●575 「お題、『真白イヴを褒める言葉で五七五を作りなさい』」 「……『ましろイヴ、とってもかわいい、おんなのこ』?」 「10ポイント」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)の突然の振りに、リベリスタ達は字余りのやや苦しい答えを返した。 即答するのは割とキツイな、そんなふうに誰となく思う。 「今回のエリューションは、今のやり取りをしないと倒せない……」 「……。なんでそんな面倒な」 「今までもさんざん面倒なエリューションと戦ってきたでしょう、それに比べたら、まだマシな方よ」 イヴは10ポイントと書かれた紙と一緒に、テーブルに資料を並べる。 エリューション・エレメント、フェーズ2、通称『オダイオー/575』。最大の特徴は特殊な空間に相手を閉じ込め、『お題』を出す事だ。 「オダイオーと接触後、貴方達は敵の創りだした空間内で戦うことを強いられる。その空間では『五七五』を読まないと攻撃できないの、しかも上手く読めないと罰ゲーム付き……」 「なんでそんな正月番組の企画みたいな事を……」 「安心して、こちらには『万華鏡』がある……。どんなお題が出されるかさえわかっていれば、そんなお題……ね。まぁ、もしかすると予想外の事態もありうるし、少し練習がてら」 するとイヴはボードを何枚か取り出し、リベリスタ達に見せる。 「お題、『アークに対して日頃思っている不満をぶち撒ける言葉で五七五を作りなさい』」 「『かいおきの、ちゃばがやすいぞ、いちきゅっぱ』」 「『もうないの? きゅうけいしつの、おかしたち』」 「『ときむらの、はなしがながいぞ、エロメガネ』」 「……。貴方達の思ってる事はよくわかった」 ●今日も朝までオダイオー 真夜中の事、婦警さんが町を巡回していた。それというのもこのあたりで、最近人が消えるという噂を耳にしたからである。 彼女の名は『犬沢 巴(いぬさわ ともえ)』。『犬のおまわりさん』の異名を持つ、下町勤務の警察官だ。そして彼女はリベリスタでもあり、日々表と裏の世界で悪と戦っている。 「わふむ、それにしても人が消えるとは、いったい何事なのでしょうか……」 『ドウイウ事もコウイウ事も!!』 「何奴!?」 通りのいい大声が辺りに響く。巴はその場を飛び退き辺りを警戒すると、上空から何かが降ってきた。 衝撃。風圧で巴は吹き飛ばされそうになるのを堪える。 『さぁ今日もヤッテ参りましたオダイオー! 本日のチャレンジャーはドンナ回答を見セテクレルのデショウ!!』 「わふっ?!、何ですかいきなり!?」 空間が湾曲する。歪みが収まる頃にはあたりの風景は様変わりし、まるでそこはテレビスタジオのセットのようだ。 気がつくと巴はボックス型の回答席の中にいた。クイズ番組でよく見かけるようなシチュエーションだが、どうやら箱の中から出ることはできないらしい。 『オ題! 『今回の意気込みを言葉にして五七五を作りなさい』!』 「『ええっと、こまりましたね、どうしましょう。わふっ……』」 『罰ゲーム!!』 「ええっ?!」 巴の頭部を直撃する金ダライ。彼女の目には星が映り込む。リベリスタの防御力を貫通するほどの威力、単なる金ダライではないようだ。 『オ題! 『今の痛みを言葉にして五七五を作りなさい』!』 「『ピヨピヨと、あたまのうえで、ほしがまう』ぅ~……」 『10ポインツッ』 まさしく『正解!』に相応しい音楽が鳴り響き、同時に回答席の下から何かがせり上がってきた。 ミサイルだ。疑う余地もないミサイルの形をした物体が姿を表わすと、お尻の噴射口に火がついた。 着弾。背景にまぎれていてセットの一部と化していたオダイオーを直撃、風圧は巴の席まで届くほどだ。 『グッ、グゥゥっ。次のオ題!!』 こうして、犬沢巴とオダイオーとの戦いは始まったのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:コント | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月23日(水)22:20 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●新春、遅すぎた初笑い ここまでの出来事を説明しよう。