● ボコリと盛り上がる土。 ビキビキとひび割れていく地面。 その様は、何かが大地から生まれる姿にも見て取れた。 ――実際に今、生まれようとしていた。 最初に大地から突き出したのは、土で出来た手。 大きな土の手は大地をしっかりと掴み、続いて腕、頭、そして体が現れ、最後に大きな足で大地を踏みしめる。 身の丈は5mほどあるだろうか。 姿や形は、人そのもの。しかし体のどこにも『皮膚』のようなものはなく、全てが土で出来た存在。大地がそのまま人の形を取った存在。 単純に言ってしまえば、土巨人と呼ぶのが相応しいだろう。 その巨体の歩みの前に、高圧電線を走らせる鉄塔などは針金細工のようなもの。 電線に至っては糸といって差し支えは無い、矮小な存在だ。 『オオ……! オオオオ……!』 土巨人の口からは、絶えず叫び声が響く。といっても、実際に言葉を発しているわけではない。 ただ体内に出来た空洞が口へと繋がり、空気の流れる音が響いているだけである。 ブオン……! 大きな手を振りかざした巨人が、その拳で鉄塔をグニャリと歪めた。 それは破壊衝動によるものか? ――違う。 ただ単に、自分の目の前にあったから破壊しただけの事。その時、胸の部分を覆う土が僅かに開く。中には赤く輝く石が見えるが、それもまた僅かな後に再び土に覆い隠されていった。 全てを無に、土に帰す。 当てもないまま、ひたすらに破壊を尽くす巨人の顔が、天に輝く月を見上げた。 ● 「どこかしら、子供のような感じを受けますね」 という『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)の言葉は、ある意味では正解だろう。 癇癪を起こした子供が暴れているようなもの。この巨人のエリューションの行動には、そんな印象を受ける。 それが小さな子供ではなく、5mほどの大きさの巨人がやるのだから、被害がハンパないだけだ。 「場所は伐採によって木々をある程度失った山ですね。鉄塔を設置するのには丁度良かったようですが、こんな巨人が現れるとは思ってもみなかったでしょう」 まぁ当然の話だろう。 自然災害や人災への対策は練っているだろうが、どこの世界に『巨人対策』を取る国があるというのか。 おかげで電線や鉄塔に被害が出ているものの、幸いとして今しばらくは人的被害が出る事は無いようだ。二次災害として停電が発生し、その原因究明と電力供給回復のため、人が訪れればその限りではないが。 「土巨人はフェーズ2のE・エレメントです。他にも3体ほど、3m級でフェーズ1の巨人が周囲で暴れています」 和泉がいうには、互いが一応同属だとは認識しているのだろう。いかに行動が子供のそれに近いとはいっても、互いが互いを攻撃することはないらしい。 エリューション達は土で出来ているせいで硬く、どのような攻撃も通用しにくい。そしてパワータイプであり、その一撃はどれもこれもが高い威力を誇っている。 ところどころに埋まっていた動物の骨や、地面に生えていた草などが見える部分もあるが、そこも硬質化してしまっているようだ。 「これだけでは、長期戦必至の相手に聞こえますが……実は1つだけ、弱点があります」 硬い装甲を持った巨人に存在する、唯一の弱点。 「殴りつける攻撃が直撃した時、胸にある『コア』を覆う土が開き、その『コア』が露出するんです」 ようするに、コアへの攻撃に対しては装甲も何もあったものではないという事である。 ただし、開いているのは次に攻撃を受けるまでの間だけ。1度でも攻撃を受ければ、『コア』を覆う装甲は閉じ、再び巨人は弱点を隠してしまう。 加えて巨大な巨人の一撃が『直撃』する必要があるために、ある意味では相当な危険も伴う事となるだろう。 「地道にいくか、『コア』を攻撃して速攻を狙うかは、皆さん次第です。早めの撃破をお願いしますね」 土が人の形を成し、とてつもない破壊力を秘めた4体の巨人。 長期戦覚悟で安全に攻めるか、それともリスクを承知で短期決戦でいくか。ここからは、リベリスタ達の仕事だ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月16日(水)23:27 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●大地を揺るがす巨体 その巨人は、離れたところから裸眼で見てもはっきりと姿を確認する事が出来る大きさだった。 