● 雪山のある場所に、ぽっかりと開く洞穴。 『ぐー……ぐー……』 その洞穴の奥から響く、いびき。 誰かが寝ているのだろうか? いや、それにしては生活用品の類が洞穴の中に転がってはいない。 「……おじゃまするよ?」 そんな洞穴に、山登りに来ていた1人の青年が、一夜を乗り切れないものかと入ってきていた。 先客がいたなら挨拶すれば良い。寝ているなら起こさなければ良い。 ほんの少しの間、体を休めて食事が取れれば、それで良い。 「穴の中だから、いびきも響くなぁ……移動しようかな」 バックパックから寝袋と食料を取り出し、青年は休みにかかる。……のだが、洞穴に響くいびきの煩さに「ここではゆっくり休めそうも無いかな」とも思っていた。 当然だろう。 食事を取ろうとすれば、何かしらの音が出て先客を起こしてしまうかもしれない。 かといって、いびきが煩いために寝るには少々問題がある。 「……やっぱ移動するか、近くに別の洞穴があるかもしれないし、探して見よう。無かったらここで我慢すればいいさ」 こんな場所では、やはり休めないと判断したのだろう。一度は取り出した寝袋や食料を青年はバックパックに仕舞い込むと、どんなヤツが寝ているのか見てやろうと考えたようだ。 薄暗い洞穴は奥に進むとL字に折れ曲がっており、その先は多少の広さがある。どうやらいびきの主はその奥にいるらしい。 「奥に行くほど煩いし……って、熊かよ!」 そしていびきの主を懐中電灯で照らした青年は、その姿に思わずツッコミを入れてしまう。 寝ていたのは、熊。 これはまぁありえなくはない。いびきをかいているが、そんな熊もいるのだろう。 問題はその格好だ。 パジャマとナイトキャップに身を包み、葉っぱの布団でご就寝。 「いや、それはないだろ?」 『……がおー』 「しかも寝たフリだとっ!?」 のっそりと起き上がって来た所を見ると、起きていたということか。 冬眠する熊がパジャマ着て寝たフリをして、近づいたら実は襲ってきました。 「……うわ、ありえね……」 ありえない非常識な光景を目に焼き付ける青年に、熊パンチが振り下ろされる――。 ● 「中々の演技派ですね、この熊さん」 いやいや、それは演技なのか。ただの寝たフリじゃないのか。『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)はそんな言葉に「細かい事は置いときまして」とスルーする方向で話を進めていく。 洞穴の奥にいるパジャマベアはフェーズ2のE・ビーストだ。 近づいてくる者がいるか、外で騒ぎが起こればのそのそと起き上がって襲い掛かってくると和泉は言う。 「攻撃は殴る、爪を弾丸のように発射すると単調ですが、フェーズ2のため、威力は高いです」 まともに打ち合えば、苦戦は免れない相手である事は間違いない。 周囲には雪に紛れた白兎のE・ビーストが身を潜めているらしく、洞穴に近づいてから20秒後か、戦いが始まれば一斉に襲い掛かってもくるようだ。 白兎は雪とほぼ完璧に同化していて、普通に見るだけではどこにいるかもわからない。 「パジャマベアと先に戦えば、後ろから挟撃される事になります。とはいえ先に白兎を相手取ると、パジャマベアはパワーアップした状態で外に出てきます」 それは外の煩さに怒ったフリ(?)なのか。 ともあれ、倒さなければならない相手である事に違いはない。 「問題の青年がやってくるのは、下手をすると戦闘中です。可能な限り、早く殲滅してください」 くたくたになりながら、見かけた洞穴に近づいてくる青年。もしも彼を洞穴に近づかせないようにするならば、相当の工夫が必要だ。 どう戦い、問題に対処するか。 集まったリベリスタ達の組み上げた作戦のロジックが、重要となる。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月10日(木)22:56 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●洞穴は危険です 雪山の登山道の道中、洞穴へ続く道の途中に『×』の印。 