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兵隊蟻。或いは、罠だらけの山……。

●兵隊蟻との追走劇
 雪の積もった山の中、木々を掻き分け転がるように逃げる少年が1人。歳の頃は十代前半だろうか? 必死の形相で逃げる彼の背後から迫る無数の足音。木をへし折りながら、彼に跳びかかる巨大な影。
 それは、体長2メートルはあろうかという巨大な蟻だった。それも1匹ではない、10体もの巨大蟻が少年に襲いかかる。
「この世界は、こんな化け物がうじゃうじゃしてるのか?」
 荒い呼吸を漏らしながら少年がそう呟く。顎を大きく開き、少年に襲いかかる蟻。少年が、地面に倒れ込むようにしてそれを回避する。
 瞬間、地面から突き出した無数の槍が、蟻の体を貫いた。金属を擦り合わせるような悲鳴を上げて、蟻が息絶える。しかし、蟻はまだまだ沢山いる。
「なんでこんなことになったかなぁ」
 少年は涙を零しながら、雪の上を滑るようにして山を下る。それを追ってくる蟻の群。
 時折、少年は木や地面に手を触れ、何か呪文を唱えている。
 次の瞬間、少年の触れた場所から槍が飛び出し蟻を襲う。
 どうやら少年の触れた場所には、槍を射出する罠がしかけられるらしい。いったいどれほどの罠を、この山に仕掛けたのか分からないが、蟻は彼を追いかけることを止めるつもりはないようだ。
 少年は、この世界の住人ではないらしい。その証拠に、彼の目は普通の人間と違って3つもある。額にある第3の目は非常によく見えるらしく、足場の悪い山道でも、正確に動きやすいルートを見つけ駆けている。
「あぁ、着実に帰り道から遠ざかってる……」
 なんて呟いて。
 少年は、蟻の攻撃を交わすべく蟻の頭を蹴って、木に跳び付いた。

●巨大蟻と、異世界の少年
「E・ビースト(兵隊蟻)と、それに追いかけられているアザ―バイドの少年が今回のターゲット。少年の名前は(ショート)というらしい。触れた場所に罠をしかける能力を持っているみたい」
 モニターには雪の積もった山の景色が映っている。それを見ながら『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、顔をしかめる。
「山には現在、30体ほどの兵隊蟻が散開してショートを追いかけている。また、ショートの張った罠もそこら中に残ったまま。罠は、踏むかショートが合図すると作動し、槍を射出するみたい」
 雪の積もった山だ。雪は現在も振り続けていて、ショートや蟻の足跡を覆い隠している。
 恐らく、ショート自身は罠の位置を覚えていて、解除も可能なのだろうが……。
「山の頂上付近には、ディメンションホールが開いたままになっているからそれも破壊してきてね。恐らく、頂上付近には蟻達の巣があるはず」
 誤って蟻の巣を刺激し、ショートは襲われているのだろう。
「蟻は毒を持っているから、気を付けて。蟻は殲滅。ショートに関しては任せるから」
 それじゃぁ、行ってらっしゃい。
 そう言って、イヴは小さく手を振り、仲間達を送り出す。
「寒いから、風邪を引かないようにね」



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年01月29日(火)22:41
こんばんわ病み月です。
今回は、異世界からの迷子とE化した蟻に関する依頼です。
巨大蟻とか、怖いです。
それでは以下情報。

●場所
雪の積もった山。杉の木が所せましと生えている。
雪は現在も振り続けていて、視界が悪い。また、ショートの仕掛けた槍の罠が山のあちこちに設置されている。
ディメンションホールは山の頂上付近に存在する。山はさほど高くはない。

●ターゲット
アザ―バイド(ショート)
異世界から来た少年。視力に優れていて、動きも身軽。
罠を設置する能力を持つ。
現在、蟻に追われて山を駆けまわっているようだ。
好奇心旺盛で、軽率な行動が目立つ。

●敵
E・ビースト(兵隊蟻)×30
フェーズ1
蟻たちの中に1匹、リーダーが居てそいつの指揮で行動する。リーダーを殲滅すれば他の蟻達は普通の蟻に戻るが、どいつがリーダーなのかは分からない。
恐怖や痛みをほとんど感じないようだ。
また、彼らは仲間を呼ぶことも可能。
【アイアンバイト】→物近単[ブレイク]
鋼のような牙で噛みつく強烈な一撃。
【ポイズンバイト】→神近単[猛毒]
猛毒の胃液を吐きながら噛みつく攻撃。
【蟻地獄】→神遠複[石化]or[混乱]
相手の足元に砂嵐を巻き起こす。


