●フィクサード その老人は戦いが好きだった。 圧倒的に不利な戦いに身を投じ、自らをギリギリに追い込んで血まみれになり、生き残る。その瞬間において、老人は生を実感できた。 ナイトメア・ダウンの激戦を生き抜き、疲弊したリベリスタに見切りをつけて闘争を求めるフィクサードとなった。幾多の組織を渡り歩いて抗争を繰り広げる。あるときは勝ち、あるときは負け、しかし死ぬことなく生き延びてきた。 気がつけば『雷帝』の名を受ける。その名に恥じぬほどの強さを老人は有していた。 共にある刀は無銘のアーティファクト。ただそれだけを友とし、老人は生きて、そしてそのまま朽ちる。 老人が求めるのはただ戦場。フィクサード組織の抗争など知る由もない。アークの名すら老人にとっては路傍の石同然だった。 フィクサードに属しているのは、単にその方が戦えるから。それだけだ。老人は戦場を与えられ、そこで刀を振るう。矜持などない。使命感などない。欲望などない。相手が弱かろうが強かろうが関係ない。ただ刀を振るう。 老人が刀を抜く。雷の音が響く。死体が増える。 老人が刀を抜く。雷の音が響く。死体が増える。 淡々とそれを繰り返し、そしてこれからも繰り返す。老人はそんな存在。 「……ぞっとしねぇな。あの切れ味」 「気をつけろよ。下手なこと言うとお前も黒コゲだ」 「うへぇ。斬られるのも痺れるのもごめんだぜ」 「しかしアークの連中驚くだろうぜ。けっけっけっ」 「カレイド・システムが万能でも……いや万能だからこそ、意味がある。 連中と同じように『切り札』があるなら作戦はいくらでも立てれるってもんさ。 さぁ、無駄口はここまでだ。ジジイに遅れたら本当に斬られるぞ」 男の言う『切り札』は考えるだに恐ろしい存在だ。しかし、今この場においては――直接関わる事になった『雷帝』に勝る脅威は無い。 そう、これから相対する事になるリベリスタ達を含めても彼はそう思うのだ。 雷帝の率いるのは四人のフィクサード。 放っておけば平和なショッピングモールは血に染まる―― ●リベリスタ 「これより始まるは血の宴(ブラッド・パーティ)。そんな招待状をアナタに。招待主は今をときめく有名人、蝮原からだよ」 集まったリベリスタがに向けて『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が封筒を渡す。わざわざ招待状風に作っているのが、彼の凝りようと言うか。 「場所はとあるショッピングモール。時間は朝6時頃。ちょうどサラリーマン達が出社する頃かな。そこに五人のフィクサードが現れ、道行く人に切りかかる。見えたのはそんな未来だ。 犠牲者は五十九人ほど。ショッピングモールの床が真っ赤に染まる。まさに血の宴だ」 うへぇ、とリベリスタたちは嫌な顔をする。だがこれはまだ起きていない未来だ。今からそれを塞ぐこともできる。 「そのフィクサードたちはこのルートを通ってやってくる。一番人通りが少ない場所はここの橋の上かな。朝日が昇る頃に行けばここで遭遇できるよ」 モニターがショッピングモール周辺の地図を映し出す。ショッピングモールから少し離れたところにある道。長さにすれば二十mほどの小さな橋をピックアップした。 「フィクサードの数は合計で五人。そのうち四人が『アークの知らない』スキルを使ってくる。接近戦のみだが、相応に強い相手だ。 で、最後の一人だけどデュランダルのスキルを使う老人だ。ただし強い」 は? あまりにも直接的な表現に、聞いていたリベリスタたちは思わず問い返した。強い? 「強い。一撃必殺がデュランダルの戦い方なら、その戦い方をひたすら突き詰めた戦士。それがこの老人だ。一対一は言うに及ばず。うまく連携して戦わないとこの数でも危うい。 使う技は『ギガクラッシュ』だ。ただそれのみを数十年幾度となく繰り返し、必殺技と呼ぶにふさわしいところまで昇華した。もはや僕らの知るのとは違う別の『ギガクラッシュ』といってもいい。 