●平安なのか現代なのかハッキリして下さい 『ほほ、矢張り蹴鞠は最高のスポーツでおじゃる』 『しかしそろそろ刺激が欲しいでおじゃるな』 『ふむ、確かに平和主義の麻呂とて身体が鈍ってきたでおじゃる』 『此処はひとつ、競技としてのルールを取り入れてみるのも一興よのう』 『そう、つまり対戦蹴鞠と言うものを!!』 ●現代文化に感化されていると言えば聞こえは……良いのだろうか? 「……」 清々しい程に爽やかな笑顔を保ったまま、無言でモニターの画像をシャットアウトした『転生ナルキッソス』成希筝子(nBNE000226)。 先程までモニターでは時代錯誤も良い所な典型的平安貴族風の方々五名が雅に蹴鞠なんぞしていた。平安時代に帰れ。 しかし同時に、召集されたリベリスタ達は、一抹の嫌な予感を覚え、そして自らの運命を半ば悟っていた。つまり、この面倒臭い方々の相手をして来いと。 「……えー。ちょっと待って下さいね。……何処から説明したものかな」 未だ笑みを崩さない筝子だが、その言葉には何とも言えない複雑な思いがあれやこれや混じっているのがありありと感じ取れる。 「まあその、あれです。彼等、エリューションフォースなんですが」 ややあって、筝子はそう切り出した。 纏めると、彼等の出現場所は嘗て平安時代に貴族の邸宅があった場所。此処の主は頻繁に友人の貴族を招いて蹴鞠に興じていたらしかったのだが、少々性格に難があったらしい。友人達もまた然り。 即ち、新し物好きであり尚且つ相当の捻くれ者でもあったと言う。 その残留思念が今になって革醒、エリューション化。今は生まれたてほやほやのフェーズ1だが、フェーズが進行すれば通りかかった一般人を巻き込んで彼等の言う対戦蹴鞠の相手をさせられ――物理的に殺されるとまでは行かないものの過労死するまで延々付き合わされると言う。地味に嫌だな! ならばさっさと行ってさっくり倒せば解決――と思えるのだが実際そうはいかない。何故なら彼等は確かに弱い。弱いのだが、彼等の言う対戦蹴鞠で負けを認めさせない事には一切のダメージが通らないと言うのだ。どうしてこうなった! 「まあ、それで皆様にはその対戦蹴鞠で彼等を負かして下さい、とそういう事です。微力ながら私も協力しますから……」 超絶マイペースで時にリベリスタ達を盛大に振り回す筝子ですら何かもう投げ遣りになってきている。ある意味強敵かも知れないぞこの人等。 「それで、対戦蹴鞠とやらのルールはこうです」 本来、蹴鞠は勝ち負けではなく、全員でボールならぬ鞠を蹴って繋げ、どれだけ長い間落とさずにいられるかを重視する、平和的な遊びである。 しかしこの対戦蹴鞠とやらは話が別だ。相手の近くに鞠を蹴り、尚且つ相手に落とさせなければいけない。円陣バレーボールの脚版みたいな奴ですな。 勝利条件は単純明快。自陣の味方が全滅するより早く、敵陣を全滅させろ! 以上だ! 「そう言えば彼等には個体名が無いそうで。要らない気もしますけど識別が面倒だから此方で名付けてしまいましょう。我ながら投げ遣りですが御了承下さいませね。ええと梅花・荷葉・菊花・落葉・侍従で良いですねもう」 ちょっと待って全然投げ遣りじゃないよそれ! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:西条智沙 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月27日(日)23:00 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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●時代錯誤も千年通り越すと何とやら 晴れ渡る空の下、広々広がる荒野の下で。 「蹴鞠……それは御貴族様のお遊戯。彼らは今日、その御遊戯にて死を味わうでしょう、うふふふふ」 『ヴァイオレット・クラウン』烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)がとてもとても愉しげに勝利宣言して下さいました。素敵なブレなさ具合ですありがとうございました。 「名前がなんか仰々しいわね、麻呂一号から五号と呼ぶわ」 まあ、普通投げ遣りって言ったらそうなりますよね。 