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\ぴょーんってする/


 ぴょーん。
 どこぞの旅の第一村人発見って勢いで其れはもう案山子だった。
 何を如何したらいいか解らないが畑で案山子が跳ねていたのだった。
「おお……案山子じゃ」
 おじいさんの言葉の通り案山子だった。其れはもう何処から如何見ても案山子だった。
 ぴょんぴょん、と跳ねまわるその姿は何とも言えない。
 新年早々『すげぇ悪そうな案山子』が居たのだった。何が悪いのかは分からない。
 でも、跳ねているのだ。そして増えているのだ。
 鴉――どこぞの美人のフルート吹きではない――を避けたいけど、逆に案山子が多過ぎるのだ。
 ぴょいんぴょいんと跳ねまわる案山子はおじいさんの方を向いてゆらゆらと揺れた。

 おじいさんはこの先生きのこれるのか!!!


「暮れなずんだわ!」
 ドヤ顔であった。
 開口一番。相変わらず訳の分からない言葉を吐き出した『恋色エストント』月鍵・世恋(nBNE000234)は羽をパタパタとさせながらリベリスタを見回す。
「そして、案山子が跳ねたわ! ウザいわ! 倒すべきですっ」
 ドヤ顔のまま告げる世恋の額にぺちりと一つ。
 痛い痛いと額を押さえた世恋は拗ねたように頬を膨らませ、案山子跳ねたんだもん、と告げる。
 其れが如何したとも言ってやりたいところだった――が、確かに案山子が跳ねているのは問題だろう。
「で、その案山子はどんな案山子だ」
「良くぞ! 聞いてくれました! うふふ、世恋ポイント1点!」
 なんだそのポイントは。
 その問いには答えずに世恋は手をぶんぶんと振り回す。
「すっごい悪い案山子よ! どれ位悪いかってマジで悪いの!
 だって、案山子だもん! 因みにアルパカ並みに悪いのよ。案山子だし!」
 ――訳が解らなかった。
 きらきらと輝く瞳で案山子だから仕方ないわ、と世恋は告げる。
「新年早々テンションが上がっちゃったのね、仕方のない案山子さん」
 てへぺろ、とかいう感じで告げる世恋だが、どんな案山子なんだとリベリスタの頭が痛くなる。
「あ、因みにこれ地図ね。農家のおじさんも驚きの案山子だからね。
 新年だし、お礼に農家のおじさんお手製のおせちとか食べれちゃうわ。アルパカとか」
 冗談はさておいて、行ってらっしゃいと予見者は手を振った。

 ――何故、案山子だったのだろう……?


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:椿しいな  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年01月09日(水)23:20
『案山子が跳ねてる』と聞いた時に恋に落ちる音がした!
こんにちは、跳ねてる案山子好き過ぎる椿です。

●成功条件
お爺さんのお節を食べるべく『案山子さん』を討伐する

●場所情報
畑の広さは40×40。走り難いです。穴もぼこぼこ。案山子さんが跳ねてます。ぴょんぴょん。

●案山子さん×初期15
へ へ  ←こんな感じの顔をした案山子さんです。とてもぴょんぴょん。
の の   時々イケメンが混ざってる気もします。
 も    気の所為かもしれません。へのへのもへじですから。
 へ    結構簡単にポックリします。けど、跳ねまわってるので早いです。
ドキッ☆突然の案山子との追いかけっこレベルです。素早く、そしてウザい。
1T毎に何故か何処からか3体増えます。『6T以内に倒さないとおじいさんがおせちを食べ切ります』。
>攻撃方法
 案山子あたっく(痛い)、案山子じゃんぴんぐきっく(痛い)、案山子ビーム(まともに痛い)
どう見ても物理攻撃ですが神秘です。神秘()

●おせち料理
農家のおじいさんが案山子放置して作っていたおせちです。美味しいです。
具はオーソドックスなものばかり。おじいさんは無茶ぶりが大好きなので無茶ぶりにも応えてくれます。