一同は現地に到着後、オダイオーと遭遇。抗う間もなく敵の特殊空間へ引き釣りこまれた。 空間の歪みが収まると、一同は横並びに一列、一枚の座布団に座らされていた。 客席から見て左にリベリスタ、右に司会者席。司会者席に鎮座する巨大な置物がオダイオーだが、なぜか羽織モノを身に着けている。 話に聞いていた犬沢 巴の姿は見えない。敵がこちらのノリに合わせて舞台セットを変えてきた事と、なにか関係があるのだろうか。 『どうもミナサンコンバンハ、出題亭オダイオーです。今回の回答席は八人、ソレゾレ自己紹介をシテイタダキマショウ』 カメラは左から右へ。ピンクの羽織に袖を通し、『刹那たる護人』ラシャ・セシリア・アーノルド(BNE000576)は事前に合わせた口上を述べ始めた。 「とても寒くなってきました。防寒具や炬燵が手放せない時期になりましたね。寒いと大変です。懐も寒いし。もっとお金ほしいですね。ここで一句『春よ来い 外も景気も 暖かく』猫遊亭好ラシャ(ねこゆうてい こうらしゃ)です」 流れのまま順に一同の自己紹介は始まった。 「はいどーもー! アイドルは偶像という意味ですが、人気を集める姿はまるで仏像のようとも言えます。手の届かないスターよりも、目の前の仏像の方が親しみ易い。ワタシはそんな存在を目指しています。駆け出しアイドル、悪豚亭明奈でっす!」 耳を下に引っ張り福耳のつもりなのだろうが、残念だがあまり長くはないので幸薄い様子である。 「どーもー! 冬に喧嘩を売ってやまない私ですが、年齢的にもう数年すれば無条件降伏しか道が残されて居ない気がしております。ミニスカ亭麗葉であります! どーも宜しく!」 ミニスカートに羽織モノを合わせると、なんとも言えない背徳感がそこにはあった。ちらりと垣間見える膝に観客の視線が集まる。 「今晩は、脛に傷ある御身分なのに、警邏亭とミニスカ亭に挟まれました。この配置に悪意を感じます。放送終了後即座に逮捕されるんじゃないかと戦々恐々している、厄座亭奈々でございます」 左右に加えて、未だ姿を見せない犬沢 巴にも注意を払わなければならない彼女。座布団の上でも気の休まる暇はなさそうだ。 「はいどーもどーもー。一度は見てみたいと言えば女房のへそくりですが、それを貯め込む女房がまず居ない! 警邏亭犬吠埼でーす! 宜しくお願いしまーす!」 笑顔が眩しい彼だが、その笑顔の裏には独り身の寂しさが秘められている。貯めこまれていくのは見合い話の方だろうか。 「寒い寒いとつい口をつくが、北風が吹き込み放題じゃ暖まる訳もねぇ。火をつけたくはないもんだね。…いや何、家計の話だよ。どーも、転寝亭弥千代だ」 一方こちらはそんなこととは無縁の少年、かと思いきやその実年齢は三十代。バツイチである。 「はい、どーもー。革醒時に生えた耳を見て絶対名前のせいだと思った、ウサ耳亭宇佐見です。今日は幼馴染ともどもよろしくお願いします」 ロップイヤーが目立つ彼女は兎のビーストハーフだ。若さに任せたコスチュームが人々の注目を集める。 ラシャに続き、左から順に、 『ミサイルガール』白石 明奈(BNE000717)。 『ギャロップスピナー』麗葉・ノア(BNE001116)。 『上弦の月』高藤 奈々子(BNE003304)。 『俺は人のために死ねるか』犬吠埼 守(BNE003268)。 『』逢坂・弥千代(BNE004129)。 『』宇佐見 深雪(BNE004073)。 以上七名が自己紹介を終えた。 「えっ…、えっ? みんな自己紹介とか用意してたの……?」 一同は凍りつく。『ハティ・フローズヴィトニルソン』遊佐・司朗(BNE004072)が自己紹介の用意を忘れていたのだ。 仲間達の視線が突き刺さる。 『オット、最後の一人、遊佐 司朗さんが少し気を抜いてイタヨウデスネ。ではココデルールの説明を兼ねて彼には罰ゲームをウケてモライマショウ』 「えっ?! ウソ!?」 司朗の四方をせり上がってきた透明ガラスが覆う。身体は言うことを聞かず、座布団の上から離れる事もできない。 『今回は皆サンにお題に答えてモライマス。