●チョコとジンクス 『その桜の木の下で、告白してOKされるとずっと一緒にいられるんだって!』 よくあるジンクス。そんなものにでも縋りたくなる恋心。少女はある男性に恋をしていた。思いだけでも伝えたくて。そしてもしも、もしも叶うのならば……。 そんな思いで呼び出した2月14日。けれど、その日は仕事があってというから、少し早めになってしまった。 「でも、思いを告げれるだけで……私は……」 手に持ったチョコと、手書きの『好きです』とだけ書かれたカード。これを渡せるだけで……。 「あんたじゃ、ない……」 「え?」 突然聞こえたがさついた声。木の脇からぬっと飛び出てくる隆々とした筋肉質の腕。悲鳴を上げそうになった首が絞められ。 ぼきり。 鈍い音と共に、どさりと倒れる音。そしてやってくる誰かの足音。 「あぁ……みつけた、わたしの、おうじさま」 ゴスロリドレスが風に揺れる。そして、やってきた男もまた、その命を落としたのだった。 ●そういう訳で、止めてください 「えぇっと、ひげ……き。悲劇を止めてください!」 なんで一瞬言葉を言い淀んだ。そういう表情を浮かべたリベリスタに、少女が説明を始める。言い淀んだのはまるでなかったよ! とでもいう表情だ。 「桜の木の下で告白して、OKを貰えるとずっと一緒に居られるっていうジンクスがある公園があるんです。これからの季節大活躍ですね! 実はそこにエリューションアンデッドが現れます」 エリューションアンデッド。その言葉に数人のリベリスタの表情が曇る。 「そこの公園の近くで一人事故で亡くなった子が居るのです。その子でしょうね。実は……その、問題がありまして」 問題? と首を傾げれば、意を決したように一気に喋り始めた。 「まず、エリューションアンデッドは一人です。フェーズ1。隆々の筋肉の手足を持ち、視線は熊もを殺せそうな純粋な乙女さんです。ゴスロリ服がちょっとばかりマッチョな体に似合わずぴっちぴちしてますけど、戦いに支障はありません。その両手と足から繰り出されるパンチと蹴りは人を殺せます。ただ何らかの不思議な力によってどれだけ激しく動いてもチラリズムですむ親切さです」 すみません、精神に支障が大ありそうなんですが!! という悲鳴は聞かなかったことにしたのか、さらに言葉が紡がれる。というか、むしろ見ますか? と言われたのを数人が拒否したため、なんとか想像で頑張っていただきたい。 「彼女……きっとその木の下で告白したかったんでしょうね。だから、木の下で今まさに告白しようとしている男女を狙います。木の下に居る女性に苛烈な攻撃を与えて殺し、そのお相手……男性はハグやキスやその他あんなことやこんなことをしたあと、やっぱり殺してしまいます。力加減ができない的な意味で。知能は勿論高くありません」 つうか、彼女と言ったか、今。男の娘ではなく、れっきとした女か?! という言葉に、そうですよ? と答える。 「彼女はれっきとした女性です。女性らしい扱いをされると隙ができます。女性も服装褒めたりとかすれば攻撃を少しぐらい手加減してくれるかもしれません。男性は……その、貞操の危機って奴です。でも相手は女性ですからある意味幸せです? まぁ戦うのに支障はない広さはありますし、ちょうど今から行けば悲劇は止められるでしょう」 まだ少女は来ておらず、悲劇は起こっていないのだという。ということは。ということは、である。 「彼女を引き出すために、囮作戦なんかは有効かと思います」 チョコなら用意しておきました。と差し出されたそれをみて、リベリスタ達は顔を見合わせるのだった……。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:如月修羅 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月13日(水)23:11 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●そこはジンクスのある所 『紫苑』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)が用意した工事案内看板を使い、囮以外のメンバーが公園の出入口にバリケードを作ってる中、四条・理央(BNE000319)が陣地作成の準備に取りかかる。 (「自分だけの王子様に憧れるのはよーく解る。けど、その為に取る手段は褒められたものじゃないね」) 今回初めての試みである。敵がいつでるかもわからない、色々試してみる価値があるだろうと考え魔力の溜めをこなしたらそのまま維持ができるかと移動ができるかどうかも視野に入れつつの陣地作成だ。無事バリケードを作り終わった面々はそれぞれ隠れて待つ。そんな中『男一匹』貴志 正太郎(BNE004285)ジンクスのある木の近くにちょうどいい木を見つける。これなら隠れても大丈夫そうだ。 (「第一印象はインパクトが大事だからな。出現と同時に華麗に颯爽と飛び降り、オレ参上!!」) さてはて、うまくいくか分からないが登ろうとしている脇では、同じように隠れている『ダブルエッジマスター』神城・涼(BNE001343)。その心境といえば。 (「桜の下で告白してOKされるとずっと一緒にいられるかあ。……いいなあ。俺も可愛い女の子に告白されたいなあ。そんでもってイチャイチャして、それを愛とか言いたいなあ」) 煩悩に溢れていた。若いっていいことだと思います。でもお相手が180cmの野郎じゃなかった、漢女である。しかも色々なものがぴっちぴち。 (「180cmのエリューションアンデッドかあ。……まじかー。やりたくないがやるしかないか。……畜生!? やってやんぜ!?」) なんとか決意を新たにする。これが乙女なら、乙女なら!! きっと凄く素敵な依頼だった! だがしかし、そんな漢女をレディーとして扱う人もいる。財部 透(BNE004286)だ。 (「ゴスロリのアンデットのレディーが相手ってわけか……筋骨隆々なのは………なるほど、可憐な乙女というよりじゃじゃ馬って感じだぜ………」) いやいやいや、視線は熊をも殺せそうな漢女ですが! じゃじゃ馬なんて可愛いものだろうか、とりあえず会ってみないことには分からない。まずは自分のなすべきことをする……。シエルはそう決意し、そっと身を隠す。 「告白でございますか……良きものですね……」 胸に手を当てそっと呟く。凛とした視線で囮を引き受けてくれた人を見る『刹那の刻』浅葱 琥珀(BNE004276)が小さく頷いた。 「告白が事故で叶わなくなってしまったのは可愛そうだよな。それでも犠牲を出すのは止めなきゃだ」 そう言いながら、桜の木の下の地面に集中し終えた琥珀が物質透過で桜の樹の近辺の地面に潜り隠れた。 「告白したかったというエリューションの想いには共感を。されど犠牲者が出て良い道理はございません……」 待機班はこれで全員が隠れることに成功した。あとは……視線の先には、折片 蒔朗(BNE004200)を待つ『この力は他が為に』今井 燈(BNE004292)の姿がある。 (「告白、ですか……私にはそういう経験がないのですが、好きな人に想いを告げる。素敵なことだと思います。死してなお、そういった想いを持ち続けるのは、とても素晴らしいことだと思います。……でも、その為にほかの人を傷つけるならば話は別です」) チョコの包みを持った手が震える。告白なんかしたことがないが、大丈夫だろうか。いつか本当に告白する日がきたら……くるかは分からないけれど。それでも、きっと今日のことは思い出の一つになるはず。そんな燈の元に蒔朗がやってくる。勿論幻視によって羽根は見えない。初依頼ということもあって、どこか緊張した表情だが、逆にそれが今まさに女性の元へ向かう男性としては可笑しくない表情だろう。 「お待たせしちゃったかな?」 「い、いえ……あ、あの……」 (「演技とはいえやっぱりちょっと緊張しますね……」) もじもじと言葉が続かない燈にとふんわりと微笑む。勿論演技しながらも周りの警戒は忘れない。もしも必要ならば蒔朗から告白する流れにするつもりだった。男性から行動しちゃいけない理由等ないのだから。 「ゆっくりで大丈夫ですよ?」 「……あの、これ……」 まさに差しだそうとした瞬間だった。 「女は、邪魔よ!!!!!!」 それは同時だった。漢女が木の陰から飛び出してきて燈の首を絞めようとするのと、蒔朗が燈を守るために割り込むのと、そして……。 