●電子の妖精 インターネットの普及したこの時代。多くのIT企業が存在し、またそのオフィスや作業場も多く存在する。高度なネット環境を必要とするそれらの会社を、一か所に纏めようと、そういう専用ビルも存在する。今回の物語は、そんなオフィスビルの一室から展開する。 バチ、っと電気の弾ける音がした。 数秒の後、室内に設置されていた無数のPCが勝手に起動を始める。画面に、明りが灯り、起動中の文字が浮いた。 その文字を掻き分けるようにして、PC画面から蒼い腕が伸びる。 画面から這い出て来たのは、人の形をした何かだ。蒼い体は、紫電を纏い、バチバチと音を鳴らす。 体は細く、背が高い。蒼い体のあちこちに纏わりつく黒い靄は、雨雲かなにかだろうか? 靄は時折放電している。ゴロゴロと、低い音を鳴らす雨雲を従えて蒼い男は前に出る。 無数のPCと、機械の類を眺めて蒼い男がにやりと笑ったような気がした。 「この世界は、面白いなぁ。電気をこんな箱に溜めておけるのか……」 PCから伸びるコードを指で持ち上げ、男はふむ、と頷いた。 彼は、この世界の住人ではない。アザーバイドと呼ばれる異世界から来た住人である。オフィスビルのどこかに開いたディメンションホールから、この世界に迷い込み、電気の気配に誘われ配電コードの中に潜り込んだ。ビルのあちこちを周り、辿り着いたのがこの部屋。出した結果が、この機械を使えば面白いことができそうだ、ということ。 「邪魔されては、叶わんしなぁ」 そう呟いて、男(クイックシルバー)は体の周りに浮いた雨雲に電気を注ぐ。ぎろり、と雨雲の中心に大きな目が現れる。 その数、実に10体ほど。 「電気はいくらでも補充できるしな。それまで、この場の警戒を任せたぞ」 クイックシルバーの命令に従って、雨雲(クラウド)がビル内へと散っていった。それを見届け、クイックシルバーはPCに片腕を潜り込ませる。 「さて……。夜明けまでには、終わるか」 そう言って、男はにやりと笑うのだった。 ●電気を守れ 「どうやらクイックシルバーは、このビルから侵入し、街中の電子機器、コンピューターの類の支配権を奪おうとしているみたい」 電気はどこにでも繋がっているからね、と『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は呟いた。モニターに映るオフィスビルに明りは灯っていない。しかし、時折雷のような強い光が、窓から漏れている。 「クラウドが10体、ビルのあちこちに散っている。どの部屋にクイックシルバーがいるかも解らないけど、探して討伐するなり、送り返すなりしてきて」 暗いから注意が必要だけど、とイヴは言う。ビルは全部で10階建て。ビルの内部には多くのPCルームがあり、また無数の監視カメラなどが設置されている。 「監視カメラの様子は、クイックシルバーが見ているみたい。クイックシルバーの指示で、クラウドが迎撃に来るだろうから、気を付けて」 モニターに、バスケットボールサイズの雨雲が映る。雲の中心には目が1つ。電気を放ちながら、宙をゆらゆらと泳ぐ。 「クラウドは、遠距離からの放電を得意とする。電気が無くなると、クイックシルバーの元に戻る習性を持つみたい」 そう言って、イヴがモニターを切り替えた。今度は、蒼い体を持った痩身の男が映る。クイックシルバーと呼ばれる、アザ―バイドだろう。 「クイックシルバーは、格闘攻撃を主体に攻撃してくる。動きが素早いから気を付けて。あと、電気で出来ているから、直接触れると痺れるかも」 クイックシルバーがネット環境を乗っ取るまでにかかる時間は、せいぜい3~4時間といった所だろう。