「若干面倒くさい相手とは言え難しく考えないで望める任務久しぶり」 しみじみと空を仰いで零す『九番目は風の客人』クルト・ノイン(BNE003299)。確かにクリスマス、年末年始挟んだとは言え最近殺伐度合上がってましたからね。 「さて、遊b……じゃない、蹴鞠して、倒そう」 「……一瞬本音漏れませんでした?」 「気の所為。さて筝子、君にも指示があるんだけど――」 クルトが『転生ナルキッソス』成希筝子(nBNE000226)に出した指示は、まあ後々明かすとして。 (蹴鞠は初体験だけど、頑張ってみますか。エリューション相手に手加減するつもりもないし) 『闘争アップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)はちゃんと真面目に。あんなでも一応エリューションである事だし。 自主練習も作法についてもちゃんと予習した。後は実戦あるのみである。 と――目的地へと歩を進める内、五つの人影が見える。 見れば蹴鞠に興じる五人の貴族達。間違え様も無い、奴等が今回の相手だ。 「なんとも雅なエリューションがいたものですねえ」 とは、『必殺特殊清掃人』鹿毛・E・ロウ(BNE004035)の言。その調子からして何処と無く楽しそうではある。 去年のハロウィンに着た水干も雰囲気作りにという辺り、結構ノリが良い。 「しかしまあ、中々面白そうです。あっぱれよかろう敵ぞ、ってトコかな」 「なんだか憎めない感じですが、崩界が進んでも困りますしね。ここでキッチリと成仏させましょうか」 一定の同意を示しつつも、至極尤もな言葉を投げる『蛇巫の血統』三輪 大和(BNE002273)。 そして『カゲキに、イタい』街多米 生佐目(BNE004013)が朗々と、小気味良く口上を述べる。 「やあやあ、われこそは――と、これより昔ですね、まぁいいや、ようこそようこそでおじゃる」 『むう?』 「遊ぶのは勝手でおじゃるが、現代は蹴鞠よりも楽しい遊戯が沢山でおじゃる……現実を見るでおじゃる」 ●戦いは既に始まっているのですよ 「これは、『びすかうと』なる外つ国の菓子でおじゃる。是非に、召し上がっていただきたく候におじゃる」 そんな感じで生佐目と貴族達は紅茶とビスケットで優雅にお茶していた。あれ、前口上どうしたの? 試合は? 疑念のひとつも抱かずに普通に応じている貴族達も間抜けな感じ(実際間抜けなのだろうが)はするのだが。 (……しかし結構疲れますね、この語尾) あ、やっぱりそうなんですね。 「ねえ、(最期の)世間話は良いけどそろそろ始めませんー?」 手持無沙汰でちょっと退屈そうにしていたエーデルワイスが催促する。渋々立ち上がる貴族達。何故か文句ひとつ言わず片付け始める主催者の生佐目。 この生佐目の行動の理由とエーデルワイス達他リベリスタがこのお茶会に加わらなかった理由(馬鹿馬鹿しいとか思ったからではない)もまた後々明かすとして。 「此度はこの様に楽しげな催しにお招きいただき、誠に光栄に存じまする」 義衛郎が優雅に一礼。揺れる水干からふわり、黒方の香りが舞う。 「では御前、私ごとき卑しき身分の者が侍るのもお見苦しい事かと存じますが……少しの間だけ、お相手つかまつりますよ」 『うむ、精々楽しませてくりゃれ』 ロウの言葉にも何処か満足げに頷き――矢張りプライドは高い様だ――それぞれが、配置に着く。 時計回りに十二時の位置から、梅花、クルト、荷葉、ロウ、菊花、義衛郎、落葉、エーデルワイス、侍従、筝子の順に並ぶ。 残る大和と生佐目は、それぞれ梅花、義衛郎のやや後ろ。つまり、円陣外に向かい合わせで立っている事になる。 流石に鞠さえ届けば何処に居ても良いという事なのか、特に文句は言われなかった。 「何分未熟者でございますので、お手柔らかにお願い致します」 義衛郎が両隣の御霊へ遜りつつ挨拶を。これにも相手は気を良くした様である。 因みにこの間、エーデルワイスが血の掟使用、ロウがハイスピード付与。 作戦です作戦。ふふ。 そして準備が整った所で――いざ、試合開始! 梅花が高く蹴り上げた鞠は、ロウの下へ。流石に身体のギアを上げている彼は、難無くそれを受け、返す。 (敵は確実に倒さなければなりません。しかして、今回は特に時間制限も無い。