●死者の行進 ビオレの音がいつ聞こえてきたか。それを把握している人はいない。 気がつけば街を霧が包み、死者が町を行進していた。最初は小さな騒動だったものが、燎原の火の如く悲劇は広がっていく。 「やぁ!」 胸元で捻じるように力をこめ、それを解放するように拳を突き出す。そのまま一歩踏み込んで相手の懐に入り、相手を投げ飛ばした。 地面に叩きつけられて動かなくなる死者。死者単体の戦闘力はたいしたことはない。革醒したものであれば、対応可能な実力だ。しかし、 「数が……多い!」 二宮和美は霧の奥から迫る死者の群れに拳を握る。とても一人で相手できる数ではない。 「ぐっ!」 「ガマさん!?」 和美を庇っていたリベリスタの一人が膝を突く。他の仲間も似たような状況だ。 革醒者だから理解できるこの霧の異常。視界や通信網すら遮断するこの霧は『観得ず』の呪いのかかった霧。少なくとも自然のものではない。この霧が晴れれば、他の仲間にも連絡が取れるのだが……。 和美は睨むように霧の奥を見る。薄く見えるのは『楽団』のメンバーと思われる男。後少し、その少しが果てしなく遠い。 ビオレの音は止まらない。それを奏でる一人の老人。 その傍らに、角を生やした幽鬼が漂っていた。 ●アーク 「ミュージックスタートだ、お前達。『楽団』が日本各所でライブを行っているぜ」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は集まったリベリスタ達に向かって、そんなセリフをはいた。 モニターに映し出される日本地図。九州南部の都市にに矢印が入る。 「場所は熊本県のこの都市だ。敵の数は不明。だが確認できただけでも五十を超える数のようだ」 ざわめくリベリスタ。あまりといえばあまりの数に解決の糸口をつかみ損ねていた。自然、質問は曖昧なものになる。 「何とかならないのか?」 「ネクロマンサーを押さえればどうかなるだろうが、そのあたりは『楽団』も理解しているだろう。自分を守るために霧を発生させている。 この霧は 神秘の影響を含んでいて通信や交通網を遮断している。おかげで逃げ遅れる人も増えている。この霧を晴らすことができれば、被害を抑えられるだろう」 「神秘の霧?」 「去年の『鬼』騒動を覚えているか? そのアザーバイドを幽霊にして操っているようだ」 モニターには頭に角の生えた女性の幽霊が、ビオレを奏でる男性に従うようにしていた。『鬼』たちに見られた凶暴性はなく、ただ術によって操られる存在となっていた。 「ここには小規模ながらリベリスタのコミュニティがある。霧さえ晴れれば彼等の協力を得て、街の死者の駆逐も可能になるだろう。ネクロマンサーの近くにそのリベリスタのチームがいる。早くしないと『楽団』の仲間になりそうだがな」 「とにかく、その霧を生み出している幽霊をどうにかすればいいんだな」 「YES。ついでにネクロマンサーも倒せればパーフェクトだ。もちろん、楽なバトルじゃないぜ。 戦場は文字通り五里霧中だ。できるなら一丸となって戦った方がいい。そして逃げ遅れればリベリスタオブザデッドだ。引き際を見誤るなよ、お前達」 伸暁の言葉は変わらないが、その重みは今までのものとは違っていた。死者を繰るもの達。ジャックとは違う悪意。それが今、日本壊滅のために牙を剥いたのだ。 リベリスタたちは覚悟を決めて、ブリーフィングルームを出た。 ●マリオ・ジュリアーニ 「あなた、かつては高貴なお方だったのでしょう。その気質は滅んだ今となっても感じ取れます。 『濃霧ノービルメンテ(上品に。気高く)』……この曲を、そう名づけましょう」 老人はビオレを奏でる。その響きが、死者を次々と生み出していた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年02月07日(木)22:37 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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