人間が作り上げた鉄塔や電線など、彼等にとっては単なる玩具に過ぎない。 ちょっと触れただけでも簡単に壊れてしまう程に、脆すぎる玩具――。 遠巻きに見れば彼等はただ、そこで遊んでいるようにも見える。だがそれは人間からすれば『大暴れしている』としか考えられない、破壊の遊戯だ。 土巨人達が、まだこんな人気の無い場所で暴れているだけならば良い。 「随分とでかいエリューションのお出ましだな。人里に出る前に感知出来たのは、果たして行幸と言うべきか否か」 しかしこの4体がもし、人里に出てしまえば――? そう言った意味では『アウィスラパクス』天城・櫻霞(BNE000469)の言葉には、そう言うべきだと答えても良いだろう。 「んー、まあ普通に巨人対策なんてしてないよねぇ。と言うか巨人なんてそうそう沸かないよね、普通」 普通に考えても一般的に巨人は早々沸くものではないが、神秘世界を知り、己もその住人である『黒き風車を継ぎし者』フランシスカ・バーナード・ヘリックス(BNE003537)や他のリベリスタ達にとっては、巨人もたまには見るだろう存在でしかない。 「思い返せば、土や岩の顕現化したようなエリューションと、結構やりあってる気がしますね」 さらに雪白 桐(BNE000185)の言葉をそのまま取れば、神秘世界では結構普通に現れる存在だとも取れる。 そんな会話を交わしながら走るリベリスタ達は、近付けば近付くほどに見上げなければ全体を見渡せないくらいだと、その巨大さ加減を視覚的に実感し始めていく。 耳に届くゴシャリという音は、鉄塔が巨人の手によって破壊されていった鉄塔の音。 地響きと共に響くズシリという音は、大地を踏みしめた巨人が歩く音。 「土巨人、すごい大きさね……危険すぎるわ。絶対にここで倒して、被害を出さないようにしないと」 「低知性高能力とか、災害としては一番厄介じゃねーか」 あまりに巨大な姿と、ただ動くだけでも地面を揺らす土巨人に対して、『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291) や『さすらいの遊び人』ブレス・ダブルクロス(BNE003169)が思い浮かべたのは『危険』の2文字。 さっさと倒してしまいたいところではあるものの、「実力的には難しそうだがな」とブレスが呟くように、いかに手練のリベリスタが揃ったとて、その巨体を活かしたパワーの前には粉砕されてしまう可能性も高い。 あぁ、リベリスタ達の目の前で、また1つ鉄塔が崩れ落ちていく……。 「まるで子供のようだと聞きましたが……」 手近なものに触れ、壊し、ただ遊んでいる(つもり)のエリューション達の姿を見て、『プリムヴェール』二階堂 櫻子(BNE000438)は、出撃前に和泉が言っていた『子供のようだ』という言葉を思い返していた。 実際に目で見てみると、確かに子供のようには見えてくる。 その『遊び』による被害の半端なさは、決して見過ごせるものではない。また、エリューションであるのだから、倒さなければならない。 「確かホーリーメイガスの奥義に、『灰は灰に、塵は塵に』という呪文がありましたね」 「ええ……ありますね」 ふと、『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)がそんな事を口にする。 頷いたニニギアはその奥義の使い手であり、自身に攻撃できる余裕が出来れば、巨人達に対して放つつもりでもいるようだ。 「あれ正確には、その前に『土は土に』の一節もあるらしいです。私は神聖術師ではありませんが、今回に実に相応しい呪文だと思いますよ」 そう言ったモニカに、果たしてニニギアは応える事が出来るだろうか? それ以前に、リベリスタ達は彼女が回復の技を放たないでも良いだけの余裕を持って、戦う事が出来るだろうか? こればかりは、『やってみないとわからない』と言うのが妥当だろう。 「いつだって俺は仲間の盾。そう決めてるんだ」 ならば、その余裕を作ってみせる。そんな気迫を秘めた『デイアフタートゥモロー』新田・DT・快(BNE000439)がどこまで土巨人のパンチを受け止めきれるかが、その全ての鍵だ。 ●唸る巨大な拳 ズシリ、ズシリと動く巨大な土の塊からは、やはり俊敏さはあまり感じられない。 それは大半のリベリスタにとって、先手を打ちやすい事を意味している。 「……やっぱり、でかいな」 しかし6m級の土巨人に対して、一気に距離を詰めた快は小さすぎた。その歩みを止めようにも、1人では完全には壁に足り得なかったのだ。 人間に例えれば、中型犬が目の前にいるだけで前に進めなくなるか――といった形ならば想像しやすいだろうか。 「すみません、まだ――」 ここでもう1枚の壁となる存在はモニカだったものの、どうやら彼女が近付くより早く土巨人の方が行動に出そうな気配がある。 果たしてモニカがついたとしても、足が止まるかはわからず、そこは賭けるしかない。 「無駄かもしれませんが……念の為」 だがここまで来た以上は引けないと、周囲の魔力を取り込み自身の力とする櫻子。 「お前は俺が守る」 「ええ……お願いしますね」 と同時に彼女は隣に立った櫻霞とそんな言葉を交わし、「大丈夫、勝てます」と恋人の背に言葉を送る。 未だ巨人は動き出しはしないが、激戦は必至。 「頑張りましょう、皆さん。負けられない戦いです……!」 仲間達を鼓舞する言葉を発したニニギアと、櫻子の存在は戦線の維持には不可欠と言えよう。 如何に彼女達を守り、3体の土人形を抑えつつ、巨人を屠るか――それがリベリスタの作戦だった。 「こっちは良いぜ」 1体の土巨人に張り付いたブレスが、仲間達にそう声をかける。 「こちらも抑えました」 「後は作戦通りに、だね!」 そして残る2体の土人形には桐とフランシスカがそれぞれ張り付き、土巨人とは違う小さなサイズのおかげか、足止めは出来ているらしい。 周囲に現れ、自身の周囲や足元を、うろちょろする存在。 それが、巨人達から見たリベリスタの姿である。 「来い、『子供のような』というなら――」 ここで快は、わざと殴られるべく攻撃を仕掛ける傍ら、わざとバランスを崩して攻撃を誘いにかかっていた。 より小さな3mサイズの土人形だったならば、彼はきっと願い通りに殴られていた事だろう。 「ったく、俺は正々堂々って柄じゃねーんだけどよ!」 殴られながらも正面から斬りかえすブレスや、 「まずはこれから、行くよ!」 すんでのところで避けつつ、巨人達を暗黒に包み込んだフランシスカは現に殴りかかられている。 土巨人よりも劣るとは言っても、それでも固い土人形に対して彼等の攻撃は効果的な傷を与えられてはいない。 それはさておき、 (来るか――?) 先の土人形と同じように土巨人が殴りかかってくる事を期待する快ではあるが、その期待は悪い形で裏切られていく。 ずしりと重厚な動きで一歩、前へ。 その後、僅かに背中が盛り上がったようにも見えた。否、盛り上がっていた。 行動が『子供っぽい』部分があると言っても、そもそも1人では足止めすら出来ない巨大な存在。 彼等にとっては、足元で騒ぎ立てる個人より、遊び場を荒らしに来た複数を『邪魔くさい』と感じたようだ。 加えて複数を一気に押し潰す手段を、彼等は有している。そう、岩石の弾丸を放つという動作を――。 「そう上手くは、行かないって事か……っ」 わざと崩したバランスは早々取り戻せるものではなく、潰されはしないながらも、快の受けた衝撃は普段とは比べ物にはならないモノ。 もちろんこの程度で彼は倒れはしないが、巨人のコアを露出させる短期決戦を狙うなら、こういったリスクも往々にあるのだ。 「お待たせしましたっ」 そんな岩石の弾丸を受けながらも掻い潜り、ようやく巨人の足元へと辿りつくモニカ。 「こっちを、向いた?」 何とか起き上がった快は、その時、巨人の顔が下を……自分達を見ている事に気付く。 「とすると、来るのでしょうか……殴打が」 「大丈夫、俺が盾になる」 コアを撃ち抜くためには、モニカを倒れさせるわけにはいかない。ずっと望んでいる殴打の予兆が見えた今、快は全ての攻撃からモニカを守る態勢を取る。 「パワータイプ同士、思いっきり殴り合いましょうか?」 土巨人と快やモニカが戦い始める最中、桐も1体の土巨人との戦いを繰り広げていた。 発射された岩石弾も、そして土人形の硬い拳も、彼にとっては少々避けにくい攻撃ではあるが、後ろで頑張る櫻子やニニギアがいる限り耐えられない事はない。 