ならば、とことん相手のやり方に付き合おうじゃありませんか) 急いても敵は倒せない。ならば一見遠回りに見えても、事実上の近道であり唯一の選択肢を選び取るまでだ。 返す鞠は侍従の下へ。更に受け、返された鞠はクルトへ向かう。 (まぁドイツでサッカーの経験はあるし、脚技使いの闘士としてもこの対戦蹴鞠、そう簡単には負けるわけには行かないね) とは言え、まずは無難に手堅く、極普通に試合を進めるクルト。他のメンバーに関しても、同様に。 「皆様、名足でいらっしゃいますなあ。見習いませぬと」 『さもあらん。麻呂達は嗜み程度にしか蹴鞠を遊ばぬ下級貴族とは違うのでおじゃる』 「へぇ、凄いんですねぇ。わぁ、高貴なんですねー」 義衛郎やエーデルワイスも貴族達のお喋りの間に彼等を煽てご機嫌取り。 彼等の目論見通り、この段階で荷葉がアウト。 しかしそれから数分は、一人の脱落者も出ず。 「対戦蹴鞠、中々楽しいね。君達も中々やるじゃないか。……さて」 ――そろそろ本気で勝ちに行こうか? クルトがほくそ笑む。すると、意図を察した様に他リベリスタ達も一斉に頷いた。 ハイテレパスによる、これは合図。戦いは、これからである。 ●本気で行かせて貰いますよ 義衛郎が、筝子へと鞠を回す。 筝子の方も、事前に彼によるハイテレパスで合図を受けていたので、受ける準備は出来ている。 左足で地を確り踏み締めつつも、右脚で軽やかにシュート! ――と、同時。 \突然の爆発/ 筝子の両隣の落葉と侍従が転げた。 JEX付のシュートだった。 此処で種明かしをひとつ。 事前にクルトが筝子に指示していた内容は以下の通りである。 配置は円上の五人の一人。 最初の内は普通に蹴鞠しておいて。 後半になったらピンポとかJEXとかありでお願い。 スキル使い始めるタイミングはハイテレパスで合図する。 ちょっと黒くなってくれてもいいよ? 以上全文。まあ怖い。うふふ。 そして鞠はエーデルワイスが受け取り追撃。 「さぁ、エーデル選手。足を大きく振りかぶってドライブシュート!!」 バウンティショット応用編。狙い通り侍従の顔面に抉り込む。これはひどい。 まあ、ダメージ無いんですけどね。 ともあれそんな訳で侍従アウト。 「あっはははは☆ 全力でぶっ潰させてもらうわよ、クズ貴族さん♪」 『な、何をするでおじゃる』 『そもそも何でおじゃる今のは!!』 まあ当然文句言われますよねーこれは流石に。 しかし対処も作戦に織り込み済み。すかさず大和とクルトがフォローに回る。 「どうか、お怒りにならないで。高貴なる貴族様方と私達では、真っ当に蹴鞠をしあえば貴族様方の勝つが当然。ですが、そんな一方的な遊びはお望みではないでしょう?」 『む、むう……』 「そう、これは君達への敬意の現れだよ。対戦、つまり勝負だ。蹴鞠貴族に対し勝負で手加減など失礼だろう?」 『うぬぬ……』 元々この試合に自信があった上に、自分達で『対戦蹴鞠』とか名付けちゃった以上、ぐうの音も出ない訳で。 「だから全力でやらせて貰ってるのさ」 「故に、かような悪戯も、勝負を対等にし盛り上げる為の戯れというもの。貴族様方なら、この程度の苦難など乗り越えられると思っていましたが、見込み違いでしたか?」 『ふ、ふん、良いでおじゃる。受けて立とうではないか』 はい言質取りましたー。 「流石は、貴族様方。海原の如く広い度量、感服致します」 すかさず持ち上げる大和。因みにこの間クルトは流水の構えに移行。 そんな中、ふとロウは思う。 (相手が何であろうと神秘の理不尽は斬り掃うのが僕の仕事です。ですが、千年の時を経てわざわざこの現世に迷い出たもの。その執着はただごとではない) 矢張り彼等はどんな形であれ蹴鞠を愛していたのであろうと。 (逆に言えば、満足さえして貰えれば、もはや二度とは現れますまい) そういう訳だから――矢張り全力でお相手するのが礼儀ですよねと。 ●蹴鞠かくあるべしとか最初から無かった 何気に反動で円陣外に出ていた鞠を大和がその脚で拾い、ロウへ回す。 そしてそれを受けてロウが必殺の、ソニックエッジシュート! 『おうっ!?』 連続衝撃波付シュート。落葉、何とか受け止めるもそのまま仰向けに転げる。 そして勢い余って円陣外へと飛び出した鞠は生佐目が受けて円陣内へ。