● 『……有罪か、無罪か?』 礼装に身を包み、男が問う。 「俺は、何もやっていない!」 問われた男は、無罪を主張する。 『と言う事だが……どうかな、弁護人?』 『面倒だから有罪でいいじゃねーか! 弁護しようにも、する必要を感じねぇ!』 弁護人は、無罪を主張する男を全く弁護する気がないらしい。 『今、息をしているのも罪だ! 死刑を求刑!』 そして告発者は、無茶苦茶な罪を持って被告人の男への死刑を求める。 カーン! 無造作に槌を叩く音が響いた。 『では、被告人には死刑を。――今、ここでな』 「え、ちょっ……待ってくれよ!?」 誰がどう見ても、不条理な法廷。 しかも裁判官自らが死刑を行おうというのだから、無茶苦茶にも程がある。 『……待つ必要はない。我等の元に現われた、その事自体が最初から罪なのだ』 ヒュン! という風切音と共に刃が走り、静寂に包まれる法廷。 『人間は、生きているだけで罪なのだよ』 死刑を下した裁判官が、小さく呟いた。 ● 「エリューションが行うにしても、無茶苦茶な裁判ですね」 あまりの無茶苦茶具合に、これはもう裁判ですらないと『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は言う。 生きているだけで罪。 息をしていても罪。 ――ゆえに、死ね。 裁判官は、そうやって法廷に現われた人間を殺す。 弁護人はまともに弁護などしない。 むしろ被害者が死ぬ事を楽しんでいる。 告発者は最初から死刑を望んですらいる。 この法廷に立った者には、『死』以外の結果は決して訪れない。 「現われたのは裁判官、弁護人、告発者のフェーズ2のE・フォースです。傍聴人はいませんが、警備員のような姿をしたフェーズ1のE・フォースが10人ほどいます」 このエリューション達は廃墟に現われたらしく、訪れた者を強引に裁く存在。 数も多く、半端な準備で戦いに臨めば苦戦は必至、下手をすれば返り討ちに遭う。 「場所は廃ビルで本来は暗いのですが、裁判が始まると相手に死刑を下すまでは明るくなります。裁判官の能力のようですね」 和泉がいうには、人払いの必要も、暗闇対策も必要はないらしい。 ならば、この無茶な裁判を行う法廷に立ち、彼等を逆に駆逐すれば良いだけの話だ。 「どうしてこんなエリューションが現われたのかは、わかりません。ですが……裁きは法があればこそですよね」 法廷に立った者に、死の裁きを与える裁判官。 彼等の裁きを止められるのは、リベリスタ達しかいない。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月19日(火)23:00 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●開廷 裁判所と呼ぶのもおこがましいと感じる廃ビル。 この場所は元からただのビルであり、どう考えても裁判所ではない。現われたエリューション達が『裁判!』と言っているから裁判所と呼称されるだけの、ただの廃ビルだ。 「うーん、このビルってE・フォースが出るような曰くあったりすんのかな」 ボロボロの内装を見渡した『デイブレイカー』閑古鳥 比翼子(BNE000587)は、このようなエリューションが現われる理由でもあるのかと考える。 しかし、ぱっと見ただけでは何もわかりそうな気配はなかった。 その理由を知ろうとするならば、やはり当のエリューションに問うた方が早いのかもしれない。……まともな答が返ってくるかはわからないが。 「タバコ吸っても構わないでしょ? だってここ廃ビルだもの」 そして『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)は咥えた煙草にライターで火を付け、軽く吸い込んだ後に煙をぷかりと舞わせていく。 彼女が『吸っても良いか?』と尋ねた相手は誰か。それは当然、倒すべき相手であるエリューションであり――、 『聞くと同時に火を付けている。なんたる罪よ』 開廷前から煙草を吸う杏に目を細め、これこそが罪だと告げたのは裁判官のエリューションである。 