真上から振り下ろす日本刀の一撃がまさに稲妻のようなところから『雷帝』と呼ばれるご老体だ」 沈黙が降りる。小細工も何もなく、ただ強い。有利な点は数のみなのだ。どう戦えばいいのか……。 「幸いにしてこの老人、他のフィクサードと連携をとるという行動をとらない。他四人がピンチに陥っても助けようとはしないようだ」 そこが突破口となるか。正直難しいところである。 「今回の戦いは前回のように向こうが引いてくれるということはない。どちらかが全滅するまでの戦いになる。 危険な任務だけど、みんなならできると信じているよ」 伸暁は笑顔でリベリスタたちを送り出す。せめて戦う前から陰鬱な気分にならないように、と。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月30日(木)02:27 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●戦の始まり 朝日が昇る。横から来る日光に目を閉じながら、合計十二人のリベリスタたちはここを通るであろうフィクサードを待っていた。 エリス・トワイニング(BNE002382)が強結界を展開して人払いをし、他のリベリスタたちも各々のスキルで自らの戦力を高めていく。 噂に聞く老剣士。それを相手するには念入り前準備が必要だ。戦闘中に余分な行動を取っている余裕などない。癒し手は魔力を循環させ、武器で戦うものは気を充実させ、射手は集中力を高め。皆がこれから起こる戦いが今まで経験してきた以上のものだと認識しているのだ。 「来たぜ」 『Last Smile』ケイマ F レステリオー(BNE001605)の耳に入ってくる五つの足音。みれば橋の向こう側に人影が見えた。 黒いスーツを着た四人のフィクサード。そして一人の老人。 『雷帝』……そう呼ばれる老人。 がっしりした身体。すこし汚れた身なり。それだけを見れば少し頑強な老人だろう。毎日ジョギングをしている、といわれれば納得できそうな健康そうな老人である。 ただその全てを吹き飛ばすような何かをこの老人は持っていた。生命の本能と呼ばれるものが、この老人に近寄るなと全力で警報を出している。 「リベリスタか?」 老人が口を開く。そうだ、と応じたのは誰だろうか。 それ以上は何も言わず、腰に挿してある鞘から刀を引き抜いた。ただ無造作に立つその姿はまさに隙だらけ。だからこそ太刀筋が読めない。どこからでも攻めれそうで、だからこそ攻められない。 ここで引くわけにはいかない。ましてや負けるわけにはいかないのだ。 風が吹く。その風が止んだが同時、十六人の覚醒者たちは動き出した。 ●交戦 『雷帝』にまっすぐ走る『不退転火薬庫』宮部乃宮 火車(BNE001845)。他のフィクサードたちはそれを止めようとしない。火車はその手に炎を宿らせ、まっすぐにストレートを『雷帝』に叩き込んだ。力の限り炎を燃やし、思いっきり穿つ。 炎の拳のみを鍛え続けてきた火車にとって、『雷帝』は自分の完成形のようなもの。その格こそ違えどもこれはチャンスでもあった。一心不乱に炎を拳に集め、叩きつける。 「あたしは……誰かを守る為に、戦ってるの」 鷲の脚で地面を駆け、『スターチスの鉤爪』蘭・羽音(BNE001477)が大剣を振り上げる。充実した気迫をこめて叩き込まれた一撃。『雷帝』を吹き飛ばすには至らなかったが、その衝撃は確実に老人の興味を引いた。 「それが汝らが戦う理由か。ならばその意思ごと、斬り伏してくれよう」 火車と羽音が『雷帝』を抑えている間に、他のリベリスタも動いていた。 「さあ、とことん死合ってやろうじゃない! 覚悟は良いんでしょうねっ!」 『神斬りゼノサイド』神楽坂・斬乃(BNE000072)はチェーンソーを振り上げる。オーラを電撃に変えて一気に振り下ろした。反動が身体を苛むが気になんてしない。