●3人の探偵さん 最初の目撃証言は岡山だった。 今から一年ほど前に伝承上の鬼によく似た外見を持つアザーバイドが大挙して出現するという事件があった。リベリスタ達が結成したチームが幾つも出向き、それぞれ激しい戦いの末にこれを撃退しているのだが、その最中伊倉洞近くのレストハウスから1人の人物が姿を消している。身よりがなかったらしく捜索願も出されていなかったのだが、最近この近辺で消えた人物を捜している様子の者達が目撃されたのだ。 「そうですか。ありがとうございました」 これといって特徴のない地味なコート姿の男は丁寧に礼を言って立ち去っていく。母屋から門へと向かう間、学校帰りらしい学生服の少年とすれ違う。 「珍しいね。お客さん?」 縁側に回った少年は来客用の湯飲みを盆に乗せ立ち上がった母に何気なく聞く。 「探偵さんだってさ。こーんな田舎までご苦労な事じゃ」 「へー。誰かの浮気調査?」 「人捜しじゃ! もう、ぐじぐじ言うとらんと、はよーあがらんね」 「は~い」 言いながら振り返った少年の視界にはいつもと変わらぬのどかな風景しかなく、あのコート姿の男の姿はどこにもなかった。 「あんまりやる気が出ないなぁ~」 配島はだらしなくソファにうつぶせに寝そべっていた。ひょろろ長い手足は床に投げ出しながら、至って怠惰そうだ。 「じいさん、ガキ、小娘なんでしょ? やる気でないよ。これが美魔女やロリババアだったら仕事抜きでも会いに行くのになぁ」 「そんな事を言える立場ですか? 配島」 ダークスーツ姿の若い男が神経質そうに縁なしの眼鏡を指先で直しながら言った。 「いぢわるだなぁ、浅場は」 配島は知ってる癖に自嘲する。実際、失敗続きの配島は三尋木凛子の気分次第で何時始末されてもおかしくない……というのが組織内のもっぱらの噂であった。当然、幹部から末端に至るまで、配島への風当たりは強くほぼ居ない者として扱われている。 「意地悪ですか? まだ貴方を生者として扱っているこの私が?」 「あ、うそ嘘、ごめん。だって、チャンスなんでしょ?」 無言でうなずき立ち去る浅場の背に配島はごく軽く、ありがと、と言った。 ラーメン店のテーブル席にくたびれたコート姿の男女が座っていた。昼時の店内は混雑していて、誰もこの3人に注意を払う者はいない。 「ボクはもう帰った方が良いと思うよ」 か細い少女の声が言う。 「そうだね。久蔵さんには悪いけど、篝火ちゃんはもう……」 「わかっとる。そんなことはわかっとるがじゃ」 しわがれた老人の声は不確かな状況証拠だけでは里に帰れないと言う。 「里を出たって身内は身内だからね。お昼食べたら、もう少し調べようか」 若い男の声が言い、残る2人も賛同したようだった。 ●メトセラの末裔 「最初は岡山。でもしばらく目撃されなかった……でも、今月になって新宿の近くに来たみたい」 ブリーフィングルームに姿を見せた『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はいつも通り淡々と言う。 「慣れない場所だから手間取っているみたい。でも、すぐに情報を掴むと思う」 イヴは死んだ谷中篝火を探す『探偵』達の事を伝えた。そして、彼等が本当は谷中篝火の親族であるとも告げる。つまり家出人を親戚が捜しているというごくごくありふれた(?)シチュエーションというわけだ。谷中篝火は岡山で姿を消した後、代々木八幡に部屋を借り新宿で働いていた。だが、ノーフェイスであることが発覚しリベリスタ達が始末をしたが遺体は三尋木のフィクサードに回収されている。 「谷中篝火の情報が欲しい親戚さんと新しいサンプルが欲しい三尋木は必ず接触する。そして戦闘になる。でも、そう言うのは迷惑なの」 神秘は秘匿するもの……おおっぴらに都会で大立ち回りのあげく大惨事とか、到底容認出来かねる。 「こんな時だけど、誰か目立たない様にしてくれる人……募集中」 イヴは資料の入った封筒を差し出し、アークを代表して行って貰いたいと告げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:深紅蒼 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月14日(木)23:12 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
