● その山には、大きな時計塔が建っている。 少し離れた場所にある山村のどこからでも時間がわかるようにと、先人達が建てた時計塔だ。 老朽化が進んではいるが、村の人々は決してその時計塔を取り壊そうなどとは思っていなかった。 なぜならその時計塔は、村のシンボルだからだ。 「あぁ、あの時計塔は無くなったら寂しいしねぇ」 「動かなくなったとしても、修理したりしてずっと置いておきたいものさ」 口々に村の住人は言う。 とはいえ老朽化の進んだ時計塔を改修するだけの予算を、村の役場は持ち合わせていない。 「どうにか修繕はしたいのだけどなぁ」 等と言う者は存在するが、時計塔はその巨大さ故に、修繕するだけでも結構な費用がかかってしまう。 大事なシンボルだ。 可能ならば修繕したい。 そういった気持ちだけが募る中、時計塔は今も時を刻み続けている。まだ動いているのだからと、村人は思うところがありながらも、時計塔には近寄る事も殆どない。 人里の近くにありながら、隔絶された場所。 「誰も寄り付かない場所って、探検するには持ってこいだよな! ったく、母ちゃんも酷いや。俺の宝物を捨てちまうなんてさ」 そんな場所だからだろうか。1人の好奇心旺盛な少年が、夜遅く、この時計塔に入り込んでいた。 母親に大切なものを捨てられた事に対しての反発から、彼は家を飛び出してきたらしい。 「ここで今日は寝よう。その前に色々見て回ろうかな?」 夜を過ごす場所は、ここに決めた。普段から気になりながらも中々来れなかったこの場所は、もしかしたら自分だけの秘密基地になるかもしれない。 だが、彼は知らない。 時計塔には、既に悪魔が巣食っている事を……。 ● 「人の寄り付かない時計塔に、怪異が巣食う。映画などでもありそうですね」 新年早々から頑張るリベリスタ達を迎え入れ、『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)はそう切り出した。 「今回は敵もそれなりに厄介ですが、それ以上に厄介なのは『時計塔』というロケーションです」 和泉が「時計塔が戦場ということが厄介だ」と言うのも頷ける話である。 入り口のある地上階から、本命のE・ゴーレムが巣食う時計部分を繋ぐのは、15mほどある梯子のみ。 しかも時計部分は3人が入り込んで戦うのがやっとの広さであり、さらに探検気分でやってきた少年が内部に入り込んでしまっている。 「今から向かえば、少年が殺害されるまでにある程度は時間の余裕がありますが……」 表情を曇らせた和泉によれば、地上階にも鉄砲を構えた人形のE・ゴーレムが6体ほど巣食っているらしい。 少年が時計部分に登って襲われたところで、もし逃げ出したとしても地上階の人形達が逃がさない――そんな構図か。 そして少年が殺害されるまでには、60秒しか猶予がないようだ。それまでは逃げる少年を驚かしたりして弄び、攻撃は行わないという。 「もう1つ厄介な点は、この時計塔が村のシンボルだという事ですね」 エリューション達の攻撃は、歯車を飛ばしたり銃を撃ったりと、そう時計塔を破壊するようなものではない。 だが多種多様な攻撃手段を持つリベリスタが戦うとなれば、話は別だ。 もしも広域を破壊するような攻撃を放てば、時計塔には大きな傷が残る。下手をすれば、崩壊してしまう可能性もあるだろう。 当然の事だが、時計部分は長い得物を振り回して戦う事にも向いてはいない。 あぁ、なんと厄介な戦場か。 「まずは少年を救う事を第一に動いてください。最終目的はエリューションの撃破ですが、救える命は救わないといけないですよね」 全ては集まったリベリスタの立てる戦略次第ではある。 それでも、彼等ならやってくれるはずだ。そう信じている和泉は「少年の事、よろしくお願いしますね」と軽く微笑んでいた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月07日(月)22:51 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●少年は助けを求め叫ぶ 時計塔最上階、時計内部。 