既に、リベリスタ達はエリューション達の待ち受ける虎穴とも言うべき場所へ、全員で踏み込んでいた。 『現行犯も現行犯だ! よって弁護の必要無し、価値すら無し!』 最初から弁護するつもりもないのだが、弁護人はリベリスタ達の弁護をする必要はないと高らかに宣言する。 『死刑だな、こんな連中は死刑で良い!』 一方では告発者が『死刑にしろ』と声を荒げ、裁判官の方を見やった。 「ふん、法の番人気取りか。今更重ねた罪を数える心算も無い。罪人と呼びたければ呼ぶがいい」 その裁判官を睨みつけ、口に咥えたキャンディーを舌で転がしながら、『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)はさも『やってみろ』と言わんばかりの態度を見せる。 無論、やられるつもりなどは毛頭無い。 「だが、お前等の法に従ってやる義務も無い。オレが無法ってヤツを、教えてやる」 何時でも忍ばせたリボルバーを抜き放ち、悪法を振りかざす輩を撃ち抜く準備も出来ている。 それはわざと挑発するかのように煙草を吸う杏や、裁判官を無視して周囲を見渡す比翼子、そして周囲に立つリベリスタ達とて同じだ。 『弁護も何も必要は無い』 静かに、裁判官が口を開いた。 カツンと槌を叩き、乾いた音を響かせた裁判官の判決など、最初から決まっている。元よりこの法廷に立った者に対し、下される判決はたった1つ。 『死刑だ』 訪れた者全てに死の裁きを下す。それがこの法廷のあり方。 「随分と理不尽な裁判もあったものだ。そんなに死の裁きを与えたいのならば、まずは自分を裁くんだな」 ならばまずは自らを裁けと、『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)は告げられた判決をそっくり返すと告げ、 「人が歴史を積み重ねる中で、洗練させていった人が人を裁く為のシステム。その昔はこの連中のような有様もあったけれど……」 やれやれと溜息をついた『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247) は、「この醜態を許す事は出来ません」と言葉を紡ぐ。 「悪法も法であるがそれすらも無い。芝居だとしても役者が三流、下の下以下だな」 そして『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)は、下された判決を軽く鼻で笑った。 ずらりと周囲に居並んだ警備員も含めれば、リベリスタ達よりもエリューションの方が数の上では勝っている。 パンパンと手にした警棒で手を軽く叩く警備員が一斉に襲い掛かってくれば、混戦は必至。裁判官達の能力を考えれば、苦戦するだろう事も想像に難くは無い。 だが、こんなモノを裁判だと認めるわけにはいかない。 「法によらぬ裁きは私刑でございます! 私刑は犯罪でございますよ! よって、裁判官様方は有罪でございます!」 逆に『レディースメイド』リコル・ツァーネ(BNE004260)が、その判決をエリューション達に叩きつけた時、両者の方針は完全に決まった。 『ならば、無罪を己が手で勝ち取ってみせよ』 再びカツンと響く、槌を叩く音。 「ある意味でこの世界の枠組みから外れたことを考えれば、自分自身は有罪死刑と言われてもさして反発もわかんが……」 咥えた煙草の火を消した『燻る灰』御津代 鉅(BNE001657)が、何時敵が襲ってきても良いようにと刀を抜く。 判決を下す者と、下される者。 否、この場合は両者が互いに判決を下そうとしているのか。 「あぶれたのはお互い様だ。アウトロー同士、空虚な裁きあいの応酬といこうじゃないか」 「わたくしどもが天に代わってお裁きしましょう!」 静かに鉅が、高らかにリコルが言った。 お前達を裁くと。 ――これは決して、裁判ではないのだと。 ●両者は異議を認めない 「まず一言言いたいのは、弁護人は弁護しないんなら退廷してもらえるかしら」 死刑を執行しようと迫り来るエリューション達を前に、そう言い放つ杏。 