悪戯目的なのだろうが、厄介極まりない。 「それじゃあ、よろしく。あと、Dホールの破壊も忘れないで」 そう言って、イヴは小さな手をぱたぱたと開閉させる。口で小さく「ばちばち」と言っていることから、恐らくそのジェスチャーは電気を意味しているのだろう。 解り辛い、とそう思いながら、リベリスタ達はその場を後にしたのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:病み月 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月27日(日)23:08 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●深夜の閃光 非常灯のみが灯ったオフィスビル。ジジ、と僅かな動作音と共に、監視カメラが動く。ビルの外に向けられたカメラのレンズが、何者かの影を捕らえる。それをビルの一室で見ていたアザ―バイド(クイックシルバー)は、自身の分身ともいえる雨雲たちを現場へと急行させる。 「こんな夜中に、誰だ……。邪魔はされたくないんだがなぁ」 そう呟いて、クイックシルバーは再びパソコンに向き直る。蒼い雷でできた体。電気に分解した片腕を、パソコンの画面に突っ込んで、目を閉じる。 このオフィスビルから、ゆっくり時間をかけてこの街の電気系統を支配しようとしているのだ。蒼い男は、にやりと笑う。 ●雷の城への侵入者 「悪戯目的でってあたりがしょーもないけど、名前だけはかっこいいよね」 もぐもぐとカレーを口に運びながら『もう本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)がビルを見上げる。のんびりと、ビルに入っていく仲間たちを見て、最後に自分もそれに続く。 「名前とか、電気を扱うとか、正義のヒーローっぽいですのに、悪の人とは残念無念!!」 成敗します! と叫び盾と剣を打ち鳴らす『超守る空飛ぶ不沈艦』姫宮・心(BNE002595)が周囲に警戒を飛ばす。その途中、ビルの受け付けカウンターに置かれているパソコンを発見。あれ、と指さす。 「ネットワークにアクセスしてみましょうか」 チャイナ服の裾を揺らし梶原 セレナ(BNE004215)がパソコンに近づいていく。モニターに手を触れ、目を閉じた。数秒の後、パソコンの画面に明りが灯る。電子の妖精によるコンピューター操作である。 これで、クイックシルバーの痕跡を探しだしているのだ。 「上位世界の厄介事ってほんと嫌になってくるんですよね。あぁ、神は未だ以って試練を与えたもう」 真紅の修道服に身を包んだ『ヴァルプルギスナハト』海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)が、首に下げた逆十字を弄びながらそう呟いた。ふ、っと溜め息を吐いた次の瞬間、彼女の頭上から大量の水が降り注ぐ。 「……っは?」 なにこれ? と、言いたげに頭上を見上げる海依音。どうやら頭上のスプリンクラーが作動したらしい。それだけじゃない。食堂へと続く自動ドアは勝手に開閉しているし、蛍光灯が何度も点滅を繰り返す。 「抵抗されてますね……。特に監視カメラはガードが固いです」 唇を噛みしめセレナは言う。今のところ、敵の場所は判明しないようだ。 「なかなか見つかりませんね……」 腰から下げたカトラスに両手を添えて『Lawful Chaotic』黒乃・エンルーレ・沙理(BNE003329)がそう呟いた。