●おじいさん
その辺の農家のお爺さんです。アルパカと良く出会います(拙作のアルパカと名のつくものに登場してる爺さんですがご存じなくともお楽しみ頂けます)
案山子を倒している様子を畑の傍にレジャーシートをひいてのんきに見ています。因みにお爺さんはリベリスタ用に用意したとっても素敵なお節をつまみ食いしてます。

楽しく遊んで頂ければ。
本気ではっちゃけて下さいな。新春大暴れ。椿もはっちゃけます。
どうぞ宜しくお願い致します。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
クリミナルスタア
不動峰 杏樹(BNE000062)
ソードミラージュ
須賀 義衛郎(BNE000465)
デュランダル
石川 ブリリアント(BNE000479)
ホーリーメイガス
★MVP
シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)
覇界闘士
祭雅・疾風(BNE001656)
ホーリーメイガス
氷河・凛子(BNE003330)
レイザータクト
毛瀬・小五郎(BNE003953)
覇界闘士
喜多川・旭(BNE004015)

●ぴょーん!
「明けましておめでとうございますじゃ……」
 畑に到着してぷるぷると震えながらも新年のご挨拶を行った『三高平のモーセ』毛瀬・小五郎(BNE003953)に農家のおじいさんもこれはこれはご丁寧に、と挨拶を返している。
 一見、町内会の新年会にでも訪れたかの様な錯覚が『玄兎』不動峰 杏樹(BNE000062)の脳裏に過ぎった。名付けて『年明けの大掃除』。農家のお爺さんと彼の座るレジャーシートに置いてあるお節に目を遣る。豪華なソレはそう言えば今年は口にしてなくて。
「……来年はチャレンジしてみようかな」
 作っても誰も食べない気がするからコタツとみかんの黄金律を作り出してるだけだった。

 ――来年は杏樹嬢お手製のお節が食べれるらしいですよ、皆さん!

 其れは兎も角して、お爺さんを見つめていた『闘争アップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)は髪を掻きあげる。いやはや、豪華なお節を60秒で食べきる食欲があると言うならお爺さんの心配は無い。
「う、うーん……お、おじーさん、着実に神秘慣れしてる気がするの……」
 もう存在が神秘ですよね、その農家のお爺さん。
 あ、昨年はお世話になりました。へこへこと頭を下げた『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)にお爺さんもへこへこ。
 何かが――例えばアルパカ――突然大量発生するのを自然現象とでも思っているのか。
 目の前でぴょんぴょんと跳ねまわる案山子に視線をやってから、お爺さんを見つめて首を傾げる。
「ミ、ミステリアスだなあ……」
 一分間でお節を食べ終わるお爺さんの存在がとてつもなく気になる様であった。
 一分で食べきられてしまうなら、美味しく皆で食べよう、という『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)も悠長にご挨拶している暇はない、と直ぐ様に仲間達へと翼を与えた。
「さて、全力で頑張りましょうか」
 主にお節の為に。因みに彼女のこの戦いへの心は『美味しいもの食べる』と言う物だった。境界の戦女医。食べる事も戦であろうか。女性は時に食べ物に対し、酷い執着を見せるものだった。
 ……彼女が執着しているかはさておいて、だ。

「細かい事は良いんだ!
 案山子を……いや、案山子さんを討伐してお爺さんが用意したお節を食べる! そう……それだけだっ!」
 大きな声で叫んだ『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)は遠くまで見据える事の出来るその眸で案山子さんと見つめ合っていた。
 イケメンの案山子さんもいますよ、との事だが疾風には疑問で仕方ないのだ。
「イケメンの基準って何だ……?」
 こ、細けぇ事は良いんだよ!!
 その疑問については可愛いお姉さんにお任せしましょう。そうしましょう。ヒーローの隣で『エリミネート・デバイス』石川 ブリリアント(BNE000479)が「笑止!」とDreihänderを握りしめて立っていた。

