●オムハヤシとは、オムライスの上にハヤシライスソースをかけためちゃくちゃおいしいご飯のことである 『オムハヤシィー!』 エリューションゴーレムがこんな鳴き声をあげたなら、たぶんそいつはオムハヤシで間違いないと思う。 それに横幅にして5mくらいの巨大な黄色いふわふわ……つまりオムレツ部分が宙に浮き、内側のしっかり炒めたであろうチキンライスがほんのりと香ってくるならそれはやっぱオムライスのはずだし、上にかかっているハヤシライスソースがたまにしたたってくることを思えば十中八九オムハヤシに違いないはずだ。 だから……だから……。 「こいつはエリューションゴーレム、フライングオムハヤシと命名してかまわないはずだ!」 説明のためだけに出てきたモブリスタさんが拳を握って語り始めた。 「古くは明治三十三年にまかない飯として作られたことをきっかけに広い洋食ブームの波に乗り日本全国の家庭料理として昇華されたそれはケチャップと白米と卵という現代にはありふれた食材だけで作られるというのにその美味しさは大人から子供まで広く愛され今なお洋食の代表的メニューとなっているオムライスだがその派生メニューとして最も高級感と満足感があるというオムハヤシ……オムハヤシじゃないか!」 仲間のモブリスタ二号が感極まってむせび泣く。 「思い出すぜ、初めてオムライスを食べた時の感動。ハヤシライスを初めて口にしたときの感激。その二つが一気によみがえる……あのすばらしき味わい……!」 「卵の中にケチャップライスを包む料理は本来胃の弱い人に向けた料理というだけに単体でのパンチが弱くその解決方法を求められていたが先人の一人がデミグラスソースをかけ深みと広がりを持たせたことから生まれたメニューそれがオムハヤシ!」 「そんな思考のメニューがエリューション化したとなればきっと……」 『オムハヤシィー!』 巨体の中から無数のちっちゃいオムハヤシ(三センチくらい)を生み出して機関銃のように飛ばしてくる。 モブリスタたちはそれを食らうと(非誤字)もんどりうって倒れた。 「くっ、やはりだ!」 「なんという……」 「なんというおいしさよ……!」 その後、モブリスタさんたちはオムハヤシプレスアタックという小学生が聞いたらちょっと喜びそうな技でもってぺちゃんこになったのだった。 ●こうしてみるとナース服のガハラさんがウェイトレスに見えてきませんか? 「オムライスは好きですか?」 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は眼鏡のふちに手を添えて、ちょっぴり知的にそういった。可愛すぎて死ねるポーズだった。 「今回、オムライス……それもオムハヤシがエリューション化してしまったんです。やはり昔からあるものだから、でしょうか……とても強い力をもっていて、ホワイトソースをかけたオムシチューとカレーソースをかけたオムカレーの二つを従えて移動しているんです」 「三体もか……」 強力なエリューション三体を同時に相手にしなければならないという状況にリベリスタたちはごくりとつばを……じゃなくて息をのんだ。 「そのつよさはオムライスらしさに遺憾なく発揮され、恐ろしいまでの……」 目をつぶるガハラさん。 きゅっと唇を噛み、おなかのところに手を当てた。 「おいしさ、だそうです」 深夜とかに見たらもうアウトである! 見つけた瞬間食いたい衝動に駆られること必至! 肥満からは逃れられないのだ! 「こんな恐ろしい敵を、放っておくわけにはいきません。みなさんどうか……どうかよろしくお願いします!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 9人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月07日(木)22:04 |
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■メイン参加者 9人■ | |||||
