● 死、死、死、死。 まだ温かい血の中に沈む死体、或いは腐肉を躰から落としながら佇む死体、或いは血生臭い鉄の匂い、或いは死体の腐った匂い。 そこは様々な死体と死の匂いに満ち満ちていた。 そんな死の中に二人の生者、スーツを着崩した男とパンツルックを着こなす女が居た。 二人は異常極まりないこの光景に眉一つ動かさない。そして男はサックスを、女はトロンボーンを高らかに吹き鳴らす。 すると、まるでホラー映画の様に横たわっていた死体も佇んでいた死体も動き出す。 ゆっくりと歩き始めるそれらを見て男は満足げに微笑みリードから口を離す。 「それなりの数を壊されたのは想定外だったが、それよりいい物が手に入ったな」 「そうさね、このクラスの革醒者はかなり使えるからね」 二人の目の前にはたった今死んだ革醒者達の死体。 彼らはヒーローだった。 例え称賛を浴びることがなくとも、愛すべきその土地を自らの家として、そこに生きる人々を家族として守ろうと誓う者達の『大樹の根』という名前の集まり。 そのチームはアーク等と比べるのもおこがましい程に少数の集団であったが、確かにその街に及ぶ神秘の手を払いのけていた。 しかし、彼らは死を引き連れ歩く二人に敗れた。 殺される間際、己の無力を呪い悔しさに歪んだ青年の顔も、守ると誓った者達の死体を良いように弄ばれたことに対する怒りを浮かべていた壮年の男性の顔も、愛する仲間が敵となり自分を打つことに涙する少女の顔も全てが今では無機質な表情に塗り替えられている。 死を物の様に扱う二人はリベリスタの無念などこれぽっちも感じてはいない。 「それじゃ、この後は予定通りに」 「ああ、続いて新しい楽器を造りに行こうか」 二人は気軽な足取りで市街地の方へと足を向ける。 ――こうして、『大樹の根』が守ってきた昨日までと同じ今日、そんな日常は夢幻の様に儚く崩れ落ち、ヒーローが居る街はヒーローが居た街になった。 ● 「一大事」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が集めたリベリスタ達にそう前置きをして話し始める。 「『楽団』が動いた」 その言葉にリベリスタ達の緊張度が高まる。 『楽団』と言えば世界最悪の魔術結社バロックナイツが一人、ケイオス・“コンダクター”・カントーリオが率いる集団。 彼らが奏でる音色や歌声は死したものを揺り動かし自らの意のままに動く『楽器』へと変える。 元手はその辺にいる人間で、殺せば殺すほど戦力が増えていくのだからその驚異は格別だ。 結果的に、アークと裏野部、黄泉ヶ辻を除いた主流七派が結託するという前代未聞の事態を生み出した。 そんな彼らが予知に引っかかることすら折り込み済みで動く。 これはアークの、否、日本という国一つに対しての不穏だ。 「今回、あなた達に向かってもらうのは福岡県福岡市」 ブリーフィングルームの画面が福岡市街の定点カメラからの画像に切り替わる。 「此処にやってくる『楽団』のメンバーはサックスを演奏するエミリオという男とトロンボーンを演奏するイレーネという女。 二人は大量の『楽器』を仕入れる為に手持ちの『楽器』を使って人通りの多い時間に大量の殺人を行うつもり。 これを、何としても止めて欲しい」 当然だとリベリスタ達は頷く。 もしこれを放って置けば市一つでは終わらない、下手を打てば県一つが楽団員二人の手で落とされる。 「二人は死体の多少の損害を気にしない、生きていれば意識するであろう限界を超えるように死体を操る。 だから、例え元が一般人の死体でもその攻撃の威力は看過できない」 それに、と続ける。 「それ以上に問題なのは街を守っていたリベリスタ達の死体。 元の彼らはアークのトップから多少落ちる位の実力だったけれど、今は攻撃だけならアークトップクラスと遜色ないか超える位になっている」 イヴが一度目を伏せる。 「この任務を成功させることはとても大事。 