以上になります。
それでは、ご参加お待ちしています。

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
汐崎・沙希(BNE001579)
ソードミラージュ
武蔵・吾郎(BNE002461)
デュランダル
義桜 葛葉(BNE003637)
ホーリーメイガス
綿谷 光介(BNE003658)
ダークナイト
街多米 生佐目(BNE004013)
ホーリーメイガス
ライサ ラメス(BNE004238)
クロスイージス
リコル・ツァーネ(BNE004260)
ソードミラージュ
黒朱鷺 仁(BNE004261)

●兵隊蟻に追いかけられて
雪の積もった山の中。杉の木を掻き分け、駆け抜ける少年が1人。青ざめた顔に、焦りの色を浮かべ、転がるように山を下る。そんな少年を、追いかけてくる無数の足音。木々をへし折り、地面を削るそれは、巨大な蟻だ。
「誰か助けてくれよぉぉぉぉぉお!!」
 少年は叫ぶ。誰に届くかも分からないけど、それでも彼は叫ぶのだ。異世界から来た少年・ショートは元の世界に帰りたいから。その想いだけが、今の彼にとっての全てだった。

●蟻と罠とリベリスタ
「さて……。先ずは順当に御客人と接触したいところだが」
 雪の積もった斜面を見据え『閃拳』義桜 葛葉(BNE003637)がそう呟く。
「………」
 白い視界と、いつ蟻や罠に遭遇するかも分からない緊張。そんな中、蒼い髪を抑え『水底乃蒼石』汐崎・沙希(BNE001579)がピタリと足を止めた。無言で自分達が進んでいるのとは別の方向へと視線を向ける。
 どうかしたのか? と、沙希に視線を向けたのは『人狼』武蔵・N♂H・吾郎(BNE002461)だ。
『あっち……。声がしなかった?』
 皆の頭に、直接沙希の声が響く。
「あ! 確かにあちらで動きが……!」
 沙希の言う方向に千里眼を向け『贖いの仔羊』綿谷 光介(BNE003658)は叫ぶ。8人は、光介の言う方向へと進路を変えた。掌に拳を打ち付け、吾郎が笑う。
「迷い人の保護は嫌いじゃないぜ。穏便に済むならな」
 