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●食べてるものが美味しいだけで幸せになれるんだから人間ってラクくない? 中身がないものをさもぎっしり詰まったかのように見せるっつーのはいついかなる世でもやることでして、大抵そういう技は何でもないところから生まれてくるもんでございます。 カキワリだったりソコアゲだったり、しかしそういうもんがあるからこそ心を豊かに保てるっつーんだから人間『盛る』のも大事になってこようもんで、しまいにゃイミテーション職人なんてものも仕事にできるんだそうで。 そこを考えますと冗談みたいにでっかいオムレツを作っちまうより白ご飯を詰めてくれた方がずっと心にも財布にもお優しいってもんでございます。 洋食全盛期を過ぎた昨今でもオムライスが子供の大好物なのも納得できるんじゃあないでしょうか。 というわけで。 「薄焼き卵と白米だった俺の家って……貧乏だったのか?」 貴志 正太郎(BNE004285)の青少年らしい不安を解消するための前振りでございました。カメラ目線のままほっと息をつく正太郎くん。 「そっか、よかった。誰だって、自分の大好物が偽物だったなんて思いたくないよな……な、透! お互い初めてだけどがんばろうな!」 「……ああ」 ふぁさぁっと前髪をかきあげる財部 透(BNE004286)。 「俺もオムライスは好きだ。好きだが、レディーたちに子供っぽいと思われるじゃないか。だからオレはあくまでクールに戦うぜ」 「漏れてる漏れてる、本音漏れてる」 とまあ、こういうゆるい依頼に入ると誰でもこうなるわけで、それが初めてのお仕事でもやっぱり肩の力が抜けようものである。 『粉砕者』有栖川 氷花(BNE004287)などはこう……。 「今日のために卵料理を断ってきましたわ!」 などとケーキバイキングに初挑戦する乙女みたいなことをいう始末である。 ゆるふわモテカワガールでさえこういうことを言うくらいなのだから、もうベテラン女性陣のがっつきようは予想がつくだろう。 ということで『旋律の魔女』宮代・紅葉(BNE002726)と『雇われ遊撃少女』宮代・久嶺(BNE002940)にご意見を伺ってみますと。 「なんとおいし恐ろしいエリューションなの。この驚異はなんとしても取り除かないと。そして食べちゃわないと! ね、久嶺!」 「はいお姉様でもアタシお姉様も食べちゃいたいわよ、今すぐにでも、そう今!」 紅葉の背後にぴったりくっついてハアハアする久嶺である。 さすがベテランとなるとがっつくベクトルまで変わってくるのだろうか。どうでもいいがなんで気づかないんだろう紅葉さん。 「ルー、オムライス、ハジメテ!」 人間性を疑うレベルのカタコトさで画面はじに割り込んでくるルー・ガルー(BNE003931)。 「オムライス……そうか、今回の『ゆかいなエリューションこーなー』はオムライスか」 とかいいながらキュキュっと手袋をはめる『まごころ宅急便』安西 郷(BNE002360)。さすがどんな状況でもブレない郷くんである。 「見た目がかわいいからって油断するんじゃないぞ、みんな!」 「見た目……そうだね、戦隊ものでいうとオムライスなんてレッドのポジションだもんね」 きりっとした顔で振り返る『おこたから出ると死んじゃう』ティセ・パルミエ(BNE000151)。22歳。 「なぜその連想になったのかさっぱりわからんが聞こうか」 「オムハヤシはぱっとしないブルー、オムカレーはカレーのイエロー、オムシチューは……」 「……」 「……」 「……でもあたしオムハヤシって二番煎じなイメージあって好きじゃないかな」 「オムシチューにもポジションやれよ! ホワイトでいいからさ!」 「ん、美味しいわよねオムシチュー。全体的に白っぽくなっちゃうから彩りつけるのに苦労するけど、ホワイトソースだから満腹感あるし」 さらっと話題に乗ってくる『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291)。 「でもオムハヤシは初めてなの。要するにデミグラスソースよね? 洋食なら当たり前なのに、なんだか衝撃的だわ! たのしみっ!」 何というか、過去に160件くらいの依頼をこなしているのに本当に輝くのが『食うとき』というのが実にニニギアさんだった。今日ぐらいの意気込みがあったのっていつ以来だろうか。ラーメン? 「まあ、とにかく」 九人のリベリスタたちはついっと上を向いた。 