「これで何とか……登山の知識があるならば避けてくれるでしょう」 その印を付けた主である『Lawful Chaotic』黒乃・エンルーレ・紗理(BNE003329)はそう言うが、果たしてそれで後から来るであろう青年の足が止まるだろうか? 「だと良いけど、どうなんだろね~?」 何かあると怪しむ可能性はあるものの、『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285) が疑問を口にするように、それだけでは何があるのかをしっかり判別出来はしない。 ならば、どうするべきか? 「では、これも追加でどうでしょうか?」 そんな言葉と共に『哀憐』六鳥・ゆき(BNE004056)が持ち出したのは『熊の巣注意。ご自由に御使い下さい』と書かれた看板と、1人用のテントだ。 テントまでご丁寧に設置しておけば、洞穴には近づかないと考えたのだろう。 ――いやいやいや、どこの世界にテントを無償で貸し出す山があるのか。青年が穿った見方をすれば、怪しむかもしれない。 しかしリベリスタ達には、これ以上の登山客の青年対策は存在せず、 「これでどうにかなると、祈るしかないか。登山で洞窟で休憩……。まあ、わからないでもないけれども、今回に限っちゃまずいしな」 この2つで止まってくれれば良いと言うのは、『ダブルエッジマスター』神城・涼(BNE001343)だ。 本来ならば、誰か1人が登山客を装って誘導した方が確実ではあったが、エリューションを倒す事を主眼に置いた作戦において、その余裕はない。 注意書きとしての『×印』と『看板』、そして『テント』が、その役目を果たすかどうか。結果は青年が戦場までやってくるかどうか、そこに答がある。 そんなこんなで登山客への対応を済ませ、リベリスタ達は一路洞穴へと向かう。 彼等の敵は、パジャマを着た熊(のぬいぐるみチック)なエリューションと、その他大勢の兎だ。 「今回の相手だけど……熊さんの方は何でパジャマ着てるんだろうね……? 寒いから……ってわけじゃないよね……? すっごく謎で気になるよ……」 何故にそのような格好をしているのか。それは永遠に解けない謎だとわかっていながらも言わずにはいられなかった『ゲーマー人生』アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)の言葉に、 「パジャマ……最近の熊は、洋服着るのが流行なの? ま、冗談だけど。大人しく冬眠してるだけなら、よかったんだけどね」 「っつーかパジャマなクマってホントに冬眠かよ! て感じよね。 ……いや、まあ、フツーのクマも冬眠してんだろうけどさ」 冗談と突っ込み混じりに『淋しがり屋の三月兎』神薙・綾兎(BNE000964)と涼が応える。 ゆっくりと春を待ち、本当に冬眠する熊だったなら、どれほど良かった事か。そんな冬眠はないと突っ込みたくもなるが、大人しく寝ているなら決して害はない。 しかし敵はエリューションであり、しかもフェーズ2まで進んでしまっている。さらには寝たフリまでして人を襲うほどの演技派である。 「フェーズ2ということは相当な実力がありながら、しかも一般人さん相手にだまし討ちとは言語道断!」 ならば『超守る空飛ぶ不沈艦』姫宮・心(BNE002595)が許せない! と叫ぶのも無理はない話だ。 「……先に言っておくけどよ、俺はクマが好きだ。もうちっと詳しく言うと、クマのぬいぐるみが好きだ」 一方では彼等の会話を聞きながら、熱い想いを『黒鋼』石黒 鋼児(BNE002630)が何やら語り始めた。 「円な瞳、愛らしい口、思わず触りたくなる耳、ふわもこな毛並み、全てが愛おしい……」 彼の口にする熊のぬいぐるみへの愛、それは誰が聞いたとしても『そうだ』と肯定出来る話であるだろう。 2mを越す体つきではあるが、鋼児はまだ中学生。可愛いものが好きなお年頃なのだ。 「今回の相手はクマなんだからぜ! しかもよ! しかもよ! パジャマにナイトキャップ着てやがんだぜ!! んだそれぇ! 可愛すぎんだろクソッタレがぁ! 俺を萌え殺す気かっつうの!」 