● 「……手に入れたのか?」 1人の少年が、仲間に問う。 「あぁ、ばっちり手に入れられたぜ」 「流石に小規模な集団相手では、手応えもなかったですよね? まぁ、これはワタシが貰っておきますね」 その問いに対して答える2人。 彼等の周囲では、未だ配下のフィクサード達が4人のリベリスタと戦っている。 「アーティファクト『未来視の乙女』と『闇の御使』……ワタシにぴったりだと思いませんか?」 しかしそんな戦いの喧騒を他所に、目的のアーティファクトを手に入れた少女はコロコロと無邪気に笑っていた。 「そんな事はどうでも良いんだよ! ……蘇芳、後はお前だけで十分だろ? 俺達は引くからな」 笑う少女に少し怒気を孕んだ声で怒鳴った少年は、自身がその2つのアーティファクトを手に入れられなかった事が悔しかったのだろうか。 近くにあった空き缶を無造作に蹴り飛ばし、彼はさっさと戦場を後にし始める。 「あぁ、怒らないでくださいよ~」 少年の後を追い、少女も戦場に背を向けた。 「やれやれ……」 蘇芳と呼ばれた少年は、その様子にため息をついて戦場に視線を移す。 「待て、返せ……!」 「……すまないが、出来ない相談だ」 強引に配下のフィクサードを突破して追撃に出ようとするリベリスタを殴り飛ばし、蘇芳はそう言った。 ● 「逆凪に属する少年達と、リベリスタの抗争……といったところでしょうか?」 と『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は言うものの、実際は抗争というより襲撃に近い。 先日、『自由の翼』というリベリスタのチームが手に入れたアーティファクト、『未来視の乙女』と『闇の御使』。 どうやらこの2つを逆凪のフィクサードである彼等も狙っていたらしく、『先に取られたなら、奪ってしまえ』と襲撃をかけたという話のようだ。 襲撃されたのはもちろん、この『自由の翼』の拠点である。 「今から向かえば、彼等がこの2つのアーティファクトを奪取した所で、戦いに割り込む事は出来ますが……先に逃げる2人を抑えるのは難しいでしょう」 殿を務める『神薙 蘇芳』の配下だけでも、フィクサードは6人。さらに逃げにかかっている少年と少女、『風祭 翔』と『桜木 詩織』もそれぞれが5人ずつの配下を連れているため、この2人を抑えるのはまず無理と考えて良いだろう。 まずは『自由の翼』の3人のリベリスタを救う事が大事だと、和泉は言う。 「とはいえ、神薙 蘇芳は追撃を止める事だけを考えているので、戦局が悪くなれば早々に引くと思われます」 問題はその『自由の翼』のリベリスタ達があまり強くなく、そのくせ攻撃一辺倒で連携を苦手としている点か。 対する蘇芳の配下は結構な手練であり、かつ蘇芳が指揮能力に長けている事もあって統制がしっかりと取れている。 「自由の翼のリベリスタは、言う事を簡単に聞いてくれる人達ではありません。しかも襲撃を受けている中ともあって、皆さんすらも敵と認識してしまいかねないんです」 それはもう、混乱していると言っても過言ではない。 いかに『アークのリベリスタだ』とか『助けに来た』と言ったとしても、混戦に加えて圧倒的に不利な状況の中では、彼等は落ち着くまでは聞く耳を持たないだろう。 混乱しているリベリスタをどう救い、そして蘇芳率いるフィクサード達を引かせるか――。 組み立てる作戦が、重要となる。 「なお、蘇芳は『爆熱の妖精』という特殊なアーティファクトを有しています。その効果は資料に記載してますから、目を通しておいてくださいね」 加えて、何やら妙なアーティファクトの話まで和泉の口から出てきたのだ。 生半可な作戦や気持ちで向かえば、痛い目を見る事になるかもしれない。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月28日(月)22:42 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●無謀なる戦いを挑む者 襲撃をかけてきた逆凪のフィクサードに対し、戦いを挑んだリベリスタ――自由の翼。 数の上でも、そして実力でも劣る彼等の戦いはまさに、無謀なる戦いと呼ぶのが相応しい。 「……真っ当にやってる奴等に対して、信条も何も伺えない単なる暴力による制圧。