■サポート参加者 4人■ | |||||
|
|
||||
|
|
●人捜しの人捜し 「これが配島か」 アークの誇る膨大なデータの中にはこれまでリベリスタ達が手がけた多くの事案の詳細と、それに付属する視覚資料がある。今回の参加者達から大まかな情報を教えられた『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)はその資料の中から求める物を探し当てていた。三尋木のフィクサード、配島の姿形だ。脱色し艶のない長く無造作な髪、痩せて貧相な身体。これで三尋木では古参のフィクサードであり、数々の失態を演じながらも未だ粛正されることもなく、行動の自由を与えられているらしい。よほど配島が組織内で大物なのか、それとも三尋木凛子の統括力が甘いのか。 「なるほど、性格破綻者らしい面構えだな。だが、これならば忘れる事も見間違う事もあるまい」 ユーヌは資料を片づけ本部を出た。同じ『任務』を受けた『仲間達』はおそらくもう現地に向かっているか到着している。 「……急ぐか」 自分の言葉に促されるようにユーヌの歩調はごく僅かだか速くなった。 ●戦場は都会の更地 「ここ、いいかもしれないねぃ」 アークの情報の中には問題のラーメン店付近の地図もあった。それを手にした『灯色』アナスタシア・カシミィル(BNE000102)は広い更地の端に立っていた。どうやら少し前までは有名な企業の社宅があったらしいが、今は売却され建物は取り壊されている。真新しいフェンスには近々賃貸マンションを造るらしい事が表記されている。 「ラーメン屋さんのすぐ近くだしぃ、ちょっと誘導したらすぐにここまで来てくれそう……だといいねぃ」 と、独語を紡いでいると『アクセス・ファンタズム』から連絡が入る。 「え? 見つかった? わかったんだよぅ」 今すぐ行くと告げるとアナスタシアは身を翻した。炎の様な破魔色の髪が揺れてなびく。 ●篝火の終の棲家 「やっぱりアークって優秀だよね」 まだ朝日も差さない早朝から谷中篝火が住んでいたアパートに張り込んでいた『やわらかクロスイージス』内薙・智夫(BNE001581)は、3人連れのコート姿の人影が近づいて来るのを視界におさめると極小さい声で言う。かなり流行遅れでくたびれたコートを着た3人は、壮年の男、若い男、そして若い娘で何かを探しているようにゆっくりと歩いてくる。だが、こちらから姿を現すとあからさまな警戒の様子を隠さない。 「キミ達だれ?」 「しっ、下がってミサキちゃん」 若い娘と若者が身構える中、壮年の男が無言で前に出るとそのまま路地に入っていく。 「久蔵さん!」 「危ないよ、おじさん」 若い2人は声を殺して無謀に見える連れの行動に制止の声をあげる。だが、壮年の男はその場にいた全員に小さな仕草で『ついてこい』と告げ、さっさと路地に姿を消す。 「わし等を探していなさったのはお前様方か?」 「アークだよって言えばわかるかな?」 深くフードをかぶっていた『破邪の魔術師』霧島 俊介(BNE000082)のまだ少年ぽさを残す素顔を露わにする。 「さっきからボク達の事、尾行してた?」 路地に入って若い娘がとがめる様な口調で言う。 「な、篝火について知りたくねぇ? 一通り説明できるくらいは情報は俺は持っているはず」 俊介の言葉に若い男が厳しい表情を浮かべる。 