「さて、俺も崩界を進める害毒を駆除するとしよう」 「だけどやっぱり硬いな……中々に手こずりそうだぜ、あっちも……こっちも!」 一方で櫻霞の援護を受けつつ、硬い装甲の上から強引に刃を通したブレスは、土巨人も土人形もやはり一筋縄ではいかない相手だと改めて認識したらしい。 土巨人にコアがあることはわかっているものの、今のところ快はそのパンチをまともに受ける事には成功していなかった。さらには土人形も装甲だけは硬く、自身の攻撃も決定打には欠けているのだ。 「やっぱり長期戦は覚悟しないとねっ。……ん? 待って!?」 その時、フランシスカの視線が殴り飛ばされる桐を捉える。いや、正確にはその殴られた結果か。 「あれはコアか?」 「どうやら、土人形にもコアはあるようですね……っ」 ブレスも殴られながらすぐに態勢を立て直した桐も、そのコアの存在をしっかりと目に焼き付けている。 上手くその殴打を受ければ、露出するというコア。 しかし彼等は、快のようにわざと無防備に攻撃を受ける事を、念頭には入れていなかった。もしもそのような態勢を取る気持ちがあったら、もう少しは楽に土人形を倒せていた事だろう。 「今、癒しますから……」 激しい衝撃を受けた桐や、岩石弾を受けた仲間を櫻子が癒しにかかれば、 「コアをしっかりと、撃ち抜いてください!」 僅かにズレたタイミングでさらにニニギアの歌声が戦場に響き渡る。 彼女達に背中を預けきれるか否か。それが、わざと受けるか受けないかに繋がっていたのかもしれない。 「同時に狙えるか?」 「やってはみるが……!」 ならば同時に攻撃を叩き込んで、少しでも早く倒してしまおう。そう考える櫻霞とブレスではあったが、同時に攻撃を叩き込む事はほぼ至難の業。 同じ速度、タイミングで動けたならば話は別だが、櫻霞よりもブレスの方が僅かに早かった。 「地道にいくしかない、という事ですか」 ブレスの攻撃がコアに直撃した直後、櫻霞の攻撃が装甲に弾かれた様子に桐は言う。 「でも、効いてるのは確かだよ! これなら行ける!」 同時に当てる事は無理だ。それでも装甲の上から攻撃した時より、圧倒的に土人形の崩れ具合が違う事にフランシスカは勝利がより近付いた事を確信する。 果たして、話はそこまで簡単なのだろうか? 特に土巨人の殴打は、土人形のソレとは比べ物にならない強烈な一撃。 「ぐああっ……!」 狙われたモニカを突き飛ばし、無防備に受けた快の呻き声を聞けば、それも確かな現実だと実感する事が出来るだろう。 少し前に発動したラグナロクのおかげで傷はすぐに微量ではあるが癒されはする。 「このチャンス、逃がせません!」 剥き出しになったコアを狙い撃ちにかかったモニカは、同時に土巨人の体に、攻撃の反動で僅かなヒビが入った事も確認していた。 『オオオ……オオオオオ……』 呻きとも、叫びとも取れる声のような音を上げ、コアへの直撃を受けて苦しむ巨人。 コアを集中的に狙えば、勝機はある。 だが問題は、そのコアを露出させるため『ファクター』、即ち巨人の殴打の直撃を受ける事に、快が最後まで耐え切れるかどうかと言える。 ●暴れる巨人を穿て 殴り飛ばされてはコアを撃ち、岩石弾が飛んでは必死に耐え――リベリスタと巨人の攻防は、一進一退の戦況が続く。 「はぁ、はぁ……やっぱり、きついかな」 否、やはり2度も3度も殴打を受けている快の傷は、態勢を立て直しながらある程度のダメージコントロールをしていたとしても、非常に大きい。 まだ誰も倒れていない事が幸いしてはいるが、土人形にコアがあった場合を想定はしていても、対策を完全に取っていなかった事――それが、快のピンチを招く結果を導き出していた。 「チクショウ、とっとと倒れやがれ!」 「目障りだ、失せろ土塊風情が……」 ここでどうにかブレスと櫻霞の手によって、土人形の1体がただの土塊と化す。 ある程度の傷さえつけていれば、コアへの直撃は3度か4度くらいで人形は土に還るようだ。 「土人形はあの程度……では、こちらはどれほど叩き込めば……!」 一方で既に4発は死神の魔弾を土巨人へと撃ち込んでいるモニカは、半壊しながらも耐え続ける土巨人の耐久力の高さにわずかな焦りを見せている。 