「ありーありありりー」
 寒いのが嫌いなのだろう。どこか気だるげな様子で『カゲキに、イタい』街多米 生佐目(BNE004013)は、無数の槍で串刺しにされた巨大蟻の遺体を眺めそう呟く。刀の切っ先で、串刺しの蟻を突きながら、注意深く周囲に視線を巡らせた。
「異世界の訪問者、か。ふむ。面白い能力を使うんだな」
 蟻を貫く槍に手を触れ『渡鳥』黒朱鷺 仁(BNE004261)は感心した風に何度も頷く。異世界から、というわけではないが、彼もまた流れ者だ。親近感を感じているのだろうか。
「アザ―バイドでも、護るよ」
 もこもこの防寒着に身を包んだ『ネクストを呼ぶモノ』ライサ ラメス(BNE004238)が、空中から地上を見降ろし、そう囁いた。ショートの仕掛けた罠や、それにやられた蟻の遺体があることから、ショートや蟻はここを通過した。そのことには間違い無さそうだ。
「蟻様の生態について調べてまいりました。蟻様は情報伝達にフェロモンを使用されるそうです……か、ら……?」
 ふと何かの気配を感じ、メイド服の少女『レディースメイド』リコル・ツァーネ(BNE004260)は口を噤んだ。気配のした方向に視線を向けると、そこにはリコルを覗きこむ巨大な蟻が1匹。その後ろからも数匹の蟻が迫って来ていた。
「群れって、怖いですよね……」
 光介が呟く。頬を引きつらせ、数歩後じ去った。そんな光介を庇うように吾郎と仁が前に出た。表情を強張らせた光介を、沙希は横目でちらりと見て、すっと目を細める。それが何を意味するのかは本人にしか分からない。光介の肩にそっと手を乗せる沙希。
『捜索、お願いね』
 光介の頭の中に、沙希の声が響く。
「あ、はい」
 雪の残った蟻の足跡を頼りに、千里眼でショートを探す。どうやらショートの姿を見つけたらしく、あっちです、と斜面の下を指さした。
「可能な限り戦闘は避けよう。まずはアザ―バイドの保護だ」
 蟻の頭部に掌打を叩き込みながら、葛葉は言う。蟻の体が衝撃波でも受けたかのように硬直し、地面に倒れ込んだ。その隙に、光介、沙希、ライサ、リコルは雪の上を滑るように山を下っていく。
「邪魔な虫どもを片づけなきゃ、なんの話もできやしないか」
 吾郎の剣が大上段から振り下ろされる。高速で振るわれる斬撃の嵐。残像を生み出すほどのそれは、一度に数体の蟻を巻き込んでその身を切り刻んでいく。
 豪快かつ繊細な斬撃を繰り出す吾郎とは対照的に、仁は慎重な動きで蟻に相対していた。身軽なステップで蟻を翻弄し、関節部に弾丸を撃ち込んでいく。仁の目が、蟻から離れ傍に生えている杉の木の真下に向いた。何を思ったのか、蟻を蹴飛ばし杉の木にぶつける。
 瞬間、木の根元から飛び出した無数の槍が、蟻の体を貫いた。
「蟻が誤魔化されても、俺は見抜いて見せよう」
 槍に身動きを封じられた蟻の頭部に、弾丸を撃ち込む。体液を撒き散らし、蟻は息絶えた。
 積極的に襲い掛かってくる蟻が居る一方で、逃げる仲間達を追いかける蟻も存在する。隙を付いて吾郎たちの攻撃を掻い潜り、2匹の蟻が沙希たちを追っていく。その前に立ちはだかったのは、生佐目だった。爬虫類染みた瞳で、蟻を睨む。刀を抜いて蟻を迎えうつ。刃を渦巻く暗黒が包み込む。向かってくる蟻に向け、それを突き刺す生佐目。
「蟻なら大人しく、踏みにじられていてくださ……、あ、お願い、咬みつかないで!」
 暗黒の闇に囚われながらも、2体の蟻は生佐目の胴に喰らいつく。ギシ、と生佐目のあばら骨が軋んだ音。口の端から血を流す生佐目。毒を注入されたのか、顔色が急速に悪くなっていく。
 闇に包まれ、蟻が潰れる。蟻の遺体を蹴飛ばし払いのけ、生佐目は遠ざかる一同に合流した。
「治療させていただきます」
 リコルが生佐目の傷口に手を触れた。燐光が傷口を多い、生佐目を侵す毒を浄化していく。治療を終えた生佐目を先頭に、一同はショートを追って山を下っていく。
「罠を発動させないように、木々には触れないで」
 後列から注意を促すのはライサだ。器用に木の枝を避けながら、自由自在に宙を舞う。後ろで蟻を喰いとめている仲間達も、すぐに合流してくるだろう。その前に、ショートを見つけて保護したい。
 光介は魔導書を胸に抱き締め、移動の速度を上げるのだった。

