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バレンタイン(笑)

●巨艦、襲来
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ、という祗園が正に当てはまる状況だった。
「な……なんだアレは……!?」
 調査専門のモブリスタは草むらに身を伏せゴクリと息を飲んだ。
 手にした双眼鏡に映っていたのは――巨大な、巨大な、黒。闇よりも深い、暗い、果てしない、黒。
 異様な光景だった。
 それは像ほどの大きさはあろうか。謎の力で1mほど浮き上がり、木々を薙ぎ倒し進行を続ける。
 悍ましい光景だった。
「こんなものが……街に出没したら大変な事になるぞ……!」
 薙ぎ倒されるビル、逃げ惑う人々。想像するだけでゾッとしたものが背筋を舐め上げる。
「組織(うえ)に報告せねば――」
 モブリスタは通信機に手を伸ばすと早口に通信を開始する。
「た、大変な事が起こりました! 巨大な恵方巻きが――う、うわああああああああああああああ」
  ザーーー。それきり、通信機から聞こえるのは砂嵐なノイズだった。

●バレンタインかと思った? 残念! 恵方巻きでしたー
「さて、そういう訳で皆々様」
 くるんと事務椅子を回して振り返った『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)は、2月14日すなわちバレンタインという日に集ったリベリスタ達を見渡した。
「本日もお勤め御苦労様ですぞ! 世間はバレンタインで浮かれてますが、巨大なエリューションが出没しましたので本日はその討伐を宜しく頼みますぞ」
 さてその『巨大なエリューション』とは。
「恵方巻きです」

 恵方巻き。節分に食べると縁起が良いとされる「太巻き(巻き寿司)」や、その太巻きを食べる行為で大阪地方を中心として行われている習慣。
 大阪地方の地元における名称として、単に「巻き寿司」や「丸かぶり寿司」などがある。別称として「恵方寿司」「招福巻」「幸運巻」「開運巻き寿司」「太巻き丸かぶり」などと表現されることもある。 また、冬の節分以外のものに関しては、5月の「春の恵方巻」、8月の「夏の恵方巻」、11月の「秋の恵方巻」などの名称もある。
 起源・発祥は複数の諸説が存在しており、信憑性についても定かではない。商業的イベントとして、これを利用した関係業界の販売促進活動・関連商品・商戦が20世紀後半から活性化している。

「By、某ペディア」
 お疲れ様です。そんなこんなでメルクリィの背後モニターに映し出されたのは巨大な恵方巻きだった。像ぐらいあるだろう。
「何故バレンタインに恵方巻きが出たのかは不明です。そしてこの恵方巻きは街に向かって進行を続けていましてね……ここで止めねば、バレンタインに浮かれる街が大変な事になります。
 さてこのエリューションですが、フェーズは2。特徴としては硬く、見た目に似合わず速いんだそうです。黒くて、硬くて、速い……うん。おそろしいエリューションですな!」
 で、恵方巻きだから食べれるの?
「えぇ、勿論! 食べれますよ。リベリスタの胃袋と胃液はハンパネェのです。美味しいし、食べると美味しさに精神力が回復するそうですよ。でも硬いので、ちょっと歯が痛いかもしれませんね。
 とはいえ、油断してかかってはいけませんぞ? 相手はフェーズ2、それ相応の強さを持っているのですから。
 いや~~~……とはいえ……バレンタインだっていうのに大変ですな皆々様! バレンタインだっていうのに!
 そんなこんなで今日という今日もファイト一発ですぞ皆々様~!」
 と、メルクリィは笑顔で説明を締め括った。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ガンマ  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年02月24日(日)23:32
●目標
 フェーズ2エリューション『エホマキ』の討伐

●登場
フェーズ2エリューション『エホマキ』
 2月のヒーロー、恵方巻きのエリューション。
 でっかい。像ほどの大きさ。堅くて速いです。
 お~いしい。
・2月のヒーロー:P。150%以上ヒットでBS状態になる。
・やさしいおいしさ:P。食べるとEP回復。
・酢飯キャノン:遠2複。ショック。
・ごろもだ:近域、重圧、物防無
・EXバッドエホマキフォークロア:要はバッドムーンフォークロアです。

モブリスタ
 エホマキからちょっと離れた所でのびています。戦力皆無。

●場所
 人里離れた山間の小広い草原。草の長さは膝ぐらいまで。
 草原の周りは木々
 所々に背の高い草の茂みがある
 時間帯は夜。星明かりや遠くからの町明かりでそれなりに明るい。