 \あけおめっ!/

 高らかな挨拶に案山子さんが此方を視る。見つめ合うと素直にお喋りできないのは人も案山子も一緒だ。
 お爺さんも同じくあけおめとブリリアントに告げている。
 ミステリアス(旭論)なお爺さんを見つめるブリリアントは『三高平のモーセ』をも放置して名探偵――否、迷探偵に為りかかっていた。疑問はネクストブリリアントクーイズというノリで残しておこう。

 次回予告。
「なぜ案山子……なぜ、お節……! なぜ、農家のおじいさん!!?
 何よりも謎なのは、世恋ポイント……いったいなんなのだ……!」
 深まる謎にブリリアントと三高平のモーセ(探偵役)は困惑する。
「そのポイントは貯めれば何か貰えるのか!?」
 果たして真相や如何に!

●「それらも全て案山子を倒せば解決するだろう!」
 ――とはブリリアント論である。

 嗚呼、何故案山子様は跳ねるのでしょう?
 嗚呼、何故案山子様は増えるのでしょう……?

「私は想うのです……」
 ふわりと灰色の羽で浮かび上がった『紫苑』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)は癒し系の表情を優しく緩める。このお嬢さん、可愛らしい外見で有りながら突拍子もない行動を行う事がある。
 葱とか。葱とか。葱、とか……。
「案山子様は寒さに凍えつつも近づく春の訪れに胸弾ませその体を天へと踊らせる……」
 あの、シエルさん。案山子さんは貴女の中で春の妖精か何かなのでしょうか!
 彼女が優しげに両手を合わせ、微笑んでいる中、翼を得て浮かび上がった杏樹さんは猛突進していた。
 なんたって、お腹が空くからだ。
「まさか、猟犬が仇になる日が来るとは思わなかった……ッ!」
 案山子の神秘攻撃よりも何よりもお節の香りがダイレクトアタックだ。彼女が頑張っている中、杏樹が好きだと言う黒豆をお爺さんはぱくぱくと食べている。
 その隣でぷるぷるとしている小五郎さんがそっと立ち上がる。すぅ、と息を吸い込んだ所を義衛郎は見逃さない。辻斬り、不意打ち、騙し討ち――そんなことよりも。
「きぇえええええええええっ!!!!」
 今年初奇声頂きました。有難うございます!
 おじいちゃん死なないでと言いたくなる様な気合の入れ方だ。
「毛瀬さん!! 毛瀬さん、しっかりして!!!」
 アーク屈指のホーリーメイガス(はくいのてんし)が二人も居る中、やはり心配だったのはおじいちゃんの生命だったようだ。窓口の義衛郎さんがおろおろしている。

 でんじゃー。
 毛瀬さんだけはフェイト残量関係なく昇天しそうで恐ろしい!

「いやああ、おじいちゃんが白目剥いてるよ!?」「大丈夫ですか、回復は、回復は必要ですか!」
 旭の叫び声に凛子が慌てて其方を向く。手術室ってこんな感じなのであろうか。解答用紙の裏側をしっかりと見つめるシエルさん。大丈夫、その人大丈夫だよ!
 お節を食べているおじいちゃんも慌てて黒豆を咽喉に詰まらせ掛けている。案山子はその間跳ねていた。
「人(案山子さん)は一人では生きていけない……故に増えるのです」
 そっと手を差し伸べたシエルはにこりと笑っていた。ぎゅっと握りしめた楽園乃小枝。
「私などでよければ貴方達の友となりましょう」
 案山子が彼女を見つめる。某子犬のCMでも想いだしそうである。案山子なのだが。
「……仲間です。心友でございます」
 シエルの大きな瞳が涙を滲ませた。案山子の「へ」とシエルの瞳がゆっくりと交わる。
「……故に……私は……貴方達を討ちます。
 貴方達が愛したこの世界(田んぼ)を護る為……今こそ約束を果たしましょう……?」
 いつその約束をしたのでしょうか、シエルさん。枝を握りしめてえい、えいとぽかぽか。
「平和とお節と(喪われそうな小五郎さんの命)を護る為、倒す!
 早く倒さないとおじいさんに全部食べられてしまう! うわあああ、蹴散らすぞ、変身っ!」
 割と切実な疾風の叫び声が響く。変身ヒーローの疾風さんは一生懸命に案山子を追いかける。因みに『案山子さん』ときちんとさんをつけている所が疾風さんの良い所だ。
 足場の不安定を感じ、凛子から与えられている羽で浮かびあがり一生懸命の疾風さん。
「ぴょんぴょんするなー!? くそっ、無駄に素早い上にイケメン(?)案山子めっ!」
 ドヤ顔がうざかった。へのへのもへじだけれど!
 うざかったのだ。何だかウザイ、と思わず「(笑)」と付けてしまう位に案山子さんはうざかった。
 DCナイフ[龍牙]を握りしめて雷撃を繰り出す疾風さん、案山子との応戦は朝の某ヒーローの時間を想いだしてしまう気もする。なんたって、敵がへのへのもへじですから!
「無限機関、始動! 戦斗機動、展開!」

