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お狐様と白玉うさぎ

●もっちもち
 祝! 金剛稲荷神社改築記念おもちつき大会!
 ――と、金魂(こんこん)はごんぶとい尻尾に墨汁をつけて大きな和紙に一筆入魂する。
「うむ、妙案であるゾ」
 金魂は、金剛稲荷神社を守護するえらーいお狐様である。
 ちっこい体にでっかい態度、ふさふさの体毛にツンツンの気性が売りだ。
「お餅をぺったんぺったんこ、されば賽銭がっぽりどっさり!
 正月に神社で餅つき大会を開かば、まさに千客万来なるゾ!」



●ぺったん
「残念。現実は非情なりけり」
 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はあくまで無表情のままつぶやく。
 1/1金魂ぬいぐるみ(アーク購買部にて販売交渉中?)がテーブルに置いてある。
「運命に従えば、こうなる」
 イヴは1tと記された木槌を振り上げ、よろめく。
「や、やめたげてよぉー!」
「それは無理」
 ドスンッ。
 1/1金魂せんべい(食べられません)の出来上がりである。
 幾人か、リベリスタ達の悲鳴が聴こえたのを無視し、イヴは淡々とつづける。
「金剛稲荷神社で餅つき大会が開催、色々あって金魂はぺろんとまったいらに」
「イヴちゃんの胸みたいに?」
 ドスンッ。
 1/1リベリスタせんべい(食べてはいけません)の出来上がりである。
 イヴは冷笑し。
「金剛稲荷神社の守護獣、金魂はダイアモンド級の頑丈さ。このように杵でぺったんされても死ぬことはまず無いし、自力ではロクに戦えないけど回復は得意だからうまくおだてれば役立つはず。
 今回の作戦の目的は、エリューションの撃滅と一般人の保護。
 餅つき大会に先んじて一般客の来ないうちに撃滅対象を排除してもらうわ。詳細は資料を」
 そう、何事もなかったかのように説明をつづけた。



●白玉うさぎ
「しかし、誰に杵と臼を借りてくれば……むー」
 金魂は本殿の板間でごろごろ転がり思索するうち、ふと閃いた。
「そーじゃ! 白魂(しらたま)のを借りてくればヨイ!」
 
 ――餅つき大会、当日。
「……あ、ありえなくなーい?」
 金魂の旧友、白魂。因幡の素兎っぽい何かである。
 自宅の納屋に「杵と臼を借りてったゾ。お礼に餅をごちそうしてやる、喜べ」と置き手紙があったので、やむなく返却してもらうついでに遊びに来てみれば――。
 神社の境内は、まさしく混沌の坩堝にあった。
「もっちー」
「うさもっちー」
 ぴょんぴょこ跳ねまわるウサギっぽい何か。白玉だんご、あるいは南天の実と葉っぱで目と耳を形作る雪うさぎ。そんなゆるーい造形の、もちもちとした弾力に富むウサギが跳ねている。
 白玉うさぎの舞いの中心に、白魂印の杵と臼。
「かがみもっちー」
 杵を握り、白玉うさぎに餅コメをこねさせ、突く。
 はいほいはいほいとテンポよく突いてはこねる、その突き手もまた白玉ウサギ。しかも三段重ねみかんつき。
「き、キング白玉!?」
 戦慄する白魂。
 元凶の姿をあわてて過ごすと、今まさに蒸し器でふかされた金魂が臼の中へ。
「そなた、どうしてそうなった!?」
 杵は天へ昇り、太陽を隠す。
「……餅米、ケチって古いのを」
 ぺったん。
「き、金こぉぉぉぉぉぉぉんっ!!」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:カモメのジョナサン  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年01月15日(火)22:45
新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくおねがい致します。
というところで、新春らしく神社よりお正月チックな依頼をどうぞ。

以下、シナリオ詳細です

●注意事項
 この依頼は、コントST様の過去作『月と、神社と、二匹の狐』(ID:3395)の関連作です。
 金剛稲荷神社および金魂について詳しく知りたい方は、過去作をご覧ください。
 もちろん、上記を知らなくても楽しめる仕様になっておりますので、お気軽にご参加ください。