●マスターより
 こんにちはガンマです。
 2月ですね! わぁい!
 純戦シナリオのギャグ風味です。
 よろしくお願い致します。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
鬼蔭 虎鐵(BNE000034)
クロスイージス
白石 明奈(BNE000717)
覇界闘士
レイ・マクガイア(BNE001078)
デュランダル
阿野 弐升(BNE001158)
ナイトクリーク
月杜・とら(BNE002285)
インヤンマスター
璃鋼 塔矢(BNE003926)
ホーリーメイガス
門倉・鳴未(BNE004188)
レイザータクト
鎹・暁生(BNE004304)

●バレンタインなんてなかったんや
 それより見てくれ、このエリューションをどう思う?
 凄く……大きいです……

 という様式美はさて置き、ドムーンとそそり立っていたのは黒くて硬くて立派なアレでした。即ち恵方巻きでした。
「ああ……でっかい恵方巻きでござるな……」
 遠い目をした『ただ【家族】の為に』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)がポツリと呟いた。
「なんでわざわざ恵方巻きのエリューションなのでござろうか……」
「うーん。大方、食べられず残された無念とかその辺りじゃないかな」
 時期外れの恵方巻き(時期とかこまけぇこたぁ気にするな!)を並んで見守る『ミサイルガール』白石 明奈(BNE000717)が虎鐡の言葉に応える。
「そいつを晴らすため、頑張っちゃうぞ! いくぜアイドル!」
 説明しよう! 白石明奈は勝負下着の上にアイドル衣装を各所に配慮したナイス装備を身に纏う事で戦いに赴く力を高めるのだ!!
「よーし、さくっとやっちゃうぞ!」
 バビョーンと決める一方で、『アメリカンサイファイ』レイ・マクガイア(BNE001078)は真顔。
「恵方巻きはつい先日食べたのですが残念ながら良い出会いを得る事はできませんでしたね。というか相手が彼女持ちでしたので、流石に奪う訳にも行きませんし……そういう行事じゃない? そうですね」

 ……。

「……おのれエホマキ、乙女(22)の心を弄んだ罪はとても重いですよ。重い女と評判の私が完食してくれます。
 あ、重いのはメタルフレームと体格の問題です。性格ではありません。
 こう見えて家庭的ですし。せくしーですし。甘いもの好きですし。酢飯も好きですし」
 お買い得だと思うんですがねえ。無限機関をバリバリ起動させながらセクシーポーズ。うっふん。ただしここまで無表情。
 ぼっち――ぼっちと聞いては黙っていられない者が居る。その名も鎹・暁生(BNE004304)、キリリと美声を響かせて。
「いらっしゃいませ恵方巻き様!
 バレンタインの煽りに負けて、セルフ買いしたチョコを友チョコと偽って次々ブログUPする寸前でしたのが昼間のわたくしです」
 危うく我に返ってから死にたくなるところでした。握り締める拳が震えている。噛み締めた唇も以下同文。
「……よくぞ止めてくれたと感謝します!」
「なんか俺の常識にあるヒーローとかバレンタインとか恵方巻とかとだいぶギャップがあるんだが!」
 思わずツッコミを入れたのは『俺の中のウルフが叫んでる』璃鋼 塔矢(BNE003926)だ。どうしてこうなったバレンタイン。頭を抱える孤高のウルフ。
「まぁ街に出たら大惨事だけどな!? それ以前に色々間違ってるよな!? バレンタイン何かよりもっと恐ろしいモノの片鱗を見た気分だ……!」
 それはそうと気を取り直して。浮かれてる連中の為とかどうでも良いけれど、一応止めねば。銃と刀で身構える。
「でも相手は恵方巻きかよ……締まんねぇなぁ……」
「伸びる恵方巻きをなんかやたら肉食系っぽいシスターさんと食べる事になった後は、巨大恵方巻き退治か……」
 遠い目その2、門倉・鳴未(BNE004188)。溜息吐くっきゃない。
「どうなってんだ今年の俺の節分。アレか、豆を年の数食べなかったのがいけなかったのか……
 てかこれ普通に攻撃して倒せんのかなぁ……食べなきゃダメとか言うオチねぇ? ねぇよな?」
 さぁどうだろう(笑)
「つか、食べ物を粗末にしちゃいけねーだろ!」
「美味しいって情報も入ってるし食べとうござるな……」
「その通り。美味しいらしいし、食べない手はない」
 応えた虎鐡に続きキリッと『群体筆頭』阿野 弐升(BNE001158)が言い放った。偶にはこういうエリューションが出るから面白い。
「群体筆頭アノニマス、いざ食べ尽くしに参る!」