「ちょおっと待ったぁあああああああッ!!!」 正太郎がばぁぁんと木の上から着地するのが。これは流石に想定外である。漢女の動きが完全に止まり視線は正太郎に釘付けである。 「王子様が、空から……ふってきたなんて……!!」 完全に王子様認定である。獲物を狙う目つきだ。つうか、よだれ、よだれでてる!! その際に地面に隠れていた琥珀も姿を現し、隠れていた面々が現れ包囲したが、一歩どこかしら引けていても誰も文句言わないと思う。だって明らかにじゅるりって音立ててよだれ拭いそうだもん。 かくして陣地作成の成功により一般人の目も気にしないで大丈夫である。色々試そうと思っていたが、陣地作成の知っていること以上はできないようだった。普通に発動しただけで良しとするべきだろう。 ●それが、乙女の戦い方でした。 漢女の視線がゆっくりと男性五人を舐めるように見る。つうか、舌舐めずりしながら見詰めていますよ!! ちなみに女子三人居るけど一ミリも見ようとしない、なんかこれはこれで寂しい気もするのはなぜなんだろうか、多分気のせいだけど。 「こんなに沢山の王子様がいるなんて! これはローテーションであんなことやこんなことのあ……」 おーっとこれ以上はやばいよ! というわけでさくーっとおでこにカードが突き刺さった。投げた張本人の蒔朗と言えば顔を少々赤くしながら漢女にと囁きかける。 「ちょっと恥ずかしいですけど、ハグくらいなら。あ、手が回らない……ち、小さくて済みません……!」 「そんなことないわ!! 貴方がハグできないなら私からすればいいのよー!!」 そんなこと言ったらめっちゃ標的にされるっていうのに! 突進してきた漢女は明らかにキスも迫っていた。 「あのっ、おれそういうの初めてなんで……好きな人とって決めてるんです。お友達から……っていうわけにもいきませんよね、困ったなあ……わっ だ、駄目ですー!」 ぶっちゅううと音がしそうな感じでハグだけじゃなくキスまで迫られる。おわかりいただけるだろうか、純粋可憐な男の子がぶっちゃけオカマだろうっお前ていうマッチョな漢女に抱きつかれキスを迫られているのである。見ている此方まで恐怖に震えそうなおぞましい光景だった。これから起こりうるであろうその光景に、男性陣に冷や汗が走る。 「キスとかは辞めてー!? 俺はまだ清い身体で居たいの!」 それは誰もが思う切実な思いであっただろう、涼は涙目になりながらブラックロア……獣の咆哮のような銃声を放つ艶のない漆黒の自動拳銃を構えた。的確にキスを迫る漢女の額を打ち抜くが、それでも止まらない勢い! あとちょっとでこのままでは蒔朗の純潔が散ってしまう!! 「もう、貴方ったらせっかちさん★ わかったわ、次は貴方に熱いベーゼを……!」 ばちこーん★ みたいな音がでそうな勢いでウィンクされた。でもその視線さえも獲物を狙うような鋭さだ。なんだそれ器用だな! 「やめてー?!」 (「……ええと。女子? いやいや、何か俺より強そうじゃん。あの眼光無理ッスよ!だってアレまじで獲物を狙う瞳……!」) 涼の悲痛な雄たけびが上がる。女性陣もそんなのを黙ってみては居られない、今は何とかぎりぎり堪えて居てくれているが、ぶっちゃけ時間の問題だ。涼さえも巻き込もうと動いた瞬間を逃す燈ではない! さっと割り込んで鉄槌を振りあげる。 「折片さんを離してください!!」 「女はおよびじゃないのよぉぉぉぉぉ!!!!!! あんたはすっこでなさいよぉぉぉぉおっぉ!!!」 だがしかし、流石に全身のエネルギーを溜めたので一閃されれば離れざる得ない。その腕は血に塗れたが、漢女の勢いは止まらない。燈を蹴り倒し、吹っ飛ばした後に狙ったのは琥珀だった、だって自分を見つめて微笑んでくれているんだもの。これは行くしかない! 「私の思いを受け取ってー!!」 漢女は結構こう見えても、戦いでずったずったに引き裂かれたゴスロリドレスが大切な部分と大まかな部分を隠してくれてはいるが、かなり壮絶なことになっていた。血みどろだし。これ、まじで暗闇の中とかでみたら一発で失神するレベルだ。 「初めましてお嬢さん。君の王子様じゃなくて悪いけど、ダンスのお相手をしてもらえるかな?」 そんな中でも笑みを絶やさない、流石だ、流石である! 