 また、事件発生日は時系列上、納品日等に関わらずお正月中です。お正月エピソードなので。

●状況説明
 アザーバイト金魂(こんこん)の住まう金剛稲荷神社はかつては寂れて廃墟同然。
 しかしアークのリベリスタ達の活躍でぴっかぴかの新築に。
 はりきって神社を盛り上げたい金魂は、あの手この手で集客を計る。
 「お餅つき会」にてエリューション事件が発生したのであった。

●作戦目的
・破界器「月の杵」「月の臼」奪取
・エリューション「白玉うさぎ」「鑑うさぎ」すべての撃滅

 アークとしては必要性皆無ながらも、神社の餅つき大会などアフターケアは自由とする

●戦場
 神社境内、裏。
 一般客などは(知名度の問題で)表に少数居るか、居ないか。裏は誰もいない。
 周囲は鎮守の森に囲われている。本殿の裏にあるため、建物の損壊に注意。※壊してもアーク的には問題ない

●敵
 ・Eエレメント・フェーズ2「鑑うさぎ」
  特大の白玉うさぎの三段重ね+みかんの鑑餅っぽい大型。ボス格。
  弾力に富み、粘性もある一方、自在に硬化することもでき見かけに反して凶悪。
  質量が大きいため、のしかかるだけでも脅威。
  「月の杵」装備。知性は道具を使いこなす程度にはある。

 ・Eエレメント・フェーズ1「白玉うさぎ」×12
  「月の杵」「月の臼」によって自己増殖する。十年ものの古い餅米を素材にした。
  餅の性質を持つ。俊敏で弾力・粘性に富み、自在に硬化もできる。耐性と弱点がある模様。
  俊敏性と防御力に優れる反面、攻撃性はいまいち。しかし拘束力には長ける。
  鳥もち弾、うさキックを多用する。油断しないこと。

 ・破界器「月の杵」「月の臼」
  白魂の所有する破界器。とても美味しいお餅を作ることができ、また扱いやすい。
  杵は戦闘用にも使えるが、本来そこまで特殊な能力はなく、アーク的に重要な破界器ではない。
  使い手のイメージが染みついていた。

 ・十年ものの餅米
  金魂が昔お供えものにもらったまま忘れてた餅米。
  前回の事件でエリューションの影響を受け、密かに革醒の因子を孕む。

●協力者
 ・アザーバイト「金魂」
  金剛稲荷神社を古くより守護してきた異世界狐。フェイトを取得している。
  やたら偉そう。ホーリーメイガスに匹敵する回復能力を有する。
  元凶。十年もののビンテージ餅米を使い、勝手に借りてきた杵と臼で餅つきをした。

 ・アザーバイト「白魂」
  因幡の素兎っぽい何か。金魂とは古い知り合い。フェイトを得ている。
  白玉うさぎのモチーフ。賢いが弱い。あの金魂よりも色々と弱い。
  白玉うさぎと同じく、自在に形態変化することで高い生存性を誇る。

 「餅」にいかに対処するか、機転の大事なシナリオです。
 金魂と白魂はよほどの事がない限り、ほっといても勝手に生き延びます。その分援護は前にもましてアテになりません。
 白魂は月の杵と臼を取り戻したいようですが、アーク的には別に月の杵と臼および金魂の賽銭収入がどうなっても問題ありません。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
★MVP
覇界闘士
ティセ・パルミエ(BNE000151)
クロスイージス
春津見・小梢(BNE000805)
ホーリーメイガス
神谷 小夜(BNE001462)
ソードミラージュ
レイライン・エレアニック(BNE002137)
スターサジタリー
坂東・仁太(BNE002354)
スターサジタリー
那須野・与市(BNE002759)
デュランダル
芝原・花梨(BNE003998)
プロアデプト
一条 佐里(BNE004113)

