●鋼の心を持つ獣 機竜。 それは上位チャンネルより来訪したアザーバイドであり、未確認金属生命体の総称である。 彼らは総じて金属の外殻で覆われ、ハ虫類に近いフォルムを有している。 独立した知能をもち、上位チャンネルではこれを恐るべき技術で制御し兵器利用しているが、すべての機竜を思うままに操れるような技術は存在していない。いや、我らが知らないだけだろうか。 どのみち、ろくなものではないというのが正直な感想である。 話を戻す。 機竜は独自に戦闘能力を有し、確認されたすべての機竜には機関銃やミサイルランチャーといった火器が搭載されている。更には飛行能力を有し、巧みな空中戦闘を可能とした。 彼らは何者なのか。 何のために生まれたのか。 いかなる経緯でこの世界に落ちてきたのか。 ここまでの戦闘能力を持たねばならなかった理由とは何か。 それは、未だ解明されていない。 『民間神秘警備隊エンジェルガードの報告書より抜粋』 「新型が発見された? この世界に現われた機竜はすべてアークのリベリスタが撃墜したのではなかったのか?」 「その通りですぜ隊長。機竜空母大鳳、ミッドウェイ、マジェスティック、超大型機竜大和、そして亜種のメルボルンもアークが破壊、消滅させたはずでさぁ」 「それが確かなら、今回の新型発見はつまり……」 「ええ、そう言うことになるでしょうね」 粗末なコンテナハウスの一角で、二人の男は書類の山と格闘していた。 写りの悪い写真をつまみ上げる。 赤いカラーリングの機竜が写っているが、フォルムはどこかでこぼこしている。といよりはむしろ……。 「外装甲をわざわざ取り外しているようにも見えるな。なぜそんなことを」 「おそらく『熱』に耐えられないからでしょうね」 そう言って副官らしき男が別の写真を出してくる。 「高い機動性はもちろん、高度な火炎放射器や焼夷弾が装備されているようでさぁ。その上、コアがこのように前方で独立浮遊している……」 「…………」 上位の機竜には共通して『コア』と呼ばれるものが存在している。主に機体内部に収納しているものと思われていたが……。 「外に露出させているのか。ということは弱点ではないな?」 「そこまであからさまな弱点はないでしょう。というより、これを主力武器ととらえるべきでさぁ」 次の写真を突き出す。 写っているコアは激しい炎に包まれ、まるで熱した溶岩のように赤く輝いていた。 「熱そうだな……」 「それどころじゃないですよ。大抵のものは焼け溶けます。試しにスナイプを試みましたが、攻撃が着弾と同時に消滅しました。最強の槍にして最強の盾といったところですね。さしずめ、『フレイムコア』とでも呼びましょうか」 「我らで撃墜させることはできそうか?」 「三十人くらい犠牲にすれば……」 「そうか、またアークのエンジェルたちに頼ることになるな……」 男たちは深くため息をついて書類に判をついた。 「己の非力さが悔やまれる。彼らにはできる限りの情報を提供せよと伝えてくれ」 ●権天使 ~Principalitys~ アーク、ブリーフィングルーム。 協力組織から送られた情報とフォーチュナの情報を照らし合わせ、男性フォーチュナはどこか機械的に言った。 「日本海上空にアザーバイドが出現。今はまだ周辺被害は出ていませんが、このまま日本に上陸されればそれ相応の被害がでると予想されています。今回の任務はこのアザーバイドを空中で撃墜することにあります」 モニターにウィンドウを複数表示する。 赤い、むき出しの金属チューブが目立つハ虫類型飛行物体が移っていた。 「機竜炎型『権天使』。炎系の武装に特化し、独立して炎を操る能力を持っています。確認されている数は7機です。判明しているスペックはお手ものとにあるものがすべてです」 男性フォーチュナは眼鏡を手で覆うように直すと、平坦な口調で締めくくった。 「以上です。ご武運を」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 9人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月13日(水)23:11 |