だけど、それよりも大事なのはあなた達が生きて帰ってくること。 もし、あなた達が死ねば今操られているリベリスタ達の様にあなた達がアークの敵になってしまう。 だから絶対に、生きて此処に帰ってきてね」 少女は祈るように、リベリスタ達を送り出した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:吉都 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月09日(土)23:34 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「お前達がアークか」 『楽団』のメンバー、エミリオが答えに確信を持っていながら問う。 「だったら、なんだ」 『ならず』曳馬野・涼子(BNE003471)が淡々と答えを返す。 エミリオとイレーネ、そして五十を超える『楽器』達。それに相対するは八人のリベリスタ。 「出来るならばこれから俺達がすることを邪魔してほしくはないんだが」 彼の今回の第一目標は福岡市街で多数の人を殺し多くの『楽器』を入手することであり、リベリスタの殺害ではない。 そこから出た言葉であったがそれを了承する者などこの場にいる訳もない。 目の前の八人から出る殺気を受けてエミリオは面倒そうに帽子を押さえる。 「エミリオ、こいつ等は団長に喧嘩を売ろうって連中だよ? 簡単に退くわけないじゃないか」 もう一人の『楽団』メンバー、イレーネがアーティファクトであるトロンボーンをクルクルと回しながら笑う。 「だからさ、コイツらも殺して私達の楽器にしようじゃない」 イレーネがトロンボーンを構える。場の空気が一瞬で張り詰める。 リベリスタはイレーネとエミリオの発する圧力に負けずに武器を構える。 そんな中、『灯色』アナスタシア・カシミィル(BNE000102)の視線はエミリオとイレーネではなく『大樹の根』のメンバーへと向けられていた。 「無念だろうねぃ」 敵に殺され自分が守ろうとした街を人を、壊して殺すための尖兵にされる。 その悔しさの大きさはアナスタシアには分からない、しかし悔しさを抱いていることは解る。自分達も同じようにリベリスタとして数多くを守ってきたのだから。 そして、その無念に共感するのはアナスタシアだけではない。 『スーパーサトミ』御剣・カーラ・慧美(BNE001056)拳を握りしめる。ヒーローを自称する彼女にとってこの町を守ろうとした者達は仲間だ。 故に彼らの気持ちを推し量り引き継ぐことは自然なことだ。 「この場所は絶対に守ります!」 『告死の蝶』斬風 糾華(BNE000390)は後衛の位置から皆を見て思う。自分達は今この瞬間『大樹の根』から確かに大きなものを託されたと。 それは彼らの遺志であり、意志だ。 戦士達が倒れても全てはそこで終わらない、彼らの志は途切れない。 彼らが遺したものを自分達が守ることで新しい大樹が芽吹く。 「私達はそのために此処に来たのかも知れないわね」 言って、軽く笑う。 「人の故郷で好き勝手してくれやがって」 無論、楽団がわざわざこの地だけを狙ってきたわけではない、しかし『黒腕』付喪 モノマ(BNE001658)にとってそんなことは関係ない。 自分の大事な場所を荒らす奴がいて、自分にはそれを止めるための力がある。ならばなぜ動かない理由があろうか。 「てめぇら全員ぶっ潰す!」 モノマが走り出しす。 「やれるものならやってみなよ」 それにイレーネが応える、傍らではエミリオが楽器を吹き鳴らす。 リベリスタを迎え撃つように死体が動き出し、そして戦いが始まる。 ● 「まさか福岡まで来てゾンビ退治とは」 チキリと右目から音を鳴らし、動体視力を強化しながら『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)は嘆息する。 