「うわぁぁっ!? なんだよ、なんだよこれ、化け物だよっ!?」 『ケタケタケタ……』 ここで寝ようと入り込んだ少年が寝床に適した場所を探していた時、それは不意に動き出した。 「に、逃げなきゃ、逃げなきゃ!」 慌てて逃げようとする少年ではあるが、登る時はどうと言う事もなかった梯子すらもエリューションに、化け物に見える。大きく開いた出入り口の穴は、奈落の底へと通じているようにも感じられる。 エリューション化した時計の内部構造は、逃げ惑いながらも逃げられない少年を驚かし、飽きた頃合に彼を殺害しようとするだろう。 決定的瞬間が訪れるまでのタイムリミット、60秒。 そのタイムリミットがカウントダウンを始める少し前に、リベリスタ達は時計塔の見える位置へと到達していた。 今頃は少年がせっせと柱を登っている頃だろうか。 「隠れ家選びは、先約がいないか確認してからでないと痛い目を見るという好例だな」 と言う『燻る灰』御津代 鉅(BNE001657)は、「それにしては少しばかり授業料が高すぎだ」と続ける。 痛い目を見るだけならともかく、命まで取られるのは確かに割に合わない。 「好奇心は……というやつですね。なぜ革醒してしまったのかはわかりかねますが、いずれにせよ捨て置くわけにはゆきません」 鉅に応えた『不屈』神谷 要(BNE002861)は時計塔を見あげた。 時計塔のシンボルといえば、もちろん時計。 その時計がエリューション化し、人を襲う怪異となった。 しかもそれは村のシンボルでもあり、完全に破壊するわけにもいかない存在。 「村人にゃ悪いけど、少年の命以外については保障できないぜ」 最初から破壊するつもりはないが、それでも戦いの中でどうなるかは――と考えるのは『レッドサイクロン』武蔵・吾郎(BNE002461)だ。 「これでまた劣化が進むな。子供の怪我は、取り壊しの切欠が出来て良いかもな?」 とは言え、予算の関係で改修もされない時計塔ではある。『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)が『取り壊し』を口にするのも、ある意味では当然か。 ある意味では、壊れてしまったとしても考え方ひとつではプラスになるかもしれない。 それ以上に、その場所には助けなければならない存在がいる。 「少年を救出し、時計塔を壊さず敵を――か。やるべきことが多く厄介な仕事であるが、遣り甲斐がある」 可能ならば時計塔も破壊せずに済ませたいとハイディ・アレンス(BNE000603)は言うものの、 「とにかく、少年を助ける為にも頑張りますか」 多少壊れたとしても、人命が大切だ。『闘争アップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)が発した目的こそが、リベリスタ達の最大の目的。 時計塔がどうこうという話は、少年を助けた結果における過程が決めるだろう。 そして、リベリスタ達は時計塔へと辿りつく。 カウントダウンが始まり、刻一刻とタイムリミットまでの時を刻む。 「古い時計塔に住む悪魔なんてファンタジーっぽくていいですけどね」 出来れば物語の中だけにして欲しいものだと思いながらも、守護結界を展開した『蒼輝翠月』石 瑛(BNE002528)はその存在にファンタジー性を感じているようだ。 あぁ、確かに。 ゲームや話の中なら、時計塔も迷宮であり、一番上にはボスが居るものだろう。このエリューションは、それが現実化したようなものだ。 「なら、早くボスを倒そうか」 そんなボスが現実に現れたのなら、倒す存在が現実に居ても良い。自身の速度を高め、吾郎は『何時でも良いぜ』と仲間達を見渡す。 ここでリベリスタ達は、10秒を捨てて態勢を整えにかかっていた。 「針にはさまれて死ぬのだけは、勘弁したいですね」 今回は時計塔の内部での戦いであり、戦闘動作を仲間と共有する『混沌を愛する黒翼指揮官』波多野 のぞみ(BNE003834)が言うように針に挟まれる事はない。 だが少年を確実に助けるためには、針ではなく飛び交う歯車や銃弾への対策を採っておかなければならないと、リベリスタ達は考えている。 