「喜んで!」 差しだされた両手は全身から放つ気糸でぐるぐる巻きにされた。 「ちょっと、刺激的なダンスだけれど……君となら上手に踊れると思ってね。それに女の子が衣装を気にせず足を上げるのは良くないな? 可愛いレディにはおしとやかであってほしいぞ」 「そ、そうよね……! でも私止められないの! この熱い気持ちを受け止めてくれる貴方みたいな方ばっかりじゃないから……そこに居る女達とか邪魔ものは排除しないと」 ふわりと微笑む姿にメロメロである。縛られて麻痺っている今が好機! さりげなく女性陣をデスってるが皆の攻撃がばっしばっしと当たる。 気糸で再度絡み取ろうと瞬間を狙って、漢女が動いた。 「さっきからあんた痛いじゃないのよぉぉぉ!!!」 シエルを狙い素早い動きでダッシュする。ひらりとスカートの中が見えそうで見えないガチムチな足は、ある意味陸上戦士……違う、陸上選手のように見えなくもない。今まさにそシエルを絞殺さんと伸ばされた指先がずいっと入ってきた涼を捕らえる! メシャ、ボキィ! 抱きしめるのに聞こえちゃいけない音が聞こえた。戦慄が走る。 「涼様!」 シエルの悲痛な声が響き渡る。 「きゃー! 王子様ー! 私のベーゼで……」 「いやぁぁぁやめてぇぇぇ?! 汚れちゃう!!」 むっちゅううううと唇が差し出された。つうか迫ってきた。渾身の力でぶっ飛ばす。しかし、漢女はきゃぁ! なんて声だけは可愛らしく、実際は巨体がどぉーんと吹っ飛ばされていった。涼がどさりと倒れる。だが大丈夫だ! 理央の癒しの符がすぐに投げられ、その身を癒す。 「大丈夫?!」 全然大丈夫じゃないけど、可愛らしい女性に癒されたことによって涼の中の何かが癒された。あ、ちゃんと傷も癒されている、安心してほしい! 「ちくしょぉぉぉ女はやっぱり邪魔なのよぅ!! 私と王子様の邪魔をしないでちょうだい!!」 漢女が叫ぶ。涼が癒されたのを確認し、すっと背筋を伸ばすシエル。そこには癒し、皆を補助しようと動いているシエルの姿があった。その茶色の瞳は、誰一人傷つき倒させないという強い意志が見える。希薄な高位存在の意思を読み取り、その力の一端を癒しの息吹として蒔朗と燈にとかける。別に漢女の抱きつきにBS効果はないのだがシエルの優しきその力に、蒔朗の心の傷みたいな物が回復されただろうか。ふわりと舞う癒しの力が、体力だけじゃなく気力を奪われ気味だった皆を癒す。 「貴女に王子様? 現実見なさいよ。その腕、その脚、王子様を望むお姫様の手足じゃないわよ。むしろ、王子様に倒される悪役がお似合いじゃない? それに胸周りも全然女の子じゃないそんなのでよく王子様を求めるわね。天地が引っ繰り返っても無理な事を望むんじゃないわよ!」 心を鬼にして言い放つ理央。自分に返ってきそうだけども! と思うが漢女の反応は違かった。 「あんたこそ現実を見なさいよ! それが分かってるからこそ悪役のごとく男の人を狙っていかないといけないの! 分かる? 王子様は求めるだけじゃなくて力づくで奪い取る……無理なことを、やり遂げてこそ悪役! そしてそれが私のポリスィー!! あんたこそ黙ってるだけじゃ王子様ゲットなんてできないわよ!!」 私をけおとしてみなさいよぉぉぉぉと吠える漢女に、そっと差し伸べられる手。そう、正太郎だ。 「オマエに……、惚れたぜッ!!」 「な、なんです……って……!!」 まさかの惚れた宣言である! ちょっと何を言ってるか分からないと思うが、いや、凄く分かりやすかった。 「一目オマエを見たこの瞬間、オレのハートに恋の桜吹雪が舞い狂う……名前がねえんじゃ、わかりにくいな。ゴスロリだから……、よし! 略してゴリ子だ!! 何? 違う? なら、教えろよ! オマエの全てをオレに!」 「いいえ、貴方にならゴリ子でいいわ! 私の気持ちをうけとってぇぇぇぇぇー!!」 ちょ、お前それ本気でいいのかー!!!!! 味方の中でそんな気持ちが溢れ返っただろう。根性で引きちぎり、怒り付与さえも無視した漢女……改めてゴリ子が正太郎に抱きつく。ひしっと抱きしめ会う二人に割って入った影! 「正太郎、女性に向かってゴリ子は無いだろう。