「私だって初めての福岡巡りがこんなことになるとは思ってなかったわよ」 モニカの少し前で気を練る『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花(BNE000609)が軽く鼻を鳴らして答える。 二人の会話の内容は暢気なものだ。とても激戦に挑むようには見えない。 だが、二人にとってはそれでよかった。気負いなく、遠慮なくただいつも通りのパフォーマンスを発揮する。 そうすれば勝てるという自信と実力が二人にはある。 強化を行うリベリスタ達にその場にいる者の中で一番速くあった細剣を携えた死体を先頭にした集団がまるで人の壁の様に近づいてくる。 「行くぜっ!」 雪崩のように近づく敵にモノマが飛び出す。彼の二つ名の由来である漆黒の手甲に炎が灯る。 彼は拳を握らず、伸ばした五指を軽く撓めて腕を振るう。すると手甲から放たれた炎がモノマの腕の延長線上を焼き払って行く。 それはまるで鬼の爪撃。先頭にいた恐らく元リベリスタと思われる死体も、それ以外の死体も纏めて鬼の爪が切り裂く。 さらに、最初に強化を行わなかった涼子、佳恋が続く。 「被害者でも、手加減しない」 涼子は敵のただ中に突撃し銃を握りこんだ拳で手当たり次第に敵を打撃し、腕の届かない範囲にいる敵には引き金を引いた。 単発式ながらも神秘の力により弾丸が切れることはない銃と己の体を使い刹那の間に多数の敵にダメージを与える。 「続きます!」 『戦士』水無瀬・佳恋(BNE003740)が剣を薙ぐ。剣の間合いにいた死体は元より離れた敵にまで届く。 死体を打ったことで飛び散る体液すら巻き起こした烈風で吹き飛ばしたことで佳恋の周囲に僅かに空間が出来る。 そこへ、細剣を持った死体が滑りこんでくる。 気合いの声もなく風切り音を伴う袈裟切り、更に振り切った剣が飛燕の様に横薙ぎに変化する。 瞬きの間に放たれる二連撃、その剣速は歴戦のリベリスタである佳恋をして目で追うのがやっとであった。 「これ程とは」 攻撃の威力に軽く目を見開く佳恋。敵の手強さを実感し相対する敵を見据えた彼女は気づく。 今し方素晴らしい連撃を放った死体、その腕の関節部分から血が滲んでいた。 恐らくこの死体は生前の技量に加えて無茶な動きをすることであれほどの攻撃をしたのだと佳恋は察しを付ける。 「これが楽団に殺された者の末路……」 一瞬、佳恋は脳裏に思い描いてしまう。抜け殻となった自分の躰を操られ仲間に剣を向ける自分の姿を。 背中に寒気が走る、と同時に彼らをこのまま楽団に操らせてはいけないとも思い覚悟と共に剣を構えなおした。 「なかなかやるな、しかし今度はこっちの番だ」 三人が先手を取って範囲攻撃を行う様を見たエミリオはサックスを奏でる。 音波の波が彼の力で増強され物理的な力となってリベリスタ達へ走る。 エミリオの攻撃はモノマを中心にして爆ぜる。――自分が操る死体も巻き込んで。 「てめぇっ!」 咄嗟にクロスさせた両腕を通して衝撃を受けながらモノマが猛る。 「その辺にいる奴を殺せば手に入る物よりお前達を倒す方が優先度が高い それにそいつ等はその程度で壊れはしない」 見れば口の端から血を溢れさせた死体がモノマへ向けて拳を振り上げている。 単純なパンチが地面を揺らす。ただの一般人が人を殴ったにしてはあり得ない破壊力の攻撃を連続で受けるモノマの耳に何かが千切れるような音が聞こえる。 彼らの動きに肉体のスペックが沿っていないのは一目瞭然だった。モノマに攻撃を回避された者は地面を殴った反動で拳が壊れ骨が覗く。 ほぼ同じタイミングで涼子と佳恋も死体達の攻撃を受ける。 範囲攻撃を十全に生かす行動とは即ち敵に囲まれることに他ならない、周りの人垣全てが敵だ。 三人が死体の波に呑まれそうになった時、他のメンバーが追いつく。 「スーパーサトミ。だだ今参上! お待たせしました!」 