●急行
 死んだ。
 『おこたから出ると死んじゃう』ティセ・パルミエ(BNE000151)は、おこたの優しいぬくもりを失い、真冬の寒々しさに呑まれて、すっかり死んだも同然の憂鬱な気分だった。
「お正月から仕事だなんて、は~ぁ」
 死んだ魚の目。ふらふらとした足取り。神社までの道中が無限大に遠い。
 ネコはこたつで丸くなる。
 外を駆けずりまわるのは、ワンコのお仕事なのです。
 ぴゅんっ。
 紅白の北風と共に、ティセの鼻先をふわふわがくすぐった。黄色くてふさふさの狐の尻尾だ。
「ふぁ、ふぁ……くちっ」
 つるると鼻水をすすりあげるティセに、「はい」と紅白袖がポケットティッシュをくれた。
 『局地戦支援用狐巫女型ドジっ娘』神谷 小夜(BNE001462) だ。急いでるのか、とんとんと左右交互に地を蹴って、用事が済めばすぐに走り出そうという調子だ。
「はぁ~、犬科の人はちがいますなー」
「はしゃいでません! 急いでるんです! 正月中の神社が戦場とすれば、バイト巫女を残して抜けてきた本職巫女の私は銃殺ものの敵前逃亡者なんですよ……」
 ちーんとティセは鼻をかむ。大吉、となぜかティッシュに印刷してあった。
「なにこれー?」
「新発売のおみくじティッシュですよ。運勢占いと実用の一石二鳥が売りなんです。
 て、それより早くっ!」
「あ~」
 ティセ、強制連行される。あわてる狐とエンスト猫。小夜の手がやけにあったかいのは、走っていて血の巡りが早いせいか。

●開戦
 金剛稲荷神社境内、裏。まさに今が運命の分岐点である。

 十二匹の白玉うさぎ達がぴょんぴょこ跳ねる。
「もっちりー」
「うさもっちー」
 デラックスな鑑うさぎは月の杵を天高く太陽を隠すほどに掲げ、月の臼でこねくりまわされた蒸したてほかほかの金魂をぺったんしようとする。
「……餅米、ケチって古いのを」
 ぺったん。
「き、金こぉぉぉぉぉぉぉんっ!!」
 叫ぶ白魂。
 嘆きは虚しく木霊する。
「安心せい」
 残像による分身さえ生じるほどの神速で、颯爽と『巻き戻りし残像』レイライン・エレアニック(BNE002137) は現れて、力強く笑ってみせた。悲嘆に暮れる白魂のうさ耳が、ピンと立つ。
「まさか今の一瞬で金魂の救出を!?」
「ふっ」
 胸を張って。
「いや、まだ何もしとらんぞ?」
「……なにこの無駄演出!」
「今のは準備運動、身体の“ギア”をちょこっとな。第一金魂はダイアモンド級に硬いのじゃ。心配せずとも、すぐにはくたばるまい」
「あー」
 いつしかアークのリベリスタ一同は境内裏に布陣し、白玉うさぎ達を取り囲んでいる。
「さぁ! 救出開始じゃ!」

