●動き出す2体の死骸 そこは、とある博物館。 現在、その場所は、恐竜展が開かれる為に準備を行っていた。たくさんの化石がその博物館へと運ばれていく。 ステゴサウルスの化石もその1つだ。ステゴサウルスは高さ4メートル、全長9メートルという大きさの恐竜で、ジュラ紀に生息していたと言われる。骨だけを見ても、あからさまに人間のそれよりも大きい。これが動いている様はいかなるものだろうかと、作業スタッフ達が議論をしている中……全くないはずの目が光り、それは動き始めた。 現場スタッフ達は、突然動くはずのない化石が動き出し、慌てふためく。化石は周囲にいるそのスタッフへと顔を向け、勢いをつけて突進を繰り出してきた! 「うああああっ!」 「に、逃げろ!」 そこでもう1体あったステゴサウルスの化石が動き始める。そいつはスタッフの動きを遮るように立つ。そして、生来は草食のはずのそいつは、研究員へと喰らいついてきた。 「ああああっ!」 動き出した太古の生物2体に挟まれるスタッフ達。逃げることもできない彼らは、ただ、捕食されるのを待つことしかできないのだった……。 ●状況説明 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、リベリスタ数人を呼び止めて声をかける。『万華鏡』で新しい事件を発見したのだろう。 「恐竜展のために運ばれてきた化石が、E・アンデッドとして動き出してしまうの」 彼女は淡々と事件の説明を行う。動き出した化石は、ステゴサウルスだ。動き出すのは2体のみではあるが、それらはフェーズ2に達している。 ステゴサウルスは本来、植物を食べるとされているが、E・アンデッド達となったこの化石は噛み付きや、突進での攻撃を行う。さらに、地響きを起こして広範囲にダメージを与えてくることもあるようだ。 事件の現場は、恐竜展が開かれる予定がある博物館だ。数日後に控えた初日に向けての準備中なのだという。この日は作業スタッフが10名程が準備に当たっている。 準備中の博物館は、この作業スタッフと、常勤の職員数名がいる。現在は展示がない為、一般人はやってくることはない。立ち入りできなくもないが、下手な行いは常勤の職員から不審に思われる可能性もあるため、留意したい。 「それじゃ、皆の検討を祈っているわ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:なちゅい | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月31日(木)23:10 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●静まり返る館内にて 静まり返る博物館に到着した、8人のリベリスタ達。 手始めに、『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656) が千里眼を使い、博物館内を透視する。館内のほとんどを見透かしてしまい、構造の確認は難しいが、人を透視することがないこの能力。人の集まり方、そしてその仕事内容を見た疾風は、大まかな場所の把握を行う。 「あちらからなら、いけそうですね」 疾風は非常口を指差す。そこは普段は封鎖されているだけで、ほとんど使われていないようだった。 その非常口から館内に、『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024) がそっと忍び入る。 (この世界が上位世界の影響で成り立ってきたものなら……) 太古の生物もまたそうなのか、太古の生物はそうして生まれたのか。あるいは、この世界の生命だけの力で進化したのか……。アラストールはそんなことを考える。それを考えることもロマンではないか。 (それはそれとして、民の守護、竜退治、どちらも騎士の務め) アラストールは館内案内のパンフレットを手に取り、館内を確認して回っていた。 さて、展示場では化石や案内板の設置など、作業員が恐竜展の準備に追われている。警備員に成りすましたアラストールがその場へと差し掛かったその時だった。 「うわっ、何だ!?」 「か、化石が!」 展示場から響く声。模型かと思われたその化石が、ゆっくりと動き出したのだ。まさかの事態に、作業員達は混乱し始めてしまう。一目散に逃げ出す者、足が震えてその場から動けなくなった者、逆に動き出した化石に興奮する者……。 「思ったよりも早かったね」 すでに物質透過を使って館内へと侵入していた、『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759) 。 