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■メイン参加者 9人■ | |||||
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●解析された思考データより、その1 『これは、生きとし生けるものすべての見る悪夢だったのだ。そのことに気づいた時にはもう、私は私ではなくなっていた』 日本海上空。 「アザーバイド・タイプ機竜……ですか。直接戦うのは大和以来ですね」 『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)は空中でバランスをとりながらそんなことをつぶやいた。 飛行機械を用いているわけではない。生身での(というより神秘力での)飛行である。 「私は零式以来です。ほぼ一年前ですから、ちょっと懐かしいですね」 くすくすと笑う『局地戦支援用狐巫女型ドジっ娘』神谷 小夜(BNE001462)。 横で『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)が、日傘をさしたまま空を覗き見た。 「それを言うなら、大和も半年以上前になるわ。あの頃見た炎に絡む機竜といったら、ミッドウェイだったかしら。モンタナ計画の件といい、随分と飛び火したものね」 涼しい顔でそんなことを言う氷璃。 並んで飛んでいた『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)と『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)は横目で顔を見合わせた。 「複雑な因縁があるようだな。俺自身全く関わりがなかったとはいえないが……」 「なぁに、どこだろうが誰だろうが喧嘩の舞台がありゃあ飛んでいくだけのことだぜ?」 「かもしれんな」 「四国で見たのと、随分違うんだな……」 上空を旋回している機竜の一団をスコープ越しに見つめ、『花縡の導鴉』宇賀神・遥紀(BNE003750)は小声で言った。 当時の小型機流を普通自動車とするならば、今回の『権天使』は内部構造むき出しのモンスターカーといった有様である。 「ふうん、竜っていうからファンタジックな見た目かと思ったら、随分メタリックなんだね。見た目は、何でもいいけどね」 同じくスコープを覗いていた『死刑人』双樹 沙羅(BNE004205)がにんまりと笑う。 「楽しく蹂躙しようね、外敵さん」 沙羅の笑顔を、遥紀は横目でちらりと見やる。そしてすぐにスコープへと視線を戻した。 「スーパーサトミただいま参上、っと! 空を自由に飛べるってすばらしいですね、ようやく手に入れた飛行能力の出番ですよ、ふふ」 マントを翻してふわふわと飛ぶ『スーパーサトミ』御剣・カーラ・慧美(BNE001056)。 その動きをどことなく真似ながら、『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)はドレスの裾をなびかせていた。 「普段から飛べるんだ、いいなあ。わたしはこういうの、やったことないから分からないんだけど……がんばろうね! あんなにいっぱいの火が町に降りたら火事じゃすまないもんね」 ……などと、九人が九人、多様な反応を見せつつ。 日本海上空は今、戦場になろうとしていた。 ●解析された思考データより、その2 『これを知る誰かが、我が故郷の同胞であることを願う。どうか私を……』 機竜とは何かと問われた際、三つの言葉で説明することができる。 ひとつ、竜の姿をしていること。 ひとつ、機械生命体であること。 ひとつ、アザーバイドであること。 このうち一つでもかけた場合、それは機竜と呼べるのか否か、定かではないが……。 「そんなもんは何でもいい、いくぜ焔!」 