面白くないな。……面白くないよ」 彼等と逆凪が戦う戦場に辿りつくなり、その状況を面白くないと『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)は言う。 だがフィクサードのあり方を考えれば、『欲しければ、奪え』といった考えも信条といえるかもしれない。 「蘇芳、後はお前だけで十分だろ? 俺達は引くから……」 言いかけた風祭 翔の口がそこで止まる。 それはそうだろう。自分達が引こうとする方向とは逆側から、見慣れない連中が押し寄せてきたのだから。 「同業の危機に颯爽とアークの戦闘員が、推参!!」 「あらあら、これは大変ですねぇ」 堂々と名乗りを上げた喜平に、桜木 詩織は『困ったなぁ』という表情を見せつつも、ころころと笑う仕草だけは崩さない。 「……お前達は行け、狙いはどうせそれだろう」 そして突然の乱入者を視線に映しても、神薙 蘇芳は至って冷静だった。 引けと言う言葉に頷き、そそくさと翔と詩織が退散する状況を考えれば、彼は2人からの信頼も厚いということか。 「くそ、また別の敵だと!?」 「アークだとか言ってるが、信用できるかっ!」 一方で自由の翼の方はというと、混乱しているせいもあって、全てが敵に見えてしまっているようだ。 前には2つのアーティファクトを奪ったフィクサード、後ろからはアークを名乗る謎の集団。彼等から見れば、2つの勢力はこんな感じに映っているのだろう。 「落ち着かせるまでは面倒そうだな」 手近に居た蘇芳配下のフィクサードを手にしたダガーで斬りつけ、自由の翼との間に割って入った『燻る灰』御津代 鉅(BNE001657)はやれやれと軽くため息をつく。 混乱する彼等は、現時点ではアークのリベリスタすらも敵と認識しているため、下手をすれば守るべき対象に攻撃を受ける可能性だってある。 「妾の矜持にかけて翼を見殺しにはできん。その為に鉄心石腸、魔道を究めているのだ」 それでも守るべき者達を守らんと、『破壊の魔女』シェリー・D・モーガン(BNE003862)の言葉が飛んだ。 「そうだな。まだ弱いとはいえ、一応リベリスタを減らされるのはあまり芳しくないからな」 彼女の言葉に頷いた鉅は、撤退し始めた翔と詩織の一団を見やる。 2つのアーティファクトを手に、配下を引き連れて引いていく2人。 「未来視の乙女に闇の御使。……確かに気になる品ではありますね」 その背を見送った『星の銀輪』風宮 悠月(BNE001450)は、2つのアーティファクトの入手経路や、その効果に興味を示していた。 どうやら相当に小さいアーティファクトらしく、そうだと判断できそうなアイテムを視認する事は出来なかったが、同時に悠月に浮かんだのは2つの疑問。 彼等はどうやってその存在を知ったのか? その効果はどのようなものなのか? 「特に『未来視の乙女』が気になるけど、今は考えないっ! 出来る事を、しっかりこなすことが大事だから……うん!」 「アーティファクトは無理でも、自由の翼の人達だけは護り切らないと……心情的にも情報的な意味でも、ね」 その答を得るためには、やはり『ムエタイ獣が如く』滝沢 美虎(BNE003973)と『いつも元気な』ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)の2人が言うように自由の翼を保護する必要がある。 「今回は、アーティファクトよりもフィクサードよりも、仲間を救出するのが仕事だ。助けられる命を、無駄にはさせない」 と『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)もそれを優先する事を一番に考えているが、彼等はそう簡単に守らせてくれそうな状況ではない。 「先にやられたあいつの分まで、戦ってみせる……!」 「悪を前に、正義は……引いてはならないっ!」 むしろ『敵が増えた』と認識している割に、戦意だけは一向に衰える気配すらもないのだ。先に1人が倒れ、3人に減っている事がアーク側にとってはまだ僥倖か。 自身がリベリスタであるから、フィクサードを前に引いてはならない。混乱していても失われていないその気持ちこそが、彼等の信念であり、戦いの原動力。 