激しい程に熊(のぬいぐるみチックな)エリューションとの出会いに彼は相当興奮しているらしいが、敵はエリューション。 その可愛らしい見た目に決して騙されてはいけない! ●洞穴のパジャマベア 「成敗いたそおーーー!」 『……がお?』 洞穴に入るなり大声でそう叫んだ心の声の大きさに、ごろんと寝返りを打って目を擦るパジャマベア。 夢心地の演出でもしているのだろうか、軽くあくびをするところを見れば、寝ぼけているようにすらも見える。 「演技にしてはよくやってる方だと思うけど……来るよ」 だが、それも綾兎が言うように演技だ。 のっそりと起き上がって怒りマークを浮かべる様は、果たして本当に演技かどうかわからない部分もあるが――、 「くっ、やっぱ可愛いじゃねぇか……だが、倒さなきゃならねぇんだよな……!」 ともあれ、倒さなければならない相手である事に違いはないと、可愛いと思う気持ちをぐっと堪えて構える鋼児。 さぁ、パジャマベアをぶちのめせ! 洞穴の奥での戦闘開始。 ――それは即ち、白兎がワラワラと現れる事を意味する。 「来ましたよっ!」 自身のギアを上げて速度を高めつつ、白兎達の姿を真っ先に見つけたのは黒乃だ。 耳は兎のそれに近いが、やはり鉄の刃と化している点を甘く見る事は出来ないだろう。 『うさっ』 『うさうさっ!』 ……兎がこんな鳴き声(?)するわけもないが、とにかく何やら声を上げて気合は十分らしい。 鋭く尖った刃の耳を振りかざし突撃したかと思えば、雪玉をせっせと作って投げつける兎達。 「きゃっ!?」 しかもその雪玉は、まともに食らえば黒乃のように氷像になってしまうのだから、性質の悪さもハンパないと言えるだろう。 「お前ら全員、まとめて肉のパイにしてやんよっ☆」 氷像になりたくないならば、さっさと倒してしまう以外の方法は無い。不吉を告げる赤い月を呼び寄せたとらが白兎達に不吉を届けようとするが、小さく素早い白兎に直撃させるのはやはり難しかったようだ。 特に両手で扱わなければならない彼女の杖は扱いにくく、上手く月をコントロールする事もままならない。 「……ま、きっちりしっかりやってやろうぜ!」 一方で僅かに遅れた涼は刃を振るうために近付いて来た兎の首を掻き切り、深手を負わせる事には成功していた。 この時リベリスタ達にミスがあったとするならば、少し洞穴を甘く見過ぎていた点と、氷像と化した黒乃が1人だけ外にいる点であろうか。 「回復は任せて! でも、この場所じゃ……!」 「……これは、どうしたものかしら?」 透き通るような天使の歌声を響かせ外の仲間の傷をいやすアーリィと、魔法の矢で深手を負った白兎を仕留めたゆきは、同時にその失敗を肌で感じたようだ。 彼女達のいる場所からは、洞穴の正面にでも黒乃が立っていなければ視界には入らない。その黒乃は青年への対応を考えて洞穴から離れた位置に陣取り、青年が来れば見えない位置に移動もするだろう。 さらに、ブレイクフィアーを扱う心はL字に曲がった先の洞穴の奥。 彼女が入り口側で戦う仲間や、外の黒乃を視界に収めるためには、熊を抑える事を捨てて移動しなければならない。 それは熊と兎に完全に挟撃される事を意味し、リベリスタ達は自ら不利な戦場を選択してしまったと言える。 「あっちも始まったようだね」 そして入り口付近で始まった戦いの音は、L字に折れ曲がった先の洞穴の奥で戦う綾兎の耳にも届いていた。 音は届く、しかし視界にはほとんど映らない。 「まずはコイツを抑えるぜ、潰さねぇといけねぇ奴だっ……」 入り口側を見る事が出来ない状況にわずかな不安を感じる鋼児ではあるが、ここは外で戦う仲間を信じて戦うしかないとも彼は同時に感じている。 「よほど苦戦していたら、きっと声がかかるのデス!」 振り下ろされた熊パンチを受け止めた心が言うように、酷い状況になれば救援要請は来るはずだ。 目には見えずとも、声は届くのだから――。 「まだ……倒れられませんっ!」 奥で戦う3人の期待に応え、自力で氷を打ち砕き自由を得る黒乃。 「私の速さ、ついてこられますか?」 と同時に直撃はしないまでも、とらの不吉を届ける月によって傷ついた2匹目の兎を、手にしたカトラスをもって仕留めていく。 