●二人のウタヒメ 「――辞めたいなぁ、アイドルなんて」 ライブを終え、鍵を閉めた控え室に一人。 少女は壁にもたれ蹲りながら、誰に言うでもなく呟いた。 彼女の名は、玲奈(れな)。 最近1stシングルを出したばかりの新人アイドル歌手だ。 「大体、私には向いてなかったの」 初めて出て来た都会で、不意に声を掛けられて。 女の子なら誰もが一度は夢見てしまうような、そんな――夢の舞台へのスカウト。 当然、自分自身も少なからず夢は抱いていたわけで。 とにかく機会を逃したく無かったのだ。 だから。 軽い気持ちで、やってみようと、始めてしまったのだ。 其れからは何もかもが恐ろしいくらいにトントン拍子で上手く行った。 否、上手く行ってしまったのだ。 「……これ、そんなに良い物なのかなぁ」 控え室に置かれた自分自身の1stシングルを手に取ってみる。 描かれているのは、満面の笑みで可愛らしくウインクする自分の写真。 「最低だなぁ。皆、私の為に頑張ってくれてるのに」 不甲斐なさに、自然と目元が熱くなる。 「でも、無理だよぉ……こんな気持ちじゃ、続けられないよ」 ボロボロと一度溢れだした涙は、まるで決壊したダムの様に零れ落ちる。 「誰か、私と代わってよぉ……」 泣きじゃくりながら漏らした玲奈のそんな呟きに。 「――じゃあ、代わってあげようか?」 自分以外誰も居ない筈の部屋から、不意に返事が来た。 不意に聞こえた、返ってくる筈の無い其の声に振り向いた玲奈の視線の先――。 其処には、無邪気に笑うもう一人の玲奈が居た。 ●鏡に映る影 「例えばの話。もう一人の自分がいたら」 貴方はどうするかしら、と『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は問いかける。 「アザーバイドが出現したわ。名前は『シャドウミラー』」 シャドウミラーは、ドッペルゲンガーの様なアザーバイドだ。 まるで鏡の様に、相手の姿や記憶を写し取り言葉巧みに本人と成り代わろうとする。 そうして、完全に立場を失った本人を後で殺してしまうのだという。 「今回現れた個体は、玲奈というアイドル歌手と接触している」 少女――玲奈は、アイドル歌手だ。 だが、アイドルとしての仕事に疲れてしまった彼女は誰かに代わって貰いたくて仕方がなかったのだという。 「彼女は、シャドウミラーの事を自分の代わりに頑張ってくれる良い人だと思っているわ」 辛い、嫌なアイドル業務を押し付けて。 過酷なスケジュールに翻弄される事の無い自由な時間を楽しんでいる。 「でも、このままだと玲奈が殺されるのは時間の問題」 そして、世間は玲奈が死んだ事には気付く事はないだろう。 何せ、同じ顔をした玲奈そっくりのアザーバイドがアイドルとして活動を続けるのだから。 「シャドウミラーは、毎晩こっそりと人気のない公園で玲奈と二人きりで会っている」 此方が介入するとすれば、其の時を狙うのが良いだろう。 「自分の代わりなんて、何処にも居ないのだから」 彼女にも教えてあげて、と最後にそう呟いてイヴはリベリスタ達を送り出した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ゆうきひろ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月30日(水)23:48 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●路地裏の逢魔 日が沈みかけ、薄暗くなった夕刻。 黄昏時、とも呼ばれるこの時間がそう呼ばれる所以を知っているだろうか。 薄暗くなり、視界も悪くなるこの時間には、目の前に居る人間が一体誰なのか、本当に其れは我々と同じ人間なのだろうかと判別を付け難くなる時間でもあるのだ。 故に――。 人は、其処に居る誰かへ『誰そ、彼(たそかれ)』と問いかける。 此れが、黄昏時と呼ばれるようになった所以――。 嗚呼、そういえば余談ではあるが……もう一つ、この時間には呼び名があった。 逢魔が時、その意味は――。 