「情報は欲しいけど鵜呑みにはしない。だから、裏付け調査をするけどそれでもいい?」 「今だけでも大人しくしてくれるなら構わないぜ。ぶっちゃけ、あんた達と戦いたくない。物騒な雰囲気、俺は嫌いなんだよ!」 俊介は本心だと強調しつつ言う。 「ただ、今はまだ長い物語を話す時間がありません。谷中篝火さんだけでなく貴方達も狙ってる組織があるのです」 俊介の言葉を引き継ぎ智夫が言った。 「どういう事ですか?」 若い男が気色ばむ。まるで不吉な予言を言う占い師が恨まれるように、危険を教えた智夫へと食ってかかった。 「今はその時間がありません。皆さんの安全を確保する為協力して下さい」 「それだって信用出来な……」 若い娘の言葉を壮年の男が遮った。 「わし等は何をすればいい?」 「久蔵さん……」 「そのコートを脱いで下さい。申し訳ないけど目立ちすぎますから。で、こちらを」 智夫はごくありふれた量産品のジャンパーと帽子3人に差し出した。 「我々があなた方に偽装して引きつけます。時間が無いので詳しい話は後でいいですよね」 言いながらも『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)は若い娘に手を伸ばす。 「何よ」 「言わなきゃわからない? 察しなって……もう面倒くさいなぁ。えっと、そのコートをわたしに渡して」 言葉の後半をことさらゆっくりと噛んで含めるかの様にあばたは言う。 「……ムカツク」 「ミサキちゃん! そんな悪い言葉を使っちゃいけません!」 「そうじゃ。ヤバイとオニとムカツクとアリエナイは禁止用語じゃ」 娘の連れである若い男と壮年の男が口を揃えて小言を言う。 「早くして! うちのフォーチュナが、このままだと街中でドンパチになると言ってまして。それ、うちにとって凄く困るんです」 「我が主!」 あばたは『必殺特殊清掃人』鹿毛・E・ロウ(BNE004035)の呼びかけにもチラリと視線を向けただけで話し続ける。 「フォーチュナ?」 衣服を取り替えている最中であった探偵3人がいぶかしげな表情を見せ、動きが鈍くなる。 「とにかく!! 今は危険なので指示に従って欲しい。着替えを早く。安全が確認出来れば我々が提供出来るものはなんであれ差しだそう。情報も我々の知る真実も」 少し早口でロウがせき立てた。実際、フィクサード達の動向がわからない状態では、いつ大騒ぎが起こってもおかしくはない。 「急ぎましょう」 智夫や俊介があばたとロウ、そして『Friedhof』シビリズ・ジークベルト(BNE003364)の支度を手伝い、即席ながらも探偵3人の替え玉へと仕立ててゆく。 ●ラーメン店の表と裏 「はいはいアークです。悪いんだけど君たちが追っかけてる探偵君たちを守れって言われたんだよね。ここに入りたかったら僕らと戦ってもらうんだけど、それでもいい?」 帽子の下にご丁寧にフードをかぶり、さらにサングラスまでしていた男は存外若い声で言いながら、その人相を明らかにする。 「御厨だ!」 「なんだってこんな所に御厨が!」 そのフィクサード達はそれ程機転が効くわけでもないらしく、アークの有名リベリスタの出現に本気で驚いているようで、完全に動きが止まってしまっている。 「うわっ、なにその素敵な嫌われ方! 僕、嬉しくなっちゃうじゃん」 黄金の瞳に妖しい喜悦の色をにじませ『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)は嗤う。 「人気者じゃない。よかったね」 フィクサード達の反応を見て『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)がニッコリと意味深長な笑みを浮かべる。 「褒めてないよな、それ」 「さぁね」 自然とぎこちない笑い顔で微笑みあう夏栖斗と杏。 