しかし如何にフェーズ1とはいえ、5人のリベリスタに対して10もの数がいれば、苦戦するのは当然の話だった。 『うさー!』 例え凍りつかなかったとしても、白兎の刃の耳にまともに斬られれば大きな出血を伴ってしまう。 「く……!」 今、まさに黒乃がその刃に大きく血を流し始めていた。 「歌声が、届かないか……!」 下手をすれば瓦解しかねない状況に嘆くアーリィではあるが、よしんば届いたとしても黒乃の受けた傷はそのままでは癒せない深いもの。 「どうします? 心さんに救援をお願いしますか?」 「ここはした方が良いと思うっ!」 流石に無理だと判断したゆきの言葉に、このままでは無理だととらは応えるしかなかった。 とらの放つ不吉を運ぶ月では、白兎に対して直撃を叩き込む事はほとんど無理に近い。外に出ればマシになるだろうが、1人で出ては黒乃のように孤立する可能性だってある。 「あぁ、くそ、まったく厄介だな……」 何とか3匹目を早撃ちで撃ち抜きながらも、置かれた状況に歯噛みする涼。 残る兎は、7匹。 だが心に救援を頼む以上、パジャマベアの攻撃も後ろから飛んでくる事になるからだ。 「お待たせしたのデスっ!」 そして救援要請を受けた心が、何とか黒乃の見える位置へと陣取り、邪気を払う光を放ち彼女の傷を癒せるものへと変えていく。 「くそ、これ以上は進むなっ!」 『がおーっ』 そのさらに後ろでは必死にパジャマベアを押さえ込もうと奮闘する鋼児がそのパンチで吹き飛び(大好きな熊の攻撃のせいか少し嬉しそうだったが)、遂に崩れるパジャマベアに対する壁。 「悪いけど、これ以上先には行かせるわけにはいかないんだよね」 外には兎。洞穴の奥にはパジャマベアという最悪の状況ながら、音速の斬撃を放った綾兎はひたすらに心が下がるのを待つ。 ――こうした悪い状況に陥った時、さらにソレは重なるものだ。 「えーと、妙な×印に、看板? それにテントか」 先んじてリベリスタ達が設置していた注意書きやテントを目にした青年が、丁度洞穴へと近付いて来ていたのである。 流石に訝しく思ったせいか近付いては来ず、加えてとらの作り上げた陣地のおかげでそれ以上の接近はして来なかったが、もしもそういった対策をしていなかったなら、果たしてどうなっていた事だろうか。 「ま……良いか。ビバーク出来る別の場所を探さないとな」 せっかくご丁寧にテントがあるのだからと、変な疑いを持たずにそのまま彼は去っていく。 重なりかけた悪い状況を回避出来た事――その点においては、リベリスタ達は幸運だったと言えよう。 それが、洞穴で戦う彼等の命運を分けた。 「行ったようですね……これで、気にする必要もなくなりました」 もしも青年が近寄ってきたらと考え、孤立する位置で戦っていた黒乃にとって、最早こうして孤立している必要性は無い。 その持ち前のスピードを生かした彼女が洞穴の入り口近くまで移動した時、リベリスタ達は崩れかけた態勢をなんとか持ち直せる状況になったのである。 「では……一気に倒しますよ!」 カトラスを振るい、黒乃が舞う。 「あぁ、そうだな。これ以上はやらせねぇ!」 手近な白兎の首を裂き、涼が吼える。 「よし、これで晩御飯も手に入るっ☆」 ようやく1体の白兎に不吉を届け、とらも勢い付いたようだ。 しかし熊はぬいぐるみのような見た目であり、可愛く……兎の方は兎の方で、 「熊よりこっちの方が心が痛むな」 「兎をこうやって倒すのは少しは抵抗感あるけれどもな。……ま、悪く思うなよな」 戦いの前に熱烈な熊のぬいぐるみへの愛を語った鋼児のように、綾兎や涼も苛烈な攻撃に白兎達が命を散らす様に、倒したとしても表情は少し暗く見える。 特に綾兎はウサギのビーストハーフであるためだろう。似たような存在だとも感じているのだろうか。 「堪えろ、俺も、堪える」 彼の隣に立つ鋼児もパジャマベアを倒さなければならない事実に、うっすら涙目になっているようにも見えたが、「涙目になんてなってねぇ!」と否定気味に頑張っている。 そうこうしながらも綾兎と鋼児、心が懸命にパジャマベアを抑える中、ついにリベリスタ達は白兎の殲滅を完了した。 「そういえば……ちょっと、気になったんだけどさ?」 