「あぁ、本当に嫌になりますね。身の程を知らないこの三名、本当にリベリスタなのかしら?」 しかしそんな想いを、原動力を、『白月抱き微睡む白猫』二階堂 杏子(BNE000447)は身の程知らずと吐き捨てた。 確かに彼等は、実力を考えれば身の程を知らないと言える。数の時点でも最初から負けている。 この状況においては、ただ倒されるだけの存在でしかないだろう。 だからと言って、勝てる勝負にだけ手を出すのも何かが違う。 例えるなら、バロックナイツに立ち向かうアークのように――。一見すれば無謀とも無茶とも言える相手に対しても、アークは戦わねばならないのだ。 自由の翼の3人の戦いは、それを小さな戦場で体現しているだけに過ぎない。 背を預けられる多くの仲間と、困難すらも打ち砕く戦略が、彼等には足りないだけの話だろう。 ●守るべき相手からの攻撃 「……3人はそいつ等を、残りはアークの迎撃だ」 手勢の半数を自由の翼に割き、残る3人と自身を合わせた4人をもって、蘇芳はアーク迎撃の態勢を取る。 傍目に考えれば、アークに対して4人では少々相手を甘く見すぎているようにも見えるだろう。 「ぼさっとするでない、右から来るぞ」 「お願い、落ち着いて私達の話を聞いて……!」 しかしシェリーやウェスティアは自由の翼を守護するために言葉を投げかけ、 「悪いが、彼等をやらせるわけにはいかないんだ」 「たまには、こっちの仕事を減らしてくれるのが増えてくれてもいいだろう」 蘇芳の配下による彼等への攻撃は、義弘や鉅、そして「俺達がいる以上は、好きにはさせないぜ」と喜平が間に割って入っている。 それは、この場で勝利を収め凱旋したい蘇芳にとっては好都合だった。 「うるさい、あいつ等を……あの2つを取り戻す邪魔をするな!」 「アレの危険性が、お前達にはわからないのか!」 アークが庇おうとしている自由の翼にとって、今の混乱した状態ではアークですら敵なのである。この瞬間にも、彼等の1人が鉅にその拳を叩き込んでいる事からも、それは明らかだ。 (――危険?) この時、後方から自由の翼の面々に対して歌声を響かせる悠月は、彼等の言葉をしっかりと聞き届けていた。 実際に使ったのか、最初から知っていたのかは定かではないが、逆凪のフィクサードが強奪したアーティファクトは、どうやら相当に危険なシロモノではあるらしい。 そうとわかれば、詳しく話を聞くために是が非でも彼等を助けなければならない。 「落ち着いて……焦りは無謀に繋がります」 今は届かないとわかっていても、救助したいと言う気持ちからそんな言葉が悠月の口から飛び出す。 「力量もない時点で、本来ならば犬死するだけなのでしょうけれど……。助けるのが仕事ですから、致し方ありませんわ」 そして彼女の隣に立って魔陣を展開した杏子は、耳を貸さない自由の翼に辟易しながらも、それが任務だからと渋々助ける姿勢を見せている。 「……ある程度は、イメージした通りだ」 表情を崩さないままに、蘇芳はそのアークの行動が予想の通りだと言った。 最初に喜平がアークだと名乗りを上げ、かつ割って入った事がその予想の要因。これにより、アークが彼等を救いに来たのだと判断はついていた。 「ほらほら、私がフリーだよっ! とらカッターっ!!」 美虎が放つ鋭い蹴りから巻き起こった真空の刃で仲間が深い傷を負っても、蘇芳はそんな事には目もくれない。 今は攻撃に傾倒するべき時なのだと、彼はそういう判断を下しているからである。 義弘と鉅、喜平が自由の翼を庇い、ウェスティアと悠月が傷を癒す。数の上では逆転された蘇芳にとっては、自由の翼の存在が、今のアークにとっては足枷にすらも見えていたのだ。 流石に自由の翼がアークを攻撃したのは想定外だったが、それも好都合な話でしかない。 「お前達は後ろを撃て。この機を逃せば敗北しかねん」 後方に立つ射手と魔導師にそう告げ、蘇芳は義弘達を越え、悠月へと斬り込んでいく。 「彼等は、やらせません」 「別に構わん。俺の役目は追撃の足を止める事だ」 手にしたアシュレイ謹製の杖でその攻撃を止めた悠月に、蘇芳はそんな言葉で返す。 「だったら、とっとと引いてくれると助かるのですけれど」 「お前達が追撃を仕掛けない保証はない」 そして「ならば引け」という杏子へそう答える程度には、アークを警戒しているようだ。 