であるが故に、彼等は敢えて10秒を捨てた。 カウントダウンは、残り50秒を刻む――。 ●侵入者を拒む銃士 タタタタッ……! タタタタッ……! タイプライターを叩くような音にも聞こえる、銃声。 5人のリベリスタ達が一斉に突入すると同時に、戦端は開かれていた。 「こいつらは足止めするから、上は任せた!」 まだ突入していない3人の仲間に対してそう声をかけながら、吾郎の音速の刃が手近な場所にいたガンマンフィギュアの胴を深く切り裂いていく。 時計部分にいる少年を救い出す事が出来ても、階下に居並ぶ6体のガンマンフィギュアが存在する限り、少年に危機が迫っている事に変わりはない。 「必ずや少年を救いだしましょう!」 ならば先に救い出してしまえば良いというのがリベリスタ達の作戦であり、吾郎に斬り付けられたガンマンフィギュアのボディに、さらに要の刃が振り下ろされる。 どこまで早く、6体のガンマンフィギュアを倒す事が出来るか? それは少年救出を主目的とするリベリスタにとって、避けては通れない課題である。 だがそれに対しては、さほど問題は無いらしい。 「動かないでくださいね?」 傷ついた1体のガンマンフィギュアが、今、呪印を放った瑛によってその動きを拘束された。傷を与えるわけではないが、仕留め損なった時の保険にはなるだろう。 もちろん、その保険が杞憂に終わればそれに越した事はなく――、 「さて、まずは1体……か。今だ、行け」 軽く1体目を気糸で締め潰し、次の目標に目を向ける鉅。ある程度の集中攻撃を仕掛ければ簡単に壊れるほどに、ガンマンフィギュアは脆いようだ。 そして彼の『行け』という言葉が発せられると同時に、ハイディ、ユーヌ、のぞみの3人が梯子へと走る。 「少年、今助けが向かうから、もう少し辛抱してくれよ」 距離を考えれば、すぐに時計内部へと入り込む事など出来ようはずもない。それでも、彼女達3人ならば上手くやるはずだと、義衛郎は2体目のガンマンフィギュアに刃を突き立てつつ、上へと視線を向けた。 カチリ……カチリ……。 外の時計が、さらに10秒を刻む。 「いた、あそこか」 仲間達の援護を受け、真っ先に時計内部へと侵入したユーヌの視線が、少年を映す。 「ボクとのぞみさんが援護する」 「ユーヌさん、少年のほうをお願いします」 少し遅れて突入してきたハイディとのぞみが少年とクロックデーモンとの間に割って入る中、ユーヌも少年へと近付いていく。 庇えるほどに態勢を整えていない3人のリベリスタではあるが、当のクロックデーモンもいきなり攻撃を仕掛けてくる程に無粋ではないらしい。 (この内部全部がエリューション、か) さっと内部を見渡したハイディは、時計内部がエリューション化したせいで、不気味なオーラを放っていると感じたようだ。 内部の至る所に存在する、時を刻むパーツである歯車も、クロックデーモンにとっては武器の1つ。 「エリューションの腹の中に入った……って気分ね」 そう形容したのぞみの発言は、正しく的を射ていた。 それだけ判れば、これ以上こんな場所に少年を置いておくわけにはいかない。 「お姉ちゃん達、誰?」 「まぁ……正義の味方というヤツだ。肝試しは堪能したか? 行きはよいよい帰りは怖い、少々手荒だが、漏らさないようにな?」 問いかける少年に少し考える仕草を取った後、そう答えるユーヌ。 まずはこの子を逃がす。その目的を果たさんがため、彼女はフライエンジェのシンボルである翼を、ばさりと広げた。 「では、後は頼む」 少年を抱きかかえ、梯子を使わずに穴から飛び降りたユーヌが飛ぶ。 カチ、コチ、カチ、コチ……。 せっかくの獲物を逃がすまいと、クロックデーモンが周囲の時間を緩やかにして追撃をかけるものの、彼女のスピードには到底及ばず――、 「後はボク達が耐えるだけだ」 「そうですね。問題はここの狭さですか……!」 緩やかな時の流れに囚われながらも、ハイディとのぞみがその場を死守しにかかっていた。 もう、少年をこのデーモンが襲うことは無い。だが2人のどちらかが吹き飛ばされれば、デーモンは次に時を加速させるだろう。 