彼女が展示場へと駆けつけると、すでにステゴサウルスの化石が動き始めていた。彼女は真っ先に、展示場にあった近くの非常ベルを押す。 「後は……」 アンジェリカは動き出した恐竜達へと向き直る。動き出した恐竜に戸惑う作業員達が逃げ出すまで、エリューションと化したこの化石の抑えを行わねばならない。彼女はそう考えていた。 こちらは、博物館の外。 (なんだかジュラ紀にタイムスリップしたみたいですけれど……) 博物館の周囲に結界を張っていた、『プリムヴェール』二階堂・櫻子(BNE000438) はそんなことを考えながら、仲間達からの連絡を待つ。連絡をすぐに取り合えるように、アクセス・ファンタズムは通話がすぐできる状態にしてある。 不意に聞こえる、館内から起こる叫び声。そして、非常ベルの音。リベリスタ達はそれらを聞き逃さなかった。 「動き出したようでございますね!」 「……それでは突入します」 『レディースメイド』リコル・ツァーネ(BNE004260)は職員の叫び声を聞いて、櫻子と共に突入していく。普段はメイド服のリコル。しかし、博物館ではメイド服が目立つと考えた彼女は、少し地味な色のコートを羽織っていた。 「皆様、早く避難をなさってくださいませ!」 リコルはそのまま、展示場へと向かう。 『神速』司馬・鷲祐(BNE000288)も『死刑人』双樹・沙羅(BNE004205)をとっ捕まえて、館内へと入る。そして、鷲祐は沙羅の体を抱えて駆け出していた。 「司馬君、あれ、なんでボク抱えられているんギャーーーーーーーー!!」 「走っちゃならんところを走るのは楽しいな!」 館内から避難する作業員達と2人がすれ違う。沙羅の叫びは避難する彼らの喧騒でかき消されてしまった。一方、鷲祐は嬉々として館内を走る。『走らないでください』と書かれた張り紙の前を、彼はとても嬉しそうに走っていた。 その頃――。 『不機嫌な振り子時計』柚木・キリエ(BNE002649) は電子の妖精の力を使い、館内の通信機器を掌握していた。これでしばらく、博物館内からは外部との連絡が取れなくなったはずだ。 キリエは次に電話を掛け始める。掛ける相手は、館内にいる職員が仕事を行う事務室だった。 「そうです。異常事態が起きているので、退避を願います」 館内の通信環境を制圧したキリエは、警備会社の者だと名乗った上で、館内にいる常勤スタッフへと連絡を取っていた。すでに館内からは叫び声が上がり、混乱が起きている。彼女は展示場を通らないように避難を行うように指示をした。スタッフは疑いもせずに、キリエの指示に従うとして、通話を切る。 「さて、私も……」 キリエはそのまま、展示場へと向かう。動く化石を見に、もとい、動く化石を止める為に。 ●作業員の退避を、化石との応戦を! アンジェリカは化石へと接近し、側面へと回り込んで化石の体を登り始めた。面接着の力もあり、彼女は素早くその巨体の首元まで駆け上がる。 「本当に恐竜が現代で動き出す、それも化石の姿とか、シュールもいい所だよね」 暴れる化石から振り払われないよう注意しつつ、アンジェリカは黒いオーラとともに、化石の首筋へと大鎌を振り下ろす! オーラは頭部の骨を狙い打つが、エリューションとなった化石はそれだけで砕かれることはない。なんとか首元のアンジェリカを振り払おうと、化石は暴れ回る。 もう1体の化石の前へとアラストールが立ち塞がる。彼女は、事前に常勤の職員と接触を試みようとしたのだが、こちらで悲鳴が上がった為に駆けつけてきたのだった。 「ここは私達は引き受けます……早く避難を……!」 アラストールが威風を纏い、作業員へと呼びかける。そして、草食のはずのステゴサウルスが、アラストールの肩へと食らいついた! 「ひいっ!」 化石が人へと食らいつく様を見たからなのか。作業員達は我先にと逃げ出し始めた。 その作業員達と入れ替わるように、リベリスタ達が1人、また1人と展示場へと駆けつけてくる。 疾風は今だ残る作業員の姿を見やる。逃げ出すことができない、あるいは、逃げようとしないスタッフが残っていたのだ。 「太古から目覚めて早々だが眠って貰う! 変身ッ!」 彼らを庇うべく、疾風は作業員の前へと飛び出す。疾風はアクセス・ファンタズムを使って、自身の装備をまとった。 (化石になると好みが変わるのか?) 草食竜が人を襲う事実に、疾風は疑問を抱く。彼もまたE・アンデッドを食い止めるべく、化石の注意を引き始める。 「わ! すっごい!! マジで恐竜だ、超かっけー!!!」 沙羅は鷲祐から降ろされ、恐竜を見上げる。