天空より降臨する巨大なオムライスたちが、そこにはあった。 ●これもまた欲求(食う寝るエロス)に忠実なリベリスタたちのサガ 『オムライスゥー!』 『ハーヤシィー!』 『シチュー!』 『インドォー!』 ずごごごごとかいいながら三方向から迫ってくる巨大なエリューション・オムライスたち。彼らはどういう恨みがあるのかわからないがとにかく体当たりを仕掛けようとおそってくるのであった。 というわけで戦闘パートである。 「その戦意、お受けしますわ。ただし……」 ごっつくて巨大な伐採斧をぐるんと一回転してみせる氷花。器用に回転を止め、オムハヤシに留め具の先端を向ける。 「三つの味を混ぜることまかり成りません!」 氷花はそう言うや否やロケットのように飛び出した。豪快なスイングで中心のオムハヤシをはじき飛ばし、ついでとばかりにオムシチューやオムカレーたちをぺちぺち追い払い始めた。 「さあ皆様、今のうちに!」 「オムライス、オイシー!」 氷花が振り返るかどうかという早さで、ルーがオムカレーに頭から突っ込んでいく。ルーにカレールーが纏わり付いてルー・ガルーがルーだらけのええいもうややこしい。 「ルー様、せめてここはひとこと……」 「野生ではいつ食べ物にありつけるかわからないの。そう、言わばあれは生存本能うまうまうまうま……」 ぽろっと落ちてきたハヤシライスの一部をお皿でキャッチして食べ始めるティセ。ビスハ猫のティセさんより獣じみているルーという構図である。 が、ティセもなんだかんだいって肉食系女子22歳なので、お皿を両手に持ったまま思いっきりご飯に顔を突っ込んだ。 「あちち、猫舌には大変な熱さだよ! でも気にしない! ふーふーして食べるからね!」 「ティセ様……」 首だけで振り向く氷花。 どこからともなく銀色のスプーンを取り出すと、お皿からご飯をひとすくいした。 「あ、スプーン……」 「冷たいお茶もございますわ。では早速」 軽くフーフーしながら一口。 「これは……五つ星クラス……!」 かくして氷花は、じっくりとオムカレーを堪能し始めるのだった。 その一方……。 「オムカレーか、空きっ腹に効くぜ。どうしてこうカレーってのは美味しそうに見えるんだろうな」 「オレたち、年若き十三歳だからな。カレーとスパゲッティが好きな年頃だ。しかしこれが初めての実戦でもある。おとなしく遠距離から支援を」 「ざけんな男の勝負は正面突破と決まってんだろうが!」 今日はカレー曜日ーとかいいながら突っ走っていく正太郎。 「やれやれバカは恐ろしいな……だが、乗った!」 打ち合わせしたのかってくらいテンプレートなことを言って正太郎に並ぶ透。 対するオムカレーとて黙ってはいない。オムガトリング(だっけ?)を彼らへと浴びせてくるではないか。 「やっぱり迎撃が来るか。遅れんなよ透、ここはお互いに盾になって……」 「ここはオレに任せろ!」 正太郎にヒットしそうになったミニオムカレーをすかさず横からかっさらう(というか食いさらう)透。 「…………」 「フ、正太郎。お前のことは背中を預けてもいいくらいに信頼してるんだぜ?」 「おいどけ、いいからどけ。オレにも食わせろ! うおうめえ!」 「まてここはオレが壁になって本当はうまい!」 正太郎と透が互いを押し合いながら(かつ庇い合いながら)オムカレーを取り合い続ける……。 そんな光景を横目にニニギアと郷はオムハヤシへと向かっていた。先刻氷花がはじき飛ばしたヤツである。 「魔方陣(食欲)展開、灰は灰に塵は塵に(オムハヤシは私のおなかのなかに)!」 目をカッと開いてこれまでにない攻勢姿勢を見せるニニギアさん。 「今日は私も前に出て戦う(食べる)わ! どんどんかかってらっしゃい!」 「なんでだろうな、俺にはニニギアの本音が透けてみるようだ……具体的にはカッコの中とかに……」 「もちろん業(食欲)にとらわれたりしないわ。喜び(オムハヤシ)はみんなで分かち合うものだもの。そんな時間のために、がんばるわ! そして隙あらば……もぐもぐする(もぐもぐする)!」 ちょっぴり遠い目をする郷をナチュラルに無視するニニギアである。今日のニニGEARはフルスロットルだった。誰もとめられる気がしない。 「気をつけるんだ、オムプレスの攻撃部位はおそらくご飯部分。きっとケチャップがすべての米を包み込むように丁寧かつパラパラに炒められているに違いない。