 そんなこんなでリベリスタVS恵方巻き、はっじまっるよー。

●と見せかけてまだ始まらない
「あっ、いたいた☆」
 空色の羽をぱたぱた、エホマキからちょっと離れた所を見渡していた『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)は茂みで気絶していたモブリスタを発見した。ぐったりしているが命に別条はないようだ。
「ほらほら、しっかりして! お寿司に蹂躙されてノーフェイスになったりしたら、やるせないよねぇ? 生きてればいつか、ザギンでチャンネーとシースー出来るかもだし~?」
 新世界でサンオツと串かつでもいいけど、なんて冗句を飛ばしながら彼を抱えて飛び上がる。安全圏へ運ばねば。
 と――そうしていると聞こえてきたのは戦闘音楽だ。エホマキは街に向かっているのだろうか?一先ず安全だろう場所にモブリスタを寝かせると、とんぼ返りにとらは仲間の元へ向かう。急いては事を仕損じる。影の従者を往き連れて、とらは木々に隠れながら飛んだ。

●Februaryやで!
 地を蹴り吶喊し始めた仲間達の背を見守りつ、後衛の暁生は耳をピンと立てる。鋭い赤睨の先には、黒い巨塔。
「恩を仇で返すようで恐縮ですが、あなたはエリューション。街を破壊させる訳には……」

 あれ?
 ダメ?
 あのリア充共で浮かれきった空気ぶっ潰してくれるって良い事じゃ――

「いやいやいや! とにかく此処で止めさせて頂きます! いざ尋常に勝負です!」
 わたわたかぶりを振って邪念(?)を振り払いつつ、戦術的視野を広げた犬の戦指揮者が展開するのは防御の教理。
「ターゲット捕捉。戦闘行動を開始します」
 長い銀髪を靡かせて、レイがエホマキとの間合いを詰める。
 硬くて速い、ならば近付いて殴れば良い――答えはシンプルだ。粛々と、全力で、そして恵方巻きなので無言でやってしまえば良いだけの事。
 ゴゴゴゴゴ、と動き始めたエホマキの海苔ボディを両掌で受け止める。だが強い、その重い力に地を踏み締めたレイが逆に押し返される。みしみしみしと伝わる質量。地面に二つの線が出来る。
 ならばそのまま喰らうが良い。柔らかく食べやすい酢飯になるよう料理してやろう。放熱機関である髪より熱を放出しながらエネルギー全開、掌から装甲を貫通する衝撃波を射出する。
 硬いのならばそれを通り抜ける一撃で。
 堅いのならばそれをブチ壊す火力で。
「こんなナリして滅茶苦茶堅いとか詐欺か。ま、殴り甲斐はあるかね――バラして晒して並べて美味しく頂いてやんよゴルァ!」
 ふんわり食べ頃に調整しようと断頭台の喝采を振り上げた弐升がエホマキに肉薄する。落ちない汚れで曇った刃が唸りを上げて雪崩の如き連続攻撃を叩き出す。
 だがまだまだ戦いは始まったばかり、海苔装甲は黒々とリベリスタの前に立ちはだかる。
 それを見澄ますのは一ツ目の虎だ。
「さて、まずは……」