互いの前衛が前衛を抑え、後方からの射撃と手の空いた者の遊撃で双方が撃ち合う。現時点では、自由の翼を守らなければならないアークが不利な状況か。 ざわ……。 その時、空気が揺れた。 実際に視認出来たわけではないが、その不穏さだけをリベリスタ達は肌で感じ取っていた。 「燃やせ……爆炎の妖精」 蘇芳が告げる。燃やせと。 妖精が輝く。ならば、燃やそうと。 アークも自由の翼も、全て焼き尽くさんとする炎が、自由の翼や、彼等を庇う喜平達だけを巻き込むように炎を爆裂させていく。 「これが例のアーティファクトか」 「庇ってなかったら、危なかったかもしれないな」 その炎に身を焼かれながらも、さらに暴れ続ける自由の翼の攻撃を受けながらも、義弘と鉅はまだ大丈夫だという素振りを見せた。 広範囲を焼き尽くす爆発であるだけに、その爆発はまだ威力が低かったのかもしれない。 「流石に、これでは倒れないか。だが……こいつの火力はこんなものではない」 「ぞっとするな、一点だけを爆発させたらもっと強いってことか」 ではある部分だけに集中して爆発を起こしたら、どうなるか。蘇芳の「こんなものではない」と言う言葉に、喜平が「受けたくはないな」と考えるのは当然だろう。 だがその爆発に、そして自由の翼を庇いながらの攻防に、リベリスタは傷つきながらも誰も倒れてはいない。 蘇芳にとってここで誰かが倒れていれば僥倖だったのだろうが、アークはそれほどヤワな集団でもないのだ。 「こちらも、そう簡単には倒させないよ!」 「ええ、攻撃ばかりが全てではありませんからね」 加えてウェスティアと悠月の2人が、マグメイガスながらホーリーメイガスの歌を歌う事も出来るのである。 本職ほどというわけではないものの、それでも戦線を維持するのには十分な効果を及ぼしていた。 「それに、妾達は火力だけならアークでも上位クラスよ。耐えれるなら耐えてみよ」 「黒鎖の味、いかがかしら?」 残る2人のマグメイガス、シェリーと杏子が放つ攻撃も、フィクサード達が楽観視出来ない強烈なモノ。 「流石はアーク……ということか」 如何に自由の翼を庇いながらの戦いで、現時点では有利と感じた蘇芳であっても、押し切れないと感じさせる強さがそこにはあった。 「派手にやってんじゃねぇか! じゃあ俺達は行くぜ」 「では、御機嫌よう……リベリスタの皆様方」 そして訪れる、翔と詩織が撤退する時。 「待て!」 「暴れるな、今のお前達では勝てる相手ではない」 懸命に追いすがろうとする自由の翼の1人を押さえ、鉅がその無謀を止める。 「だが……!」 「こっちは傷を負いすぎている! 追っかけても、返り討ちにあうだけだよっ!」 それでも暴れる彼等に、美虎の一言が飛ぶ。 「アーティファクトは大事だけど、それであんた達が死んじゃったら何にもなんないでしょ?」 「そう、貴方たちの命は失われたらそこで終わりなんだよ……!」 さらにまくし立てるように、「無理をするな」と続ける美虎とウェスティア。 「わかっているが、『闇の御使』は味方殺しのアーティファクトだぞ!」 問題のアーティファクトを持った2人が姿を消したせいか、それとも2人の言葉が届いたのかは定かではないが、彼等の口から出たのは『闇の御使』の効果についてだ。 「……何?」 流石の蘇芳も、『闇の御使』の効果は聞き捨てならないものだったようだ。 「そうだ、だから下手に使うような連中に、渡すわけにはいかないんだ!」 冷静さを取り戻した自由の翼の面々はその効果を知っているのか、身をもって体感したのか――たとえアークの援護が無かったとしても、取り戻す気概だけは失っていない。 「この手勢相手に尚抗おうとする精神、尊敬する。だからこんな所で死んでくれるな、強さは生き抜いた先にあるんじゃぁないかな」 「無理をすればおぬしらは死ぬ、だが妾はおぬしらに死んで欲しくはない。引いてはくれぬか?」 そこまでの気概に敬意を表しながらも、喜平やシェリーはやはり美虎やウェスティアと同じような言葉を彼等に説く。 生きていれば、取り戻す機会はある。だが、死ねばそこまでだ……と。 「其れに比べて滑稽だな御前さんは。戦いに敵へのリスペクトも手前の覚悟も信念も感じられない。……半端野郎が何時までも大きな顔してられると想うなよ」 さらに喜平は言う。