 \とっつげきーっい!/

 だん、と踏み出してブリリアントは心の中の方針を確認する。
 そう――敵は時間を置けば置く程に数が増える。となれば速攻! これしかないのだ。
「……だが、焦りすぎて敵を逃してもよくない」
 すう、はあ。深呼吸が迷探偵ブリちゃんの心を静めた。一体ずつ確実に、迅速にレッツゴー!
「せめて目からビームを出してみろ!」
 ブリちゃんの目の前を横切った杏樹さん。黒豆の為に今回は必死です。射程範囲の案山子は全て撃ち落とす勢いだ。
 ぐるん、と旋回する。寒い冬の空の下、脚を宙へと伸ばし、片手はスカートを押さえたままに、小さな翼で杏樹は飛び上がっている。
 残念ながら、お兄さま方。膝を曲げてスカートの中は見えない仕様です。鉄壁ですからね!
「散開しても、逃げても無駄無駄! 年明けのお掃除だ!」
 ぐう、と腹が鳴りそうな気配と堪える。鳴ったらどうしようか、恥ずかしいぞ。精一杯の我慢に杏樹の表情が歪んでいく。
「イケメンの案山子!」
 ――呼び掛けると全部振り向いた。
 杏樹の表情が歪む。お前ら、と呆れを浮かべたままに彼女はその拳で案山子を殴りつけた。
「イケメンとか、悪いとかさっぱり分からん!」
 きっぱり。
 言いきった義衛郎は不整地涙目だなあと戦場を眺めている。お前の羽をちょん切ってやろうか!と案山子さんも言いたくなってしまう所だがそんなことは無い。翼、おめでとうございます、だ。
 鮪斬を手に彼が繰り出すのは質量の残る以下略だ。
「公務員キック! 公務員パンチ!」
 注・但し、斬っていた。
 集中などおいておいて、今回はひたすら切り刻む目的だ。もう何も気にしては居られない。
「早くしないと、お節がっ! お節がっ!!」
 食欲には負けてしまう。空腹でフェイトを消費等というカオスな事にはならない様に義衛郎は一生懸命だった。
 因みに視線は、仲間の回復は安心。けど、心配なおじいちゃんに注がれていた。
「こりゃ! 悪い案山子め!」
 ぷんすかと怒っているおじいちゃんが降らせる雨。ぷるぷるしているのだ。因みにおじいちゃんも「ちぇいすかったー」というナウでヤングな技を覚えたらしく其れをお爺さんに自慢している。
「いやあ、案山子は害鳥を遠ざける為の畑の番人なんですがなあ」
「ええ、案山子としての本能があるかもしれませんのう……。ほれ、どうですかの」
 鴉。輝く瞳で告げる小五郎おじいちゃんの白い翼は黒く染まっていた。大往生した人生の末に得た翼は何だかデビルチックだ。からーすぷれーなんていう孫から教えてもらったもので染めた翼は鴉や雀ばりに目立つ。
 とてつもなく目立つ。放っておいてもぽとんっしてしまいそうなおじいちゃんだ。
「かぁー……かぁー……」
「案山子だもんね! えいっ、ふぁいやー!」
 ぽん、と手を打ち合せて旭は炎を纏う拳を案山子さんへとダイレクトアタック。イケメンに呼び掛けている杏樹へと視線をやってから、杏樹さん!と輝く笑顔で叫んだ。
「ふんいきイケメンさんってあーゆーの?」
「全員振り向いたから全員イケメンなのかもしれない」
「……はっ! あれ、かなぁ? ほら、それとなく、こう……雰囲気が。飛び方が!」
 顔は皆『へのへのもへじ』であろうけど。ほんのりタッチが違う気がするのだ。あくまで旭の視点からだが。
「イケメンさん倒したら高得点かな? 杏樹さん、凛子さん、張り切って倒そう!」
「ええ、倒しましょうね」「あ、ああ」
 きらきらと輝く瞳の旭の拳は炎を纏った。きっとイケメンが居たのだろう。多分、きっと、だ。
「世恋さんポイント20貯めておしゃれ小鉢貰うの!」
 ブリちゃん、ポイント貯まったら小鉢貰えるって!
「寒いのでしょう。旭様、素敵です、共に温めて差し上げましょう? 身も心もぽっかぽかですっ!」
 シエルさんの瞳はいたって真剣そのものだ。神気閃光で焼き払うなんていう言葉が聞こえた気がするが気のせいと言う事にしておこう。
 気のせいだ。温める為に遣っているのだ。素敵なお嬢さんである。
「大丈夫です。私の命中率低いですし、マナコンも持ってな……あぅ、つい何時もの癖で使用しました」
 ごめんなさい><。なんて泣き出しそうなシエルさん。あの、貴方の神気、かなり強い――
「逝きますよ?」
 真剣な表情で全てを焼き払ってしまった。天使の様な笑顔を浮かべて、シエルさんは「温かいですね」と笑った。