弁護人は弁護をする前から、弁護の必要は無いと言っていた。そんな弁護人よりも、もっとまともな仕事をする弁護人は山ほどいる事を彼女は知っている。 「アンタがもし弁護士だって言うんなら、その権利を剥奪させてもらうわ」 故に、こんなヤツには弁護士(だったならば)である資格も、弁護をする資格すらも無いのだと彼女が言うのは当然だ。 『やっぱ弁護する価値もねぇ!』 『では、何とするかね? 貴様等は全て死刑だ。いかに弁護があろうと、この判決は覆らん』 彼女に対しては当の弁護人が笑いながら応え、リベリスタ達に対しては裁判官が判決を下し、槌を叩く。 「この裁判は異議有りだ。そのまま判決を返すぞ、変身ッ!」 だが、そんな判決を素直に受ける義理も無いとする疾風が、裁判官の横っ面をガツンと殴り飛ばして『No』を叩き付けた。 『異議は認めない』 「黙れッ! 最初からまともに裁判やる気も無いのだろう? 己の罪を数えろ!」 判決を一切覆そうとしない裁判官と、異議を唱え続ける疾風の会話が続く。 「異議を認めないなら、再審もありえないと言う事か。いや……再審などさせんがな」 割り込んだ鉅は裁判官だけでなく周囲のエリューション達をも巻き込み、不幸を届ける月を作り上げた。 裁判官は異議を認めない。 そしてリベリスタ達も、裁判官の判決を認めてはいない。 「今からここは無法地帯だ」 白い帽子を被り直し、余裕を見せる福松が言うように、この場に法は存在しないのだ。 存在するのは押し付けられた悪法と、それに抗う無法のみ。 戦う誰もが理解している事だろう。 ――早い話が、相手を倒した方がこの時、この場においては法となる。 「だいたい揃いも揃って死刑死刑って、覚えたての小学生じゃないんだから……」 無機質な廃ビルに雷を迸らせ、杏はエリューション達のワンパターンな物言いに辟易している様子だ。 「はじめから結果が決まってる裁判なんて、ちゃんちゃらおかしいぜ。そんなのちょっと大げさで大人数な通り魔だ。あたしがおしおきしてやるよ!」 裁判官を両足で一本ずつ掴んだツヴァイサーを振りかざして切り裂いた比翼子は、そんなものはただの犯罪だと言い切る。 「歴史を重ねた先人の名誉にかけて、これ以上その『形』を穢させはしない」 そして時間をかけて洗練された裁判の形式を重んじるユーディスにとって、この裁判は決して許せない蛮行に過ぎない。 こんなエリューションが現われたきっかけは、なんなのか? エリューション達にも伝えたい事があるのではないか? 仲間達の勢いに乗って裁きの光を放ち、裁判官の身を焦がした彼女は、その理由を考える必要性を感じてはいない。 「――こんな蛮行を裁判とは、決して認めません」 理由がどうであれ、既にエリューション達は偉人の『名誉』を既に穢しているのだ。 騎士の末裔を名乗る彼女には、こうした存在を討つ事も騎士としての役目なのである。 『蛮行だ? 通り魔だ? よく言う、人間全て罪人だろうが!』 対して告発者は、戦っているリベリスタ達のみならず、全ての人間を罪に問う構えを見せた。 全員に『死刑』を求める告発は多くのリベリスタに不吉を届け、それこそが罪に対しての因果だと言いたげな表情を浮かべる。 その告発が、裁判の始まり。 『弁護する必要以前に、もう罪を重ねてるじゃないか!』 そして弁護人のやる気のない――元より最初から弁護するつもりのない言葉は、リベリスタ達の加護を打ち崩し、かつその力を減衰させるもの。 「なんとも厄介な……。それにしても、あまりに杜撰でございます!」 2つの攻撃から杏を守りきり、適当としか言いようがない『裁判』の形に憤るリコル。 だが、裁判にはもう1つの動きがある。 『静粛に!』 暴れまわる無法者達の動きを止めんと、響き渡ったのは凛とした裁判官の声。 「ちっ、危ねぇ危ねぇ」 余裕を見せていた福松ではあるが、この一連の流れから義弘を身を挺して庇う事が出来ていた。 もしも攻撃を仕掛けていたら、庇うべき義弘が支援を行えない状況に陥っていた可能性だってあっただろうものの、咄嗟の機転で彼を庇ったのは余裕があったからこその産物か。 