フィクサードのブレードナックルはその一撃を受け止めきれず、激しい一撃と電撃がフィクサードを襲う。 「そんじゃいくよー」 『ガンスリンガー』望月 嵐子(BNE002377)は気楽さを感じさせるほどの軽さで移動し、持っていたショットガンを乱射する。口調こそ軽いが移動先は射撃手たる彼女が普段位置する後衛ではなく、フィクサードの近く。壁となり『雷帝』のフォローに向かわせないつもりだ。 その意図を察し、舌を打つフィクサード。あわよくば、『雷帝』で傷ついたリベリスタを攻撃しようとしていたようだ。怒りを込めて望月をにらむフィクサード。魔力を込めた視線が心身ともに望月にダメージを与える。 傷ついた望月の前にいるフィクサードを倒そうと『贖罪の修道女』クライア・エクルース(BNE002407)が剣を走らせる。元フィクサードとしてフィクサードが戦う理由はある程度理解できる。自分も不本意とはいえ罪を重ねてきた。だけど、 「戦いとは生きる為に、そして守るべきものの為になされるべきものです」 彼女の剣は彼らに奪われる命を救う為のもの。連続で叩き込まれる剣は、少しずつフィクサードを追い詰めていく。 「なるほど。『雷帝』を抑えている間にこちらを先に倒そうという作戦か。俺たちも甘く見られたものだな」 「そうでしょうか? 雑魚相手ですからこの程度で充分かと」 「なんだと……!?」 リベリスタの作戦を看破するフィクサードに、『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)が応じる。体内のエネルギーを爆弾と化し、相手に押し付ける。指を鳴らすと同時、爆ぜてフィクサードに痛手を負わせる。そのダメージよりも雑魚呼ばわりされたことに怒りの矛先が向いた。 「実力は関係ない。雷帝と言う切り札に頼っている貴方方は雑魚だ」 反論の言葉は『弓引く者』桐月院・七海(BNE001250)の放つ弓により止められる。さらに、 「雑魚ですからこれぐらいでもすぐ倒すことができるでしょう……思考する必要もなさそうですね……」 うさぎの背後から魔力の矢を引き絞り、『甘くて苦い毒林檎』エレーナ・エドラー・シュシュニック(BNE000654)は言う。放たれた魔力の矢は狙い外さずフィクサードの肩に突き刺さり、膝をつかせる。 まず一人。このまま攻め続ければ、勝てる。そんなリベリスタが押し気味の空気は―― ガッ………ァァァァン! 落雷に似た音により吹き飛ばされた。 ●『雷帝』と呼ばれる者 (っ……!? これが『雷帝』の一撃か……!) 火車はアークのリベリスタとして幾多の依頼をこなし、かなりの戦闘経験をつんできた。老人の使う『ギガクラッシュ』とて知らない技ではない。むしろ老人の放つそれは他の人が放つそれと比べて差異などなかった。一挙手一投足、目をそらすことなどしなかった。 なのに避けれると思っていた刀は吸い込まれるように叩き込まれ、その一撃は意識ごと刈り取られそうなほど強烈。倒れそうになる火車を支えたのは、 「もっとだ! もっと! もっと……見せてみろぉっ!!」 戦いに対する意地。この戦いで何かを得ようとする彼の根性だ。とはいえ気力で全てが解決するわけではない。震える足でどうにか立っている火車。 回復用に待機していた後衛は、その様子にざわめく。余裕が在れば攻撃をと思っていたが、どうやらそんな余裕はなさそうだ。 そして黒服三人がブレードナックルを振るう。狙いは――嵐子。後衛職であろう彼女が最も倒しやすいと判断したのだろう。他の三人はできるだけ嵐子に攻撃を加えさせないような立ち周りを心がけていたが、常に動き回る戦場では限界がある。 結果、嵐子への集中砲火をとめることができなかった。一人が消えるような動きで背後を取り一閃を加えると、残りの二人がその視線で精神を苛む。背筋に氷の棒を入れられたような冷たさが走る。そのままフラり、と倒れ―― 「負けられないんだよ!」 倒れない。己の中にある運命を燃やし、戦場に留まる。 