その上ケチャップライス特有の『べちゃっ』とした感触を避けるためケチャップに絡めたご飯をわざと半冷凍させてから炒めているはずだ。その上全体的な味のしつこさを解消するべ炒める際にくレモンを絞るのも忘れていないだろう。強敵……だぜ!」 「本当、強敵(美味しそう)ね……!」 二人してぐぐっと口元をぬぐってみたりして。 そんな二人の頭上を左から右へ駆け抜けていく紅葉と久嶺。 駆け抜けるというより飛び抜けるというべきだろうか。色違いの翼を広げ、唯一フリーになっているオムシチューをおさえるためである。 ここでいう『おさえる』とは抑制するという意味ではない。ファーストフード店とかで『席おさえとくね、あたし月見バーガー卵抜きで』というのとだいたい一緒の意味である。っていうか同じ意味である。 久嶺は口元をぬぐいつつオムシチューをにらみつけた。 「なんて凶悪なの。このリプレイを読んでる人が電車内だったらどうするつもりよ。ましてや会社帰りの七~八時だったらもう、おなかがなって隣の人とかに変に思われちゃうじゃない!」 「異次元の話はいいですから、ほらお皿お皿」 「あ、はいお姉様!」 久嶺は懐から竜の模様が描かれた大皿を取り出した。よく金持ちの和室とかにどでーんって飾られてるやつである。二メートルくらいあるやつである。そんなもん懐のどこから出したのか四次元谷間なのかと思うかもしれないがご安心いただきたい。四次元どころか二次元……じゃなかったAFから出てきたものである。 「この勧善懲悪大銀河超絶美少女最強天使久嶺様が美味しくいただいてやいたたたたいたいたい、お皿かざしてるのに衝撃がいたいたい!」 お皿を腕だけで支えられないからかほっぺたくっつけて押さえる久嶺。オムアームストロング(だっけ?)の勢いがすごすぎてなんかもうつぶれそうなのだ。これがギャグテイストな空気だからいいものの、普通にやったら首から上がなくなっている事態である。 「久嶺、もう少し我慢してくださいねあら美味しい」 お皿からちょっぴりミニオムシチューを拝借しつつもぐもぐする紅葉。 最近はお弁当用オムライスとか言って一口サイズのものが冷凍食品で発売されていて意外と美味しいもんだからますますご家庭で作る意味がなくなっていくがそんな感じの『おやつ時にむさぼりたい』お味だった。 慌てて食べたからか口の端っこにホワイトソースがついていたが、紅葉は早く攻撃しなくちゃとごっくんした。目をつぶってあごをちょっとあげる感じである。エロい。 「お姉様……」 「あ、ごめんなさい久嶺。あとで代わってあげるから」 「今のもう一回」 「え?」 などと遊びつつ。 「さあ聞いてください、わたくしの音楽を!」 空中でマイクスタンドをくるくる回転させ、両手両足そして両翼を広げる紅葉。このときマイクスタンドが勝手に浮いててくれるのはサービスである。 そしてどこからともなく聞こえてくるミュージックイントロ。控えめなブレスから歌い始める紅葉。 肩を小さくしながら左右に揺れつつ、ちょっぴり腕や腰の動きで振り付けなんかしてみたりして。なんならキラッとして頂いてもかまわない。 対するオムライスたちも動揺を隠せないようで。 『何だ、この歌は……』 『ご存じないのですか!?』 『オムデカルチャー!?』 とかノリを見せるほどである。何ノリだろう。 「いたたたたもうお皿乗らないからっ」 一方で久嶺は大皿に山盛りになったミニオムシチューに四苦八苦していた。一部は久嶺の体や顔にかかっちゃうし、あと白いし。 「もうだめ、あふれちゃうから、こわれちゃうからっ、まって、やすませてえっ!」 あとエロいし。 姉妹でずいぶん比重の違う大変さだった。 ●オムライスを初めて作った人とて、まさかここまでオムひとつで話を広げられるとは思うまい 「しっかりと煮込まれたことでミルクの甘みが引き立ったホワイトソースとそれを受け止めるやや固めのライスがほどよくマッチしていてもうこれはひたすら食べ続けるしかないよねもぐもぐもぐ」 ティセがオムシチューに頭から突っ込んで逆さ立ちしていた。 突然変なことをいって申し訳ないが事実である。 なんなら上半身が腰のあたりまで埋まっていくさまを想像していただいてもかまわない。