●雪合戦
「意外と美味しそう!」
 ティセは一直線に鑑うさぎに向かい、大声で挑発してみた。が、鑑うさぎは知らん振り。
「あれ?」
「わっちの思うに、そなたの演技力が足りぬのでは」
 なぜか大きなカレー皿に盛りつけられた白魂ライスは、これまたなぜか花魁喋りである。
 ぐ~。
「お餅カレー、食べたいなぁ」
 『もう本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)の一言に、鑑うさぎのへにゃっていた耳が垂直に立った。心の底から空腹に根ざす言葉だけに迫真なのだ。
「かっがーみー」
 鑑うさぎの南天の実みたいな赤い円らな瞳が、一際ぎらりと春津見を見据える。挑発成功だ。
「ほいほいっと」
 春津見はもう片方のカレー皿を盾に構えて、爪先から脳天まで一挙に神秘の力を解放した。パーフェクトガード。青白いオーラが天へ遡り、至高の堅守を築きあげる。
「こ、これって」
 驚くティセに、春津見はいつものとぼけた調子で答える。
「穏やかな食欲を持ちながら激しい空腹によって目覚めたクロスイージス」
 ごくり。白魂とティセは息を呑む。
「スーパーインド人、春津見・小梢です」
 なんでやねん! とツッコミが入る。否、鑑うさぎの月の杵の強烈な一打だ。春津見は真っ向から見事に受け止め、逆に堅守のオーラの反射で鑑うさぎの餅肌をじわじわと削り取った。
「カレー好きは甘くないよ」
 もちっ。
 もちもちもちもち。雪合戦の勢いで、春津見に白玉うさぎのとりもち弾が殺到した。あっという間に真っ白け。その粘着性は高く、移動どころか攻防さえ封じられてしまった。
「いやーん、ねっちょねちょ」
 ティセもとっさに避けるのだが、運悪く足を運んだ先の地面にもとりもち弾が。
 ずべっ。勢い余って、地面に顔面ダイブ。
「うう、痛っーい!」
 脅威、とりもち雪合戦。
 あっさりと前線が崩壊していくさまは緊張感のない絵面に反して、大ピンチだ。
 とりもち弾に殺傷性は皆無。だからこそ反比例するように拘束力は高い。仕留める時は、身動きできないところを鑑うさぎの大打撃をお見舞いすればいいわけだ。油断大敵である。
「ちょ、ちょ、まっ、めがっさヤバイってコレ!」
 『』芝原・花梨(BNE003998) は鉄槌を背負い、ビーストハーフの反射神経でとりもち弾幕をどうにかこうにかやり過ごす。重装備のデュランダル。その性質上、回避力には限度がある。重ねて、足元にはとりもち罠だ。
「なれば」
 小夜は魔弓に矢を番い、天を的に見立てて構える。
「汝は白鷺、汝は舞う。破魔の矢よ、地の戒めより我らを解き放て!」
 白羽の矢が天翔けて、戦域にひらりと八つ、白い羽根が降ってきた。それは各人、小夜や花梨の背中で明滅したかとおもえば、仮初の白き翼を成したのではないか。
 ふわりと花梨は神秘の力で軽く舞い上がり、その加護によって地上のとりもちを踏むことなく自在に移動できるようになった。
「良い仕事するわね、あんた!」
「飛翔の奇跡は二分しか持ちません。気をつけて、花梨」
 一瞬の沈黙。
「女神?」
「女神です」
 暗号文にしか聴こえないが、お互い理解できたのでよしとする。
「もう魔法少女やらへんのん?」
 ぎくっ。ギギギ、と小夜は錆びついた首を後ろにまわす。
 『人生博徒』坂東・仁太(BNE002354) は狐のほおヒゲを撫でさすり、回想をはじめる。
「前回、ことあるごとにくるっと回って魔法っぽく唱えよったやん。芸風かえた?」
 蘇る黒歴史。
 小夜(28)の表情はさぁーと青ざめ、やがてドス黒い闇色に染まった。
「ジンタ=サン爆発してください」
 その直後、とりもち弾が仁太の顔に直撃した。

●もっちり
 『銀の腕』一条 佐里(BNE004113) と『不誉れの弓』那須野・与市(BNE002759) は、後方にてまず第一に自己の強化を計った。
 与市の左目は絡繰義眼。義手と和弓、蜂羽堕と同じくして与市の因果や在り様に深く関わっている。プロストライカー。黒瞳の義眼が淡い紅を帯びる。
 佐里は魔力剣・閃赤敷設刻印を左手に握り、刃を見つめて集中を計る。眼鏡の向こう側で、佐里の視神経回路は激しく火花を散らす。
 生来は右利きであった佐里は、灼炎によって右腕を失い、革醒によって取り戻した。お互いに知る由はないが、期せずして与市とは近しい境遇であった。
「仕掛けましょう、那須野さん」
 年の差みっつ、背丈はもっとスレンダーな佐里が高い。やや不思議な構図であるが、与市は見目に反して歴戦の弓取りだ。駆け出しの佐里は謙虚な人柄もあり、むしろ好んで敬意を払っている。
 与市は弓に矢を番いつつ、暗いトーンでぼそりとつぶやく。
「そうするが――どうせ当たらぬのじゃ」
 与市と佐里にも少数のとりもち弾が降り注いできた。与市は素早くサイドステップを刻み、義眼で狙いをつけ、星明かりの光矢を射た。二、四、六。一度に六つの白玉ウサギを撃ち抜いた。
「すごい、百発百中です!」
「……いや、外れておる」
 動かなくなったのは一匹だけ。残る五匹の白玉ウサギは手傷を負っても健在だ。攻撃性は薄いが、敵は素早くしぶとい。一撃で倒せたのは、寸分狂いなく首ねっこを真っ二つにできた一匹のみだ。
「となれば!」
 佐里は翼の加護を活かして跳び込み、横一文字に切り結ぶ。討ち漏らしを仕留めようとしたのだ。
 が、白玉うさぎの“餅”の特性がここで災いする。
 なんと途中で剣撃が止まり、しかも餅が粘着して抜けなくなってしまったのだ。
「え、ちょ、ちょっと待ってくださいよ!?」
 ガッと踏ん張って引き抜こうとすると、今度は剣に白玉ウサギが刺さったまま。
「うさー」
「うさー、じゃないです! これじゃ串だんごですよ! おねがいですから離れてくださいっ!」
 白玉だんご串で素振りする一条 佐里(14才)の図。
「むう、神秘に比べて物理は通じづらいようじゃ。今回1¢は出番なしかのう」
「れ、冷静に分析されましても!」
 とりもち弾幕を右へ左へ避けたり防いだりしつつ、両者は悪戦苦闘する。
 そこで颯爽、仁太は巨銃パンツァーテュランのハニーコムガトリングで敵陣を弾雨に晒した。
「どや!」
 が、かすり当たりが相次ぎ、もちもちとした白玉ボディは衝撃をかなり吸収してしまった。
「……うさ?」
「……ぜお?」
 首をかしげる、白玉うさぎとおっさんぎつね。
「坂東さん! だから物理は利かな――はぶっ!?」
 佐里の顔にお餅べったり。白玉串だんごは得意げにころころ笑う。むーむーと餅で窒息しかけたところを仁太と与市にひっぺがしてもらうのだが、今度は眼鏡が餅にくっついたまま。
「め、眼鏡めがね!」
 ――みなさん、さらっと大苦戦ですよ?