ふと、何かに気付いたようにとらが言う。 「どうしたんです?」 「爪ミサイルって、まだ飛んできてないけど、なんで熊も傷を負うんだろ?」 何事かと尋ねるゆきに、彼女はそんな疑問を口にした。 あぁ、そういえばそんな攻撃もあるとか和泉が言ってたような……。 「その疑問はすぐに解決するんじゃない?」 2人の会話が聞こえたのか、パジャマベアを抑えている綾兎の言葉に目を向けてみれば、 『がおー……がうっ!?』 丁度、リクエストに応えるかのようにその『爪ミサイル』を打ち出した姿が見て取れた。 と同時に熊の指から噴き出す血。 「なるほど、そーゆことなんだねっ!」 理解出来たと、とらは頷く。そう、生爪をミサイルとして発射すれば、こうなるのは目に見えていたのだ。 つぶらな丸い目に涙を浮かべるパジャマベアを見ると、やはり結構痛かったらしい。 「……無理するなよ?」 思わず、鋼児が心配するほどに――である。 「では、ここから反撃なのデス!」 残ったパジャマベアを倒せば、この戦いには勝つ。これまでやられた分をきっちり返そうと、仲間達に終わりが近いと心は告げる。 確かに、挟撃されている時はパジャマベアがリベリスタの大半を視界にいれた状態は、危険だっただろう。 だが片側の兎が全滅した今となっては、リベリスタ達が集中攻撃を叩き込むのにもっとも適した状態でもあるのだ。 『がおー!』 「くまー!」 涙をぐっと堪え、パジャマベアと殴りあう鋼児。 「もう少しだよ、頑張って!」 「決して無理だけはしないでくださいませね?」 後ろからは鋼児頑張れと、アーリィとゆきの歌声が洞穴の中に響き渡る。 10秒、20秒……時間にしては、それほど長くは無い。戦いが始まってからも、まだ5分と経ってはいない。 それでもここまでの苦戦が苦戦だったせいか、随分と長い時間が経ったようにもリベリスタ達は感じたことだろう。 「やっと終わりが見えてきたか」 そんな言葉と共に涼が最後尾からのバウンティショットでパジャマベアを撃ち抜いた時、その大きな体がグラリと揺れた。 「……最後は任せた、石黒さん」 「あぁ、わかった、ぜ」 フィナーレは熱い想いを語り、涙を呑んで戦う鋼児へ。 綾兎の言葉に鋼児はこくりと頷き、最後の一撃を叩き込む――。 ●パジャマベアは永遠に眠る 「これで終わったのデス!」 動かなくなったパジャマベアを見やり、勝ち誇る心。 「かなり、ギリギリだったけどな……」 終わってみればリベリスタ達の勝利に終わったが、涼が言うようにそこに至るまでの過程は相当に綱渡りだった。 ホーリーメイガスであるアーリィとゆき、どちらかがこの場にいなかったとしたら? 壁となり、かつブレイクフィアーを扱う事の出来る心がいなかったら? 作戦の面においては下手をすれば敗北していた可能性もあり――所謂、リベリスタの部隊構成が勝利を手繰り寄せた要因となった事は事実だ。 「まぁ、勝ったから良いんじゃないかな?」 「そうね、終わりよければ……とは、よく言ったものよ」 とはいえ、勝利は勝利。ほぼずっと仲間の傷を癒し続け、余裕が出来れば攻撃にも転じたアーリィとゆきの言葉が全てである。 「じゃあ、帰ろうか」 綾兎は言う。ならば山を降りる体力がある内に帰ろうと。 下手にダラダラ時間を過ごして、遭難でもしたら、その方が大変ではあるだろう。 「アークの厨房で、肉のパイにしてもらうんだ~♪」 倒した白兎をさっとかき集めたとらは、「これを食うんだ!」と既に帰る準備は万端だった。 「山道をちゃんと歩けば帰れますし……行きましょうか」 そうと決まれば帰ろう。アーリィの言葉に頷き、リベリスタ達は帰路に突く。 「……可愛かったぜ、パジャマベア」 去り際、パジャマベアが永遠に眠る洞穴を振り返り、わずかな時間、黙祷をささげる鋼児。 いつかまた、こんなエリューションが現れるだろうか? きっと、来る。そんな気が、する――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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