 ――心友を討つ迄私は斃れる事許されじ。

 シエルさん、本日の心意気であった。

●お節解説人こと凛子さん
「この黒豆、下準備がしっかりしてありますよ。甘さを楽しんでくださいな」
 そっと杏樹へと差し出されたお節。凛子の言葉に杏樹は頷き口にする。女医なのか料理研究家なのか。凛子さんはいつの間にかジョブチェンジしている様だった。
 少し食べられている穴開きお節を凛子は一つ一つ解説していく。次に選び取ったのは数の子だ。
「戻しと味付けが難しいものですよね。独特の触感が良いですよ」
「あああ、よかった、残ってる! お爺さん有難うございます! 数の子、数の子ォッ!」
 疾風さんは必死だった。大丈夫、数の子あるよ!
 もしもなかったら彼は夕日の下で涙したのだろうか。少し見たかったがあるので今はお節を堪能しよう。
「田作りは醤油の味と苦みが癖に為りますね。伊達巻はかまぼこと卵の配分が難しいです」
 因みに私は甘めが好きです、と旭やブリリアントの皿へと分け与えていた。
「……あ、ああ、餅も一応持って来たぞ」
 この為に頑張った、と黒豆や昆布を頬張る杏樹の表情が何時もより緩んでいる。何故かきちんと三高平市内でお茶の淹れ方を教わってきた義衛郎のお陰でお茶も美味しいのだ。口に含んで、良い味ですね、と告げた凛子に義衛郎はお茶を注ぎ回りながら案山子さんよりもイケメンスマイルを浮かべた。
「今ほど三高平が静岡県内で良かったと思った事はありません。ちなみに茶葉も淹れ方を教わったお店のお勧めの一品です」
 ドヤッと言う顔を浮かべながらやっとお節に有りついた。独り暮らしにお節は多いから、今のうちに色々と堪能しておこう。
 凛子の解説で甘いものはお好きですか、と栗きんとんが差し出される。どうやら甘いものがお好きらしい凛子もこの栗きんとんはポイントが高い。
 レジャーシートに座り、ふんすふんすと周囲を見回すブリリアント。先程はしっかり案山子を倒していたが、今からはお節を倒す番だ。胃袋にいれるのだ!
「伊達巻! あまじょっぱいのはあるか?」
「あ、これ、そうだよー?」
 旭が差し出した伊達巻を頬張って美味しい美味しいとブリちゃんが微笑んでいる。まさに天使である。
「鶏のつくねとか、海老のおかしらつきとかあるかー?」
「ええ、此方にございますよ。私はくわいを……」
 ブリーフィングルームで聞いた全員の好物を用意してきたシエルのお陰でもしお節が無くても哀しくお餅を焼く事は無かっただろう。
「鯛の焼き物など、どうですか? 酒の肴になりますよ」
 そっと小五郎に差し出せばおじいちゃんは幸せそうに笑う。因みに凛子さんは手作りの苺大福と紅白饅頭を用意してきたようだ。
 鏡餅には未だ早いから折角ですから、と渡しながら料理研究人凛子さんはお節の味付けに興味津々だ。
「杏樹さんのお餅、一緒に焼こうよ! おじーちゃん七輪だーしーてー!」
 何処からか七輪さんが登場である。本当にこの農家のおじいちゃんは無茶ぶりが大好きだ。
 お餅の焼き方も女医――料理研究家、凛子先生から伝授頂こう。お餅もぷっくり。旭ちゃんの幸せオーラもアップだ。
 凛子のお菓子とシエルのお節。義衛郎のお茶を手ににへ、と頬を緩める。
「おまんじゅうこわいの。しわせー♪」
 えへへ、と笑う旭ちゃん。まんじゅうこわいですね!
「農家の方、皆さん、どうぞどうぞ」
 酒を差し出した小五郎さんに農家のお爺さんも一緒に酒を煽っている。あの、馴染んでますね?
「ささ、どうぞ一杯……。おお、行ける口ですなあ」
 ふぉっふぉっふぉと笑いながらおじいちゃんはそっと視線を揺らめかせる。