同じ頃、ラーメン屋の裏口でも自己紹介が行われていた。ただ、通常初対面の自己紹介をする時には多少なりとも和やかな雰囲気や、今後の友好関係を気付こうとする配慮があるものだ。だが、今にこやかな笑みをたたえながら『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)がしているものには一切存在していなかった。 「初めまして。アークの設楽悠里だよ」 「アークだと?」 「おい、したらって」 「あーあの、金髪イケメンっていけ好かない野郎の事だろ」 「おぉー!」 数人のフィクサード達が得心した顔をでもう一度向き直る。畏怖とやっかみの混じる奇妙な表情をどう受け止めればいいのだろうか。けれど悠里は笑みを崩さずフレンドリーな様子で話し続ける。 「君たちも配島って沈む船に乗ってないで乗り換え先を探した方がいいんじゃない? ここで命を落としても詰まらないでしょ?」 笑顔のまま淡い殺気を混ぜてやる。案の定、フィクサード達の様子に怯懦が加わる。頭の悪そうな者達だが、殺伐とした世界に生きる術まで鈍いわけではないらしい。 「なるほど、これがフィクサードとのご挨拶ってわけなのね……ま、しっかり勉強させて貰いましょ」 裏口を見下ろせる高い場所に身を伏せながら『尽きせぬ祈り』シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)がつぶやいた。 「やっと来たわね」 同じくラーメン店付近で身を隠していた『炎髪灼眼』片霧 焔(BNE004174) は、ニセモノの探偵3人が近づいてくるのに気が付いた。どうやら夏栖斗と悠里の時間稼ぎのおかげでラーメン店に被害が出るのは防げた様だ。 ●強結界の中で アナスタシアが好条件だとしたフェンスに仕切られた建築前の更地で、まんまと替え玉に誘き出されたフィクサード達は正体を現したアークのリベリスタ達にほぼ壊滅状態にされていた。 「あれ、もう終わりそう」 「上だ」 少し遠くから声が響くのと焔の警告はほぼ同時だった。かなり久しぶり……でも忘れない掠れ声を間違う事はない。配島は隣の家の屋根からアナスタシアの強結界を張った敷地内のフェンスへと飛び移る。 「噂の配島くんの登場かな?」 悠里はボロボロになって降伏寸前だったフィクサード達の態度の変化を興味深く感じながら言った。彼等の表情には安堵と恐怖、2つの感情が混在している。もう一押しすれば均衡が破れて寝返るか、それとも自暴自虐になって襲いかかってくるかもしれない。 「よー、配島。超久しぶり。元気? 俺は元気だよ!」 俊介の気さくな言葉掛けにアナスタシアは目を見張る。配島相手にはさすがに……と、思いついても止めた行動であったけれど、いっそ俊介の様に言葉にしても良かったのかもしれない。思わず苦笑がこぼれだす。 「なんだよ」 「あ、ごめんねぃ」 口を尖らせる俊介に詫びの言葉を言うがどうにも笑いはおさまらない。 「あんたの髪はいい色じゃな」 「はふぅん?」 不意に壮年の男がアナスタシアの髪色を褒めた。場所柄をわきまえないと若い2人に突っ込まれるが男は平然と胸を反らす。 「里の者はその色を尊ぶ」 「炎の色は破魔の色?」 「はいはい。すみません、久蔵さんが変な事を言って」 若い男に詫びを言われアナスタシアは盛大に首を振る。 「褒められたんだよねぃ。嬉しいだよぅ。ありがとう」 「いや、なに」 男は照れて下を向く。 その間も少しずつ近づいてくる配島を凝視していたユーヌが口を開いた。 「なるほど、あれが配島か。幸福などとは縁遠い貧相な相をしているな……意気揚々と虎穴へようこそ。何もかもお粗末だな?」 ユーヌの淡々とした言葉に配島は胸を押さえ痛そうな顔を作る。 「キツイな。本当の事だからね。まったく浅場が今ならアークも手薄とか言うもんだから。そっか、コレも罠って事? 嫌われてるなぁー」 途端、配島の細い目が見開かれた。 