セレナがネットワークにアクセスしている間に、見える範囲の捜索を行っていたのだが、敵の姿は無い。 「地図とかもないわよね」 ごそごそと、引き出しを漁っていた『蒼震雷姫』鳴神・暁穂(BNE003659)が、どうでもいいような書類を手にそんなことを言う。 「まったく……じょーしきの通じない奴って悪い奴もそうでないやつも本当に面倒ね。正義のヒロイン花梨様がぼっこぼこにしてこの世界のルールって奴を教えてやるわよ!」 コツンと、愛用の鉄槌で床を叩く芝原・花梨(BNE003998)。 ため息を吐いた次の瞬間、バチ、っなんて放電の音と共に雷の刃が花梨の足元に突き刺さった。 「……え?」 雷の飛んできた方向に視線を向けると、そこには2体の雨雲の姿。更に、降りて来たエレベーターの扉が開いてその中からも3体の雨雲が姿を現す。更に数発、飛んできた刃が受付カウンターに突き刺さる。 「異世界から来た連中ってどうしてこう傍迷惑なのかしらね?」 タン、と軽い音をたてて『炎髪灼眼』片霧 焔(BNE004174)が飛び出した。放たれる雷の刃を小梢が巨大なカレー皿で受け止める。電光が散って小梢の膝が床に付いいた。 「うわぁ~……」 雨雲の1体が、身体から大量の電気を撒き散らす。大半の仲間たちはそれを回避、或いは防御で乗り切るが、しかし小梢はそうはいかない。雷の直撃を受け、床に倒れた。意識はあるのか指先が床を引っ掻く。そんな小梢を守るように、心が前に立ち塞がった。 「できるだけ固まって行動してくださいデス!」 そう叫ぶものの、時すでに遅い。2方向から迫る雨雲相手に、すでに仲間は散らばった後だ。 「親玉の所に案内してもらいますよー」 海依音が展開させた魔弾を一斉に射出する。魔弾は空中で雷と衝突し、爆散。周囲に衝撃波を撒き散らす。その隙に乗じて焔が雨雲に肉薄。握りしめた拳を振り下ろす。炎と雷が激突。雨雲は背後に弾け飛んだ。同様に、焔は床に転がった。倒れた焔に、別の雨雲が接近するが。 「やらせないわ!」 振り抜かれた鉄槌によって、地面に叩き落される。電気を散らしながら、雨雲が床を転がっていく。それを追って花梨が駆ける。高々と鉄槌を掲げて、身体ごと雨雲に跳びかかる。 警戒しながら雨雲に向かう仲間がいる一方で、暁穂は喜々としてエレベーターへと駆け寄っていく。3体の雨雲目がけ、素早い動きで電撃を纏った拳を叩きつける。 「楽しみね、貴方達の親玉に、早く会いたいわ!」 放電を浴びながら、こちらも負けじと電撃で返す。ギョロリと、雨雲の中心に付いた眼球が暁穂を睨みつけた。放電から、雷の刃へと攻撃を切り替える雨雲。暁穂の体中に無数の裂傷が刻まれていく。 「やば……」 暁穂の髪を、飛び散った血が赤く染める。壁を蹴って背後へ下がる暁穂。それを追って前へ出る雨雲。暁穂の肩を、誰かが引く。入れ替わりに前へ出たのは、沙理だった。カトラスの切っ先を雨雲の目玉に突き刺した。一瞬、激しく放電したかと思うと、雨雲はそのまま霧散して消える。 残った2体が、沙理に迫る。だが、沙理は体勢を低くしたまま、雨雲の真下を駆け抜けそれを回避。 「遅い、雨雲風情が私に追いつけるとでも?」 2本のカトラスを背後から雨雲に突き立てる。流れるような流麗な動作。無数の刺突が雨雲を散らす。残った1体も、放電と共に力一杯振り抜かれた暁穂の拳が貫いた。 「本当にひじょーしき!」 花梨の鉄槌が雨雲を潰す。残った雨雲は1体だけ。倒してしまわないように注意しながら、焔が抑えている。雨雲がバチバチと雷を散らす。放電の準備体制だと判断した焔が後ろに下がった。 「任せるのデス!」 焔の前に飛び出した心が、盾を掲げる。