審査は審査員と観客にオコナッテイタダキ、回答が面白ければセーフ、ツマラなければ罰ゲームとなります』 天井から何かが落ちてきた。 べちょり。ぬるりとした感触が司朗の背中に入り込んでくる。 「?! なんか入ってき……アバババババババ!?」 電流。司朗の体中を電撃が駆け巡った。 彼の背中に入り込んだのはデンキウナギだ。もっとも発生させる電力は通常の其れとは比べ物にならず、まさに骨が透けて見えるようである。 『と、コノような感じで罰ゲームが行われマス』 ●犠牲の先に 『貴方達はRPGの勇者デス。勇者の気持ちにナッテ五七五を作りナサイ』 若者の尊い犠牲の後、一同は一つ目のお題の回答をボードに書かされている。 『ネタかぶりは気にしない』、一同が最初に決めていたことだ。そのためお互いにどんなネタを書くのかはわかっていない。 『サァ! それでは回答が出揃った所でミナサンの回答を見て行きましょう。奈々子サン!』 厄座亭奈々、もとい高藤 奈々子の名が呼ばれた。観客は彼女の狼頭に動じる様子はない。 「勇者というのは往々に理不尽な物です。パトロンから受け取るのは少ないお金、たまには国にツケたっていいと思いませんか?」 『ソウデスネェ。コレではマダ、キビダンゴの方がマシとイウモノデス。デハなんとヨム?』 「『ツケ払い 魔王買収 国破産』。払いが悪いと痛い目を見るのは、客も国も同じという事で」 採点。オダイオーが結果を読み上げる。 『審査員、観客共に高評価! 幸先のイイ始まりとアイナリました』 奈々子は静かに微笑みながら指先を床につけ、スジの通った綺麗なお辞儀を見せる。 『トイウ訳で奈々子サンに座布団を一枚。犬沢クンー』 「はいはーい」 すると奥の方からオレンジ色の色紋付を着た犬沢 巴がやってきた。彼女の手には座布団一枚、話だと彼女は司会および審査員のはずだ。 一同もオダイオーが司会者席に鎮座していたあたりで不思議に思っていた。守は思わず呼び止める。 「あれ、座布団運びは犬沢さんなんですか? たしか司会のはずじゃ……」 「だってこのセットだったら座布団運びが必要になるじゃないですか!! 私だって目立つ席に座ってたいですよ! わふむっ」 右端には『しんさいん』と書かれたミカン箱がおいてある。犬沢さんの尻尾がピンッと立っている、どうやらご立腹の様子だ。きっと一同のネタフリにオダイオーが合わせた事で、急遽雑用をやらさせているのだろう。 そんな事に腹を立てている場合ではないはずだが、やはり観客と同じく認識を改ざんされているらしい。 次々と読み上げられていく回答。奈々子に続き座布団を獲得したのはラシャ、ノア、深雪の三名。 守の一句『ゲームでも タンスは開けない 元巡査』は審査員の共感を得るも観客全員からナシを入れられ、彼はあえなくデンキウナギの刑に処せられた。 そして弥千代と司朗の回答がネタかぶりでオダイオーの目にとまる。 『「わたされた、ものみて思う、ふざけんな」と「初期装備 心は錦 武器は棒」デスカ。コレは少々被り過ぎデス、罰ゲーム!!』 「また僕か!」 「だから俺はウケ狙いの回答なんてできないって……」 二人はクレーンゲームの景品のようにオダイオーの両手に乗せられる。一方座布団を獲得した四人の前には、大量の黒光りする球体。導火線が付いていることからも、それは爆弾だとすぐにわかった。 「まっ、まさか……」 『サァ! このオダイオーを倒しタケレバ好きなダケ投げるガイイ!!』 「ミサイルガールは伊達じゃない!」 「司朗君……ごめん!」 「やめろぉー!?」 オダイオーの手のひらに乗せられた二人が最期に見たのは、空を覆い尽くす黒い流星群であった。 ●涙を超えて 一同は第二のお題『最近の失敗をネタに五七五を作りなさい』での攻防を終え、三つ目のお題に回答していた。 お題の内容は『家族や友人、同僚など身近な人を思い浮かべて五七五を作りなさい』である。 二つ目のお題では守が座布団を獲得し、明奈と深雪が字余りで罰ゲームとなった。 二人は普通のウナギと戯れる事となったのだが、その映像は深夜帯でもお見せできない内容に。結果としてシーンごとカットされ現在に至る。 