●猫神家
 Y字だ。
 鑑うさぎのてっぺんにて、レイライン・エレアニック(60)はY字開脚していた。肩から下がぬっぽり鑑うさぎのもちもちに埋もれているのだ。
 ゴスロリドレスのスカートは容赦なく重力に従い、限りなく残念なサービスシーンをお茶の間に提供する。華麗なる脚線美はシンクロナイズドスイミングを彷彿とさせ、クリーム色の尻尾は必死にたすけを求めていた。
「猫神家」
「猫神家ですね」
「猫神家ってなに?」
 なぜ、このような惨劇が起きてしまったのか。
 時は少々、遡る。

「ふっ、とりもちも木の上ならば恐そるるに足りぬ!」
 その敏捷性を活かして、レイラインは鎮守の森の木々に跳び移り、虎視眈々と機会を狙った。
 絶好のタイミング!
 鑑うさぎが背中を向けた時、レイラインは必殺の飛び斬りを浴びせんとした。落下速度と体重を重ねて、木の幹を蹴ることで最大限に質量と速度を武器にする。狙いは頭。ただし、みかんを避ける。つぶして汁を喰らってはひとたまりもないからだ。
 必殺! ソニックエッジ餅つきバージョン!
「元々もち米だったのならこれが本望じゃろう? そーれ餅つきじゃぁっ!!」
 そして強烈な一撃は、深々と鑑うさぎへ突き刺さった。
 レイラインごと、ぬっぽりと。

 ――窒息しそうだ。薄れ行く意識の中、レイラインは回顧する。
 そーいえば、よく餅で亡くなる老人の話をやっていたっけ。正月にモチで死ぬなぞ冗談が過ぎる。
 ああ、思えば儚く、短……くはない人生だった。
(餅つき、一度してみたかったのう……)
 ――……。