 (・´ェ`・)<パカァ

「……ア、アルパカ? た、食べれるの……? ねえ、世恋さん。食べれるの……?」
 此処に居ない予見者に旭はぼんやりと呟いた。
 嗚呼、何か見た気がするが気の所為と言う事にしよう。
 多分気の所為だ。お茶とお酒と。何だか寒い畑なのに豪勢である。何故か畑でピクニックだ。
 どうしてか意気投合してしまったおじいちゃんとお爺さん。案山子だって正月気分を味わいたかったのかもしれませんなあ、と呟けばそうですなあ、とお爺さんも返す。
 因みに小五郎おじいちゃんの生命の危機は三回程度。おじいちゃん、死なないで!
「ごちそうさまでした」
 凛子の号令に全員が手を合わせる。独り、胸に手を当てたシエルが「何故、なのでしょうね」とぽつりと漏らす。
 ――何故、案山子なのだろう。
 想い出を胸に刻み込むシエルさん。彼女は何処か不思議オーラを漂わせていた。
 寒さに凍える案山子さんには神気閃光を。寂しさを表す案山子さんには心友として何時か交わした気がする約束の為に滅びを与えた。
「……案山子さんとの想い出は何時までも……」
 シリアスムードを纏うシエル。だが相手は案山子であった。もう一度言おう、相手は案山子だった。
「ああ、旭さん。気持ち程度ですが、どうぞ」
「ほら、学業成就のお守りだぞ。恋愛成就は……必要ないだろうしな?」
 杏樹――見た目は若いがおねいさん――は無職に近いからとお守りを用意した。シスターからお守りを頂けるなんて幸せで仕方ない。
 女医たる凛子はお餅と共にぽち袋を差し出している。
 しっかりと受け取って渡されたお年玉に想い出だなあ、と旭は幸せそうに笑った。

 余談ではあるが世恋(24)にも凛子のお年玉(お餅付き)は用意されていた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 年の初めに案山子が飛び回るというカオスなのでした。
 MVPは何だか案山子さんと心の友になっていた貴女へ。役割もしっかりはっきりばっちりなのでした。
 みなさん、イケメンの案山子さん、好きですね!

 お疲れさまでした、ご参加有難うございました!