「一番厄介なこいつを速やかに倒さなければ、勝ちは無いと考えていくぞ」 仲間達にもたらされた凶運と重圧を祓い、義弘はこの裁判官の存在こそが真っ先に倒すべきだと仲間達に告げる。 それは当然だろう、裁判官のもたらした静かな空気は、彼であっても祓えない静寂。 「ここからは援護を考えないといけませんね……」 警備員が放った銃弾や、振り下ろされる警棒とて重なれば威力は決して馬鹿には出来ない。 しかし、誰が誰を庇う。 この点において、リベリスタ達は勢いに乗りすぎていたのだろうか。 「俺が庇うか? ……いや、ヤツを倒す方が先だ」 「確かにまずはコイツだな。話はそこからだ」 裁判官に肉薄した鉅や疾風は、静寂に包まれた中でも裁判官の撃破を何よりも優先している。 「大丈夫よ、アタシが居るんだから、むしろこれで丁度良い位だわ」 一方で杏はその静寂を楽しむかのように、リコルの作ってくれたチャンスを逃さずに雷を奔らせる。 運良く先程に自身が起こした雷や、鉅が作り上げた月の威力も相俟って、警備員の数人を倒す事は出来ていた。 「罪だ罪だって、煩いよ! やましいことなんて、あたしには何もないもんね!」 攻め立てる比翼子の一撃は裁判官をしっかりと捉える事が出来なかったが、攻め立てる勢いは静寂に包まれても変わりはしない。 そこまでの勢いが、逆に仇となったのだろう。 『孤立しているヤツにまずは執行しろ!』 静寂を重んじるはずの裁判官の怒号が、飛んだ。 義弘は福松が。 そして杏はリコルが庇い、援護面でも火力面でも十分な力を残したままで戦闘を継続させている点は見事と言えよう。 しかし、傷を癒す役目も持ったユーディスは誰が庇う? この点において、リベリスタ達は攻撃に躍起になったせいもあり、彼女を庇う者はいなかったのである。 「俺が行こうか。ユーディスの姉さんをやらせるわけにはいかない」 「いや、抑えろ。ここで動いてあんたまで静寂に包まれたら、それこそ危なくなるぜ」 思わず飛び出しそうになった義弘を制しながらも、ユーディスを孤立させてしまった事実に、福松は思わず口に含んだキャンディを噛み砕いた。 幸いな事に、警備員の数は半減している。 こうなってしまえば、後は仲間達の活躍に期待する以外にはない。 「私なら、大丈夫です。この程度でやられるほど、やわじゃありませんよ」 加えてこの程度ならば何ともないと、ユーディスは叩き付ける様に振り下ろされた警棒を手にしたヘビースピアでしっかりと受け止めている。 (耐えてくれよ、ユーディスの姉さん) ケタケタと笑いながら死刑を求む告発人や、弁護をしない弁護人の弁護が戦場に響く中、義弘はユーディスの身を案じながら、裁判官の方へと視線を向けた。 静寂に包み込まれるのは、10秒だけ。 告発者の届ける不吉は、義弘がいる限りはある程度緩和する事ができる。 つきすぎた勢いによって出来た隙は、小さな穴だった事は間違いない。下手をすれば大きな穴へと変貌していた可能性もあっただろう。 だがそれをものともせず、リベリスタ達の攻撃は苛烈に裁判官を追い詰めていった。 「生きてるだけで罪? じゃあ、あんた等は存在する事すら罪ね」 「理不尽な事で被害を広げさせるわけにはいかない、食い止めて見せる!」 攻め立てる杏と疾風の一撃は、理不尽に対しての断罪と呼ぶのが相応しい。 杏の断罪は警備員を全て消滅させ、疾風の断罪はついに裁判官をよろめかせた。 『人間は滅ぶべきだ! 己の欲のためなら、平気で他者を犠牲にする! 自身に火の粉が飛びそうになれば、人間は平気で弱者を見捨てる! その弱者すらも、さらに弱き者を虐げる!』 叫ぶ裁判官の言葉は、人の世に絶望した人の言葉の代弁だろうか。 だからと言って、それが理不尽な判決を下して良い理由とはならない。 「とりあえず黙れ。言いたい事は、わからんでもないがな……」 放たれた鉅の気糸に締め付けられ、言葉にならない悲鳴と共に消え行く裁判官。 「枠外の存在が裁判ごっことは、つまらん皮肉だったな」 言いたいことはわかる。