「その力が大勢の人を救うためにふるわれたなら、どんなに心強かったことでしょう」 『雷帝』の一撃を見て、悔やむような声を出す『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291)。しかし現実としてその稲妻は深く仲間を傷つけているのだ。 ニニギアが癒しの風を放ち、その傷を癒す。控えていた『水底乃蒼石』汐崎・沙希(BNE001579)らも回復に加わり、火車の傷はほぼ回復する。完全に、ではない。 並の相手なら安心できるだろう状態だが、目の前の老人は並の相手ではない。この状態でも一撃を食らえば倒れかねないのだ。それを自覚しながら、火車は『雷帝』に向けて挑発するようなポーズをとった。 『雷帝』はそれに応じるように刀を振り上げ、流れるように降ろした。紫電を感じたのはそのあと。火車はその一撃を受け、地面に倒れ伏す。 「火車っ!」 羽音がかけた声に反応するように、火車は地面を叩くように力をこめて起き上がる。 「良い機会だからよ……もっと見せろよ? 何度でも立ってやるからよぉ……!」 「その心意気や由」 老人はそんな姿に賞賛を送る。だが、その刃に感情は篭らない。ただ稲妻と、慈悲なき一閃でリベリスタたちに応じる。 「武力、知力、策謀、運命。持ちうる全てをもってかかってくるがいい」 ●剣戟の先に 戦いは大きく揺れながら、しかし大局を決するには至らない。。 『雷帝』の一撃を考慮し、火車と羽音は防御重視になる。彼らの目的はあくまで『雷帝』の足止めだ。仲間がフィクサードを倒すまで時間を稼げればいい。 リベリスタたちの勝敗はフィクサードたちをどれだけ早く倒し、『雷帝』のほうに合流するかにかかっていた。もちろんそれはフィクサードたちも同じ。目の前のリベリスタを排斥し、『雷帝』に傷つけられた者や後衛の回復担当を攻撃できれば、フィクサードたちの勝ちである。 「全力でぶっ潰すのみだ!」 そんな綱渡りの状況でも斬乃は笑みを浮かべてチェーンソーを振るう。死闘の中にあってなお彼女は微笑む。まるでそれを楽しむように。 フィクサードはその一撃を受け止め、睨み合う。言葉はない。ただ力を込めて、チェーンソー剣を押し込んだ。鮮血が舞い、後ろによろけるフィクサード。 クライアは目の前のフィクサードたちにかつての自分を重ねる。運命が少しでも違えば――あるいは違わなければ『雷帝』側に立っていたのはもしかしたら自分なのだ。例え自分の意図することではないとしても、拒否できず戦っていたかもしれない。 しかし剣は鈍らない。自分にとって一番大切なことを理解しているからだ。振るわれる剣舞は確実にフィクサードの体力を奪っていく。 しかしフィクサードも簡単には倒れない。戦線から離脱しようとした嵐子の一瞬の隙をついて背後に回り、ブレードナックルで切りかかる。その一撃で今度こそ地面に倒れ伏した。 残りの二人が瞳に魔力を込めて斬乃とうさぎを睨む。それに臆する二人ではないが、もとより神秘的な攻撃に対する耐性は低い。虚脱感が体を襲う。 「そこの貴方、これで……終わりです」 エレーナの放つ魔力の弾丸が傷ついていたフィクサードを倒し、うさぎが踊るようにカタールを振るってまだ立っている二人に切りかかる。深く傷ついた裂傷から流れる血は、簡単には止まりそうにない。 フィクサードはあと二人。しかしまた戦況は揺れる。 「ク……ソがぁ……!」 『雷帝』の一撃を受け、火車が膝をつく。最後、意識なき状態で拳をたたきつけようと振り上げるも、それはただ老人の胸に軽く打撃を加えたのみ。炎の残滓がわずかに老人の服を焦がす。 「人を食らう修羅となり、数多の戦を重ねればその拳は我の命を奪っただろう。 倫理に囚われるが故、リベリスタは脆弱哉」 常識に縛られたリベリスタを『雷帝』は脆弱と侮辱する。 「あんたは確かに強いけど、それだけだ! そんなものに、あたし達は負けてられない!」 