「ライブ、上手く行ってるかなぁ」 人の多い表通りを避け、少し地味な私服で路地裏を歩きながら少女――玲奈はそんな事を呟いた。 玲奈の頭に浮かぶのは、『彼女』に任せたライブの事。 だが、そんな考えも直ぐに杞憂だと玲奈は割り切り、考える事を辞めてしまう。 心配する必要など元より無いのだ。 何せ、『彼女』は自分自身の様なものなのだ。 仕事の事を考える事を辞め、とにかく手に入れた自由な時間をどう過ごそうかと。 そんな風に考えをシフトさせようとした、その時だった。 「ねぇ、ドッペルゲンガーって知ってる?」 暗い路地裏に、聴き慣れた誰かの声が響く。 浮かれた気分で踏み出そうとした足が、止まる。 玲奈の頭の中から浮かれた、楽しい考えが消え去るのはほぼ一瞬の事で。 だって、だって。 仕方ない。 「何で……?」 此処に、居るのと。 そう、玲奈は振り向いた先に居る誰かに、問いかけた。 だって、居る筈がない……否、居てはならない。 目の前に居るのは、そっくりそのまま自分と同じ顔をした誰かで。 そんな存在を玲奈は、『彼女』しか知らなかったから。 玲奈は知らない。 自分の目の前に居るソレが、彼女の想像している何かでは無い事を。 まるでドッペルゲンガーの様に同じ顔、声をした誰かが『Trompe-l'?il』歪 ぐるぐ(BNE000001)だと言う事を。 「君の想像してる『彼女』なら、今もお仕事を絶賛満喫中じゃない?」 「じゃ、じゃあ……」 玲奈の顔が目に見える様に、青ざめていく。 「自分のドッペルゲンガーと出会ったら、偽者が本物に成り代わって本物は居なくなる」 知ってるよね? と。 まるで影から影を伝う様に、思わず逃げ出そうとした玲奈の背後に回りこみながら。 「あれだけ本物の時間をあげたんだから、もう彼女が居れば君なんて、必要無い」 本物が彼女で、偽物が君とぐるぐが笑いながら呟く。 その手には、何処からか取り出した小さな手鏡が一つ。 「じゃあ、君は誰だ」 手鏡が映し出す玲奈の顔は、まるで削ぎ落とされたかの様にまっ平ら。 「家も、友達も、親も、過去全てを明け渡して自由を手に入れるならそれもいい」 けれど、もしも自分に未練があるのなら奴を追い出すんだ、と。 のっぺらぼうの様に消えた顔を、元に戻しながらぐるぐが一枚のCDを玲奈に手渡す。 「その歌手、どう思う?」 手渡されたCDを、玲奈が見つめる。 其処に描かれているのは、笑顔でウインクする他ならぬ自分自身の姿だ。 「おっと、そうだ……ドッペルゲンガーを追っ払うには楽しい思い出を語ってあげると良いらしいよ」 最後に、そんな事を告げてぐるぐはその場を後にする。 後に残されたのは、呆然と立ち尽くしながらCDを見つめる玲奈一人。 そうして、逢魔が時は終わりを告げた。 ●密会、公園にて 昼間ははしゃぎ、遊んで回る子どもたちの喧騒が絶えない公園。 だが今は陽も完全に沈み落ち、人気がすっかり無くなっていた。 そんな公園を訪れ、ベンチに座りしきりに腕時計とにらめっこを続ける地味目な服装の少女が、一人。 全く似合ってない黒いサングラスをかけたその姿は、正体を隠すというよりはどちらかといえば少し、不審者っぽい。 ともあれ、それだけで。 彼女が誰かをこの公園で待っている事は、茂みに潜み公園内の様子を伺っていた者達が察するには、容易い事だった。 「彼女が、玲奈さんだろうね……ちょっとイメージと違うけど」 正体が一応バレない様にしてるんだろうなぁ、と少し乾いた笑いを浮かべながら。 『やわらかクロスイージス』内薙・智夫(BNE001581)が茂みの中から、少しだけ顔を出して言う。 事前に、強結界で人払いを行なっておいたこの公園に誰かが訪れるとすれば。 その人は、どうしてもこの場所に用がある人なのだから――。 その推測を証明するかの様に、程無くしてもう一人の少女が、公園に現れる。 双子、だろうか。 公園に設置された外灯に照らしだされた二人の少女は、瓜二つ。 異なる所と言えば片方は、少し地味な印象を受ける服装で。 もう片方は、まるで絵本の中から飛び出して来たかの様なフリルだらけの衣装を身に纏っている事だ。 