●雪降る鳥居の元 深々と雪が降る。 今が冬とはいえ、この低温はありえない。しかし現実として雪は確かに降っていた。 雪は天からではない。鳥居の近くに立つある者から冷気が広がっていた。 白い髪。白い服。まさに雪のような女性。そして側を飛び交う白い蝶。 手にする刀の銘は『白羽』。氷を切り裂く鋭き刀。 この世界に受け入れられぬ彼女は、世界の守り手に狙われる。 彼女を取り囲むリベリスタはタイミングを合わせ、一斉に襲い掛かった。真正面から一人。右側から一人。そして後方から射撃。 女は迫る刃を払うように流して、一歩踏み込んだ。そのまま流れるように相手の胴を薙ぎ、そのまま刀を正眼に構える。剣道の試合に見られる一般的なその構え。基本に忠実なその構えは一部の隙も相手に与えなかった。 しかし勢いを止めることなくリベリスタは攻める。仲間を斬られた怒りか、あるいは攻めることで構えを崩して隙を乱そうとしたか。結果としていえるのは、その判断は性急過ぎた。いつ前に出たかわからないほど静かな一歩。それと同時に刀が突き出され、リベリスタの肩を刃が貫く。 わずか二呼吸わずか二歩。 しかしその刃の動きを捉えることができた革醒者はこの場にはいなかった。闇雲に攻めれば、確かにダメージは与えられるだろう。だがしかし、勝つとなれば楽ではない。 「失せなはれ。ザコに用はあらへん」 残された一人にかけられる言葉。見逃されたという屈辱を受けながら、リベリスタは撤退する。 彼らは怪我人を背負いながら、アークに連絡を入れた。 ●アーク 「討伐対象はアザーバイド。数は一体」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は集まったリベリスタたちに向けて淡々と説明を開始する。 モニターに移るのは白い和服を着た人型の存在だった。人型、といっても肌の色や質感から明らかにこの世界の存在とは異なるのがわかる。 「性格は戦闘狂。放置すれば被害は大きくなる」 古ぼけた神社に現れた異世界の存在。たった一体の相手だが、『万華鏡』は警戒レベルを高く設定した。 「相手の能力は単純。刀と冷気で攻めてくる遠近タイプ。速度と技で押してくる」 単純ゆえに、攻略法は一つしかない。実力で押し切るのみだ。 「相手は強い。だから皆、油断しないで」 イヴの心配とそして期待のまなざしを受けながら、リベリスタはブリーフィングルームを出た。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月28日(木)00:23 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 角度にすれば15度ほど。やや上がるような一閃。 「お前の力は目の前の敵を斬り伏せる為にあるようだな」 それを受け止めるのは『鋼鉄の砦』ゲルト・フォン・ハルトマン(BNE001883)の盾とナイフ。その二つ名の如く硬く前線に立ち、舶来の刀を受け止め、ナイフでそらす。 翻る刀を盾で受け止める。そのまま両者は拮抗し、にらみ合う。交錯する視線は共に鋭く、しかし仲間を守るというゲルトの意志と、すべてを切り刻むという冷たい石だけが異なっていた。 「俺の力は誰かを守る為にある。その為に俺は自分を研ぎ澄ませている」 「なら守ってみなはれ。この白刃から」 ゲルトの言葉に舶来が刃を持って答える。二度、三度。四度目を振り下ろす前に裂帛の気合共に剛剣がうなった。その一撃を放ったのは『咆え猛る紅き牙』結城・宗一(BNE002873)。 「俺の名は結城宗一。一介の剣士として相手させてもらおう。いざ!」 全力の一撃。舶来はその一撃に剣閃を重ねる。金属同士がぶつかり合い火花が散った。リズミカルに響く音は剣戟の響き。宗一の動きに合わせるような舶来の攻め。力では宗一が、速度では舶来が。わずか数合の打ち合わせで、互いの実力が知れる。 