「後れをとるでないぞ葛木、撃墜数を競う気概でいく」 優希と猛は一度らせん状に交差飛行すると、機竜の一段めがけて突撃をかけた。 対する機竜は彼らの接近をずっと前から察知していたかのように一斉散開。空中で直角にカーブすると火炎放射を開始した。 「ぬるいぜ……!」 腕で顔をかばって炎の中を突き進む猛。一方で優希は機竜一体の頭上をとると、コンパクトに体を丸めて垂直落下を開始。二人は上下から機竜をサンドすると相手の動きを一時的に停止させた。 が、機竜たちとてただ黙ってやられるような連中ではない。機体前方に浮遊していたフレイムコアを自らの周囲で高速旋回させる。殴って砕けばよいだろうと拳を繰り出す二人だが、叩き付けたはずのエネルギーが一瞬にして消失。彼らは玉突きのようにはじき飛ばされたのだった。 「な……!」 「やっぱり、ただのコアじゃないのね」 はじき飛ばされてきた猛をすっと横へスライドしてかわす氷璃。 その直後、別の機竜がフレイムコアを顎部前方に固定。激しく発光させたかと思うと、突如高熱の波動砲撃を放ってきた。火炎放射など比べものにならない、進行方向上十数メートルを一瞬にして焼却するかのような砲撃である。 「……っ!」 氷璃は思わず日傘をかざしたがそんなことで凌げる熱量ではない。言ってみれば高ワット数の電子レンジに入れられたような感覚だ。まあ、そんな経験がある人間はいないと思うが。 「大丈夫ですか、今すぐ回復を……!」 慌てて大天使の吐息を発現させる小夜。気流はその動きを確認した段階で標的を変更。三機一斉に焼夷弾を打ち込んできた。元々もろい小夜のことである。こんな攻撃にさらされ続ければ三十秒と持つまい。 「下がってください!」 剣を納刀状態でかざし、小夜の前に割り込むアラストール。弾頭のコツンという接触音はほんの一瞬のこと。連続爆発にさらされるアラストールだが、後には焦げ付いた髪のアラストールと後方へ流れる煙のみが残った。機竜は目にあたる部分をちかちかと点滅させると、目標をすぐに小夜から変更、氷璃へと直接突撃をかけてきた。 といっても例のフレイムコアを前方に固定しての突撃である。破壊力のある猛たちがああも簡単にはじき飛ばされたことを思えば、ここは接触するべきでない。すぐさま後退しつつ急ターンをかけるが、機竜は螺旋飛行からの高速ターンですぐ後ろまで追いついてきた。 「仕方ないわね、叩き落としてあげるわ」 氷璃は翼を広げて急制動。直角に落下をかけてフレイムコアへの直撃を回避した。だが、すれ違っただけで氷璃の体は激しいスピンをかけられる。直撃ではないというだけで、受けたダメージは甚大だった。が、氷璃もただよけようとしたわけではない。すれ違う瞬間に手をかざし。呪氷矢を逆手に持って突き立てたのだ。 機体側面を派手にえぐられ、氷の結晶が露出、機竜の動きを一時的にブレさせた。 「逃がさないで」 「任せてください! それでは早速おなじみのぉ……!」 動きのブレた機竜の、なんと進行方向上に飛び出していく慧美。 拳を大きく振りかぶると、フレイムコアめがけて思い切り叩き付けた。 「スーパーサトミパンチ!」 猛たちは横から、聡美は正面からという違いがあったからだろうか。彼女ははじき飛ばされこそしなかったが、機竜にダメージらしいダメージを与えることはできていない。せいぜい足を一時的に止める程度だ。しかしそれでかまわない。 「からの、SS(スーパーサトミ)キック!」 チアキックのような垂直高足蹴りが繰り出され、機竜は軽く上方向に跳ね上げられる。 「レシーブいきましたよ、旭さんっ」 「おっけー、じゃあコレだね!」 上昇をかけ、慧美の頭上へと躍り出た旭は炎の腕を振りかざし、機竜の頭部をひっぱたいた。 結果、機竜はジグザグな軌道を描いた末に斜め下へと弾かれることになった。 その先にいるのは沙羅だ。障害物をよけるくらいのつもりで火炎放射を仕掛ける機竜だったが……。 「来たね、ビギナーズラック!」 沙羅は炎をまっすぐに突き抜けると、機竜の首を大鎌でもって切り裂いた。 