●大吉
 本気でヤバい。
 一同は陣形を建て直して、金魂はさておき猫神家レイライン救出に動く。
 
 小夜は玉串を手にブレイクフィアーを行使、全員のとりもちを清め祓った。
 春津見の挑発とガードによって鑑うさぎの月の杵を防ぎ、白玉うさぎの増産を防ぐ。与市と佐里の光矢と気糸が着実に白玉うさぎを一匹、また一匹と削り、仕留めてゆく。
「今です!」
 そうしていつしか敵陣に、一筋の“道”が切り開かれていた。
「サンキューみんな! 行くよ、ティセ!」
「うんっ!」
 花梨とティセは鏡うさぎのそばへ全力疾走した。翼の加護を頼りに、地上のとりもちをかわして。
 ひゃーっとおどけ、親玉を引きつけている春津見のおかげで隙だらけだ。そのてっぺんでは猫神家レイラインが未だY字ってる。
 花梨はキーッと急停止しつつ、鉄槌をゴルフのように振り上げた。狙いは月の臼だ。
「ナーイス、ショットッ!」
 数十キロはあろう臼を大きく弾き飛ばして、完全に敵陣の外へと奪い返した。
「かがーみーっ!」
 激昂した鑑ウサギは花梨へと月の杵を降り降ろす。
 絶大な重量は、鉄槌のガード越しに凶悪な衝撃を叩きこんだ。
「ぐっ、のれ……」
 しかし、花梨は倒れない。歯ァ食いしばって、ものの見事に持ち答えてみせた。
「今だよティセ! ボッコボコよ!」
「もちっ!」
 ティセはクローを一際に高く掲げて、力強く跳躍する。

“寒い”

 今だって、寒い。すっごく寒い。
 ティセの体は暖まってきてるが、それでもネコは寒いのがキライだ。
 だったら、あいつは?

 魔氷拳。
 凍てつく冷気を纏い、己の身さえも責め苛む氷の闘気によってクローは巨大な氷爪と化した。
「かっちかちになっちゃえ~!」
 真っ向唐竹割り。鑑ウサギを三段まとめて斬り伏せんとする。打撃も斬撃も無力化するはずの「餅」は、衝撃を受ける寸前で凍りつき、渾身の一撃によって粉塵に帰した。
 大きな鏡ウサギは、流石にこの一撃では倒れない。しかし明瞭に弱点はついていた。
 全身が凍りついてゆき、鑑ウサギは抵抗する。
「ダメ押しぜお!」
 巨銃砲哮。重い凍弾が、さらに鑑ウサギを撃ち貫いた。氷ウサギのできあがりだ。
 実質上の決着はついていた。氷結はいずれ解けるが、その時は再び凍らせればよい。その間にこちらは白玉うさぎを一掃できる。後は優勢をキープしつつ、押し切るのみだ。
 ホッと一息ついたティセは、何かを思い出した。
 大吉。小夜のおみくじのご利益だろうか。
「……あ」
 猫神家、凍る。
「お、おばあちゃぁぁぁぁーーんっ!!」

●救出しました
「これに当たるような輩の運勢は大凶じゃな」
 ネガティブな言葉と裏腹に、今度こそ与市の星光矢は百発百中、ついに最後の一羽をも射抜く。
 仕上げとばかりに、花梨の鉄槌と佐里の魔剣は鑑ウサギにトドメを刺した。
「大! 粉! 砕!」
「刻印します!」
 氷塊は跡形もなく砕け散る。氷の雨が降り注ぐ中、ふたりはハイタッチをかわした。



 汗を拭い、小夜は一息をつく。
「無事に終わりましたね。さて、私は仕事に帰らないと……」
(食べたかったな、磯部揚げ)
「すみません! 私の帰りを待つ人々が居るんですっ!
 さようなら!」
 巫女たちの戦いはこれからだ!
 小夜の勇気が世界を救うと信じて――!
 ご愛読ありがとうございました。
 神谷 小夜さんの次の修羅場にご期待ください。

 一件落着。
「くしゅんっ!」
 社務所のコタツに入り、熱いお茶を呑みながらレイラインは一息つく。
 その首には金魂がもっふりと巻きつき、膝の上には湯たんぽ代わりに白玉が丸くなっている。
「特別だゾ?」
「うむ、うむ。極楽じゃ。これは誰かさんに礼を言わねばなぁ」
 土下座。
 圧倒的土下座。ティセは平伏してぷるぷる背中と尻尾を震わせていた。
「ご、ごめ……」
「よいのよ」
「ほんと? 凍らせたこと、怒ってない?」
「怒るも何も、起死回生の大活躍じゃ」
 ふにゃーっ。とろけるフェイスの老猫に、若猫はおそるおそる面を挙げる。
 と、机の上には一枚のポチ袋が。
「お年玉じゃ」
「わぁーい!」
 開封、そして絶望。
 それは仁太の薔薇色丸秘ブロマイド写真であった。熟れた中年オヤジの魅力がごってりのお宝だ。
「……え、と」
「のう、おばあちゃんとは誰のことじゃ?」
 心凍てつく問いかけに、ティセは重圧の氷河に呑まれていった。