「あぁぁぁぁぁ! もう嫌だ! なんで蟻がこんなにでかいんだよぉ!」
 悲鳴を上げるショート。張り巡らせた罠を突破し、1匹の蟻が彼の足首に喰らい付いた。骨が悲鳴を上げ、血が流れる。涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔に恐怖と、諦めの色が浮かんだ。
 そんなショートの耳に、どこからか歌声が届く。最初は自分の頭がおかしくなったのかと思った。だが、すぐにそれは気のせいではないと気付く。
『助けてあげる。あぁ。鳴呼、でもたくさん罠をしかけているんだったわね? どうしようかしら?』
 ショートの脳裏に、涼やかな声が響く。痛みに朦朧とする意識の中、ショートは悟る。誰にも届いていないと思っていた彼の叫び声は、どこかの誰かに届いていたのだ。
 罠を乗り越えようとする蟻たちを、魔弾が襲う。魔弾は雪を蒸発させ、周囲は白に包まれた。霧の中から飛び出して来たのは、喜々として刀を振るう生佐目だった。闇が蟻を包み込む。蟻を切りながら駆ける生佐目。うっかり踏んで、発動した罠を素早い動きで回避する。
「児戯同然の罠。さっきのように軽く……ンアっ!?」
 回避しきれなかった槍が生佐目を襲う。咄嗟に刀で受け止めるものの、生佐目は雪の上に倒れ込んだ。
 そんな生佐目の真上を、メイド服の少女が飛び超える。鉄扇を振りあげ、ショートに駆け寄る。気合い一閃、リコルの振り下ろした鉄扇が、ショートに喰らい付いた蟻の頭を叩きつぶした。
「好奇心旺盛なのはよろしゅうございますが、危険と隣り合わせとなることもございますのでお気を付けくださいませ」
蟻の牙が離れると共に、ショートの傷口が淡い光に包まれる。見る見るうちに、血が止まり、傷は癒える。
「響け歌声。その身に届くなら、アナタはまだ死なない」
 霧の中から、虚ろな目をした少女が姿を現した。彼女の歌声が、ショートの傷口を癒しているのだ。
「世界は化け物ばかりじゃない。嫌いにならないで。緩やかに滅び行く世界だけど、ライサは好き。アナタも好きになってくれたら、嬉しい」
 そう言うライサを、ショートの目が捕らえる。はらりと髪が揺れ、額にある三つめの瞳が、ライサを映す。ポカンと口を開けるショート。霧が晴れ、着物を着た女性と、白い髪の少年が姿を晒す。その後ろから、更に3人。血と蟻の体液に汚れた男達もやってくる。
『私達は、貴方を助けに来たの』
 ショートの頭の中に、声が響く。
「あなたを無事に元の世界に還したいんです。一緒に来て、罠を外してくれたら、嬉しいんですけど」 
 どこかオドオドとした様子で、光介が言う。彼の言葉を聞いて、ショートは思う。異世界に迷い込み、蟻に襲われ、自分は運が悪いと思っていたのだが、どうやらまだまだ自分の運は残っていたようだ、と。

「助かりました。ありがとうございます……。っと、ここにも仕掛けたっけ?」
 生佐目と並んで歩くショート。時折木や地面に触れて、自分の仕掛けた罠を解除していく。さっきまでとは打って変って、今度は山を昇っていく。時折蟻と遭遇するものの、撃破しながら進んでいく。
「どうやら蟻達は、2~3体でチームを組んで動いているみたいだな。たぶん、人の形をしたものを襲うように命令されてる」
 エネミースキャンで敵を観察し、吾郎は言う。
 恐らく蟻は、自分たちの巣に害を加えた(ようにみえた)ショートを探しているのだろう。だが、蟻にはショートとそれ以外の区別が付かないのだ。人の形をしたものを敵と認識したらしい。その証拠に、蟻は狸や兎などの動物を襲おうとはしなかった。
 頂上が近い。ここまで来る間に、蟻もほとんど始末してしまった。残りは恐らく10匹程度。
「あ、あそこだ。俺が出て来たのは、あそこだった!」
 頂上付近の岩影を指さし、ショートは言う。恐らくそこに、Dホールがあるのだろう。
『ということは、蟻の巣も近いのね』
 沙希の声が、頭に響く。それと同時に、岩の裏から巨大蟻がぞろぞろと姿を現した。蟻達がこちらに向かって、駆けてくる。その中で1匹だけ、動かない蟻がいた。岩の上に陣取って、こちらを見据えるその蟻は、他の蟻とは少し毛色が違って見える。
「あいつだ」
 剣を抜き、吾郎は言う。岩の上の1匹が、蟻達のリーダーなのだろう。
「この拳の向かい先は貴様に決まったぞ、逃がさん!」
 鉄の爪を装着した拳を突きつけ、葛葉はそう宣言する。雪を踏みしめ、地面を蹴って飛び出した。リーダーを守るように、兵隊蟻たちが葛葉に迫る。半数は葛葉に、もう半数は後列で待機するショートや後衛の仲間へと。
「悪いが、全部倒しておきたいんでな」
 残像を生じさせながら、吾郎の剣が蟻を切り裂く。切り刻まれ、蟻の脚が飛び散った。それでもなお、蟻はその鋭い牙をむき出しに、吾郎の胴へと喰らい付いた。痛みに顔をしかめる吾郎。逆手に持ちかえた剣で蟻を突き刺す。
「少数から処理するのが定石です」
 生佐目の周りを黒い霧が包む。霧は、じわりと地を這いながら孤立した1匹の蟻に纏わりついていく。逃れようともがく蟻をものともせず、霧は漆黒の箱へと変じ蟻をその中に閉じ込めた。それを確認し、生佐目はにやりと笑う。
「統率力の優れた軍団ならば必然、変わり者は目立つんだ」
 蟻を翻弄するように動き回りながら、仁の視線はリーダーに注がれている。リーダー目がけ、弾丸を撃ち込むものの、しかし射線上に飛び出して来た蟻が、身体を張ってそれを阻む。片足を失いながらも、蟻は仁へと襲い掛かる。蟻の牙が肩に食い込み、鮮血が飛び散った。弾丸を浴び、蟻は絶命。牙は抜けるが、血は止まらない。
「術式、迷える羊の博愛」
 仁の傷口を、淡い光が包み込む。血が止まり、仁の傷が癒える。振り返ると、そこには引きつった笑みを浮かべた光介が居た。燐光を放つ魔導書を手に彼は自分の役目を果たす。
「皆仲間。毛むくじゃらも、ライサのような羽付きも、綺麗でしょう? アナタの額の目も、とっても綺麗」
 呆然とするショートにそう告げて、ライサは戦場へと飛んでいく。傷ついた仲間の元へ飛び、その傷を癒す。その様子を、ショートはじっと見つめていた。
 しかし、そんなショートの目の前に巨大蟻が飛び出して来た。前線の仲間が抑えきれなかったのだろう。顎を開き、奇妙な鳴き声をあげる巨大蟻。ショートの足元が崩れ、砂嵐が巻き起こる。
「お庇い致します!」
 リコルが、ショートの体を突き飛ばす。瞬間、爆発するように砂嵐の勢いが増した。リコルの体が宙へ舞い上がる。少しずつ、身体が石に変わっていくリコルを見て、ショートが悲鳴を上げる。半狂乱になりながら、ショートは地面を叩いた。
 地面から、槍が飛び出し蟻を貫く。身動きが取れなくなった蟻へと無数の魔弾が撃ち込まれる。
『突き刺され、光の矢』
 頭の中に、沙希の声が響く。動かなくなった蟻を尻目に、石化したリコルを助け起こした。ショートを見て、沙希は笑った。そこにどんな感情が秘められているかは、彼女にしか分からない。
「早々にこの戦い、幕を引いてくれる!」
 そう叫び、葛葉が飛び出す。握った拳に、冷気が纏わりつく。見据えた先には、鋭い牙を剥き出す蟻のリーダー。ガチガチと牙を打ち鳴らす。
「うおぉぉぉぉ!」
 怒号と共に、葛葉の拳が振り抜かれる。