 黒鋼色の鞘に収めたままの得物を携えて――虎鐡は自らの身体のタガを外し去った。めしりと軋む身体。大量の血液が巡り、開く瞳孔。
「吹っ飛んでもらうでござる!」
 強く地面を蹴りつけ吶喊、全身のエネルギーを込めるのは獅子護兼久を収める黒い鞘。美しくも重厚な作りはそれだけでもう立派な武器だ。叩き付ける。まるで大砲の様な火力。エホマキの芯中を捉えてかっ飛ばした。
「ホムーラァンってか。ちとネタが古いけど気にするな」
 吹っ飛んだエホマキを追うべく、呟く弐升は更に間合いを詰めんとする――が。その刹那。リベリスタ達目掛けて発射されたのは酢飯の大砲だ。
「ぶっ!?」
 ばしゅーんばしゅーん。一見しておマヌケな光景だけれども、酢のあの独特のツーンとした感じとか着弾の衝撃とか。
 それは後衛にて皆を支える鳴未にまで猛然と迫ったが、酢飯キャノンは颯爽と彼の前に立ちはだかった明奈のダブルシールドが堅固に受け止めた。酢飯が飛び散る。その奥で、きらりと輝く彼女の白い歯。
「いつものワタシはアイドルだけど、今日は門倉の兄さんのガードマン――いやガードガール!」
「語呂悪ッ!」
「だなッ!」
 鳴未は体内魔力を活性化させ癒しの祝詞を唱えていた真っ最中だったが思わず突っ込んだ。明奈は謎のサムズアップ。
「ある意味フィクサード達より厄介な敵だな……そんなヒーローが居て良いわけねえだろ!」
 かっこよく決めたい塔矢は守護結界を皆へ施した後、構えた銃から符式の烏を発射した。全くどう配置したら良いのかから迷う相手である。
「南南東でしたか? 奇門遁甲術……方違え……とかその辺のなにか……」
 恵方を向くようにと移動しながらレイはインヤンマスターである塔矢へと振り返った。なんだっけ。詳しくはインヤンに。
「えっ」
 まさかのキラーパスだよ。元々はすごいワルだったよ、不良だったよ、一匹狼の中のウルフだったよ系青年の塔矢はそんな、なんていうか、すぐに呼びましょおんみょーじっ(れっつごー!)なアレではないのだ。かっこよく生きてーだけなのだ。
「フィ……フィーリング?」
「成程」
 神妙に頷き突撃してゆくレイ。その背を、嗚呼、見送る事しか出来ませぬ……
 と、そこへ矢の様に『飛んで』きたのはとらだった。
「ごろもだする恵方まきを見に来ましたー☆ 皆さんが輪切りをご所望でーす。動かないでねっ♪」
 投げ付けるのは道化のカード。不吉を告げる嘘吐きピエロ。
 そのカードの裏に隠れ、エホマキの死角より繰り出されたのはたっぷり重ねられた集中によって精度を研ぎ澄ませた暁生のフラッシュバンだった。炸裂する閃光と轟音がエホマキを怯ませる。
 ふるふる。されど暁生の肩は戦慄いていた。キッとエホマキに指先を突き付けて、
「わたくしは知っています! リア充には例え今日という日が潰れても、怪我をすれば看病してくれる誰かが居るという事を! 『昨日渡せなかったけど、はい』なんて甘いオプション付きです!」
 ぼっちの悲しみなんか知らないで、あいつらはいつもいつも楽しそうに。見せつけるように!

