● 狭くて暗い、倉庫の隅の箱の中。 ぽつん、と仕舞われたままのそれは、何時も何時も、指折り数えて待っていた。 あといくつ寝ると、お正月。 お正月は自分の出番だ。羽根を打ち合い、顔に墨を塗っては楽しげに笑い合う子供たちの声を聞く為に、自分たちは作られたのだ。 もう少し。もう少し。 毎年毎年。心待ちにするお正月。けれど。 日の光を見なくなったのは、何時からだろうか。待ち望んで待ち望んで。けれどもう何年も、自分は此処から出ていない。 今年ももうすぐ、お正月がやってくるのに。 どうせ、今年も自分は使われない。悲しかった。寂しかった。その嘆きはとてもとても深かったのだろう。 そう。 本当に偶然に、運命の女神がその手を、取ってしまう位には。 ● 「あー、……ええと。どうも、新年明けましておめでとうございます。 今年もどーぞ宜しくね、なんて新年の御挨拶もそこそこで申し訳ないんだけど、ちょっとお願いがあるの」 黒い髪に添えた花飾り。きっちりと着つけられた、濃い紅色の着物姿で。『導唄』月隠・響希(nBNE000225)は常の様に、持参した資料を差し出した。 「あんたら、羽子板って分かる? あの、あれよ。木の板と羽根でやる遊び。お正月の定番。……よく知らない、って子も居るのかしらねぇ。 あたしも、やった事は無いんだけどさ。実際問題やる子、少なくなってるみたいで。……その恨みかどうかは知らないんだけど、とある神社に仕舞われていた羽子板が、この新年早々、革醒しちゃったのよ」 ずっとずっと倉庫の中。恨みつらみもあったのだろうか。まぁ羽子板ではないのでその気持ちは分からないが。 とにかく危ないらしい。どれくらい危ないかって言うと、あの板が凄まじい速度で往復ビンタしてきたり、墨かけられたり、羽根が執拗に擽ってきたりするらしい。地味にうざい。 「……ま、使ってあげれば無事にこう、普通の羽子板に戻ってくれるんだけどさ。やっぱりこう、一般人には危ないでしょ。 だからあんたらの出番って訳。今からあたしと一緒に、件の神社に来てちょうだい。で、羽子板すんの。異論は認めない」 因みにお正月っぽい恰好じゃないと羽子板さんは許してくれないらしい。窮屈そうに着物の襟もとを弄りながら、フォーチュナはぎこちなく立ち上がる。 「着物は無いなら、狩生サンが手配してくれるからそれ着て。……まぁ、適当に遊んで、ついでにお参りでもしましょう。じゃ、どーぞ宜しく」 ひらひら。手を振って。玄関で待ってる、なんて言葉と共にフォーチュナはブリーフィングルームから姿を消した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:麻子 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月15日(火)22:30 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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