●餅つき大会
「はい」
「ほい!」
「はい」
「ほい!」
 杵つき役の花梨は鉄槌使いだけに力強く要領もよい。花形にはぴったりだ。こねる役は佐里が適任だった。動作を最適化するプロアデプトの技能が、こういう時に意外と役立つ。
 餅つき大会の客入りはそこそこだ。
 まだ知名度も低いのだから、少しでも人が集まれば成果はあったといえるかもしれない。
 花梨が突き、佐里がこねし天下餅、座して喰らうは春津見か。
「お餅カレーとカレー餅の販売はこちらでーす」
 寸胴にたっぷりのカレーを作り、春津見は店を開いていた。他に店もないし、春津見の日ごろのカレー研究の成果もあり、飛ぶように売れてゆく。
「さすがスーパーインド人! よいゾ、褒めてつくわす~!」
 活況な賑わいに、金魂は大満足。白魂は“いつものこと”とばかりに諦観一色、溜息をつく。
「そなたがよければ、わっちは構わぬがな」
 つーんとそっぽを向いて、白魂は磯辺揚げを笹の葉で包むと、神社を出ていこうとした。
「どこへ行く?」
「ちょっと遠くの神社まで」


 パンパン。
 二拝二礼一拝。とっぷり夜は暮れ大会もおしまい。帰り際、みんなで願掛けをすることにした。
 五円なり五百円なり0円なり、お賽銭の音色が響くたびに金魂の耳はピコピコした。
「さて」
 金魂は真新しい新品の賽銭箱の上にふんぞり返る。
「我は満足ゾ。褒美をとらせよう。
 しばし我と存分に戯れるがヨイ」
 金魂はするりと与市の首に巻きつく。いつも稲荷寿司を奉納してくれるからだろうか。
 はんなりと与市の頬がゆるむ。
「金魂様、いつでもアークに相談を」
「うむ、賽銭箱でも世話になったシノー」
 もふもふ時空発生中。
「しっかし災難やな、お祓いでも小夜に頼んどったらどうや?」
 ぼやく仁太。にらむ金魂。
「仁太、さっき賽銭を入れずに願掛けしよったナ」
 視線をそらし、口笛を吹く。
「仁太=サン爆発セヨ」
 号令に合わせて、与市が弓を番う。
「ちょ」
 与市の左眼が妖艶なる紅に染まる。
「案ずるな、どうせ当たらないのじゃ」

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
みなさん、お楽しみ頂けましたでしょうか?
今回の結果は“成功” です!
おめでとうございます!

今回は「餅」にどう対処するか、そこが軸でして。
前半は餅の厄介さに翻弄される形となったものの、ティセさんの魔氷拳を機転に逆転することができました。特に優れてた点は、プレイング段階で凍らせれば固くなって対処しやすくなる、と見抜けている点ですね。
そのようなわけで、MVPはティセさんに。

コメディ系とはいえ、一部の方々はイジり過ぎて戦々恐々。猫神家、串だんご、超インド人、爆発四散etc。
……怒ってないよね?
悔いが残るのは、金魂の出番がやや少なかった点でしょうか。白玉うさぎのブロックが固く、決着がつくまでずっと囚われの身だったのです。全員もっふる尺が無いのはご容赦あれ。
ちなみに猫神家で動けなくなってるのは、戦闘不能ではありませんのでご安心を。
また余談ですが「みかん」は王冠代わりで潰すと権威を失い弱体化する、という弱点で、見事にあえて外してたのが何とも微笑ましかったです。

なお、今回は同時期に本家コントSTの金魂様シナリオも公開されております
新しい賽銭箱があるということは、今回はあちらの後日にあたる物語のようですね

改めまして、みなさんお疲れ様でした
また機会がありましたら、当方ならびに金魂様をよろしくおねがいします。

===================
レアドロップ:『金剛稲荷神社公式巫女装束』
カテゴリ:プロテクター
取得者:ティセ・パルミエ(BNE000151)