 そんなに楽しいのか!
 そんなに嬉しいのか!
 おのれ、バレンタイン!
 くたばれ、バレインタイン!

「ウワァアアアアン! そんなの体を張って阻止するに決まってます! 決まってますとも! 死して護国の鬼とならん! いえまぁぶっちゃけ此処に居る皆さんがリア充かどうかもわたくし存じませんけれども!」
 わたくしに、お任せください! 繰り出したチェイスカッターは涙の味。
 リベリスタ達の攻撃にエホマキがぶるりと震えた。刹那に繰り出すのはバッドエホマキフォークロア――要はバムロア。赤い光がビリビリズバビューン。
 恵方巻きの癖に、中々侮れない一撃。
 塔矢は全身を焼いた赤い光に奥歯を噛み締める。が、倒れる訳にはいかない。
「こんな情けない相手にやられっぱなし何てまっぴらだ!」
 そして美味しそうな恵方巻きで食べると恩恵が在るらしいけれど食べるのもお断りだ。
「戦闘中にめしをくうかっこよさがどこにある!」
 ただし式符・鴉が啄むのは許可する。でも繰り出すのはブレイクフィアーだ。俺は弱い分俺より強い奴らをイカスのさ、とカッコよくキメてみる。ロンリーウルフマジCOOOL。
「門倉さんはワタシが守るから、他の皆の心配よろしく!」
「ほら張り切って食うんスよー! って違うか?」
 頑丈さと不屈が取り柄だぜ! と明奈の相好から笑みは消えず、こんなもんに倒れたら情けない事この上ないと鳴未は癒しの微風を仲間に送り届け続ける。
 俺に任せとけ! ……なんて、まだ言えるレベルではないけれど。やれる事は、やらねばならぬ。
 と、そこへぽーいと投げ寄こされたのは――カットされた恵方巻き!
「召し上がれ~☆」
 虎鐵が疾風居合い斬りでカットした恵方巻きをとらがフリスビーの如く皆へぽいぽい投げている!
「うまい!」
「あ、おいひい……でもこのでかさだと食いきれんのかなー」
 弐升はテーレッテレーで明奈は「酢飯でべっとべとだー」なんて言いながらももぐもぐ。皆でもぐもぐエネルギーチャージ。
(雷音の為に持ちかえるでござる……)
 虎鐡はもぐもぐしながらも持参したタッパーにエホマキの欠片を詰めていたり。
 それに怒ったか、エホマキがごろごろもだもだ! ごろもだ!
 確かに強力な攻撃だった。が、予め警戒していたリベリスタに大きな被害が出る事は無く。
「ねえ、なんでごろもだしてるの? ねえねえ、今どんな気持ちっ?」
 ヒラリ、エホマキの上に舞い降りたとらがしゃがみこむ。海苔ボディを人差し指で恥ずかしげにくりくりしながら曰く、
「んとねー、エホマキが心配しなくてもぉ、とらってばこれから街に行って強・結・界……使っちゃおうかな? あはっ、言っちゃったぁ♪」
 きゃーと頬を染めてやんやん☆ バレンタインでドギマギしてるヘタレは、皆おうちに帰っちゃうね! バレンタインが台無しだね!
「……と油断させたところに、デッドリー☆ギャロップー!」
 幾重にも幾重にも致命的な死の糸。騙し打ちは女の基本ですキリッ! とらちゃんマジ女子力!
 だが糸に雁字搦めのエホマキは動けない――今がチャンス。
「そろそろ決めるでござるよ!」
「恵方……南南東はあっちだぜ!」
 どうせなら最後もきちんと。方位磁石で方向を確認した明奈の指示に虎鐡が飛び出す。ぼっちに栄光あれ、光りあれとレイも地を蹴り、振り上げる一徹。虎鐡の剣閃が、レイの掌打が叩き込まれる。
「決めるぜ……!」
「ありがとう、さようなら、恵方巻き様!」
 それに続けと、塔矢の烏に暁生の真空刃がエホマキを苛む。
 怒涛の猛撃。ならば自分もと鳴未は魔法の矢を掌に生み出して。撃った。飛んだ。突き刺さった。
「さしずめ豆鉄砲ってとこだけど。効いてんのか?」
 そろりと鳴未が呟いた直後――ズズン、とエホマキは倒れ伏したとさ。

●御馳走様でした!
 そんなこんなで倒れたエホマキは、ニコニコ笑顔の虎鐡が自慢の愛刀で切り分けてくれました。お茶があれば尚良いのだろうが致し方なし。
「折角の美味い恵方巻きでござるから皆で楽しむでござるよ!」
「えーと……そうな、食えそうなとこはちゃんと食おうな」
 食べ物は粗末にしちゃあいけない! だって美味しいし!

 そんなこんなでレッツ恵方巻きパーティー!

「ところで依頼の成功条件って何だっけぇー? エホマキ食べること?」
 なんて言いながらとらはがじがじ恵方巻きを齧り、レイと暁生はリア充を呪いながら一口一口噛み締める。塔矢も複雑そうな表情をしながらもぐもぐしていた。
「バレンタインだってのにまあ、うん。……季節感的にはついこないだだし良いんだけど、チョコ渡す気分が吹っ飛んだな!」
 南南東の方を向いて美味しい恵方巻きを食べながら、明奈はからから苦笑を浮かべた。
「駆け出しとはいえアイドルだし恋愛禁止だしー、本命渡す特定の相手なんて、ねえ?」
 彼女の本命はファンの皆様。ねぇ、と話を振った方向には鳴未が神妙な顔付きで何やら独り言を呟いていた。
「……このエホマキ、もしかして今年の恵方から向かって来てたりしなかった? しないか……」
 恵方巻きは本来恵方を向いて、食べている間は黙っていなくてはいけないんだけれども。なんて、していると、明奈の視線にふっと気が付き。「お疲れ様」なんて労い言葉もそこそこに。
「あ、そうだ。門倉の兄さん、ワタシの曲も聴かない? アイドルとしてCDも出すからさ、その時はよろしくね!」
「えと……了解」
 きらりん☆ と言われた言葉に取り敢えず頷いた鳴未であった。

 まぁそんなこんなで、楽しいバレンタイン(笑)は酢飯の香りに包まれながら更けてゆく……


『了』

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
メルクリィ
「お疲れ様です皆々様、ご無事で何よりですぞ! 美味しかったようで何よりですぞ~」

 だそうです。お疲れ様でした。
 夜中に食べる系を書くと飯テロ的な意味で大変な事になりますね。

 ご参加ありがとうございました!