しかし鉅にとって、絶望を理由に理不尽を振りかざす判決は結局のところ『ごっこ』でしかないのだ。 『裁判官がいなくなってどうする! 告発者としてはは新たな裁判官を……』 「もう良い。法ってのは人を殺すためじゃなく、守るためにあるんだって誰かが言っていた。お前達にも本来はそうするべきなんだろうが、その理不尽さを見過ごすわけにはいかない」 そしてここに来て、ようやく攻撃に転じる事が出来た義弘の裁きの光を受けた告発者が、裁判官の後を追うように蒸発していく。 ほとんど時を同じくして裁判官と告発者を倒す事が出来たのは、杏の迸らせた雷があったからこそだ。 「俺もちゃんと頑張っていたぜ?」 加えて、義弘を庇う必要がないと判断した時に、福松が裁判官ごと警備員達をまとめてリボルバーで撃ち抜き、削る事に徹底していた部分も理由としてはあげられるか。 「杏さんを庇い続けた甲斐があったというものでしょうか?」 ともすれば、彼女をずっと庇っていたリコルの功績は非常に大きいものがある。義弘を守り戦線を維持しながらも、余裕があれば攻撃に転じた福松とて、目前に控えた勝利の立役者と言えるあろう。 「あぁ、助かったよ。残りはアイツだけだね」 それまでの礼をするかのようにリコルの肩をポンと叩き、杏はゆっくりと視線を最後に残った弁護人へと移した。 「これが世界の下した判決ってやつかしら?」 何時の間にか、彼女の咥えていた煙草は殆ど燃え尽きている。指先で挟んだ煙草を口から離した彼女の眼前では、 「仕事は怠けずきちんとやらないとな。弁護だってあんたより、あたしの方が上手くできるよ」 「それ以前に、弁護人というのもおこがましいと思いますけどね」 比翼子とユーディスが「これで終わりだ」と弁護人に畳み掛ける姿。 『罪人は罪人、そんな連中などに弁護の必要は……』 消え行く間際まで、リベリスタ――というより、『人間』への弁護を拒み続けて消えていく弁護人。 判決――E・フォースの消滅。 ●閉廷 「死刑なのはあんた達のほうだったわね!」 裁きの結果は、文字通り死刑だと杏は言った。 その言葉通りに、裁判官達はこの世界から消えていった。 だが、なぜこのような場所で裁判が行われたのだろうか? 「あいつ等は裁判官たちの思念だったのか、もしかしたら被告人のほうの思念だったのか……」 「もしくはここに、法律関係の事務所等でも入っていたのでございましょうか?」 残った廃ビルにエリューションが現われた理由を裏付けるものがないかと探す比翼子とリコルだが、そんな物はくまなく探しても影も形も見つからない。 唯一、理由となりそうなものは裁判官が消滅する前に残した言葉だろうか。 「全てに絶望していたような口振りだったからな。どっちでもあったのかもしれない」 比翼子の疑念に、その両方かもしれないと疾風は答える。 裁判官として人を裁いていたが故に、裁かれた者から報復を受けた。 その報復を人間全体の罪だと世界を呪い、理不尽な法廷を作り上げた。 そう考えれば、辻褄だけは合う。 「真相は闇の中か」 確かに辻褄は合うが、それが正解とも限らない。義弘の言う通り、真相はもう闇に包まれてしまっている。 「最初から死刑が決まっているなら、ゴタゴタ言わずに仕掛けて来りゃ良かったんだ」 エリューション達に敗因が、裁かれた理由があるとするならば、悠長に裁判を行ったからだという福松。 新たに取り出したキャンディを無造作に口に放り込み、彼は「仕事は終わった」と言わんばかりに真っ先に戦場に背を向けた。 「もしもまた現われるような事があるならば、今度はもっと『形』を大事にしてほしいものですね」 「まったくだな」 去り際、ユーディスと義弘は消えていった裁判官達にそんな言葉を送る。 法は罪無き人を守るためのものであり、決して苛烈に罪人を裁くためのものではないのだと――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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