「私もいるよぅ!」 サトミ、アナスタシアが敵陣に飛び込む。 サトミの筋力で振り抜かれた槌が死体の一つを打ち倒しアナスタシアの魔氷拳が細剣を持った死体の足を地面ごと凍らせて縫い付けた。 「モニカ、合わせなさい!」 「わかっていますよ」 が雷を籠手に纏わせ死体の集団に壱式迅雷を放つ。 絶え間のないコンビネーションパンチはまるで舞のような美しさを持っているが其処に秘めた威力は凄まじい。 そんな彩花の攻撃を柔とするならばモニカの攻撃は剛だ。 巨大な銃の弾倉が回る。銃口からマズルフラッシュが迸る。 吐き出された弾丸は仲間に当たることなく敵だけに向かう。彼女の右目をもってすれば味方を除いて照準することなど容易いこと。 「無理をして出した火力でも私の方が上の様ですね」 高速で回転していた弾倉の動きが止まる頃には何体かの死体は活動を停止していた。 「こいつはたまげたねぇ」 イレーネが明るい声で言う、そこに恐れの色はない。それもその筈だ。エミリオとイレーネの前にはそれぞれ盾を持った死体と一般人の死体が立ちはだかっている。 「どんなに高い火力であっても届かないのならば意味はないな」 さらにエミリオの傍らに控える死体が構えた杖から光を発する。その光に当たった死体の飛び出した骨が治療され、あいた風穴も全部とは行かないが埋まっていく。 「なら届かせるまで撃つだけよ」 糾華の手から煌めく刃が放たれる。それはエミリオとイレーネには庇われることで届かないが他の死体には確実にダメージを与えた。 「だって今の私達はそうすることしか出来ないのだから」 どこか吹っ切れた、爽快さすら滲ませる声で糾華が言う。 八人のリベリスタの中には回復役を担えるものは居ない。だから全員が前に出る。 臆せず躊躇せず怯まずただ彼らは進んで行く。 ● 八人の攻撃は凄まじかった。 己の持つ全力の攻撃を振るい続けるその様子を俯瞰できる者が居れば死体の壁を削り取っていく様がよく見えただろう。 その甲斐もあって多彩な攻撃を持つソードミラージュと自己回復を警戒していた覇界闘を行動不能に追い込むことに成功していた。 しかし払った代償も大きい。 「行きます!」 最初は、サトミだった。彼女は死体の層が薄くなった一瞬に簡易飛行を使うことで飛び越しエミリオ達に攻撃を仕掛けようとした。 しかし翼がないサトミの飛行は速度があるものではなく簡単に足を掴まれ地面に引きずり降ろされ殴られる。 前衛をになったメンバーの中で体力、回避共に低く自己回復ももたなかったサトミはそれまでのダメージの蓄積もあってあっという間に体力を削りつくされるたが運命を燃やし立ちあがる。 「サトミさん!」 そんなサトミを助けようと佳恋が道を切り開こうとするが、間に合わない。 死体の持つ両手持ちの大剣がサトミに振り下ろされる。 デュランダルの渾身の一撃はあっさりと立ち上がったサトミの体力を再び零にした。 ギリギリなのはサトミだけではない。 その後すぐにアナスタシアと佳恋もフェイトでの復活を余儀なくされた。 「まだ倒れらんねぇよ!」 蒼穹の拳をモノマに突き刺さる。 躰がくの字に折れて前のめりに倒れそうになるのを運命を燃料に踏みとどまる。 彼の目の前には今しがた自分を殴りつけた死体が見える。 それは自分の故郷を守ろうとしていた名前も知らないリベリスタ。残酷な世界は二人を敵として引き合わせた。 まるで彼の燃やした運命の火が燃え広がったかのように手甲に炎が灯る。 「お前等を救いはできねぇけど止める位はさせてもらうぜ!」 爆炎が晴れた後に残るのは動けなくなった死体達。 「後は俺らに任せとけ」 モノマは自分の攻撃で倒れた死体に向けて呟くと更なる敵に向かって行く。 リベリスタは攻撃すると同時、自分達も次々と攻撃を受ける。 それは後衛に位置した糾華とモニカも例外ではない。 六人ですべての死体を止めれる訳もなく何体かの死体と立ちふさがることのできない怨霊が次々と二人に襲いかかっていた。 