互いの足が絶え間なく動き、相手の間合を入れ替えていく。踏み込みすぎれば刃が走り、遠のきすぎれば相手に隙を見せる。牽制と攻撃と。互いの吐く息が荒々しく、そして白い。 「……参る」 宗一が大きく下がった隙を縫うように『百叢薙を志す者』桃村 雪佳(BNE004233)が走る。身を低くかがめ、鯉口を隠すように構えて――抜刀。軌跡を読まさない武技。抜刀した刀だけではなく、柄の部分でも相手を打ち据える。 「こんな流派、見た事はないだろう……我流だからな」 「悪くあらへん。せやけどまだ未熟!」 雪佳の刃に頬を傷つけられながら、舶来は笑った。修羅の笑みとはこのことか。戦いに興じればその分笑みが深くなる。アクロバティックに動く雪佳の動きに舶来の刃は少しずつ対応していく。少しずつ迫る刃に雪佳は身を凍えさせる。 「こういうタイプは個人的には好きじゃないけど、ね。方向性が私と完全に逆だ」 戦いに興じる舶来を見て『ソリッドガール』アンナ・クロストン(BNE001816)がため息をつく。それでも無闇矢鱈に人を襲わないだけましなのだろう。ともあれゆっくりと呼吸を整え、マナの力を蓄える。 「鼻血出るまで癒してあげるわ」 アンナの癒しの力は強い。神秘を嫌悪する彼女が神秘に関して強い力を発するとは何の皮肉か。それでも仲間や友人を守るために、この力は必要なのだ。だが、それでも。 (……それでも、届かない) 脳裏を過ぎる悲劇。失われた同僚の顔。駄目だ、今はやるべきことをやらなくちゃ。 「ただ戦いたいだけのアザーバイドっていうのはシンプルで悪くないわね」 アンナと同じく回復に徹する来栖・小夜香(BNE000038)。こちらは鬨の声を上げて刀を振るう舶来に関しては悪い印象を持たなかった。もっとも仲間を傷つけられて黙っている性分ではない。奏でる福音がリベリスタの傷を癒していく。 「……なんにせよ倒すしかないんだけどね」 フェイトを得ないアザーバイドは倒すしかない。そして相手も戦いを望んでいる。幸か不幸か、互いの目的は一致していた。 「……後の先を如何に捕るか。そういう戦いになるか」 徐々に加速していく舶来の足捌きを見て、『生還者』酒呑 雷慈慟(BNE002371)は頭の中で今後の展開を計算し、そう結論付ける。先々の先を取るには相手の心が読めず、先の先を取るには相手の挙動を読む余裕が無い。さりとて後の先がうまく取れるかというとそうでもない。 「動きが途切れる瞬間、そこを見極めねばな」 情報から思考する。それは雷慈慟の領域だ。相手の動きを糸で牽制しながら隙を探る。大雑把に分ければ刃の軌跡は九つ。そのどこに隙があるか。その分析を。 「此処で誰かと切り結ぶ約束でもしたのかぇ?」 「さてな。答える義務はあらへん」 札を手に『陰陽狂』宵咲 瑠琵(BNE000129)が問う。答えはにべもないものだが、その微笑と刀の動きがそれを肯定していた。明らかに誰かを斬るための動き。それが誰なのか、知るすべはないのだが。だがそれを知ったところでやること変わらない。 札を手に一定の距離を保ち瑠琵は走る。舶来の視線が他の誰かを向いていても、隙があるようには見えない。不用意に札を投げればそのまま切り伏せそうな、そんな威圧感を感じる。 「お主の世界では名乗りも上げずに始めるのかぇ? 一期一会の敵同士、墓標に刻む名ぐらい名乗るが良い」 「舶来。刀の銘は『白羽』。上位世界からやってきた悪鬼どす」 「風情ある相応しい銘だ」 『無銘』熾竜 伊吹(BNE004197)は名乗りに答えるように白い腕輪を手にした。その腕輪の名は『乾坤圏』。しかし伊吹はこれを名乗ることはない。銘にも来歴にも意味はない。大切なのは、この武器を使ってこれから何を為すか。 「行くぞ、相棒」 狙い、撃つ。腕輪は稲妻のような軌跡を描き、舶来の頭蓋を穿つ。身をひねるようにして致命傷を避けるも、続く攻撃が舶来を襲う。無骨だが堅実な一撃。 