耐久力の底が見えた土人形は、もうしばらくも耐えれば仲間達が倒す事は間違いない。 ――のだが、 「流石にちょっとだけ、キツイですかね?」 「まだ……まだだよっ!」 残る2体を相手取る2人の内、桐はまだまだ余力は残している気配があるものの、フランシスカはもう何時倒れてもおかしくない状態だ。 「大丈夫、後1発……いや、2発は耐えてみせるよ」 と言う快も、その1発で倒される可能性も高い。ここまで耐える事が出来たのは、彼がアークの中でも最高峰の手練だから出来ている芸当と言えるだろう。 幸運を味方につければ、彼はまだ耐えてくれる事は間違いない。しかし、その後に倒されれば瓦解すらもあり得る。 「なんて硬さなのっ……回復が、追いつかない……!」 必死に歌声を響かせるニニギアの癒しの力も、岩石弾にパンチにと暴れ狂う巨人の破壊力の前では、誰の傷をも癒しきれるレベルではない。 「無理はするなよ、流石に……ここから先は護ってやれる自信がない」 「……ありがとう御座います、どうかご無理はなさらずに……」 そんな中、瓦解を懸念した櫻霞がニニギアと同じく回復で手一杯の櫻子にそう声をかけ、前に出る気配を見せた。 戦線を維持するため――そのためには、自身が前に出よう。 そう判断したようだ。 そして前に進む彼の視界には、土人形の殴打をギリギリでフランシスカが耐え凌ぎ、絶好の機会を作り上げていた。 「今ですよ、ブレスさん!」 運良くニニギアと櫻子の歌声を受け、殴打を受け止められる状態を取り戻す事が出来ていた彼女の叫びが、ブレスへと飛ぶ。 「わかっている!」 もちろん、そんな好機を逃すブレスではない。 「後、1体ですよ……!」 桐が言う。ここが踏ん張り時だと。 「聞け、終焉の笛の音を!」 残った力を振り絞り、快のラグナロクが仲間達を光に包む。 瓦解するか、しないかの極限の状態。であるなら、瓦解しないために全力を尽くすリベリスタ達。 「まだ、倒れるわけにはいかないんだ……!」 繰り広げられる激戦の中で快がついに膝を突くが、 「大丈夫、ここからは押し切るだけですよ」 3体目の土人形のコアをブレスが撃ち抜いた直後、彼やフランシスカと違い、結構何事も無かったかのようにトドメを刺した桐の言葉の通り、後は押し切るだけだ。 「土は土に。命を育む森の土に、戻ってちょうだい……!」 ただひたすらに快や近くにいる櫻霞、モニカに対して土巨人が拳を叩き込もうとしている今、ニニギアも攻勢に出る事が出来る。 「……やらせませんよ?」 「そういう事だ、俺達も壁になるんだぜ!」 危険な状態の快を下がらせ、桐やブレスも土巨人への壁ともなっている。 「私の力、お渡し致します……」 「ありがとう、その力を無駄にはしません!」 モニカが死神の弾丸を放つためのエネルギーは、櫻子が与えてもくれた。 全員が一丸となって、ぶつかった戦い。 「この一撃で、決めます――!」 仲間達の想いを乗せ、モニカの放った弾丸が土巨人を穿つ――。 ●土は土に……。 「巨人撃破ー! って言うかすっげー固いね! もう手がじんじんして、しょうがないよ!」 手に残る土人形や土巨人の硬すぎる感触は、未だにフランシスカの手を痺れさせている。 それほどまでに、大地が生み出した『子供』は堅牢であり、厄介な相手だったという事だろう。 「流石にくたくたですぅぅ……」 「あぁ……疲れたな、早く帰って休みたい」 一方では最後の最後まで、櫻子と櫻霞はラブラブで。 「まぁ、何とか倒せたから良いんじゃないかな」 最もキツイ役目を果たした快は、体に走る痛みに耐えながらも、その光景に笑みを浮かべていた。 「大地を傷つけるものや汚すものがあるなら、取り除くように対策をしたいけど……」 砕けたコアを手に、色々と調査をしたいと考えていたニニギアではあったが、快の様子を見ればそんな時間もないと判断したらしい。 誰もが、ボロボロだった。 死力を尽くして戦った彼等には、今はもう戦う力が殆ど残されてはいない。 だが全員が一丸となったからこそ、土巨人を大地に還す事が出来たのだ――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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