こう、泥沼に落ちた携帯電話が着信時のバイブレーションで徐々に埋まっていく時みたいなあの何ともいえない埋まり方である。 身を乗り出すニニギアと郷。 「なんてこと、ティセさんが犬神家の死体みたいに……」 「年代的にはエヴァって言うべきじゃ……じゃなくてあのまま埋まっていったら危険だぞ。中は熱いはずだ!」 郷は帽子をかぶり直すと額に汗を浮かべた。 「さっきあの卵部分を『ソニィィックキイイイイイイクウウウアア』で切り裂いたから知っているんだ。奴はやや分厚いオムレツをほんのり醤油味のするライス炒めの上にかぶせているがとある映画で有名になった東京はJR日本橋駅から降りて徒歩数分のところにある老舗たいめいけんで食べられるというタンポポオムライスのようにそとはふんわり中はとろとろのオムレツをご飯の上にダイレクトにのせるというタイプだったために切り裂いたことでそのとろとろ部分がご飯にかかりホワイトソースと混じり合うことで絶妙な味わいを生み出しているんだうまいうまい」 「自然にお店の宣伝を盛り込んでお店側から食券をプレゼントしてもらおうというハラね、さすが運送業は目の付け所が違うわもぐもぐぱくぱく」 「自然にときたか……」 大皿にピラミッド積みされたオムシチューを両サイドから取っては頬張り取っては頬張りするニニギア・アンド・郷。 「コクのあるソースときめ細やかな卵が見せるまろやかな味わい。黄金の野原が見えるわ……」 などとベテラン組が完全に戦う気力を失っている中、野生の本能で戦っていたルーは惑わされることなく……。 「ニホン、タベモノオオイ。ルー、ウエナイ……」 惑わされることなく、お皿からミニオムシチューを犬食いしていた。 今日のこの子は本当の意味で戦う気がないようだった。 ある意味ブレない子である。 その一方で紅葉久嶺ペアは……。 「ヘッドショットキル! ヘッドショットキル! 美味、実に美味よふはははははぐえ!?」 オムシチューを外周から一生懸命くらいつくそうとがんばっていた。 「勘違いしないでよね! これはオムライス食べてるだけなんだからね!」 ツンデレっぽくいってもただの自己申告である。 余裕そうだ。 一応見た目的にはピンチだからと駆けつける紅葉。 「久嶺、大丈夫ですか!? 今お姉ちゃんが助けますからね!」 「大丈夫よお姉さ……ハッ!」 ぺかーっと久嶺の頭上で光る豆電球。 「お姉様、アタシがこいつを押さえているうちに食べるのよ! そう、アタシごと食べて! あたしごとぉ、むしろあたしをメインにぃ!」 「久嶺!? どうしたんですか久嶺!? さすがに人間は食べられませんよ!?」 「ルー、タベル!」 「キャー!」 ルーにもろとも押し倒されて白い液体をぺろぺろされる久嶺と紅葉。エロい。週刊少年誌のラブコメ並に投げやりなエロさである。 その姿に氷花は戦慄を覚えていた。 「ベテラン勢が押されていますわ……ここは私たちルーキーががんばるところ……」 とかいいながらスプーンで優雅にオムハヤシの残骸(お皿にイン)を平らげていた。 「料理はなぜ生まれてくるのか。それは人を幸せにするため、その料理の一番の幸せは、美味しく食べてもらったとき……次に生まれてくるときには、またオムになりなさいな」 フフっと笑ってシャレオツなティーカップでお茶を飲む氷花。 「だめだアイツも食べてばかりだ!」 「というかオレたち食べること以外に何かしていたか?」 さりげに食い尽くされ、残り一体となったオムシチューへと走る正太郎と透。 「オレたちだけで勝てるのか? いや、当てられるのか?」 「心配するな、集中すれば……」 「そうか、それだ! うおおおおおおお!」 「負けられるかよおおおおお!」 彗星のごとくオムシチューへと突っ込んでいくルーキーズ。 そして二人は勢いよくオムシチューを貫通し、天空で両手をぱちんと合わせたのだった。 「「ごちそうさまでした!」」 こうして倒されたオムライスたちは、まるでアフターにはつきあいませんよと言わんばかりに消滅し、お持ち帰りを期待していた彼らに膝をつかせたのだった。 後に彼らが日本橋を訪れるのは、言うまでもない。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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