●少年の帰還
 葛葉の体と、蟻の体が交差する。一瞬の静寂の後、葛葉の首筋から血が噴き出した。
「……っ!」
 呻き声を漏らす葛葉。だが、その口元は笑っていた。葛葉の背後で、蟻のリーダーは崩れ落ちる。氷に包まれ、黒い体が砕け散った。蟻のリーダーは、葛葉の拳の前に倒れたのだ。リーダーを失った蟻の群は、早々に統率を乱す。
 その隙を逃すリベリスタ達ではない。追いかけ、または隙を逃さず確実に残った蟻を仕留めて行く。
 蟻の群が壊滅するまで、5分とかからなかった……。

「達者でな。もしまた、縁が巡るならまた会おう」
 ショートの肩に手を置いて、葛葉は言う。
「助かりました。散々な思い出だけど、貴方達に会えてよかった……」
 深久と頭を下げ、ショートはDホールへ足を踏み入れる。ショートの手には、大量の雪が詰まったビニール袋。どうやらお土産に雪を持って帰るようだ。そんなショートを見送りながら、ライサは言う。
「滅びゆく世界だけど。アナタは覚えておいてね」
 小さく手を振り、ショートを見送るライサ。ショートの姿が完全に見えなくなったのを確認し生佐目はDホールを破壊する。
 異世界から来た少年は、こうして無事、元の世界へと帰っていった。
 荒れた地面と、蟻の死骸に真白い雪が降り積もる……。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした。
異世界から来た少年は、無事元の世界に帰って行きまた。
依頼は成功です。ご参加ありがとうございました。

いかがでしたでしょうか? 蟻と少年の話、お楽しみいただけたなら幸いです。
それではそろそろ失礼します。
ご縁がありましたら、また別の依頼でお会いしましょう。