と、同時に最大火力で放たれた雷が、周囲に飛び散った。盾でそれを受け止める心。鎧の隙間から、黒い煙が立ち上る。放電を終えた雨雲は、一回りは小さくなっているように見える。ふわふわとした動作で、階段へと逃げて行く雨雲。 「追いましょう。行く先に真の敵が」 そう言って、沙理は雨雲を追って階段に足をかけた。それと同時に、待って、とセレナが声をあげる。 「皆さん! 監視カメラの妨害、成功しました」 「なかなか大変な目に会いました。挫けそうなときにはカレーです」 もぐもぐとカレーを租借しながら、小梢が溜め息を吐く。眼鏡の奥の瞳が捕らえるのは、ふわふわと廊下を進む雨雲の姿。時折、思い出したように僅かばかりの雷を散らす。さきほどまでとは違った、弱々しい動き。 「クイックシルバーが近いのですかね?」 沙理は言う。先ほどから2度ほど雨雲による襲撃を受けている。単体相手なら、比較的短時間で殲滅できるので、逃げる雨雲は見失ってはいない。監視カメラを切ったからか、どうやらクイックシルバーはこちらの居場所を把握していないようだ。最初の襲撃のように纏めて敵が襲ってくる、という事態には陥っていない。 散開させての捜索。及び、自身の警備を兼ねた役割に命令を変更したのだろう。それなら、あまり自分から離れた場所には配置しない。いざと言う時、呼び戻すのに時間がかかるから……。 「まぁ、私は守るだけー」 銀の皿を掲げて、小梢は言う。 彼女の見ている目の前で、雨雲は8階奥にある一室へと姿を消していった。管制室と書かれたプレートが見える。 「昔のCMでやっていました、電気は大切に、と。無駄に悪用するのを見過ごすわけにはいきません。それでは、行きますか……」 仲間達に、ディフェンサードクトリンをかけながら、セレナはそう呟いた。 ●雷男・クイックシルバーとの遭遇 「はいはい、どーもお待たせしました。さっさと帰ってくださいませんかねぇ。っていうか死にくされでごぜーますよ」 管制室のドアを押し開け、海依音は言う。展開させた魔弾を、部屋の奥に居たクイックシルバー目がけて射出する。 だが……。 「邪魔をしないでくれるかなぁ」 ふわりと現れ、クイックシルバーの前に立ち塞がった雨雲が、身体を張って魔弾を受け止める。同時に、リベリスタ達の背後にも2体の雨雲が出現。どこかに隠れていたらしい。雨雲の放つ雷の刃を、小梢は咄嗟に受け止める。 「しびびびび……」 バチ、っと電気が弾ける。その隙に、クイックシルバーは逃げかえってきた雨雲に電気を供給している。 「まだまだ時間はありますデスが、出来るだけ手早く終わらせましょう」 そういって盾を構える心。彼女の背後には、回復役のセレナが居る。セレナは手近なPCに手を伸ばし、そっと触れた。 小梢と心、セレナが防御や回復に専念する一方で、他のメンバーは一斉に駆けだし、攻撃に打って出る。 「遅いですよ」 左のカトラスで雷の刃を裁き、同時に右のカトラスを雨雲に突き刺す沙理。長い髪をなびかせて、踊るように斬撃を加えて行く。そんな沙理の隣を、颯爽と駆け抜ける影が1つ。蒼い髪を躍らせ駆ける暁穂だった。握った拳がバチバチと電気を放つ。 「あんたがカミナリ男ね。わたしは鳴神 暁穂。あんたをシビレさせてやるわ!」 「なんだ? 同胞か……?」 暁穂の様子に若干の戸惑いを見せるものの、クイックシルバーもまた帯電した拳でそれを迎えうつ。2人の拳がぶつかった瞬間、部屋の中は一瞬、真白に染まる。 落雷でもあったかのような轟音。部屋は揺れ、窓ガラスにはヒビが入る。PCもいくつか壊れたようで、黒い煙をあげている。 「あぁ!? 電気がもったいないだろうが!」 