「すんすん……、あんなのやるのはアイドルじゃなくてお笑い芸人だよ……」 「もうお嫁にいけない……」 「な、ならその時は僕が……」 司朗はお題への回答を書きながら、さめざめと泣く深雪に小さな声で呟く。 深雪が司朗の方を振り向くと、彼は思わず顔を逸らした。 『エー、それではまず司朗クン、「あなただけ、心に誓う、恋心」。深雪クン「ありがとう いつも隣に いてくれて」』 二人の視線がオダイオーに向けられる、『今それを読むのかよ!?』と言わんばかりに。気まずい雰囲気、しかしその甘酸っぱい空気は二人が爆破されるという形で爽やかに吹き飛ばされた。 そんな二人の姿を見せつけられながら、守はある人の事を思い浮かべる。するとその手は無意識の内にボードに字を書いていた。 『次、守クン「巴さん こんど映画に 行きましょう」』 「はっ!? つ、つい本音が…!!」 「『いいですよ♪ ちょうど見たいの あるんです』」 突然舞台右端から読まれる俳句。そこには笑顔で返事を返す巴の姿があった。 爆風。守を巻き込む粉塵の凄まじさは、OKをもらえた彼の心境を表しているかのようである。 既に死屍累々になりつつある一部を尻目に、奈々子の『散るものを ほうき片手に(法規 さばく日々(裁く』が高く評価される。座布団を一度に二枚獲得してダントツトップだ。 『次、弥千代クン「じょそうして」 安請け合いで 地獄見る」。コノ「じょそう」とは?』 「『除草』かと思ったら『女装』だったんだ……」 「その見た目じゃ仕方ないな」と共感する観客。 弥千代は見た目十才ほどの少年であるが、その年齢は三十歳である。革醒の影響で退行してしまった身体は幼く、何を着せても可愛い。 そんな苦い思い出も糧とする強さ、それこそがリベリスタに求められる力だ。 座布団を獲得した奈々子、弥千代の前に現れる、ピンク色のステッキ。間違いない、魔法少女なりきり用の魔女っ子ステッキだ。 ステッキに触れると一瞬にして衣服がピンクのフリフリドレスに変わる。弥千代は奈々子の姿を見て、己も同じ姿である事に気づきめまいを起こす。 『サァ、私を倒しタケレバ魔法少女らしく魔法の呪文を唱えて攻撃スルガイイ!』 「……俺は、お前を決して許さないぞ……!! マハリク、マハリタ……」 弥千代が血の涙を流す思いで呪文を唱える中、奈々子は少し楽しそうにステッキを振り回していたという。 ●倒せオダイオー 『去年のクリスマスを思い浮かべながら五七五を作りなさい』 『なぎ払え カップルどもを 粉砕だ』 『クリスマス ゲリラライブも 効果なし』 『クリスマス チキンも俺も 売れ残る』 『靴下に 爺のくれた 残業代』 『とりあえず、爆発しろよ、リア充め』 『思い出す 去年も今年も 同じ顔』 『順調に 彼氏いない歴 更新中』 ラシャ、司朗、ネタかぶりにより爆破。 深雪、リア充により爆破。司朗、道連れにより再度爆破。 奈々子、字余りにより爆破。弥千代、審査員権限により爆破。 守、明奈、弥千代、ラシャ、サンタクロースの格好でオダイオーを撲殺。 舞台セットに爆撃機でも通ったかのような傷跡を残した第四のお題。一同にも甚大な被害を出したが、オダイオーもひび割れて崩壊寸前だ。 『グフッ……。グフフッ、ヨクゾここまで戦い抜いタナ、リベリスタの諸君……』 「事前に打ち合わせしないことがこんなに大変だったなんて……。というか犬沢先任、今わざと弥千代さんのこと爆破して……」 「売れ残った者の悲しみは売れ残りにしかわからないんですよぉ! あおーん!!」 柴犬の虚しい遠吠えが響く。 一同が大なり小なりひどい目に遭う中、ノアは回答を減らした事もあって罰ゲームを受けずに済んでいた。罰ゲームで満身創痍になりつつある一同の中では貴重な存在だ。 『次でいよいよ最期のオ題となる。オ題「貴方はフラれてしまいました。彼(彼女)からフラれた理由を五七五にしなさい」!』 ここで倒せなければ任務失敗だ。ノアはここで決める覚悟で筆を握り、語る。 「自分、こんなナリと稼業ですが、花も恥じらう20の乙女でありましてね。たまに出会いを求めるべく、合コンなるハイカラな会合に行ってみたりもいたしまして」 『ホホウ、合コンですカ。それでいったいナニガアッたので?』 