それを巧みな脚捌きで受け取るクルト。 因みにこの時こっそり梅花の水干の裾をこっそり魔氷拳付で踏んでました。部分氷結である意味束縛。 そして蹴撃――じゃなくて、シュートと同時に、『うっかり』いつもの癖で虚空を放ってしまったり! もんどり打って倒れる菊花と落葉。特に後者は起き上がったばかりなので涙目。落葉アウト。 勿論義衛郎は確り回避しつつ鞠確保。間髪入れずに梅花に狙いを定め、必殺技解禁! イカサマじゃないのですよ、必殺技なのですよ! 「拾えますかな!」 多重残幻剣の応用で分身。ぶれて見えるボール。そのまま分身シュート的な感じで飛んでゆく。 流石に目測を誤って梅花空振り。アウト。 そのままの流れでクルトが筝子にパス。ピンポイントシュートで菊花を狙おうとする筝子。 しかして殺気(?)を感じた菊花も迎撃の構え。その時、エーデルワイスはその構えを崩そうと。 「麻呂はお腹が空いたでおじゃるw」 「『「!!?」』」 敵味方騒然。 百面相によるエーデルワイスの貴族への変装である。 所謂ムカつく物真似で挑発して気を散らせようと言う策である! 「麻呂は算数が得意でおじゃる。8×4=12!」 「えっ」 でもこれ逆に筝子に効いた。アデプト的ツッコミ気質。 シュートは飛んだがピンポイントが機能停止。すかさず菊花が筝子に反撃シュート! 筝子受け切れず円陣外へ! アウトか!? 「私の手……脚の届く範囲で仲間を討ち取らせはしませんよ」 超反射神経で筝子の背後へ回った大和がフォロー。円陣内へ押し戻す! 『ぬ、ぬう……ぐ!?』 ぐらり、菊花の身体が傾ぐ。 「……ようやっと効いてきましたか」 「!? 街多目さん口調が素に……いえ、それよりどういう事ですか?」 計画通り、的な表情でそんな言葉を漏らした生多目に大和がその理由を問えば。 此処で種明かしもうひとつ。 「無論、先程のビスケッ……びすかうとに睡眠薬を盛ったでおじゃるよ」 「えー!?」 エリューションに睡眠薬とか効くんだ!? いや、まあ個体に依るとは思いますが。あと雰囲気か。この場合多分後者。 「伝統を誇りつつ、新しき物をも取り入れるその姿勢はご立派ですが……」 何処か惜しむ様に、けれどハッキリとロウが告げる。 「いかんせん、僕らのほうが時代が新しいですからね」 けれど、蹴鞠そのものがこの世界から消えた訳じゃあないから。 だから。 「ご満足頂けたら、安心しておやすみになって下さい」 ロウが小回りを利かせた低空シュートを、菊花に回せば。足元の覚束無い菊花は受け切れず、空振った。 鞠が、地に落ちた。 ●勝利ッ! 「じゃあ、最後の仕上げと行きますか」 「貴族らしく、はんなり消えるでおじゃるよ」 義衛郎や街多目もラ・ミラージュや奪命剣で貴族達を消滅させているのだが。 「全員蜂の巣決定よ♪ ムカつく麻呂共の目玉を撃ち抜いてあげるわね、あはははははっは♪ さぁさぁ、景気よく血の華を咲かせてよね。え、出ないの? じゃ、しょうがない。汚らしい悲鳴でも上げなさいな、這い蹲りながら――!」 何と言うか、エーデルワイス嬢がそれはもう生き生きしながらバンバン弾丸を撃ち込んでおられました。 肌とかつやっつやしてました。紛う事無きトリガーハッピーでした。 そんな訳で無事御霊達消滅。 「いやはや、何はともあれ漸く終わりましたねえ」 「なんだか普通の依頼より疲れた気がしますよ。甘いモノでも食べて帰りましょうか」 「近くに喫茶店でもあれば良いのだけどね。ケーキが食べられる所」 達成感の籠った溜息を吐くロウに、大和も頷いて。筝子も提案するが、矢張り和菓子はスルー。忘れたいのだろうか。 「まあ、良い息抜きにはなった、かな?」 クルトは苦笑しつつも、そう言って。武器を収める三人――特に最高にハイッてヤツになっているエーデルワイスに帰還を促し。 全員で、帰路に着く。 「しかし、面倒だと思っていた割に、口調がもどらないでおじゃるの」 まあ良いかとそのままで大和達の後に続く生多目をちらりと見やりつつ、義衛郎もぽつり。 「意外と熱中してしまったなあ、蹴鞠」 まあ、偶にはね。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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