目を丸くして悲鳴をあげるクイックシルバーに、雨雲と交戦している花梨がちっ、と舌打ちを零す。 「この世界じゃ電気は誰かのものであって、あんたのモンじゃないのよ。ここで大人しく元の世界に帰るってんなら優しいあたしは許してやってもいいわよ?」 鉄槌で雨雲を殴り飛ばす花梨。弾き飛ばされた雨雲が、クイックシルバーの方へと飛んでいく。クイックシルバーは、それをなんなく受け止めて首を傾げた。 「元の世界には戻るさ。だが、まだ遊び足りないんだよなぁ……」 雨雲を花梨へと投げ返す。雨雲の放った電撃が、花梨を包みこんだ。 「漸く会えたのに……。私の相手はこいつらなのね」 残念そうにそう呟く焔。炎に包まれた腕を振るって、雨雲を2体纏めて殴り飛ばす。それを見ながら、海依音は小さく笑う。 「灰は灰にゴミカスはゴミカスにダストシュートにぶち込めと親愛なるカミサマは仰せました。今なら多少は信仰していいですよ、糞みたいなカミサマに♪」 掲げた杖の先端から、眩い閃光が溢れだす。閃光は雨雲を2体、纏めて包み込み焼いていく。焔と海依音の2人は、部屋の中に雨雲が侵入しないようにここで食い止め、殲滅する役割だ。管制室からは絶えず電気の爆ぜる音が響いてくる。 閃光が消えて、後に残ったのはブスブスと煙をあげる雨雲が2体。それを見て、海依音はにやりと笑う。 「真正面からぶっとばしてあげるわ!」 床を蹴って、雨雲に跳びかかる焔。業火を纏った腕を振りあげ、身体ごと雨雲に殴りかかる。爆発でも起きたのか、というほどの火力でもって、雨雲2体を一瞬にして焼き尽くした。焔の赤い髪が、熱風に舞う。 「いい加減、邪魔をするなよ」 面倒だ、とでもいいたげな表情を浮かべクイックシルバーは放電の量を一気に増やした。人の輪郭さえあやふやになり、ほとんど電気の塊のようになる。 しかし電気の塊は、一瞬で無数の腕へと変化した。雷で出来た数十の拳が、リベリスタ達を襲う。バチバチと轟音を撒き散らし、放たれるマシンガンのような打撃の嵐。 クイックシルバーの拳は、雨雲ごと沙理、花梨、暁穂の体を吹き飛ばす。床を転がり、壁にぶつかって止まる3人。そんな3人を尻目に、クイックシルバーは管制室から飛び出していく。 放電音を鳴り響かせて、目にもとまらぬ速度で駆けるクイックシルバー。入口付近に立っていた心と小梢が、盾と皿を構えてガードする。しかし2人を弾き飛ばし、クイックシルバーはそのまま管制室を飛び出して行ってしまった。 「うぐ……。痛いデス」 「うわー……。逃がしてしまいました」 床に転がる2人に、セレナがそっと手を差し伸べる。 「大丈夫です。監視カメラを使って、居場所を突き止めましょう」 仲間達の体を、淡い燐光が包んでいく。傷を癒す、セレナのスキルだ。セレナが見ている前で、モニターに無数の映像が映る。そのうち1つに、蒼い体の男が映り込んだ。 部屋の一角には、Dホールも開いている。どうやらあの部屋、クイックシルバーが初めに辿り着いた一室らしい。管制室ほどではないが、その部屋にもパソコンはあるようだ。 「好都合です」 そう言って、セレナは笑うのだった。 「なんで邪魔ばかりするかなぁ!?」 リベリスタ達が部屋に辿り着くなり、ドアを蹴破って蒼い電光が飛び出して来た。一瞬にして目の前に現れたクイックシルバーは雷を撒き散らしながら無数の蹴りを放つ。壁や床を焦がしながら、マシンガンの掃射のような音をたて蹴りが8人に襲いかかる。 「今までの恨みをー。シルバー銀の皿あたーっく!」 真っ先に反応したのは、銀の大皿を掲げた少女、小梢だ。仲間たちの前に飛び出し、クイックシルバーの蹴りをガードする。