彼には炎自体の燃焼効果はあったものの、類焼は一切起きていなかった。 「残念だったね、ボクは燃えない。いやあ、実に愉快……!」 返す刀で機竜の背中にブレードを突き立て、蹴っ飛ばして海へと落とす。 「許可された殺しはいいよ。ボクでも英雄になれる。面白い世界だ、面白いから……守らせてもらってるよ」 額に手を当ててけらけらと笑う沙羅。その一方で、遥紀は黙って慧美たちの回復に専念していた。 まつげを下げ、今まさに自由落下する機竜を見やる。 「あなたたちは何をしに来たんだ。『そっち』の世界に、何か起きているのかい?」 風も光も、彼にとっては心地よいものだ。 しかしながら、今が心地よいとは言えなかった。 なぜだろう。 彼らの向こう側に、悲しみが見える気がするのだ。 ●解析された思考データより、その3 『殺してくれ。私が私であったことを、まだ知っているうちに。私は、私は……』 何発目になるかわからない焼夷弾を切り捨て、アラストールは胸を反らし、声を張り上げた。 「告ぐ、貴君は重大な領域侵犯を犯している。武装を解除し速やかに帰還せよ。聞き届けぬ場合、排除する!」 とは言ったものの、言葉が通じているとは思えない。報告によれば彼らの世界(『フルメタルラグーン』という)の人間がこちらと同様の言語を話していたと言われるが、この機竜たちが何らかの言語を発したという報告はない。 つまり、言葉は通じないということだ。 言葉が通じない相手との問題は、武力によって解消するほかない。 「仕方あるまい!」 アラストールは光の翼を大きく羽ばたかせて突進。同じく火炎放射をしながら突進してくる機竜。 「突っ込むんですか!?」 いくら頑丈なアラストールといえども攻撃にさらされ続けて無事でいられるわけではない。小夜が素早く回復を飛ばし、アラストールの皮膚が焼け焦げたそばから元の肉体へと治癒していった。 一方でアラストールは正面衝突の寸前に体をねじりフレイムコアを回避。機竜下部へ潜り込むと剣を思い切り突き立てた。高速ですれ違っている途中である。そんなことをすれば下部装甲が引き裂けることは必至。どころか装甲を持たない『権天使』などひとたまりもない。 内部溶液のようなものをまき散らして開展する機竜。味方機が両側面に張り付いてフォローをかけるが、むしろその陣形は氷璃の望むところである。 というより、味方機が深く損傷を受ければフォローのためにコンパクトな陣形をとることを、リーディングとタワー・オブ・バベルによって把握していたのだ。 厳密なことをいえば、タワー・オブ・バベルで解析できたということは機竜たちが独自の言語を無線通信によって発しているということであり、フルメタルラグーンではこちらと同じ言語と用いているにも関わらず彼らが異界言語を使用しているという証明でもあるのだが、それは今考えるべきことではない。 「あなたたちの目的がなんであれ、崩界を招くものはすべて敵よ」 音声を早回しにしたような高速詠唱を終えると、無数の魔方陣を展開。魔法の鎖を大量に発射し、機竜の一団を一挙に束縛した。 「っしゃ、派手にいくぜ焔!」 「いいだろう。優れた機体故に惜しいが、破壊させてもらうぞ!」 束縛をほどこうともがく機竜たちめがけ、優希と猛が同時に急降下。 「いってこいや、大霊界!」 二人の拳が機竜たちへと炸裂。 腕が機体外装を打ち破り、内部へと侵入。機竜たちは激しい爆発を起こして砕け散った。 が、その直後に三体の機竜が同時にフレイムコア越しの火炎放射を仕掛けてきた。 とっさに防御姿勢をとる二人だが、防御した腕ごとまとめて焼き払われる。 「猛さん、優希さん!」 海へと真っ逆さまに落ちていく二人を見下ろして叫ぶ小夜。だがキャッチ市に行く暇などない。 「このまま一気に畳みこんじゃいましょう!」 慧美が機竜のさらに上をとって両手両足を広げた。 「スーパーサトミデモンズシュートイレイザー!」 どこからともなく取り出したハンマーとともに高速で回転しながら機竜へ体当たりをかける慧美。三機中一機を巻き込んで降下していくが、残り二機はかまうことなく焼夷弾を連射。