「援護が来るまで、耐えてみせる!」 後は階下の仲間達が、ガンマンを一掃するまで耐え切れば良いだけだ。大きく力が抜けるのを感じながらも、ハイディは自身の役目を果たさんとクロックデーモンを睨みすえた。 一方、階下の戦い。 「残りは3体か」 時計内部から飛び降り、時計塔の中空を舞うユーヌは、階下の戦闘を眼下に収め少年を強く抱きしめる。 「大丈夫か?」 「こちらは抑える、早くその子を連れて脱出しろ」 下からは義衛郎や鉅の心配する言葉が聞こえてくる辺り、苦戦はしていないらしい。 否、苦戦していたとしても、それが少年の不安を煽るのだと2人は知っている。だからこそ、何事も無いように振舞っているのだ。 「なるべく遠くにな」 「わかっているさ、少しだけ待っていろ」 グシャリという音と共にガンマンフィギュアを潰した吾郎と、少年を抱えたユーヌがすれ違いざまにそんな言葉を交わす。 「もう大丈夫ですからね! 何も心配しなくて良いですよ!」 そして少年は、力強い瑛の言葉に耳を傾けながら頷き、ユーヌにしっかりと掴まる。 この人達がいれば大丈夫だ。僕はきっと家に帰れるんだ――と、胸に安心感を抱えながら。 「さて、隠れて動くなよ? 怖いなら目を閉じ耳を塞ぎ、縮こまって数でも数えろ」 「――大丈夫だよ、頑張ってね、お姉ちゃん」 救い出した少年にそう告げ、ユーヌは戦場となった時計塔へと向き直る。少年は恐怖を感じながらも混乱してはいないらしく、彼女の指示をしっかりと聞いてくれたようだ。 ならば、後は戦場に舞い戻るのみ。 急ぐユーヌではあったが、どうやら少し遅かったらしい。 「終わったな。なら、この後も手筈通りに行くぞ」 残骸と化したガンマンフィギュアのパーツを無造作に放り投げ、吾郎が梯子を登る姿がユーヌの目に止まる。 既に、階下での戦闘は終わっていたのだ。 「うあぁぁぁっ!」 後は時計内部に巣食うクロックデーモンを倒せば、終わる。だがその時、時計内部から弾き飛ばされたのぞみが梯子の上へと姿を現した。 フライエンジェであるがゆえに落下はしなかったようだが、やはり2人では相当苦戦する相手なのだろう。 「急ごう、持ちこたえられていないのかもしれない」 続いて梯子に手をかけた義衛郎が、せっせと梯子を登っていく。 アークの得意とする、数と連携で押す作戦が封じられた戦場へと――。 ●飛び交う歯車、壊れる歯車 「流石は、ってところか」 「下の銃声が聞こえなくなりました、もう少しだけ持ちこたえましょう」 時計内部では、やはりハイディものぞみも苦戦を強いられていた。 なんとかある程度の手傷をクロックデーモンのコア――『赤い歯車』に叩き込みはしたが、的確に彼女達を狙う歯車に、受けた傷も相当に大きい。 だが彼女達が耐え凌いでいたからこそ、クロックデーモンの時の流れが加速する事は無かったのだ。 「一旦交代だ、ここからはオレ達が受け持つ」 「お疲れ、しばらく休んでいてくれ」 同時に時計内部に入り込み、戦う事が出来るのは3人まで。梯子を登りきってきた義衛郎と吾郎が2人と交代して時計内部へと突入し、飛翔していたユーヌが梯子を飛び越え3人目としてクロックデーモンの前へと踊り出た。 「あれだ、あの歯車を狙うんだ」 ユーヌが指差した先には、クロックデーモンにとっての唯一の急所、赤い歯車がある。 多少薄暗い時計内部であっても、その赤さが一目で判るほどの目立つ存在。そこに攻撃を叩き込めば、いずれクロックデーモンは倒れるだろう。 「なるほど、あれならまだ狙いやすいか。これで時計が動かなくなっても、怨むなよ!」 飛び交う歯車を1つは受け、また1つを交わしながら、吾郎の刃が赤い歯車へと傷を残していく。 「深追いはしなくて良いぞ、後ろで皆が待ってくれているからな」 続いた義衛郎は歯車を突くと同時に、2人に注意を投げかける。確かに、3人しか入り込めないこの場所は戦闘にはおよそ適してはいない。 得意とする連携攻撃を殆ど封じられてしまう戦場ではあるが、かといって方法が無いわけでもないのだ。 「そうだな、御津代やアレンス、波多野も再突入する準備は出来ているようだ。