近接攻撃も行うことの出来る糾華がそれらを相手取るも数の暴力は如何ともしがたく途中モニカの攻撃に巻き込まれた死体が何体か減ってはいたものの其処が限界だった。 まず膝を付いたのは糾華。しかし彼女もまた、他の仲間と同じ様に運命を燃やして立ち上がる。 「生きてる者への恨みって言うのならまずはあっちからじゃないのかしら」 ギリギリの復活を感じさせないセリフと共に放たれた気糸が怨霊を締め上げ雲散霧消させる。 続いて襲いかかってきた死体は視界の範囲外からモニカの弾丸を受け倒れる。 「ありがとう、助かったわ」 振り返る余裕もなく次の怨霊に攻撃する糾華。 「お互い様ですから」 モニカもまた言葉少なく返しながら次の敵に狙いを定めていた。 彼女の右目が捉える戦場は最初に比べかなり死体が疎らになっている。 終わりは、近い。モニカは銃を構える腕に力を込めた。 ● 「もう寝ていろ」 涼子の弾丸が此処まで強力な攻撃を振りまいていたデュランダルの死体を撃ち抜く。 「次はお前達」 涼子がエミリオとイレーネを睨む。それは挑発であると同時、彼女の心が言わせた言葉。 「やれるもんならやってみな!」 イレーネのトロンボーンが重低音を響かせる。 まるで内蔵をシェイクされるような感覚が涼子を襲う。だが此処で倒れてはわざわざ喧嘩を売った意味はない。 「この程度で終わりか」 エミリオとイレーネは自分の嫌いな人を弄ぶフィクサードだ。その前に膝をついてなるものかとフェイトを燃やし意思の力で立ちあがる。 「生意気だねぇ」 言葉に先程までにはない苛立ちを乗せたイレーネがもう一度トロンボーンを吹こうとしたがその前に影が指した。 「あ?」 イレーネが怪訝そうに顔を上げると其処にはエミリオが立ちふさがっていた。彼はイレーネの攻撃をやめさせる。 「これ以上は少々面倒なことになる」 言葉の真意を掴みかねたイレーネが周りを見渡せばその理由はすぐに理解できた。 「これで終りだよぅ!」 見ればそれはアナスタシアが敵を殴り倒し、 「世話をかけさせるわね!」 彩花が糾華とモニカを囲んでいる死体を倒すための援護に入ったところであった。 「『楽器』の数を大分減らされた。勝てないわけではないが今は無理をする場面ではない」 端的に言ってそれは退却を促すセリフであり、イレーネは不承不承ながらそれを飲んだ。 「あんたの顔、覚えたからね」 「私も」 イレーネは涼子と短い会話を終えるとトロンボーンを鳴らす。 それを聞いてだろうか、今までリベリスタを殴ることしかしていなかった死体と怨霊が動きを変えてリベリスタに対して足止めを行うように動きを変えた。 「逃がさないよぅ!」 アナスタシアを始めこれを機と見た何人かは二人を追いかけようとするも残った死体達にその動きを阻まれる。 残った死体達が見えているエミリオとイレーネの背中を隠していく。 程なくリベリスタが自分達を足止めする死体を倒し終えた時にはエミリオとイレーネの姿は何所にもなかった。 「目的は果たせましたね」 彩花の言うように、エミリオ、イレーネ両名に逃げられはしたものの『楽団』が目論んでいた福岡市街での虐殺は阻止することが出来た。 「ありがとよ」 モノマは自分が殴り倒したクリミナルスタァに、そしてもう動かなくなっている『大樹の根』のメンバーに感謝を捧げる。 「貴方達がこの地を穢さなくて良かったわ。安心して眠りなさい」 糾華はボロボロになりながら共に戦った仲間を一度見る。 「戦士の遺志は確かに続いて行くから」 倒れた大樹は次に芽吹く新芽の糧となる。 ヒーロー達の想いは決して途切れることはない。 それを受け継いだ者が居る限り。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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