「ビンゴですな。後から来た方、彼奴めこそが我らが敵――シャドウミラーで御座いましょう」 智夫の隣で、同じ様に様子を伺っていた『超重型魔法少女』黒金 豪蔵(BNE003106)がニヤリと笑みを浮かべ、呟いた。 「いいや、折角だからどっちが本物の玲奈たんか確かめる為にも近づいて、両方もふもふすりすりぺろぺ……いや、何でもない」 しん、と息を潜めていた仲間達が呆れた様にこほん、と咳をする『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)を見やる。 いやいや、ずっとこう身を潜めてて気を張り詰めっ放しだったしね、と少し額に汗を浮かべながら竜一。 「それは、却下です」 「本物がどちらかは、見ればわかるみたいですから」 「竜一サン、こんな時に何言ってるデスか」 一斉に、呆れながら突っ込みを入れたのは『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)、梶原 セレナ(BNE004215)、キノ・J・グリュック(BNE004228)の女性陣三人だ。 「だが、お陰で緊張の糸はほぐれた」 そんな竜一を少しだけフォローする様に呟いたのは、『闇狩人』四門 零二(BNE001044)だ。 確かに神経をずっと集中させ続けていては、もしもの時に出遅れる可能性もある。 リベリスタ達が、二人に視線を戻す。 楽しげに屈託のない笑顔を浮かべながら、ライブの話を語るシャドウミラーと、何処か上の空な状態で頷く玲奈。 「……もう代わらなくていいって、どういう事!?」 其れは、不意にリベリスタ達の耳に聞こえてきた言葉。 急に怒った様に声を荒げるシャドウミラーに、驚いた玲奈が少し申し訳なさそうに俯きながら言葉を続ける。 「だから、その、色々任せっきりで悪かったし……そろそろ、私もたまにはステージに立った方がいいかなって」 「そんな事ないよ? 嫌だったんでしょ? 私にはわかるもの、玲奈の事はぜんぶわかる!」 辛い事、嫌な事なんて全部私にまかせて玲奈は自由にして良いんだからと。 絶対その方がいいと、両肩を掴みながらシャドウミラーが言う。 「ね? 私は、玲奈の為を思って言ってるんだから……出逢ってからずっと、玲奈の為に辛い仕事を代わって、楽しい事を幾らでもさせてあげて……急に何でそんな事思ったのかはわからないけれど、信じてくれるでしょ?」 屈託の無い笑顔を浮かべながら、しかし決して逃さないと言わんばかりに肩を握る手に力を込めながらシャドウミラーが囁く。 「――『全部』私が代わってあげるから……玲奈は好きにして、良いからね?」 その言葉に、玲奈が首を縦に振ろうとした、その刹那――。 「いけませんぞ!」 茂みの中から飛び出してきた豪蔵が声を上げた。 其れに続く様に、茂みの中から次々と現れたリベリスタ達に、玲奈とシャドウミラーが視線を向ける。 「その問い、決して頷いてはなりませぬ。そう……本当に貴方は、貴方の『全て』を彼女に渡すつもりなのですかな?」 全てを真似られると云うことは、つまるところ全てを得られるという事になる。 そして、そんな事をして彼女に何の利があるとお思いですかな、と豪蔵が玲奈に問いかける。 「いきなり出てきて玲奈に何を吹き込んでるの? 利益なんて無いわよ、私は好きで玲奈の代わりをしてるだけよ! 玲奈は今まで辛い事ばっかりで、私が代わってあげた方が良いに決まってるんだから!」 まるで、突然現れた闖入者達から玲奈を庇うかの様にシャドウミラーが玲奈の前に立つ。 「それは、違いマス!」 「何が違うの? 貴女に、玲奈の何がわかるの?」 「玲奈サン、その人、玲奈サンの頑張るした事全部もっていく人デス」 其れは、決して辛い事ばかりではない。 辛くても頑張って、手に入れたもの、これから手に入る筈だったもの。 まだ追いかけている途中の夢は――両手に収まらないくらい大きなもので。 それを捨てるなんてとんでもナイ、とキノが言う。 「誰だって、命は一つ、身体も一つです。