「舞を思わせる洗練されたそなたの剣とはまるで対極だな」 「そないなことはありません。そっちもいい『拍子』ですえ」 洗練された技術は一定のリズムを持つ。それは見る人が見れば一つの芸術となる。それを感じ取ったのか。 舶来が刃を下段に構える。防御ではなく攻めの構え。剣術に詳しくないリベリスタでも、その気配と気迫を感じ一瞬足を止める。 そのまま対峙するアザーバイドとリベリスタ。 近くで魚が跳ねた。水音が小さく響く。 動き始めたのはどちらからか。再び剣戟は繰り広げられる。 ● リベリスタは交互に接近する相手を入れ替えて、舶来の刃を一度に食らわないようにしていた。一度受ければ身も凍える寒さで足が止まる。その隙を突かれないようにするためだ。 「予想していたけど、容赦ないわねアザーバイドの攻撃は!」 「我闘う、故に我はあり、か……知り合いの言葉だけれど、彼女もそういう人なのかしら?」 そんな氷の拘束をアンナと小夜香が解除して回る。吹雪のような鋭く冷たい刃も、二人の献身と仲間を思う心が暖めていく。 人を癒す。それがホーリーメイガスの役目。だがその道に至るにはそれぞれの思いがある。 小夜香は妹同然の相手を失いそうになった時に力を得る。誰かを守るという使命感から癒しを得た。 アンナは力を得たことにより使命感を得る。誰かを失わないために必死に癒しの力を求めう。 まさに真逆。力を得るのが先か、あるいは力を得た後で思いが募るか。しかし癒しは同質。平等に仲間に降り注ぐ。 「この程度で当たるようではつまらぬ。避けて魅せよ」 開眼。状態異常の攻撃を避ける特技を持つ舶来に対し、瑠琵はあえて状態異常の攻撃をする。もちろん相応の準備を含んだ上でだ。しっかりと狙いこみ、そして札を投げる。相手の体の向き、避ける方向、そして癖。すべてを見切り符術を展開する。 「確かにこの程度。つまらぬ――」 舶来は投擲された札を一閃する。白刃が呪いを含んだ札を両断し、 「甘いぞえ。宵咲が当主、宵咲瑠琵を侮るな」 切り裂いた札の後ろにさらに札。舶来の視界から隠れるように仕込まれた二重の札。刀を切り返すには間に合わず、瑠琵の札は舶来の防御を崩し、不運を告げる。 「この中で、俺一人が格段に弱い事くらいは自覚しているさ」 その隙を縫うように雪佳が刃を抜く。 「だからこそ日々技量を研鑽し、より高みを目指しているんだ。そういう意味では、強者に挑むお前の気持ちも分からなくはない」 「ならば修羅になるかえ? 百人殺せば、その入り口に立てます」 「そんな修羅道に、俺は堕ちん……断じてな。既に手も刃も血に濡れているからこそ、力の使い方を常に問い続けているのだから」 「戯言やわ。せやけど活人もまた道。道を求めるのが求道なれば、あんさんもまた求道者や」 舶来は雪佳の言葉に答え、そして刃を重ねた。鋭く、強い一撃。それを真正面から受け止める雪佳。 「以外だな。一笑に伏すと思ってたぞ」 「矢面に立たぬものの言葉なら切り伏せてます。真に語るは言葉ではあらへん」 「ああ……刃同士で語り合うとしよう」 『白羽』と『百叢薙剣』。舶来と雪佳。ただ刃で会話を続ける。そして、 「忘れてもらっちゃ困るぜ!」 剣戟の合間を縫って宗一が雪佳と入れ替わるように剣を突き立てる。一撃一撃に裂帛の気合を乗せて刃を振り下ろす。 宗一の力が十とするなら舶来の力は七。純粋な破壊力なら宗一が勝る。 だがそれは、 「ふっ、流石にやるな!」 戦士として宗一が上だということに直結するわけではない。力で足りない部分を足捌きや技術で補い、同時に刀を振るい手傷を与えてくる。 「一騎打ちと相成らないところが残念だがな」 「気持ちは理解できます。先達として告げておきます。修行に出れば強者に会えますえ」 「……いや、だめだ。やらなきゃいけないことがある」 舶来の言葉に宗一はかぶりを振る。確かに強者との戦いは心躍る。でもまだ日本を離れるわけにはいかなかった。 