「……集中して取り組むのは結構ですが……それが他者を巻き添えにするのは感心できませんわね」 そんな言葉に斬乃とエレーナが反論の言葉を返す。他のリベリスタも無言で『雷帝』を睨み返していた。 橋の上に風が吹く。それには血の匂いが混じっていた。 ●朝に轟く稲妻の音 剣戟が響く。『雷帝』の刀と羽音の大剣が打ち合う音だ。羽音の大剣は何度か老人を傷つけるも、それで老人を倒すまでには至らない。 二度三度剣を打ち合えば、羽音が疲弊する。それでも構えを解いたつもりはないのに、わずかな隙をついて稲妻が篭った一撃が叩き込まれる。 「仕舞いだ」 羽音に背をむけ歩を進める『雷帝』。その耳にカチャリ、と音が聞こえる。たとえるなら、大剣を杖にして起き上がるような―― 「……まだ、だよ」 「解せぬな。その身では起きても結果は見えたも同然。伏しておればまた斬られることもなかろうて。我と汝の技術差は圧倒的也。 問う。汝に勝算ありやなしや?」 『雷帝』の問いかけに、 「『雷帝』が……どんなに強かろうと、関係ない……。 血の宴は……絶対に……阻止する」 息絶え絶えに羽音は答える。相手の強さには屈しない。悲劇を止めるのがリベリスタだ。 それをたわ言と受け取ったか。老人は無言でトドメを刺そうと刀を振り上げ、 「私の糸をあなたの雷は切ることができるか……興味がありますね……」 エレーナが糸を放ち、その腕を止める。ギリギリと締め付ける糸。老人が止まったのはわずか一瞬。しかしその隙にニニギアを始めとした癒し手が羽音を癒していく。 「大丈夫、すぐに傷をふさぐわ」 「癒したところで同じこと。無駄な足掻きと知るがいい。 ……むっ!」 『雷帝』の横合いからクライアが迫り、剣にエネルギーをこめて叩きつけたのだ。そのあ威力に押されるように飛ばされる『雷帝』。 「無駄ではありません」 「さーあ! 派手に暴れるとするか!」 うさぎと斬乃もそれぞれの武器を『雷帝』に向けて、立ち尽くす。 フィクサードたちを片付けて『雷帝』のほうにやってきたのだ。傷つき、息も絶え絶えだがそれでも戦意は失われていない。 「あたしの刃とあんたの刃、どっちが上か……っ!」 斬乃は『雷帝』と同じように刃に稲妻を宿らせて切りかかる。『雷帝』の雷と交差し、派手に火花が散った。ニニギア達に傷を癒された羽音が剣を構え、エレーナが気の糸で締め付けながら魔弾を放つ。その威力によろめく老人。 『雷帝』はエレーナの糸を振りほどき、刀に稲妻を宿らせる。動くこと雷霆の如し。その一閃が斬乃の胴を薙ぐ。しかし負けるものかと運命を削り、立つ斬乃。 血まみれのクライアが連続で切りかかり、『雷帝』が捌いている隙をつき羽音の大剣が老人の胸を貫く。 「見事也。……だが!」 老人もまた覚醒者。修羅に生きた運命を燃やし、死の淵より返る。近くにいたうさぎに放たれる雷の太刀。うさぎは運命を犠牲に立ち尽くし、不可視の爆弾を精製する。 「貴方の一撃は凄まじい。でも、重くない」 ――そんな剣では倒れてやれない。その思いを込めて爆ぜる死の爆弾。 それが数十年の間戦いに生きた『雷帝』と呼ばれるフィクサードの最後。爆音が消える頃には、老人の命も消えていた。 ●稲妻は鋭く、されど結束は硬く 張り詰めた糸が抜け、リベリスタは地面に座り伏す。脱力が激しく、動くこともままならない。呼吸が荒く、心臓が激しく脈打ち止まらない。 重傷覚悟の不退転の作戦。それが功を為した結果だろう。その作戦ゆえに、怪我人も多いが。 始発電車が出発する音が駅のほうから響く。今日も一日が始まるのだ。 リベリスタたちは言葉なく拳を振り上げた。言葉なき、勝利の雄たけび。平和を守ったもの達の凱歌。 稲妻はもう轟かず、血の宴は起こらない。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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