま庭に降りると、しゃくり上げながらロボの体にしがみつく。 「困ったな……折角高い知能や言葉を得たのに、こんなときどう気持ちを伝えたらいいのか、解らない」 情けない声を出す黒犬に、艶やかな毛並みに顔を埋めながら、眞白が言う。 「ましろはわかるよ、ロボのいいたいこと。おはなしできるようになるまえから、わかったもん」 「――ああ、そうだな。眞白の言うとおりだ……」 ロボは眞白の涙に濡れた頬を舐めた。いつもと、同じように。 「さよなら……眞白。どうか、幸せに」 「さよなら、ロボ……」 * 「さあ、もう夜も遅いわ。朝までゆっくりお休みなさい」 ロボとの別れをすませた眞白を、淑子は魔眼で催眠状態にし、寝かしつけた。 垣根の外では仲間たちが、2人と1匹が戻ってくるのを待っている。 「……もう、ええんか?」 「ああ、ありがとう。では行こうか」 周囲の目と被害を鑑みて、リベリスタたちは近くの公園への移動を提案していた。万一の逃走阻止のために8人で囲むようにして、夜道を歩く。 殺されるための場所へ黙って歩を進めるロボに、シェリーは声をかけた。 「おぬしは1人でも生きていけたであろうに……夜忍んで眞白にだけ会っていたのは、彼女が幼い故か、それとも寂しさからか」 「両方とも正解だよ、聡明なお嬢さん。私は、家に帰りたかった――だが、他の家族は私の死に際にも立ち会っていたし、一度死んだ私が戻っても、困らせるだけだろう?」 犬は前を向いたまま、淡々と語る。 「眞白は、まだ幼い。彼女が私と会っていることを誰かに話したとしても、周囲の大人は信じないだろう。それに……眞白自身も大人になれば、ここ数日のことは夢だと思うようになる。いつかは、忘れる」 確かに幼児のときの記憶というものは、大人になればほんのわずか、断片的にしか残らないものだ。それでも。 「忘れて欲しくないわね。――ううん、眞白さんはロボさんのこと、決して忘れたりしない」 淑子は力を込めて言い切った。姓も、思うところは同じ。 「姿形がなくなっても、家族との絆は残るよ。君をまた見つけてくれると思う」 例えば手作りのようだった犬小屋や、共に歩いた散歩道の風景を見る度に。そこにいたロボのことを、きっと思い出す。 「…………そうだといいな。そうであれば、私はとても嬉しい」 独りごちるような、ロボの小さな声。行く道の先に、こんもりと黒く茂る木々。公園は、すぐそこだ。 ●屍獣はもう啼かない 公園の出入り口を背に、リベリスタたちはロボと向かい合う。 朧な電灯の明かりがあるのみの、闇に沈んだ公園。暗視を所持した6人の目には、原色を使った幼い子供向けの可愛らしい遊具や、花壇に咲き誇る春の花がよく見える。これから起こる出来事には不釣り合いな、普段は優しい日常の舞台となるであろう場所。 眞白が目を覚まして後を付いてきていないかどうか、ルナは感情探査で探ったが、複雑に渦巻く仲間の感情が曖昧に感じられたのみだった。 ラ・ル・カーナにいたときのように感情や価値観を共有し合うことは、この世界ではできないけれど。きっと、私たちの気持ちはひとつ。AFから取り出した杖を構え、前を向く。 万が一にも、この光景を眞白に見せることがないように――アーリィは結界を張り巡らせた。 「(なるべく苦しまないように、終わらせてあげたい……だから、手加減なんかしない。全力で戦うよ)」 武器を手に、各々集中力や魔力を高める8人に、E・アンデッドが穏やかな声で語りかける。 「……私を倒しに来たのが、君たちでよかった。既に死んでいるこの身は、もう痛みも何も感じない――はやく眠らせて欲しい」 意を決したように、淑子が斧を振りかぶった。神々しい破邪の光を放つ大戦斧が黒い毛並を切り裂くと、間髪を与えずキリエの全身から蜘蛛の巣のように伸ばされた気糸が、獣の弱点を執拗に狙う。 アーリィの放った気糸に貫かれ、ルナとフィアキィが作り出した小さな光に灼かれ。 仁太の巨銃から凄まじい速さで打ち込まれた弾丸に連続で撃ち抜かれても、E・アンデッドはもはや一言も話さず、唸り声ひとつ上げなかった。 「(――下手な嘘なんか、要りませんのに)」 仲間たちに力強い神の加護を与えながら、要は思う。 リベリスタたちの説得を受け、またアーティファクトを身につけたままのE・アンデッドは、反撃ばかりか、逃走や防御すらしようとはしない。赤黒いものをぼたぼたと滴らせながらも黙って身構える屍犬に、姓の気糸の罠が絡みつく。 終焉はとてもあっけなく、突然だった。 3度目に、シェリーの放った銀の弾丸が桁外れの破壊力で獣を抉ったとき。ロボの体はぐらりと揺れ、地面に音を立てて倒れると――そのまま、二度と動かなくなった。 闇に溶け込む黒コートを靡かせて。要は再び死の眠りについた獣に近付き、所持者に害なす危険なアーティファクトを躊躇うことなく回収する。 「一切の災いの中に、幸福の芽は潜む。……妾はそう信じている」 血溜まりの中、横たわるロボの死骸を見据え、シェリーは呟く。今回のエリューション事件は悲劇ではあったが、幸福でもあった筈。死して更に、眞白とロボは、深く結びついたのだから。 シェリーの提案で、リベリスタたちは山にあるロボの墓に彼を戻し、弔うことにした。仁太が冷たくなった犬の体を抱える。 キリエは、今は何も知らずに眠りについているであろう、眞白のことを思う。 朝が来て、今夜のことを思い出したら。夜になっても、いつものようにロボが訪れなかったら。眞白は、悲しむだろうか。 「(死は自然なこと。受け止めるのは辛いだろうけれど、悲しむのを悪いことだとは思わない)」 リベリスタたちの様々な想いを乗せて――眞白とロボが暮らした小さな街を、柔らかな風が吹き渡った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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