蘇芳が無様な存在だと。 半端だと言い切った彼に対し、 「……かもしれないな。今の俺は流されているだけだろう。ただ強くなりたい、それだけだ。だが、それで今は良い」 強くなりたいとだけ答える蘇芳。 「俺達はアーティファクトを得る事と、強くなる事を指示されて、戦っている。そこで起こる強者との戦いが、俺の望みだ」 「私達と戦う事が、その望みに繋がっている……ということですか」 「強さの果てに何があるのかは、わからないがな」 悠月の放つ虚無の手をすんでのところで回避しつつ、彼女と蘇芳の会話が続く。 しかし自由の翼が落ち着きを取り戻した今、パワーバランスは少しずつリベリスタの方へと傾き始めていた。 「とらぁ……でぃすとらくちょんっ!!」 「さぁ、このまま押し切りますわよ」 シェリーが「火力だけなら上位クラス」と言った通り、美虎の蹴りも杏子の織り成す四色の魔光も、それぞれがフィクサード達を追い詰める強烈な一撃。 「まずは1人かな」 「いいや、2人じゃ。Time to make the sacrifice!」 そして前衛を張るデュランダルの1人をウェスティアが倒したのとほぼ時を同じくして、クリミナルスタアもシェリーの放つ魔光によって倒れていった。 「出来ればあいつを倒したいところだが……こっちの安全を確保しないとな」 この時、義弘は蘇芳に喰らいつく事も出来ていた。 だが、下手に藪を突付いて後ろが倒されては話にならないと、彼は無理に攻めようとはしない。 「堅実だな。だが、それが正解だ」 「敵にそう評価されるとはな。が、俺達の役目は彼等を守る事だから、当然だ」 襲い掛かるデュランダルの攻撃を薙ぎ払い、かつ蘇芳の言葉に応えながらも、自由の翼を守る事を重視する義弘。 彼の――否、リベリスタ達の堅固な防衛線は、じわりじわりとフィクサード達を追い詰めていく。 「足止めは十分か」 このままでは全滅も時間の問題だと判断し、蘇芳は一言「引くぞ」とだけ言い放つ。 「持ち逃げされた分、こいつくらいは今回で潰しておきたい。……逃がさん」 「ここは見過ごしましょう。無理をするべき局面ではありません」 追いすがろうとする鉅を制した悠月は、リベリスタ側が優勢ではあっても決して無傷ではないからと、蘇芳を見過ごす姿勢を見せた。 追撃の足を止めるという面ではフィクサード側の作戦は成功していたが、その分だけ手痛い打撃は与えたはずだ。 加えて、自由の翼を守りきった点では、リベリスタ達が勝利を収めている。今はそれで、十分だろう。 ●2つの破界器 「では、2つの破界器の効果を……教えて頂けますか?」 蘇芳の撤退から僅かな後、安全を確認した悠月が問う。 闇の御使は『味方殺し』だと戦いの最中に聞き及んでいたものの、その効果をはっきりと聞いたわけではない。 未来視の乙女は、ネックレス型の破界器。 戦いの中で用いれば相手の動きを読んだような行動が取れるようになるらしいが、どんな善人でも残忍な性格に変貌するデメリットを有している。 闇の御使は指輪型の破界器であり、味方を斬り、斬った人数の分だけ次の攻撃の威力が増す危険なシロモノ。 「デメリットを気にしなければ、使用者は爆発的な力を得る……と言ったところか」 「未来視の乙女を併用する限り、味方を斬っても心が痛まないと言うのも、恐ろしいな」 2つの破界器の説明を受け、そんな感想を漏らす鉅と義弘。 「桜木 詩織だったか。あやつ、相当難儀な敵となりそうじゃな」 そう呟いたシェリーは、フィクサード達が全員を合わせれば結構な数になっていた事を思い出し、頭を抱えた。 「でも、倒して取り返さないとねっ」 だがどこまで難敵であっても、美虎が言うように倒さなければならない事には変わりない。 自由の翼が見せた、いかな強敵であってもぶつかっていく気概。 それに加えてアークのリベリスタ達は、戦略と言う武器を有している。 「どんなに強い相手でも……きっと、勝てるよ」 その2つを駆使すればというウェスティアの言葉に誰もが頷く通り、アークとて負ける気はないのだから――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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