撒き散らされる雷を一身に浴びて、その場に膝を付く小梢。咳と一緒に、焦げくさい煙が口から零れた。小梢を助けに前へ出たセレナに、クイックシルバーが迫る。 「ボッコボコにしてやるわ!」 クイックシルバーの拳を受け止めたのは、花梨の鉄槌だ。電光が迸り、花梨の髪を焦がす。花梨は怯まず、身体ごとクイックシルバーに飛びかかっていった。半ば強引に電光の中を突っ切って、鉄槌を大上段から振り下ろす。咄嗟に腕を交差させそれを防ぐクイックシルバー。 腕は弾かれ、電気となって周囲に飛び散った。 「っぐ……」 バックステップでその場から離れるクイックシルバー。 「セレナさん、今の内デス!」 「分かっています」 仲間を庇って、前へ出る心。盾と剣、小さな体に溢れる強い意思。絶対に倒れない、という壁としての信念に満ちた瞳。彼女に守られる形で、セレナは傷ついた小梢と花梨に治療を施す。 再び襲い掛かってくるクイックシルバーを迎えうつのは、海依音の放った魔弾の弾幕だ。 「お帰りいただくなら今しかないっすよ。ワタシとしてはブチ殺したいくらいですし」 杖を片手に、そう宣言する海依音。魔弾に阻まれ、クイックシルバーはこちらに近寄ることが出来ないでいる。 「皆さん、大丈夫ですか! 私達は誇りあるリベリスタ。立ち上がりましょう!」 電光と魔弾の間を縫って飛び出したのは、両手にカトラスを構えた沙理だった。素早い動きでクイックシルバーに接近すると、無数の刺突を繰り出した。星の煌めきのように流れる無数の突き。クイックシルバーは、蹴りの嵐でそれに対抗する。 「邪魔だと言ってるだろぉ!!!」 沙理を蹴り飛ばし、身体を雷に分解。無数の腕を作りあげる。轟音を撒き散らしながらの乱打を受け止めたのは、片腕を業火に包んだ焔だった。 「少しは悪戯を控えることね! まぁ、私も人のことを言えた義理じゃないけど」 雷と炎が衝突。熱波を撒き散らす。壁は割れ、窓ガラスは砕け散った。キラキラと、炎の赤を反射させて飛び散るガラス片を突っ切って、暁穂が飛び出す。 バチバチと電気を撒き散らす暁穂。蒼い髪が帯電し、好き放題跳ねている。喜々とした表情でクイックシルバーに接近した暁穂。雷を纏った拳を、クイックシルバーの顔面に叩きこんだ。 「……っぶ!?」 「邪魔? いいえ違うわ。そんなオモチャよりもっと楽しくて、シビレる体験を教えてあげるだけよ!」 続けざまに拳を放つ。それに応じて、クイックシルバーもまた、雷光と共に拳を振り抜いた。闇を眩く染め上げる。轟音、拳の応酬、飛び散る鮮血と、電気。バチバチと雷音が鳴り響く。 「楽しかったわよ、カミナリ男。もしまた遭えたら、今度はもっとシビれさせてよね」 唇は裂け、頬は焼け焦げ、それでも暁穂は笑っていた。気合い一閃、振り抜いた拳がクイックシルバーの胴を捕らえる。 「う……っぐ。同胞かと思ったが、違うのか……」 なんて呟いて、クイックシルバーはよろよろと数歩後退していく。暁穂もまた、床に膝を付きそうになるが、しかしギリギリの所で踏ん張って、膝に手を付き立ち上がる。にっ、と笑って唇を垂れる血を拭う。 「ばいばい、クイックシルバー」 タン、と床を蹴って暁穂は飛ぶ。身体ごとクイックシルバーにぶつかって、Dホールへと叩きこんだ。クイックシルバーの体がホールに吸い込まれ、消えていく。 「ふん……。存外、楽しめたしいいか」 そう呟いて、蒼い男は消え去った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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