「悔悟どすか? どうあれこの場に立つなら手は抜きまへん」 「悪いがそれはさせない」 『白羽』の一閃をゲルトの盾が受け止める。刀の動きは目で見てからでは追いつけない程速い。純粋に戦闘者としての実力では、確かにゲルトに分が悪い。 「お前は自分の力に自信があるか? 誇りがあるか?」 だがしかし『守る』という一点においてゲルトは負けないという自負があった。 「刃に生きるものどすえ」 舶来は答えとばかりに自らの刃を示した。それが自身。それが誇り。 ゲルトは白の刃を悉く受け止める。その盾で、その体で。傷つき、凍え、それでも不倒。攻撃は仲間に任せ、それを磐石足らしめるために全力を尽くす。 「これがハルトマンの男の生き方だ!」 傷つけるものと、防御するもの。対極の二人はしかし互いを嘲ることはなく、 「ならばそれを切り伏せるのが、最大の礼儀やね」 「お前の存在ははっきり言って迷惑だが、お前の在り方は嫌いではない」 しかし交わることはない。 「行くぞ」 静かに伊吹が破界器を構える。サングラス越しに相手を見据えて、手首で回転させながら間合を計った。相手の死角に回ろうと弧を描くように伊吹が走る。 投擲しようとすればそれを察して舶来はこちらに意識を向ける。視線を向けるわけではなく、体の向きがこちらに向いた程度なのだが、それだけでも伊吹には理解できる。こちらの動きを感じているのだと。 雪を踏む音。息遣い。仲間の視線と立ち居地。そういったものから察しているのだろう。踊るような動きの中にある細かな所作。それを見れば確かにこう自分を卑下してしまうだろう。 「俺の技自体は、ただ力をぶつけるだけの何の小細工もない代物だ」 ただ力をぶつける。しかしその正攻法を何年も続けた伊吹の経験は確かに存在し、 「だからこそ正面から対抗できるのかもしれんな」 その経験がベストのタイミングを導き出す。白い腕輪は舶来の剣閃の隙を縫う。一度目はその刀と打ち合って刃金を固定させ、そして追撃の一撃が舶来の肩を穿つ。正攻法ゆえの柔軟性。力をぶつけるがゆえの威力。 「自分に学習させたな」 雷慈慟は数度舶来の行動に妨害をかけながら、その度に思考していた。否、思考ならいつでもしている。その速度は舶来の刃よりも速い。数え切れない思考の末に『正解』への糸を導き出す。 「ええ余興やわ。喋りなはれ、学士」 「左足。攻撃の際に約八割そこから動く」 糸が繋がれば、そこから真実を手繰り寄せる。 「初動が読めれば大雑把だが五パターンだ。静観、刃を重ねる、唐竹、袈裟懸け、そして吹雪。右足の場合は大きく三パターン。体勢を入れ替える、吹雪、そして突き」 雷慈慟の指摘にほう、と驚きの声を上げる舶来。自分でも気づかなかった癖のようだ。 「指摘感謝。次の戦いに生かさせてもらいます」 「感謝はいらない。おまえに『次』はない」 雷慈慟は冷静に戦局を判断し、舶来に告げる。この戦いが最後の戦いだ、と。 「崩界への懸念は排除、駆逐する」 「吼えましたな」 舶来は雷慈慟の殺意を受けて笑みを浮かべる。 身を切るような寒さの舞台で繰り広げられる剣舞は、いつの間にか終盤に入っていた。 ● 舶来の動きは少しずつ速くなっていく。その足さばきも、刃の動きも。刃の冷たさと切れ味にリベリスタは少しずつ追い込まれていく。 「福音よ、響け」 小夜香の癒しが傷ついた者を癒していく。しかしその回復にも限界がある。回復を行うエネルギーが切れれば戦線は崩壊する。だが、 「問題無い。君の力が必要だ」 「さぁ、あと一息だから!」 雷慈慟とアンナがそのエネルギーを補充するようにリベリスタを癒して回る。小夜香はもちろん息切れしそうな前衛達も常に全力で火力を叩きつけることができる。 「納刀した。いかん、くるぞ!」 瑠琵は符術で舶来を押さえながら、その構えを注視していた。直接舶来と切り結んでいた者はその言葉に身を硬くす―― 「――っ!?」 油断したつもりはない。目を離したわけでもない。