骨のままで動き出したステゴザウルス。蘇った恐竜達は動いている者全てを標的にして、その大きな口を開いてくる。動くはずのない恐竜から襲われて恐れおののく作業員達は、叫びながらその場から逃げ出す。 鷲祐は自身が繰り出す技の速度についていけるよう、自身の体を最適化していた。そして、その恐竜達の注意を引くべく、声を上げる。 「こっちだ! さぁ、肉の獲物だぞ!」 化石達は、ずしりずしりと館内の床を揺らして鷲祐に歩み寄ってきた。やはり、その口は獲物を求めて大きく開かれている。 「草食のはずなステゴさんが人を食べるとか、襲うとか!」 それを見ていた櫻子。この現代に存在するはずのない草食竜が、現代に生きる人間を食らおうとする。それはあまりにもシュールだ。彼女は、周囲の魔力を自身へと取り入れていく。 「ダメですっ! ろまんさんが無くなってしまうのですぅっ!」 それが完了した後、櫻子は夜鷹が飾られた杖を掲げて、詠唱を始めた。 「早く逃げなよ」 沙羅も作業員へと呼びかける。動けないスタッフを抱えて逃げ出す者もいたが、中には恐竜が好きな作業員が、夢のような光景に酔いしれて動こうとはしない。そこで、沙羅は何を考えたのか、その作業員へと食らいつこうとする。 「何をなさるのでございますか!?」 リコルは彼の行動を見て、止めにかかった。しかし、沙羅は事も無げにこう告げる。 「恐竜に喰われるより、マシでしょ」 そんな会話を聞いていた作業員達は、化石よりもリベリスタに恐れを抱いたらしい。彼もまた、殺されまいとこの場から走り去っていく。 そこで最後に展示場へと現れるキリエ。彼女は展示場から作業員達が全員いなくなったことを確認する。そして、動く恐竜の化石に目を向けた。 (きっと他も貴重なものだろうから、損害を抑えたいな……) しかしながら、このままこの化石達を野放しにすると、展示品以上に人的な被害が出てしまいかねない。キリエは複雑な思いを抱きつつ、化石へと向かっていくのである。 ●再び、眠りへと誘う為に 4つの足で博物館の床を揺れ動かす、1体の化石……E・アンデッド。アラストールはその攻撃を全身にエネルギーを張ることで防御する。 「効きませんよ、その身を持って自身の攻撃を受けるのです」 エネルギーからはね返された震動。それが化石の体を揺れ動かす。関節部が不安定なのか、ガタガタとその身を震わせていた。 「さすがでございます!」 同じ敵の注意を引くべく、リコルも自身の防御を固めながら攻撃を繰り出していたが、初陣の彼女はアラストールの戦いぶりに見ほれていたようだ。 もちろん、ただ見ているだけではない。リコルもまた、一度集中した後、自身の双鉄扇を化石へと叩き付けていくのである。 そこで、2人は目の前の化石へと電撃が浴びせかけられるのを見た。疾風がうまく立ち回り、2体の化石へと電撃を伴ったナイフによる乱舞を浴びせかけていたである。 (おっと、展示物に注意しないとな) この場には、他の恐竜の化石――レプリカを含む展示物、他にも、恐竜を模した子供向けの可愛らしい乗り物、映像を流すモニターなどがある。これらを壊してしまうと、恐竜展の開催すら危うくなってしまう。疾風はそれらを壊さないよう、細心の注意を払う。 その疾風を含め、クロスイージスの2人を除く6人がもう1体を全力で倒しにかかる。 「この脚の祖たる存在……骨とはいえ、感じてみせろ。本物ならな!」 トカゲとのビーストハーフである鷲祐。恐竜は進化の過程ではトカゲの祖先に当たる。その力を試すべく彼は跳躍し、その化石の顔面へとナイフを突き出す。その一突きごとに光がほとばしった。 その鷲祐へ、化石は体当たりを繰り出す。彼は体勢を整えられずに吹き飛ばされそうになるが、後ろにいたキリエが彼の体を受け止める。 「大丈夫かい」 鷲祐の無事を確認したキリエは、全身から気糸を発し始める。糸は化石のもろそうな関節部を貫かんとした。 「……痛みも傷も、私が治しますわ」 櫻子は詠唱することで、癒しの息吹を具現化した。優しい風がリベリスタ達へと吹き付け、化石の攻撃によって傷つく仲間全員を癒していく。 櫻子の援護で、持ち直すリベリスタ達。しかしながら、恐竜も黙ってはいない。リベリスタに向けて大きく口を開いてくる。沙羅はそれをうまく避けて見せた。 「恐竜風情が、骨になっても食欲だけはあるなんて強欲な」 沙羅は化石の背後へと陣取り、その足元へと食らいつく。骨となって永い年月を経ている化石。そこに血は流れてはいないが、E・アンデッドとなったことで、循環するエネルギーがあるのだろうか。彼はそれを吸い出していく。しかしながら、顔をしかめる沙羅を見る限り、その味は決して美味しい物ではないようだ。 