「智夫君が守っているのが僕達が探している谷中篝火の親戚?」 「……黙っていてください」 智夫は低い小さな声で3人の探偵達に指示をする。 「そいつ等が篝火を殺した犯人って知ってて一緒にいるのかな? ちなみに彼女の身体は僕が持ってる」 「何じゃと?」 「どういう事だ?」 「ボク達、かが姉の仇と一緒にいるってこと?」 ありふれた服装に変わった探偵達は黙っていられない。思わず発する声に配島はにんまりと笑った。彼等の言葉がアークと探偵達の危うい関係を告げてしまっている。 「ね、主。あいつにこのまま喋らせておくと面倒でしょ。僕としちゃあサクッと焼いちゃって掃除したほうがいいと思いますが、どうでしょう?」 ロウは世間話でもしているかのような気軽さで配島も含めたフィクサード達の殲滅を主であるあばたに進言する。 「だめ! あいつにはまだ聞きたい事があるよ!」 「本当にあんた達が篝火を手に掛けたのか?」 「今、教えてくだされ」 先ほどまでとは違う強い警戒のこもる瞳で探偵達が言う。 「……本当だ。ごめん、嫌なことを教える形になってしまって」 「酷いよ!」 夏栖斗の頬を打とうと手を挙げた探偵の娘だが、無抵抗な悠里に前に立たれ壮年の男の胸に飛び込んで鳴き始める。 「もう随分と減っちゃったけど、今ならまだ残ってるよ。要る?」 ごく軽い調子で言う配島がフェンスから降りると、彼等探偵を守るようにあばたが前に出た。 「どうして?」 「お前らの為じゃねえ、わたしらの負担を減らすためだ」 あばたは若い男の問いに素っ気なく答える。 「かれらに選択の自由はないの? 僕はね、篝火さんの身内の人に話しているんだよ」 「わしが行こう。ハヤトは里に報告をし、ミサキはこのお人等と一緒にいけ」 「久蔵さん!」 「おじさん!」 「我ら3人、全滅の憂き目に遭うのだけは避けねばならん。最悪でも誰かが残る」 「わかった」 ハヤトは反論せずきびすを返してこの場から走り去る。 「わしは篝火の大叔父じゃ。遺体を引き取る資格があるじゃろう?」 「DNA検査でもすればだいたいわかるだろうし……いいですよ。行きましょう」 配島は倒れていたフィクサード達を乱暴に足でこづきながら、壮年の男に手招きをする。 「だめだ!」 「行かせられないよ」 夏栖斗と悠里がいち早く反応し制止しようと動く。 「だめ! おじさんを止めるのはボクが許さない」 だが、ミサキと呼ばれた若い娘が歩き出す久蔵の前に立ち塞がり両手を広げ、とおせんぼうする。 「あのじいさんが死んでもいいのかよ。身内なんだろ? 確実に死ぬ! いや殺されるぞ!」 「久蔵さん! 戻って!」 ミサキに制止されながらも夏栖斗は叫び、悠里が手を伸ばす。けれど、久蔵は首を横に振りフィクサード達に取り囲まれた。 「……アークに寝返る気は無い、よなぁ」 俊介の言葉に配島が振り返る。 「僕は根からの性格破綻者でたちの悪い愉快犯だよ」 「でも覚えておいてよ。俺はいつでも配島が仲間になることを望むよ」 配島は久蔵の腕を荒っぽく掴み、何も言わずに去ってゆく。 「ロウ!」 「承知!」 あばたのロウの主従が後を追って走り出すがすぐに戻ってくる。わずかに顔を横に振るのは見失ったと言う事なのだろう。 「よかったの? あの人、何をされるかわからないんだよぅ」 「あの外道に人体実験のサンプルをくれてやったようなものだろう」 心配そうなアナスタシアと淡々と響くユーヌの声が耳に入ったのか、一人の残された娘にはもう限界だった。 「わからない! わからないよ! そんな事!」 ミサキはしゃがみ込んで泣き出した。 「ごめんね。ちゃんと教えるから。篝火さんの事、そして篝火さんを狙っていたあいつ等の事」 泣きじゃくる娘の背を智夫は優しくそっと撫でた。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|