鯉口を隠して軌跡を隠しているわけでもなければ、驚くほど所作が速いわけでもない。むしろゆっくりとした動作だった。 本当に納めた刀を抜き、振るった。それだけの動作。派手な音も余分な神秘もない。ただそれだけの動作なのに。 「……基本を極めるとは、このことか」 リベリスタは誰一人、反応ができなかった。剣術の基本動作。それを突き詰めればこうなるのか。雪佳は再び刀を納めた舶来を見ながら、息を呑んだ。自分を庇っていたゲルトが、納刀の音と共にゆらりと揺れて倒れる。 「まず一人」 「いいや、まだゼロだ。 俺の名前はゲルト・フォン・ハルトマン。その姓、その名、その意味。それを刻んでやる」 不屈。それこそがハルトマンという男の生き方。運命を燃やしたその気迫に舶来は背筋を震わせる。この最下層の地において、強敵に出会えた喜びに。 「なるほど。基本動作を極端に精錬した技とはな。基本の中に奥義在り、か」 伊吹は舶来の技を分析しながら、その頭部を狙い破界器を投擲する。おそらくは強い精神集中が必要になるはずだ。その集中を乱せば連続では使えまいと踏んで。どの道、攻撃の手を止める理由はない。 宗一は自らの剣を握り締め、ゆっくりと前に出る。イメージにイメージを重ねる。相手の動きに合わせてどう攻めるか。重ねた集中を乱さぬように舶来に剣を向ける。 「お前のような使い手と剣を交えられたことを嬉しく思うぜ」 切りかかる舶来の刀の軌跡に合わせるように剣を振り上げる。激しい金属音が響く。宗一の一撃で、舶来の手から離れて宙を舞った。 「勝負あり……俺の勝ちだ」 宗一が返す刃をが振り下ろす。 「……御見事」 白の着物に、赤い鮮血が舞った。舶来は笑みを浮かべると、そのまま地面に倒れ伏した。 ● 「如何じゃ、舶来。楽しい人生だったかぇ?」 もはや命の灯火が消える寸前の舶来に瑠琵が語りかける。その答えとばかりに舶来は薄く微笑んだ。強敵と戦い満足だ、とばかりに。 「『白羽』といったか。良い刀だな。よく鍛えられている。お前の相棒だったのだろう?」 宗一は自分が弾き飛ばした日本刀を手にする。アザーバイドの死と共に刀は腐敗し始めていた。相棒の死と共に自分も滅びるとばかりに。 「ほんに……人生を共にした、良き相棒……」 そのままアザーバイドは息を引き取り、雪の残滓となった。白の蝶がその場を羽ばたく。 「雪に舞う蝶も風情であったが、雪は春を前に消える運命か」 伊吹が散り逝く舶来の残滓を見ながら、静かに呟いた。その残滓も、風に吹かれて消えていく。残された蝶も、薄れるようにように消えていった。 「俺はまだまだ未熟だ……だからこそ、仲間と力を合わせる」 雪佳は自らの未熟を知り、そして拳を握る。壁を知り、それを超えようと切磋琢磨するもの。それこそが強くなるということだ。 「彼女の魂に一時の休息を、そして彼岸でも続けるのならば良き戦いを」 小夜香はアザーバイドがいた場所に祈りを捧げる。なんとなくだが、あの世でも戦い続けそうなイメージがある。 (……がんばろう。私はまだまだ行ける筈だ) アンナは無事に終わった戦いを景気にして気合を入れる。誰一人欠ける事のない結果。それに安堵するように。 「Dホールは……なさそうだな」 「あの剣士のことだ。刀で斬ったのかも知れんぞ」 ゲルトと雷慈慟はアザーバイドがやってきたDホールを探していたが、目に移る場所には見当たらなかったため断念する。自然消滅したか、あるいは本当に刀で斬ったか。 ありえそうな事にリベリスタの緊張が解けた。まったくアザーバイドは常識はずれだ。 アザーバイドが消える。『白』の剣士がいた証は、もう世界にはない。 ただリベリスタたちの心の中にのみ、その姿が残っていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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