それを二つも望んでしまうと、得られる幸せは半分に、襲ってくる不幸は二倍になりますよ」 例え今が楽だったとしても、最後にはそうなってしまうとセレナが言う。 「そいつは、玲奈さんの代わりを務めてくれてる様に見えるけど……そうじゃないんだ」 玲奈さんの代わりをしているのは……殺して入れ替わる為なんだよ、と智夫が訴える。 「殺す……殺、される……」 玲奈が震える様に声を出しながら青ざめる。 或いは、その話を聞いたのが初めてであれば、そうまではならなかったのかも知れない。 玲奈は思い出す……数時間前に会ったもう一人のドッペルゲンガーの言葉を。 「俺たちは、キミを助けにきた…それだけは信じてくれ」 零二が、真っ直ぐな視線のまま玲奈へ言う。 「私、私は……」 迷った様に、きょろきょろと視線を泳がせる玲奈。 そんな玲奈の態度に、焦りを感じたのか――。 「何よ、何よ何よ何よ何よ何よ何よッ! 私を信じてくれないの?」 こんな、何処の誰かもわからない様な今日会ったばかりの連中の方を信じるの、とシャドウミラーが取り乱し、やがて。 「まぁいいわ。信じてくれないんだったら――」 殺しちゃえば良いんだから、と感情の篭らない冷たい声で玲奈の方を向き直り――。 「死んじゃえ」 シャドウミラーの影が、不気味に蠢く。 やがて浮き出る様に現れた幾つもの黒い刃が、一斉に玲奈の元へと放たれる。 自分に迫り来る刃に、玲奈が恐怖心から目を閉じた瞬間。 ドスドスと、次々に柔らかな肉体を刃が突き刺す音が響き渡る。 が、何の痛みも感じない。 或いは、其れが死というものなのだろうかと目を開けた玲奈の前には、自分を庇うように刃を受けた零二の姿。 「言っただろう? 俺たちは、キミを助けに来たんだと……」 信じてくれるかい、とそう呟いた命の恩人の言葉に今度は強く玲奈が頷いた。 「……終に馬脚を現しましたな。ジャスティスシャァァァァイィィン!」 本性を漸く現したな、と叫ぶ豪蔵がAFを装備、装着し変身。 彼に続く様に、仲間達も次々と臨戦態勢に入った。 ●誰かになりたい誰か 「ちょっと揺さぶられた程度で、キャラが崩れすぎだよ君」 玲奈と会った時とは、また別の”誰か”に姿を変えながらぐるぐがシャドウミラーに言う。 「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいッ! 私はずっと頑張って来たのよ!? なのに、何で! 何でこんな所でッ!」 駄々をこねる子供の様に叫ぶシャドウミラーに――。 「そうやって激高していたら――目的も何も達成出来はしないさ」 激高するシャドウミラーとは対照的に、ぐるぐは冷静に集中力を高めていく。 「お前に、玲奈たんは殺させない!」 続いて飛び出したのは、竜一。 全身のエネルギーを両の手に構えた『雷切(偽)』とブロードソードに集中させ、気合と共にシャドウミラーを一閃。 爆発的な威力を秘めた一撃は、迎撃せんとシャドウミラーが影から取り出した武器をいとも容易く砕き、そのまま激しく突き飛ばし玲奈から引き離す。 「ねぇ、玲奈たん。アイドル稼業も大変なんだろうね」 玲奈からシャドウミラーを上手く引き離せた事を見ながら、竜一が言う。 「常に全力で走り続けられる人間なんていないさ。たまには少し休む事も必要だと思うね」 だが、と彼は言葉を続ける。 「この先、続けていく自信がもし無いのなら――覚悟が無いのなら、君は身を引くべきだ。でも、もしも、もしも君がアイドルを続けたいと言うのなら誰かに代わりをやらせるなんて半端なマネは許さねぇよ」 ファン達が、他ならぬ君を大好きな人達が見たいのは、代わりの誰かなどではなく君自身なのだからと。 「私、自身……」 「玲奈さん。こっちへ……其処に居るよりは安全ですから」 駆け寄って来た智夫の声に、玲奈が我に帰る。差し伸べられた手を取り、そのままシャドウミラーの攻撃の届かない安全な場所まで移動していく。 「私には、玲奈さんの感じているプレッシャーがどういうものかはわかりません」 ですが、辛くなる時がある事は分かりますとカルナが言う。 自分達、リベリスタにとってもきっと、そういう時はあるのだから。 