味方機もろとも慧美を焼き払う算段である。 このままでは危ない。そう察した遥紀が素早く聖神の息吹を展開。爆発にさらされた聡美だが、間一髪で消し炭にならずにすんだ。 が、慧美に接触したままの機竜は彼女を逃がすまいと肩へと噛みつき、翼を丸め込んで彼女を固定してしまった。 「御剣っ」 「大丈夫、ヒーローはこれしきのことではやられません、お先に……!」 炎をあげながら海へ落下する慧美。 相打ちである。遥紀は表情をほんの少し険しくして、ヘッドホンに手を当てた。 機竜は次はおまえだとばかりにフレイムコアでの突進を仕掛けてくる。 そこへ割り込んだのはなんと旭であった。 二機分のコアアタックを自身の体で受け止めたのだ。当然無事では済まされない。彼女の体が一瞬にして燃え上がり、衣服や髪をちりちりと焦がした。 「宇賀神、これ以上は……」 「だいじょーぶっ、あとお願いね!」 旭は炎に敗れ、なすすべもなく崩れる……とはならなかった。コアアタックを受けた二機のうち一機にしがみつくと、目のあたりに強烈な抜き手を打ち込んだのだ。 聞いたこともないような悲鳴をあげ、旭ともつれ合いながら落ちていく機竜。 「ラスト、もらうよ」 遥紀の横から回り込むように大鎌をたたき込んでくる沙羅。 ブレードが顔部分に突き刺さるが、機竜はまだ力尽きていない。火炎放射によって沙羅の小柄な体が炎に包まれる。 思わず身を引く遥紀。彼のフォローをしたいが、次の回復にはもう十秒ほど時間がいる。 間に合わないか? そうは思ったが、沙羅はそんな考えに反してニヤリと笑った。 「君たちは何のために生まれて、何のために戦って死ぬの? ま、聞こえてないとは思うけどね!」 空いた腕を振りかざし、頭部めがけて叩き付ける。 その一撃を最後に機竜の頭部はひしゃげ、複雑に炎を吹き漏らしながら力尽きたのだった。 落ちていく機竜を見下ろし、氷璃はすぅっと目を細めた。 「それって……どういうこと?」 ●解析された思考データより、その4 『私は人間だった、人間だったのだ!』 結果から言って、優希たちは無事だった。 機竜に撃墜こそされたものの、フェイトによる踏ん張りがきいていたのだ。 これがなかったら相当な肉体的損傷を残していたかもしれない。 「最後まで飛んでいられなかったことが残念だ」 とは、優希の弁である。 「それでも無事でよかったです。味方の被害も三割までですし……かなりよい調子だったんじゃないでしょうか」 そんなことをいう小夜。 慧美や沙羅といったマイペースなメンバーは戦闘が終われば自由時間ですよとばかりにさらっとしたものだが、遥紀はどうも先刻までの戦闘を引きずっているようで、どこかぼんやりとした表情をしていた。 シンボルカラーがあるとかっこいいと言うような話で慧美と盛り上がっていた旭が、遥紀へと振り返った。 「どうしたの、何か心配事?」 「機竜の動きのことでしょう」 と、アラストール。 「動きって?」 「彼らはこちらの編成を早期に把握し、的確な『つぶし方』を実行していました。ですが……そうですね、中盤あたりからでしょうか。動きに変化がでてきて」 「だな、あいつら自棄になっていやがった」 つまらねえことしやがる、とつぶやく猛。 そんな会話を聞いて、氷璃はふわりと髪をかき上げた。 「思考データを一部解析できてるから、帰ったら報告してあげる。少しは疑問が晴れるわよ。少しなら」 「ふうん」 沙羅は頭の後ろで手を組んで背を向けた。 「何のために戦って、何のために死ぬのか……とか?」 「ええ」 こともなく言った氷璃に、沙羅は振り向く。 「それは、いいね」 アザーバイド、機竜・『権天使』。 この戦いがいかなる未来を呼ぶものか、定かではない。 だがこれだけは言えるだろう。 事件がこれで終わりとは、なるまい。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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