「で、そこで頻繁に起こるイベントがこちら!」 一筆入魂。ノアはボードを観客の面前に晒す。 「『つるぺたと 目は口ほどに ものをいい』こうね。目の前の男の視線がですね。顔から下に下ってある所までくると急にストップして曖昧な笑顔になるんですね。…ええいちくしょい」 ノアが悔しがる様に観客がささやかな笑い声をあげる。自虐ネタは自らを傷つける諸刃の刃だ、それ故切っ先は鋭く、笑いのツボを抉る。 ただ一つだけ辛い事があるとするならば、それは巴が座布団を運んできた時「がんばって」と励ましてきた事の方かもしれない。 『サテ…、他に筆をもつ力が残ってイル者はイルカ?』 「ここに」 ラシャが静かに手を挙げた。選んだネタは一か八かのきわどいネタ、意を決して彼女は俳句を読み上げる。 「『好きな人 ハッテン場へと 消えていく』」 ――ハッテン場。それは一部の人間に密かに親しまれる薔薇色の世界だ。いや、厳密にいえばそこを薔薇と捉えられるのは、更にごく一部の訓練された者達だけだろう。 最悪一般人には言葉の意味すら通じない代物だ。観客の反応を伺い、ラシャは息を呑む。 『……見事だリベリスタよ。今の一句、どうやら観客達には届いたラシイ。サァ、私は逃げも隠れもシナイ! 勝利の一句と共にトドメをさすがイイ!』 ノア、ラシャの両名は身体の自由が戻ったことに気づく。二人は武器を構えた。 「勝ったけど、第二第三、オダイオー」 「幾許くれど、滅してくれる!」 貫通。二人の攻撃がオダイオーを貫いた。 ●一件落着 バラバラに砕け散るオダイオー。世界が暗転し、元の次元へ戻る。 最初に一同の目に飛び込んできたのは登りはじめた朝日だった。戦いが始まったのは夜、かなりの時間が経過していた事になる。 出てきた場所は一軒家でも立ちそうな空き地だが、空き地一杯に取り込まれていた人達が横たわっている。この光景には守もゾッとする思いだ。 「もし我々がオダイオーを倒せなかったら、未だに彼らはあの世界に閉じ込められたまま……だったわけですか」 「……いたたっ」 気を失っていた巴が身体を起こす。守は巴に手を差し出し、彼女はその手を掴んで立ち上がった。 彼女に状況を説明すると、事態は把握してくれた様子。ただ中にいた時の記憶はないようだ。 「……私が捕らえられている間に大変なことになっていたんですね」 「閉じ込められていた人達を無事救出できたわけですから、一件落着といっていいでしょう。いやあよかったよかった!」 守はそういって笑ってみせる。心の中では映画に行く約束を忘れられている事を残念に思いもしたが、彼女が無事ならまた誘う機会もあるだろう。 「ぜんぜんよくなーい!」 明奈は叫んだ。理由は捕らえられていた人達が、中での出来事を覚えていなかった事にある。 アイドルとして地道に活動を続ける彼女は、「観客にワタシを気に入って帰って貰うのだ!」と意気込んで今回の作戦に望んでいた。しかし観客は中での出来事を綺麗サッパリ忘れている。これでは当初の目的は果たせそうにない。唯一の救いは、ウナギアイドルとして認知されずに済む事くらいか。 「司朗君! 司朗君!!」 深雪も叫んだ。彼女は膝枕をしながら司朗に呼びかけているが、彼の反応はない。 「そのまま寝かしといてやれ、きっと疲れたんだろ」 そういって弥千代はあくびを一つ。幼くなった身体に夜更かしは辛い、もう眠たくて意識も薄れてきていた。 処理班が手配してくれたワゴン車に揺られ、彼は夢の中へと落ちてしまう。 「ふふっ……、みんなおつかれの様子ね」 気がつけば回りは寝静まり、その様子を見て奈々子は微笑む。 目が覚めればまた次の任務が待っている。リベリスタ達は多忙だ、彼らに休む暇はない。 「終われども、休むまもなく、出動す。それも我らの、定めなりけり」 朝まで続いたオダイオーとの五七五。冗談のような今回の戦いも、人命のかかった命がけの戦いだった。 傷ついた戦士達にひとときの休息を。彼らの戦いは人々の静かな日常のために。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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