玲奈の無事を見届け、態勢を整える為にカルナが仲間達に翼の加護を与える。 その姿はまるで天使を彷彿させる神々しさだ。 「余り時間をかけ過ぎては、玲奈さんに危険が及ぶかも知れない……」 そうなっては元も子も無い、とセレナが仲間達に最適な攻撃動作を共有していく。 「戦う怖い……ですケド、頑張りマス」 シャドウサーヴァントと共に、キノが全身から気糸をシャドウミラーに向けて放つ。 「何よ、こんな糸……!」 自身に絡みつき、縛り上げる気糸。 しかし、其れを直ぐに引きちぎるや否やシャドウミラーが憎悪に満ちた視線でリベリスタ達を睨みつける。 「全員、殺してやる!」 先ほど、玲奈に放った物とは段違いの量の影で創りだした剣をシャドウミラーが周囲に浮かび上がらせる。 「私の邪魔は誰にもさせない! もう少し、あと少し、ほんの少しで、私は!」 影なんかじゃない、誰かになれるんだからと――。 まるで豪雨の様に降り注ぐ刃の群れが、リベリスタ達の影を縫う様に次々に貫いていく。 「効かぬ、効きませぬぞ!」 飛来する刃の内――カルナへ向けて放たれたモノを豪蔵が自慢の筋肉を惜しみなく主張させながら防いで行く。 「お前と彼女は、同じ顔だが」 彼女が秘める未来、可能性は微塵も感じはしないと零二が言いながら、魔力のナイフを構える。 その身から繰り出されるは、決して澱む事の無い連続攻撃。 更に、続くぐるぐがまるで行動を全て読んでいるかの様に、ぐるぐが『L・ドッペルガンナー(EX)』と『R・コラージュ(EX)』で正確に攻撃を加えていく。 「かはっ!? こ、この……!」 ぐるぐの攻撃に、息も絶え絶えにシャドウミラーが片膝をつく。 他人に成り代わり、誰にも知られないままに社会に溶け込んでゆく。 元々、そうした面倒な手段を取らなければならないアザーバイドであるシャドウミラーには最早、殆ど戦う力は残されていないのかも知れない。 「玲奈たんにさっき言った言葉……それは、お前も同じだ! 姿がその子だろうと、お前は、お前だ! 他の誰かじゃない! 俺が殺すのは、お前自身だ!」 裂帛一閃――爆発させた全身の闘気と共に、竜一が正しく生死を分かつ一撃をシャドウミラーへ振り下ろす。 「私、私はね――――」 それでも、だれかになりたかった。 誰にも聞こえないような、小さな声。 其の声を、最後にしっかりと聞き届けながら竜一が剣を納める。 「例え、姿かたちを真似たって……誰も、誰かの代わりになんてなれるものかよ」 消滅していくシャドウミラーを見据えながら、竜一は最後にそう、呟いた。 ●彼女が選んだ、答えは 「正直なところ……私は本当に辛いのであれば止めても構わないと思うのです」 戦いが終わり、ベンチに腰掛けながら玲奈に話しかけたのはカルナだ。 周囲がどう思うか、ではない。 其れが玲奈自身が明確な意思で決めた事であるのならば、誰にもきっと非難する事など出来ないのだからとカルナが言った。 「何故に、アイドルになったのか……。貴方の理由、『夢』を思い出しこれからどうするかを決めてくだされ」 アイドルになった理由。 きっと其れは、誰かに迫られた様なものではないはずだと豪蔵は言う。 「歌ってるとき玲奈サン楽しそう見えマス」 もし、アイドルを続けるのなら応援シマス。頑張って下サイとキノが笑顔を向ける。 「もしも、辛い時が今後もあったらその時は少し休むとか、周囲の人に相談してみるのもいいかもしれません」 「うんうん、後は嬉しかった事は思い出してみるといいかも知れない」 そうすれば、少し気分が晴れたりすると思うと、セレナや智夫が励ます様に言う。 「君の答えは、きっと君自身の中にあるのだろう」 ならば、彼女にかけるべき言葉はきっと一つだけなのだろうと零二は思う。 「唄うのは、好きかい?」 問いかけられた其の言葉に。 玲奈は、ゆっくりと首を縦に振り頷いた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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