交代しながら行けば良い」 とユーヌが言うように、時計内部への入り口近くでは後詰を担う仲間達が何時でも突入出来るようにと準備を整えている。 波状攻撃。 それが、リベリスタ達のとった作戦だった。 3人で突入し、傷つけば後ろの仲間と交代し、常に攻撃を仕掛けられる状況を作る事。 「さぁ、交代だ」 「ここからは回復に回るとしよう」 しばらくの攻撃の応酬の後、吾郎と義衛郎、ユーヌは外へ。そして入れ替わるように、鉅とハイディ、のぞみが時計内部へと突入する。 「次は俺が相手をする。――行くぞ?」 ハイディとのぞみが同時に攻め立てる中、鉅の気糸によって歯車にピシリとヒビがはいった。 「今のうちに傷を癒しましょう、ここからが正念場ですよ」 一方では交代した義衛郎達の傷を瑛の歌声が癒し、緩やかな時の流れの影響や、歯車によって流れる血液はユーヌや要の放つ光がそれに対する対処となる。 作戦としては、これ以上ないと言う程に完璧だったと言えるだろう。 3人ずつが交代して突入し、受けた傷は下がっている間に治療し、かつ態勢までも整えられるのだ。いかなフェーズ2のクロックデーモンと言えども、これだけの作戦の前には成す術はない。 「次は私の番ですね。では……行ってきます」 再び突入する吾郎と義衛郎を伴い、最後に突入する要。 「もうヤツはボロボロだ。きっちりトドメを入れてくれ」 すれ違いざまにかけられた鉅の言葉にこくりと頷き、要は行く。 彼女の眼前には、傷だらけになった赤い歯車の姿。 破壊への道は吾郎と義衛郎が切り開いてくれた。 「なぜ革醒してしまったのかはわかりかねますが、あなたの存在――いずれにせよ捨て置くわけにはゆきません」 破邪の力を帯びたブロードソードを握り締め、要の剣閃が悪魔を裂く――! ●時計塔は時を刻まない エリューション化した時計内部の撃破。 それは即ち、時計が時を刻むのを止め、壊れた事を意味していた。 「時計が結構壊れてしまいましたかね。この村のシンボルでもあるし、立派に立て直してくれるといいのですが……」 動かなくなった時計を眺め、時計塔の改修を願うのぞみ。唯一よかった点は、戦闘の影響をほとんど塔自体が受けていない点だろう。 何時の日か、この時計塔が村に時を告げる存在に戻る日は訪れるのだろうか。 「本当に大切な存在なら、ちゃんと修理するのではないか?」 「そうですね、そうであってほしいです」 費用だとか予算だとか、そんなものを超越して修理してほしい。そう呟くユーヌと要に、助け出した少年は「きっと直すさ!」と元気良く言う。 さっきまで相当怖がっていたはずだが、過ぎてみればそんな気配を少年は億尾にも出していない。 「怖かったろうに、よく頑張った」 だがそれが空元気である事を、義衛郎はしっかりと見抜いていた。 まだ少し震える少年の体は、それだけ怖い思いをした事を端的に表している。いかに強気に振舞っても、やはり子供は子供なのだ。 「それじゃ、家まで送るぜ。念のために言っとくが――」 後は少年を送り届ければ全ては無事に終わるのだが、問題が1つあると少年へと声をかける吾郎。それは助けなければならなかったとは言え、一般人に神秘を見られてしまった事である。 「わたしたちはね、ワルイ奴らから子供を守る正義のヒーローなんですよ」 瑛がヒーローだと言って誤魔化しにかかるものの、それで彼は納得するのか? もしかしたら、噂として流すのではないか? 色々な疑問がリベリスタ達に沸き起こる中、 「わかってるって、ヒーローは正体がバレちゃいけないんだろ?」 その不安は杞憂に過ぎなかった。 「どうせ見たこと言っても、母さんとか絶対信じねーもん! アニメの見すぎだとか言われるの、わかってるからなー」 などと少年が言う辺り、これはもう大丈夫だと考えて良いだろう。 そして暗い闇夜の中、リベリスタ達は少年を無事に家へと送り届けた。 家を飛び出した少年の小さな冒険劇は、彼の「ただいま!」という一言で幕を閉じる――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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