アンジェリカは化石の首筋に乗ったまま、大鎌を振るっている。幾度も振るうことで、骨に亀裂が走っていた。 「まさに“生きている化石”だね。研究者なら喜ぶかもしれないけど、人を傷つけるなら放っておけない。可哀想だけど破壊させてもらうよ」 再度振るわれるアンジェリカの大鎌。それが首筋の骨へと食い込む。そして、骨がバラバラと砕け始めた。それと同時に全身の骨が形を残したままで崩れていく。 さて、もう1体を抑えていた2人。さすがにE・アンデッドの力は強く、2人で抑えるのも限界に来ていた。 「さすがは、太古の地上を支配していた生物ということですか」 アラストールは肩で息を始めていた。リコルも目がかすむのか、ボーッとしながらかろうじて立っている状態だ。敵はE・アンデッドである以上、生ある者へと執着しているのだろう。化石はそんな2人へと大口を開いた! そこで、リコルの前で仁王立ちしたのは、鷲祐だった。彼の肩に化石がかぶりつく。 「……ま、大人はやることが多いんでな」 そこで、深手を負うリコルへとキリエが清かな微風を送り出す。大天使の力を借りたキリエの力が、リコルへと活力を与える。 「ありがとうございます!」 リコルの礼にキリエは手で軽く合図をし、さらにアラストールの傷を癒すべく、大いなる存在へと呼びかけを始めた。 リベリスタ達は、残る1体へと攻勢の手を強めていく。櫻子が展開した魔方陣から魔力の矢を打ち出すと、それが化石を貫く間にアンジェリカがカードを投げつける。それは、破滅を予告する道化のカードだ。 沙羅もこちらの化石にも噛み付いた。彼の八重歯が化石の骨へと突き刺さる。度重なる攻撃で化石が暴れようとも、彼はその牙を離そうとはしない。 「早く黄泉の世界にお帰りよ」 しかし、気の遠くなるような時を経て、蘇った恐竜。簡単には黄泉の世界へと戻ろうとはしない。そいつは再び4本の足で地面を揺らす。周囲にいたリベリスタ達は、それに巻き込まれ、溜めていた力を放出してしまう。 疾風はこの攻撃から逃れていた。彼は宙を蹴ることで虚空を切り裂く。それらは離れた場所の化石の体まで飛び、次々と殴打していった。 さらに、鷲祐が恐竜の足を狙う。 「くれてやる! 夢幻の蹴撃ッ!」 化石の体重が乗っている右前足へ、鷲祐は1度蹴りを食らわした後で、手にするナイフで連続突きを繰り出していく。右前足の骨が粉々に破壊され、化石はつんのめりになってしまう。そいつはその体勢から、さらに、ボロボロと全身の骨を崩していったのだった。 ●静まりかえった館内で 崩れ去る2体目の化石。リベリスタ達はE・ゴーレムの討伐に成功したのだ。 「終わったか……」 疾風は敵が全ていなくなったことを確認し、変身を解く。 「これでお仕舞いですね、よかったですぅ」 「一億五千万年前の夢を見ながら、ごゆっくりお眠り下さいませ……」 櫻子は無事に敵を倒したことで、へにゃりと笑みを零す。リコルはその横で、再び眠りについたステゴサウルスの冥福の祈る。 「仕事が済んだ。……で、模型の一つくらい、どうにかしてくれ。……まぁ、苦手なんだ。子どもの落胆は」 一息ついた鷲祐は電話をかけていた。その相手は室長のようだ。これほどの騒ぎになったのなら、恐竜展は中止になりかねないが。リベリスタ達の配慮により、周囲の損害は軽微だ。延期はすれど、中止は免れるかもしれない。 「ふん、ボクより強いなんて、許すことはできないよ」 沙羅は崩れた化石を見下す。それっきり、彼はその恐竜の残骸には見向きもしなかった。 アンジェリカは出来る限り荒らしてしまった展示場を片付けようと動いていた。そして、後で戻ってきた作業員達が目に出来るよう、崩れた化石の付近へと『ご迷惑をおかけしました』と書き記した書状を残す。 「そろそろ、作業員達が戻ってきそうですね」 アラストールが仲間達へと告げる。展示場が静かになったのを察して、冷静になった作業員達が様子を見に来ることだろう。キリエは電子の妖精の力を使い、監視カメラの記録を削除していたのだが、撤収を始める仲間達にならってこの場を離れることにする。恐竜に興味を持つこの性別不明のリベリスタは、かなり名残惜しそうにしていたのだが。 (蘇った彼等に、この世界はどんな風に見えたのだろう) キリエは考える。それは人類には決して分からぬこと。それを考えるのもロマンではないか。彼女はそう考えながら、仲間と共に博物館を後にしていったのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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