脳みそまで筋肉だからユーモアも足りないのか? それに名を聞くのならまずは自分から自己紹介するのが礼儀さ……俺は財部透、キミの最後の王子様さ」 きらって歯が光ったのは錯覚だろうか、否そうではない。なんかきらっきらしてた。イケメンってそういうもんですよね? 「おい、透……てめぇ、オレの恋路を邪魔しようってぇのか? へっ、貴様とはいつか決着をつけなきゃいけねえと思ってた。ダチでも容赦しねえ! ゴリ子は、オレの女だッ!! 仁義上等ォ!!」 「爆砕戦気、親友? 関係無いね、全力で掛かってこい、正太郎。こちらも全力で受け止めるぜ……俺はチョコの様に甘く無いぜ?」 「王子様が二人も……! 私のために争ってくれるなんて……ゴリ子感激!!」 緩んだのこれ幸いに正太郎が抜け、なぜか始まる青春劇。あれ、なんかゴリ子置いてかれるけど、二人の王子様に争われるのって乙女の夢ですもんね! よかったねぇと特に出てもいない涙を拭きながら、寸劇を見ているゴリ子に攻撃がばっしばっし当たる。 魔法陣から展開された矢だとか、背中に打ち込まれる弾丸だとか、鴉がその身を切り裂いていったりとかそんな感じである。それもふるぼっこ二度目。流石にこれには耐えきれず、ゴリ子がとうとう片膝ついた。っていうか、結構いい思いしてないか、この子。 「ここで……私も、終わっちゃうのね……王子様達と、もっと触れ合いたかった……!」 ぼろっぼろの服装がかろうじて、まだなんとかゴリ子を直視……? 大丈夫、まだ直視できる状態を保っている。そんなゴリ子の横に膝つき、囁きかける蒔朗。 「貴女の想いは受け取りました。……眠いでしょう?」 その瞳は慈愛に満ちている。それにうっとりと頷くゴリ子。 「そうね……眠い、わ……」 意識が朦朧としているのが傍目からも分かる。このまま、終わりにしよう。誰もがそう思った。 「桜の中に行くがいいさ」 「受け止めてやるよ、オマエを」 エネルギーが溜めこまれた武器で一閃する透と強烈な一撃でその身を殴打する正太郎。ゴリ子は抵抗せずにその攻撃……否、二人の思いを受け取る。 「ありがとう……おやすみなさい、王子様、た…」 最後まで言葉にならなかった。今回王子様達である男性陣が多かったお陰か、女性陣にあまり心の傷を負った者は居ないようである。けれども……。 (「私は観た目通りのモヤシの様な貧弱な体つき……貴女様の快活な健康美溢れる美少女の魅力には同性として……羨望の念を抱かずに居れません」) もう動かないゴリ子を前に、シエルがそう思う。 ●弔いの木の下 そっとそれぞれのやり方でゴリ子を弔う。 木の陰で隠れてぼんやり思う理央。 (「敵の気を引く為とは言え、色々心が痛い……」) 寧ろあのゴリ子に諭されたのだ。なんとなく心が痛い。その近くでは寸劇を披露していた二人が隣り合って立っていた。 「わりぃな……一緒には行ってやれねえ。だがな……貴志正太郎、オマエのことは、一生涯忘れねえ! オマエは、オレのオンナだッ!!」 いつまでも覚えていてくれる人が居るというのは、どんな形であれ幸せではないだろうか。隣でふっと微笑む透。 「さようなら、楽しかったよ」 その姿はどことなく笑みを浮かべたゴリ子を見つめている。血は燈によって綺麗に拭われていた。流石に服装はどうすることも出来なかったので、申し訳程度に直しておいた。ゴリ子に言われたことは全て、自分の不徳の成す所……全てを受け止めようと思っていた燈。非は謝罪しようとも。けれど、その機会は訪れることはなかった。琥珀もじっとゴリ子を見つめ、思う。 (「今度生まれ変わったら持ち前の努力でもって幸せな恋を掴んでほしい」) きっとその願いは叶うんじゃないだろうか、漢女にさえ生まれ変わらなければ。 「お持ち帰りされなくて……よかった……」 涼が心の底から思う。そうして、それぞれ祈りを捧げその場を後にしたのだった……。 数時間後。 「あの……私、貴方のことが……」 「俺も……君のことが……」 桜の木の下、一つの恋が始まろうとしていた。それは人知れず戦ったリベリスタ達の確かな戦果だった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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